文字起こしの活用と分析は1発言1行の表から|札を付けて探す・数える・約束を片付ける
商談に限らず社内の会議や電話も含めた文字起こしを、1発言1行の表にして話題・質問・約束の札を付ける進め方です。同じ表を、次に作る資料を決める・探す・教える・約束を追うことに使う方法を、デモの画面で示します。
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金曜の夕方、来週の段取りを考えようとして、今週の会議で何を引き受けたかを書き出す。お客さんとの定例、社内の週次の会議、午後に受けた問い合わせの電話。どれも文字起こしは残っている。それでも「お送りします」と言った所を探すには、1本ずつ開いて読み直すしかない。来週の定例で先方に聞かれたら、と思いながら――。
私たち Aurant Technologies は、営業とマーケティングの仕組みづくりや、社内のデータを集めて分析する仕組みづくりを支援している会社です。会議の文字起こしは、会議ツールの設定で残せるようになりました。Google Meet のヘルプでは、文字起こしは会議中に開始でき、自動で文字起こしする使い方もあると説明されています(使えるのは Business Standard や Enterprise の各プランなど、一部のエディションです)。残せるようになったものを、どう活用するか。それをこの記事に書きます。
商談でのお客さんの言葉を集めて、提案書やよくある質問、ペルソナに回す進め方は、商談分析の進め方の記事に書きました。この記事はその手前の話です。商談に限らず、社内の会議や電話も含めた文字起こしを、1発言1行の表で持つやり方を扱います。その表を、探す、数える、約束を追う、教える、に使うのがこの記事の役目です。
文字起こしは、読み終えたら終わりの記録ではなく、データとして使えます。1発言を1行にした表に入れ、「会議の種類・案件・社内か社外か・話題・質問か約束か」の札を付けて持っておくと、同じ表から5つのことができます。あの件で誰が何と言ったかを探す。お客さんが気にしている話題を数え、次に作る資料を決める。よくある質問の答えを先に作る。新人に手本の場面を見せる。会議で決めた約束が期日までに片付いたかを見る。
たとえば、お客さんの発言を話題ごとに数えて、まだ答えを用意していない質問と並べると、次にどの資料から作るかが決まります。
図では、まだ答えを用意していない質問が4問ある情報の安全が1位で、よくある質問の答えと確認書の回答の控えを先に作ります。8〜9月の会議の数がいちばん多い体制は、出た質問にもう答えがあるので、今回は作るものがありません。数えた結果を、どの資料から作るかの順番に変える。これが、この表の使い方の1つです。図の作り方には、表の作り方を書いたあとで戻ります。
先に、表で答えたい問いを書いておく
表を作り始める前に、この表で答えたい問いを3つほど書きます。たとえば「お客さんが気にしていることのうち、まだ答えを用意していないものは何か」「会議で決めた約束は、期日までに片付いているか」「新人に、どの場面を見せればよいか」です。問いがないまま集めると、文字起こしはたまる一方で、開く理由がないままになります。冒頭の金曜の夕方のように、自分が何を引き受けたかを探す場面が多いなら、それも問いに入れます。
問いが決まると、表に要る列と札が決まります。お客さんが気にしていることを数えるなら、発言が社内のものか社外のものかを分ける列が要ります。約束が片付いたかを見るなら、約束に「誰が・何を・いつまでに」を持たせる札が要ります。全体は次の4つの段です。
集めるのは文字起こし。元のファイルを開ける人と、表を見る人を分けて決める
集める範囲は、商談、お客さんとの定例、社内の会議、問い合わせの電話です。オンラインの会議なら会議ツールの文字起こし、電話なら通話の録音から作った文字起こし、対面の打合せなら録音から起こしたものを使います。
