商談分析の進め方|お客さんの言葉を集めてマーケティングの打ち手に生かす
商談はお客さんにいちばん近い場所です。文字起こしを捨てずに同じ項目で集めて並べ、提案書やよくある質問に回す進め方を、業界の言葉の直しや提案の2段階化など自社で試した例と、デモの画面で書きます。
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会議ツールの文字起こしや AI の議事録を入れて、商談が終わるたびに要約が届くようになった。読んで、次の商談の準備に移る。気づけば記録は何か月分も溜まっているのに、読み返したことは一度もない。これは結局、何に使うものなのか――。
商談は、会社の中でお客さんにいちばん近い場所です。何をきっかけに検討を始めたのか、どこで引っかかったのか、最後に何で決めたのか、何を聞いてきたのか。そこで出た言葉を、読み終えたら捨てずに同じ項目で集めて並べると、提案書やよくある質問、ペルソナを、お客さんの言葉で作り直す材料に使えます。
私たち Aurant Technologies は、営業・マーケティングの仕組みづくりを支援している会社です。並べる前から、商談の記録を1件ずつ読み返して直したものがあります。業界の言葉の取り違えに気づいて直したことも、お客さんの意向を受けて提案を段階に分けたこともありました。そのうえで会議の記録(会議ツールの自動メモ)を同じ項目で並べると、お客さんの人物像と検討の流れが見えてきました。この記事では、その進め方を、録るところから打ち手に回すところまで順に書きます。
商談で出た言葉を集めて並べ、打ち手に回す
- 検討のきっかけ
- 引っかかり
- 決め手
- よく出る質問
- 約束(誰が・何を・いつまでに)
- 録る(文字起こし・録音)
- 案件ごとに振り分ける
- 同じ項目で抜き出す
- 並べて、元の発言で確かめる
右の実線は、私たちが実際に直したものと下書きを作ったもの、点線はまだ案かこれからのものです。
まず録る:オンラインは文字起こし、対面は録音
オンラインの商談なら、会議ツールの文字起こし機能を入れておけば、話した言葉はそのまま残ります。ひとつ気をつけたいのは、会議ツールが自動で作る「メモ」と、発言を順に起こした「文字起こし」が別のものだということです。私たちも最初はメモを全文だと思って読んでいましたが、メモは AI がまとめたもので、発言をそのまま起こしたものではありませんでした。お客さんの言葉を集めるなら、元にするのは文字起こしのほうです。文字起こしは会議を主催した人の保存場所に入り、ほかの参加者からは開けないこともあったので、保存先と、誰が開けるかを先に決めておきます。文字起こしや議事録のツールの比べ方はツールを比べた記事にあります。
対面の商談は録音です。私たちはここを機材選びから始めました。指輪型の録音機は続けて録れる時間が短く、首にかける型を検討しています。胸ポケットに入れたスマホで録っている人もいます。録音の機材が相手から見えると印象が気になる、電池が持たない、といった心配も社内で出ました。どの方法でも、録ることは相手に伝えて了解をもらってください。
集めて、案件ごとに振り分ける
記録の溜まる場所がばらばらだと、あとで並べられません。私たちの社内では、会議の記録を定期的に集めて、会議の名前からどのお客さんの案件かを判定し、案件ごとに振り分ける仕組みを作りました。名前から決まらないものは「要確認」にして、参加した人が選びます。見られるのは会議の参加者と管理者だけにして、社内だけの会議は対象から外しています。
集めてみて分かったのは、会議の名前がお客さんでも、社内だけで検討した会議が混じることでした。お客さんの発言が無い記録は、並べる前に外しておきます。
同じ項目で抜き出す
1本ずつ読むだけなら、要約で足ります。並べるには、どの商談からも同じ項目で抜き出してあることが要ります。項目は、検討のきっかけ、引っかかり、決め手、出た質問、約束(誰が・何を・いつまでに)の5つくらいで十分です。AI に抜き出させるときは、それぞれに根拠になった発言と時刻を付けさせ、推測で補ったものには印を付けさせておくと、あとで元の言葉に戻れます。
デモの画面では、左に文字起こし、右に AI が抜き出した5つの項目が並び、項目を押すと根拠の発言が左で色付きになります。決め手の3件目には、AI 自身が「推測」と付けています。
並べると、商談1本では見えないことが見えてくる
商談をまとめて読ませると、検討のきっかけや決め手、よく出た質問が、どの商談で出たかと元の発言つきで並びます。1本ずつ読んでいるとその場かぎりに見える言葉も、横に並ぶと何度も出ていることが分かります。
ただし、並べたものを使う前に、言葉の主と本数は元の発言で確かめます。たとえば上の決め手の2行目は3本の商談で出たと数えられていますが、商談3の例は、費用は問題なさそうだと言った発言でした。何本で出たと数えるかは、例を1つずつ開いて人が決めます。私たちの記録でも、AI の要約とメモの全文で日付が違っていたり、会議によって会社名の書き方が違っていたりしました。文字起こしの一部が欠けていたり、話者がうまく分かれずにお客さんの発言が別の人の名前で残っていたりしたこともあったので、日付や会社名、誰が言ったかは、元の発言(文字起こしか録音)に戻って確かめるようにしていますが、私たちが文字起こしを開けたのはまだ一部で、読み直しはこれからです。
