株式会社ワシツ|業務フローからSNS・動画クリエイティブまで、AIを全方位で実装
越境マッチングや多言語学習AIを手がける株式会社ワシツ。業務フローへのAI組み込みから、SNS自動投稿・AI広告画像、多言語の動画生成、AIによる脆弱性診断の構想まで、全方位でAI活用を進める現在進行形の取り組み。

株式会社ワシツのご担当者に、いま社内で進めているAI活用の取り組みについてうかがいました。越境ビジネスのマッチングや多言語の学習支援、海外展開のサポートといった事業を手がける同社が、自社の業務そのものにAIをどう組み込もうとしているのか。落ち着いた口ぶりの奥に、試行錯誤の手触りがにじむお話でした。聞き手はAurantが務めています。
いちばんの手応えはどこに
― いまの取り組みで、いちばん手応えを感じているのはどこですか。
正直に言うと、業務フローにAIを組み込むワークフローの自動化ですね。以前は、ひとつの仕事が前の工程の人の手を離れるのを、後ろの担当がじっと待っていました。「あれ、もうこっちに来てるんだっけ」と確認のために席を立つ、その小さな空白がいくつも積み重なっていたんです。いまはその受け渡しをAIでつないで、滞りなく次へ流れるようにしている最中です。ただ、これは一気に魔法のようにできるものではありません。まず工程を標準化して土台をならし、ここなら任せられるという所を一つずつ見極めながら、工程ごとに全社へ広げている段階です。展開しきるにはまだ道半ばですが、土台づくりとして手応えはいちばん大きいですね。
使いどころの見極めという地味な仕事
― 「見極めて広げる」とおっしゃいましたが、それは具体的にどういう作業ですか。
これがいちばん地味で、いちばん大事なところだと思っています。AIは入れれば動くというものではなくて、自社のどの工程でどう使えば本当に楽になるのかを腰を据えて考えないと、かえって手間が増えてしまう。以前は、現場の担当が「これ毎回やってるけど面倒だな」と感じている作業が、その人の頭の中にあるだけで、誰とも共有されていませんでした。それを一つずつ表に出して、ここは判断が要るから人が残す、ここは決まりきっているからAIに任せられる、と仕分けしていきます。ためらいもあって、最初のうちは「本当に任せて大丈夫か」と何度も手元で確かめながら進めました。この見極めの知見こそが、横へ広げていくときのいちばんの財産になると考えています。
広告画像づくりを任せる
― 制作の現場では、どんな使い方を。
素材になる画像に文字をのせて、それらしい広告の一枚に仕立てる作業を、AIに任せる仕組みを組んでいます。以前は、担当者が素材を選んで、どこに言葉を置けば目に留まるかをにらみながら、少しずつ位置を直していました。一枚に向き合う時間が長くて、しかも何枚も要る。発信のたびに、その地道な手作業がボトルネックになっていたんです。いまはAIが文字をのせた候補をいくつもつくってくれるので、人は出てきたものを見て「これは良い」「これは違う」と選ぶ側に回れるようになってきました。手で動かしていた人が、目利きの側へ移った感じですね。
発信までをひと続きにする
― つくった画像を、発信まで自動で流すと。
そうです。画像ができてから、人が投稿の画面を開いて、文面を整えて、頃合いを見て押す。この一連の手順が、これまでは毎回そっくり残っていました。担当の口ぐせが「結局、最後は手作業なんだよね」だったくらいで、つくることはできても、出すところで人の手が止まってしまっていたんです。そこを、生成から発信までをひと続きのループとして組み上げて、回るかどうかを試しています。まだ検証の段階で、出る前に人が一度目を通す形は残していますが、流れが途切れずにつながると、発信そのものへの心理的なハードルがぐっと下がるのを感じます。
広告運用そのものをAIへ
― 制作だけでなく、運用のほうはどうでしょう。
広告の運用そのものにも踏み込もうとしています。これまでは、予算の振り分けや、どの見せ方が効くのかを試す作業を、担当が画面とにらめっこしながら手で動かしていました。ひとつ試して、反応を見て、また調整して、と一巡するたびに時間がかかる。その回転の遅さが、攻めきれない理由になっていたんです。予算の調整や、いくつかの案を並べて試す部分をAIに任せられれば、判断と制作の回転をもっと速くできるはず、というのがねらいです。人は最終的な方向づけに集中して、細かな出し入れはAIに見てもらう。そんな役割分担を思い描いています。ここはまだこれからの領域ですが、期待しているところです。