会議ツールが作る AI の自動メモとは、分けて持ちます。Google Meet のヘルプでは、自動メモの長さは「標準」(会議の簡潔な要約)と「より長く」(議論の詳細と包括的なポイントを含める)から選べると説明されています。どちらも会議をまとめたメモで、発言をそのまま並べたものではありません。一方、文字起こしには会議で話された言葉だけが入り、チャットは入りません。1発言1行の表の元にするのは、文字起こしのほうです。
置き場所と、誰が見るかも先に決めます。Google Meet の文字起こしは、主催者のドライブの「Google Meet」フォルダに会議ごとに保存され、予定に添付されたものを主催者の組織内の招待者が開けます(招待者が200人を超えると、主催者などに限られます)。元の文字起こしを開ける人は、会議ごとに違うということです。そこで、元の文字起こしを開ける人と、表を見る人を分けて決めます。元の文字起こしはこれまでどおり会議の招待者が開け、表は使い道ごとに見る人を決めます。新人に見せる場面のように、会議に出ていない人が見るものは、見せてよい会議から抜き出したものだけを渡します。
入れないものも、ここで決めます。採用や評価の面談、個人の相談のように、本人に関わる話が中心になる会議は、本人以外が見る表に入れる話ではないので、この表には入れません。社内の会議は入れますが、表を見る人を決めたうえで入れます。
1発言を1行にする。行の切り方を先に決める
表の1行は、1つの発言です。列は、日時、会議(どの会議の発言か)、会議の種類、案件、話した側(社内か社外か)、発言、行番号にします。行番号は話した順に振る通し番号で、数えた結果から元の発言に戻るときの手がかりになります。
行の切り方は、たとえば次のようにします。文字起こしのファイルに、話した人と時刻の区切りがあれば、その区切りを1行の単位にします。同じ人が続けて話した部分は1行にまとめ、1分を超えるほど長くなったら、文の切れ目で2行に分けます。日時の列には、元のファイルにある時刻をそのまま残し、元の場所に戻れるようにします。録音から起こしたもので話した人の区切りが無いときは、文の終わりごとに1行にし、話した側はあとで人が付けます。この切り方は、私たちも実際の文字起こしで試したものではありません。最初の数本で、1行が読める長さになっているかを見てから決めてください。
話した人の名前には頼りません。録音のしかたや会議ツールによっては、話した人がうまく分かれず、お客さんの発言が別の人の名前で残ることがあるからです。社内か社外かなら、参加者の名簿と照らして直しやすく、お客さんが何を言ったかを数えるにはそれで足ります。名前の代わりに要るなら「部長」「情報システムの担当」のような役割を持ちます。発言した人が特定できる情報(名前や、役職と会社名の組み合わせなど)を表に持つ場合は、表を見る人の範囲とあわせて、社内の個人情報の取り扱いの方針に沿っているかを先に確かめてください。録っていることを相手に伝えているかも、このとき確かめておきます。
札は、一覧を先に決めてから AI に付けさせる
札は3種類です。話題、質問かどうか、約束かどうか。約束には、誰が(社内か社外か)、何を、いつまでに、を持たせます。話題の札は、最初に一覧を決めて固定します。ここでは次の7つにしました。
- 費用月額・初期の費用・料金の数え方・見積の外の費用
- 期限稼働の時期・移行やテストにかかる期間・繁忙期
- 情報の安全データの置き場所・アクセスの記録・確認書への回答
- 範囲どこまでを今回にするか・含まれる作業
- 今の仕組みとのつなぎ会計・名簿・給与の計算など、いま使っている仕組みとのデータのやり取り
- 使い方スマホでの操作・手引き・研修
- 体制担当者・問い合わせの窓口