自社の会議の記録を並べたときに見えたのは、3つでした。1つは、新しい相談の入口に紹介が多かったこと。2つめは、決め手が機能の多さより、自社の業務とイレギュラーに合うか、期限に間に合うかだったことです。決算や外注先との契約の終わりのような動かせない日付から逆算して、まず手作業で乗り切り、あとでシステム化するという2段構えが、別々の案件で何度も出てきました。3つめは、引っかかりが2つに集まったことです。人数分の課金や毎月の費用と、中身が見えないことでした。AI に学習させると外に漏れないか、AI がブラックボックスにならないか、導入の支援がどこまでなのか、です。
同じ記録を、検討段階のお客さんの人物像と、人物像ごとの検討の流れの2枚にまとめました。人物像は3つの型にまとまりました。どの型も複数の商談の記録を合わせたもので、特定の1社を表すものではありません。どれも同じ欄(どんな立場の人か・検討のきっかけ・引っかかり・決め手・よく聞く質問)で描き、紹介元は人物像ではなく、入口として別に置きました。
人物像ごとに、入口から契約後までの段に記録の言葉を並べてつなぐと、どの段で何に詰まり、何で決めたかが横に読めます。記録が無い段は、点線のまま残しています。管理部の責任者の型で、決め手の段にある段取りは、当社から提案したもので、お客さんが決めるのはこれからです。
集めた言葉を、打ち手に回す
流れの図のどの段の言葉を、どの打ち手に回すかを決めておくと、使い道がぶれません。詰まったことの言葉は、よくある質問と、提案書の引っかかりへの答えに。決め手の言葉は、提案書の最初の頁に。検討のきっかけは、ペルソナと記事の問いに。入口の紹介元には、紹介先へ持っていける資料を用意する。最初の図の右側には、このうち私たちが実際に直したものと、まだ案のものを分けて並べています。
ただ、私たちがいちばん先に手を付けた提案書の直しは、並べる前に、1件ずつ記録を読み返して見つけたものでした。
ある会社との商談の記録を読み返すと、お客さんの業界で使う言葉を、こちらが提案資料で取り違えていたことが分かりました。商談の場では流れてしまう一言でも、記録に残っていれば拾えます。提案書と見積の言葉は直しました。
同じ会社では、中身が見えないまま進めることへの懸念が記録に残っていて、そのあと、決める立場の方が、まず今の状態を見えるようにしたいと話していたことも伝わってきました。そこで、提案と見積を段階に分けて作り直しました。その後、段階を分けた提案に前向きな返事をもらっています。この記事を書いた時点では、受注はまだ決まっていません。
失注した商談にも、使える言葉がありました。見送った理由をお客さんに尋ねると、機能ではなく、導入後の費用まで含めた総額で比べられていたことが分かりました。この返事は、次の提案で費用をどう見せるかを考える材料にしています。当社では、失注にするときの理由の入力も必須にしています。
並べて見えたことからは、提案書の直しどころがいくつも出てきました。期限に間に合うかが繰り返し聞かれていたので、表紙の次に期限からの逆算を置く。費用の頁には、人数分の課金や毎月の費用を抑える案を最初から入れる。何が含まれて何が含まれないかを1枚で出す。AI の提案は、データの置き場所と検証の結果を先に出す。補助金は前提にせず、選択肢の1つとして後ろに置く。こちらは、まだ直しの案の段階です。
ペルソナとよくある質問は、下書きを作りました。ペルソナは、年齢や肩書きが記録に書かれていないことが多いので、状況と、聞いてくることで描いています。人物像は、業務アプリを広げたい現場の推進役、期限を抱える管理部の責任者、経験者の判断を若手に残したい会社の3つの型で、どれも複数の商談の記録をまとめたものです。よくある質問は、商談で聞かれた質問を、お客さんの言い方に近い形で並べ、答えは打合せで答えた内容を元に、公開する前に担当者と公式の情報で確かめます。「AI に学習させると外に漏れないか」や、支援の範囲がどこまでかのように、引っかかりがそのまま質問になっているものが並びました。
検索記事の問いを商談の質問から立てるのは、これからです。期限から逆算して、まず手作業で乗り切ってからシステム化する進め方のように、何度も出た話は記事の問いの候補にしています。こうした打ち手が効いたかどうかは、同じ言葉が次の商談や問い合わせに出てくるか、失注の理由が変わるかで見られますが、何を基準にするかはまだ決めておらず、測ってもいません。
やってみて、まだ足りないこと
私たちの分析は、会議ツールの自動メモ(要約とメモの全文)を元にしています。文字起こしでの読み直しは、これからです。自動で集め始めてから日が浅く、まだ短い期間の分で、打合せの種類分けも AI に任せていて人の目では確かめていません。対面の商談は録音の方法を決めている途中で、並べた記録と受注・失注との突き合わせもまだしていないので、この進め方で成約が増えたかどうかは言えません。記事の中のデモの画面は、説明のために作った整った文字起こしを AI に一度読ませた結果で、聞き取りの誤りや話者の取り違えがある自動の文字起こしでは試していません。デモでも、AI が「推測」と印を付けた内容と同じことが、別の欄では印なしで事実のように書かれていました。
まずは直近の商談を数本、同じ項目で並べてみる
明日からできるのは、直近の商談の文字起こしを数本集めて、検討のきっかけ・引っかかり・決め手・質問・約束の5つで書き出し、横に並べてみることです。2本目、3本目で同じ言葉が出てきたら、それがよくある質問や記事の問いの最初の候補になります。
商談の言葉を集めて、提案書やよくある質問、ペルソナに回す仕組みづくりは、当社の営業DX・SFA運用設計の支援で一緒に進められます。
CRM・SFA導入・活用支援
Salesforce・HubSpot などのCRM/SFAを規模や運用体制に合わせて選定し、設計・構築、部門をまたぐデータ連携、社内で改修・運用できる内製化までを支援します。