動画と多言語で海外へ
― 海外展開の事業とも関わる、動画の取り組みがあるとうかがいました。
動画はいくつか試していて、まず実在しないモデルを起用した商品紹介の動画をAIで生成しています。それから、すでにある動画を、話し手の声の質を保ったまま別の言語へ吹き替える取り組みですね。以前は、海外向けに一本届けようとすると、撮り直しや吹き替えの段取りで腰が重くなって、つい後回しになっていました。声まで作り直すと、どうしても元の人らしさが消えてしまうのも悩みどころで。いまは声の感じを残したまま言葉だけを乗せ替えられるので、海外への一歩がずいぶん軽くなります。あわせて、文字びっしりのマニュアルを、人型のアバターが語りかける動画に変える試みも進めていて、読むのが億劫だった手順書が、見て分かるものに変わりつつあります。
「発見はAI、修正は人」という分業
― セキュリティ領域でも構想があると。
これは「発見はAI、修正は人」という分け方を軸にしたセキュリティ診断を構想しています。弱いところを洗い出す作業は、根気は要るけれど決まった見方で広く当たる仕事なので、AIに向いている。一方で、見つかった問題をどう直すかは、文脈を読んで判断しなければならず、ここは人の、それも詳しい人たちの手に委ねたい。以前は、探すところから直すところまでを一人が抱えて、目を皿のようにして見続ける消耗が大きかったんです。発見はAIに広く拾わせて、修正は知見のある人の集まりが受け持つ。そんな分業にすれば、それぞれの得意が活きます。まだ形にしている途中の構想ですが、AIの使いどころとしてしっくりくる切り分けだと考えています。
営業とサポートを下書きから
― 営業やお客さま対応のほうは、いかがですか。
問い合わせへの返答や、お客さまサポートのやり取り、それからこちらから送るメールの配信を、AI化で進めています。以前は、似たような問い合わせが来るたびに、担当が過去のやり取りを引っ張り出して、文面を一から整えて返していました。一件ずつは短くても、積み重なると一日がそれで終わってしまう。送るメールの一通一通も、宛先に合わせて手で直していたので、なかなか数をこなせなかったんです。そこをAIに下書きさせて、人は確認と仕上げに回るようにしています。手が空いた分を、本当に人が話すべき相手とのやり取りに振り向けられるのが、いちばんありがたいところですね。
つぶやくだけでネタが貯まる
― 発信のもとになる、コンテンツづくりはどうですか。
まず、ネタ集めの面倒くささを解こうとしました。良い気づきほど、移動中や打ち合わせの合間にふっと浮かぶのに、メモするのが面倒で、机に戻る頃には消えている。担当が「いいこと思いついたんだけど忘れた」と言うのが口ぐせで、せっかくの種が拾われずに流れていました。いまは、ひとことつぶやくだけで、それが記事の候補としてそのまま登録される仕組みにしています。思いついた瞬間に手間なく残せるので、種が貯まるようになってきました。そこから先、検索で見つけてもらうことを意識した記事に仕立てるところにも生成AIを使っていて、貯まった種を読み手に届く形へ育てています。ただ、これも入れて終わりではなく、自社のどの話題でどう書けば響くのかという見極めがあってこそ活きるものだと、日々感じています。
主な取り組み
- 業務フローにAIを組み込むワークフロー自動化(標準化・効率化を土台に、工程ごとに見極めて全社へ展開する段階)
- 素材画像に文字をのせた広告画像の生成と、発信までを自動でつなぐループの構築・検証
- 広告運用そのもの(予算の調整やテスト)のAI化による、判断と制作の高速化
- 実在しないモデルを起用した商品紹介動画の生成、声質を保った多言語吹き替え、マニュアルのアバター動画化
- 「発見はAI、修正は人」という分業を軸にしたセキュリティ診断の構想
- 問い合わせ・サポート対応とメール配信のAI化
- ひとことつぶやくだけで記事候補が登録される、ネタ集めの自動化
- 検索からの流入を意識した記事づくりへの生成AI活用
※ 記載は取り組みの一例です。発言内容は確定事実をもとに構成したものです。