札を AI に付けさせるなら、たとえば表を50行ずつ渡し、その前後の10行ほども読ませて、札は真ん中の50行にだけ付けさせる、という渡し方にします。質問か相づちか、約束かただの予定の話かは、前後を読まないと決まらないことがあるからです。札の一覧を渡してその中から選ばせ、付けた行を行番号で返させます。一覧にない話題は「その他」にさせ、人が見て一覧に足します。足したときは、足した日を残します。日を残さないと、その日より前の月にその札が少ないのが、話題が出なかったからなのか、札がなかったからなのか、あとで区別できません。50行・10行という数は目安で、私たちが試して決めた値ではありません。
案件の欄は、会議の名前から付け、「打合せ」のように名前から決まらないものは「要確認」にして、参加した人が選ぶ決めにしておきます。会議の名前から案件を振り分ける仕組みは、私たちも社内で、会議の自動メモを対象に試しています。社内の会議は、約束を拾うために表に入れますが、案件の欄は空けておきます。
人が確かめるのは3か所です。案件が「要確認」の会議、約束の期日、それに質問と約束の札の付き方です。目安として週に1回、札の付いた行をいくつか抜いて元の発言と照らし、付け方がずれていないかを見ます。
札まで付けた表を、話題「情報の安全」、2026年8月、話した側「社外」で絞ると、次のようになります。
①が札、②が行番号です。③を見ると、67行のうち52行が、確認書の項目を1つずつ読み合わせた1本の定例から来ています。④の会議は、案件が決まるまで、案件で絞った集計には入りません。
数えた結果で、どの資料から作るかを決める
冒頭の図に戻ります。作り方は3段です。まず、社外の発言に絞り、話題ごとに、その話題が出た案件の数を2か月ずつ並べます。次に、社外の「質問」の札が付いた行を、言い回しの近いものごとに束ね、2つ以上の案件で出た質問だけを残します。案件の数は2か月ずつの窓で数えますが、質問は件数が少ないので5〜9月を通して数えます。最後に、その質問に、今あるよくある質問や資料で答えがあるかを、人が付けます。並べる順は、答えをまだ用意していない質問の数、それが同じなら直近2か月の案件の数です。
話題と、作る資料の組み合わせは先に決めておきます。費用なら提案書の費用の頁、範囲なら含む作業と含まない作業の頁、情報の安全なら確認書の回答の控え、という具合です。上位の話題から、よくある質問に答えを足し、組み合わせた資料を作ります。図では情報の安全・範囲・費用の3つが先に来ます。体制は8〜9月の会議の数が15本といちばん多いものの、出た質問にはもう答えがあるので後に回ります。答えは、会議で社内の誰かが答えた行を元に下書きし、公開する前に担当者が確かめます。
数えるときは、発言の数や会議の数ではなく、案件の数を使います。発言の数は長い会議に、会議の数は定例の多いお客さんに引きずられるからです。
8月の情報の安全は、発言の数では67行ですが、案件の数にすると5件です。質問を何件の案件で聞かれたかで並べるのも、同じ理由からです。
探す・教えるは、同じ表の絞り方を変える
探すときは、期間・案件・札で絞って、元の発言に戻ります。冒頭の金曜の夕方なら、今週の会議に絞り、約束の札で「誰が」が社内のものを出せば、こちらが引き受けた約束が並びます。役割と元の行を見て、自分の分を確かめます。お客さんが前に言ったことを探すなら、案件と話題で絞り、社外の行だけを出します。どちらも、使う前に行番号から元の会議の前後を読み、言い方を確かめます。
教えるときは、社外の質問の行のすぐあとに社内の答えが続く場面を、前後の数行ごと抜き出します。費用や情報の安全のように、答え方で次の進み方が変わる話題に絞り、どの場面を新人に見せるかは人が選びます。抜き出した場面は、会議に出ていない人に見せるものなので、見せてよい会議からだけ選び、お客さんが特定できる部分は伏せてから渡します。
約束は台帳にして、期日内に済んだかを見る
約束の札が付いた行を集めると、約束の台帳になります。済んだかどうかは文字起こしからは分からないので、担当の人が台帳に付けます。台帳を締める日を決め、約束を「期日内に済」「期日を過ぎて済」「期日を過ぎてまだ」「期日前」「期日なし」の5つに分けて数えます。
①の期日なしは、「近いうちにお送りします」「確認でき次第お知らせします」のように、期日を言わなかった約束です。期日がないので、済んだのが早かったのか遅かったのかを数えられません。図では、135件のうち35件がこの帯です。会議の最後に、約束ごとに期日を言い直す決まりにすると、この帯を小さくすることを狙えます。②は、期日を過ぎてまだ済んでいない約束を、期日の古い順に並べたものです。次の定例の前に、ここを上から見ます。
効き目は、最初に書いた問いごとに、決めた幅で確かめる
表を作った効き目は、最初に書いた問いごとに確かめます。探す問いなら、「あの件で誰が何と言ったか」に答えるまでにかかった時間を、表を作る前に一度測っておき、作ったあとと比べます。前に測っていないと、速くなったかどうかは言えません。
約束なら、月ごとの「期日を過ぎた割合」(期日のある約束のうち、期日を過ぎて済んだものと、まだのもの)を並べます。動いたとみなす幅は先に決めておきます。図の会社のように月に24〜31件ほどの約束だと、数件の違いで割合が大きく動きます。図でも、5〜8月の期日を過ぎた割合は35.3%から52.6%のあいだで動いています。この幅の中の上下は、動いたとはみなしません。その月の約束は、期日がひととおり過ぎる月末の2週間あまりあとに数えます。図の9月は、締めた日にまだ期日前の約束が残っているので、幅には入れていません。期日なしの割合も、図では月ごとに19.4%から33.3%のあいだで動いているので、同じように幅を見て判断します。
資料なら、答えを足した質問が、そのあと何件の案件で出たかを数えます。図の会社では、話題ごとの案件の数が2か月で4〜8件ほどなので、1件の違いが大きく見えます。目安として、足してから2か月ほど会議がたまってから比べます。
この表が受け持たないこと
この表が受け持つのは、ばらばらの会議の文字起こしを、同じ列と同じ札で数えられる形にそろえるところまでです。聞き取りの誤りや話した人の取り違えは、表にしても直りません。数えた結果を使う前に、行番号から元の発言を開いて確かめます。この記事の画面の札は、デモを作るときに私たちが付けた値で、AI に付けさせたものではありません。行の切り方と、AI に札を付けさせる渡し方は、組み方の一例として書いたもので、AI がどれくらい正しく札を付けるかは、この記事では何も言えません。棚卸しの並べ方や、話題と資料の組み合わせもこの記事の提案で、私たちが実務で確かめたものではありません。図の「答えがあるか」の欄は、デモを作るときに私たちが決めた値です。この表で資料づくりや約束の片付き方がどれだけ変わるかを示す数字も、ここにはありません。
表計算でも、1発言1行の表から作れる
図と画面は、3つの表から作りました。発言の表(行番号、会議、日時、会議の種類、案件、話した側、役割、発言、話題、質問、約束の誰が、約束の期日)、会議の表(会議、日、会議の種類、会議の名前、案件、発言の数)、約束の台帳(行番号、会議、案件、誰が、約束の発言、期日、状態)です。話題ごとの棚卸しは、発言の表を社外の発言に絞り、話題と2か月ごとの期間で、同じ案件を1回だけ数えたものに、質問ごとの案件の数と「答えがあるか」の列を足しています。表計算のピボットでも同じものが作れます。
明日は、今週の会議の約束だけを1つの表にする
明日からできるのは、今週の会議と電話の文字起こしから、「お送りします」「確認します」のような約束の発言だけを拾い、会議の日・案件・誰が(社内か社外か)・何を・期日の5列の表に並べることです。期日の欄が空いた約束がいくつあるかが、最初に分かります。そこから、1発言1行の表と話題の札に広げていきます。
会議や電話の文字起こしを1発言1行の表にして、資料づくりや約束の確認に使う仕組みは、当社のデータ分析・BI の支援で一緒に作れます。
AI活用支援
Claude・ChatGPT・Gemini・Copilotのどれをどの業務に使うかの見極めから、社内のAIチャット環境、権限と情報の扱いの設計、MCPやAPIでの既存システム連携、研修・伴走までを支援します。
