Amazon WorkMail が2027年3月31日で終わる|社内メールを WorkMail で使っている会社が、Microsoft 365・Google Workspace へ移す段取り

Amazon WorkMail は2027年3月31日でサポートが終わります。使っているかの確かめ方、中身の数え方、IMAP と export の違い、MX の切り替え、移したあとに止まりやすい複合機・アプリ・共有アドレスまでを、AWS・Microsoft・Google の公式の情報で整理しました。

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この記事の要点

  1. Amazon WorkMail は2027年3月31日で終わる。新規の受付は2026年4月30日に止まっていて、既存の顧客は終了日まで使える。確認日の2026年10月5日から数えて177日。終了後は WorkMail のコンソールにも資源にも入れなくなると AWS は書いているので、メールを移すことと、取り出して残すことを、その日より前に終える。
  2. 社内メールが WorkMail かどうかは、DNS の MX、WorkMail のコンソール(3リージョン)、機器とアプリの設定の3か所で確かめられる。中身は、ユーザー・別名・グループ・共有の権限・会議室・送信設定に分けて数え、移行先で作り直すものの一覧にする。
  3. メールのコピーは IMAP、保管用の取り出しは export(S3 の zip)に分ける。予定表と連絡先は IMAP では移らず、export にも連絡先は入らないので、別の手立てを決める。MX を切り替えたあとは、複合機・アプリ・共有アドレスが止まりやすい。

確かめてから、閉じるまで

確かめる → 数える → 決める → 分ける → 切り替える → 閉じる

1. 使っているか確かめるMX・コンソール(3リージョン)・機器の設定の3か所で見る
2. 中身を数えるユーザー・別名・グループ・共有の権限・会議室・送信設定
3. 移行先を決めるMicrosoft 365 か Google Workspace か。AWS が挙げる3社もある
4. コピーと保管を分けるメールは IMAP でコピーし、export は保管用に取り出す
5. MX を切り替えるDNS の付け替えと、止まりやすい機器・アプリの確認
6. 取り出せたことを確かめて閉じる保管したデータを開いてから、組織を消す

手順は当社の整理。日付と仕様の出典は、各節の図の下に書いた(2026年10月5日確認)

Amazon WorkMail は、2027年3月31日でサポートが終わります。AWS の管理者ガイドは、その日のあと、WorkMail のコンソールにも WorkMail の資源にも入れなくなる、と書いています。新規の顧客の受付は2026年4月30日に止まっていて、それ以前に登録した顧客は、終了日まで使い続けられます(Amazon WorkMail end of support、2026年10月5日に確認)。

独自ドメインの社内メールを WorkMail で運用している会社の残りは、確認日から177日です。やることは2つで、メールの置き場を別のサービスに移すことと、メールを取り出して手元に残すことです。AWS は、移行先の例として Kopano Cloud・Zoho Mail・Zoom Mail を挙げ、ほかの市販サービスへ移ってもよい、とも書いています。この記事は、Microsoft 365・Google Workspace へ移す場合の段取りを、WorkMail 側の事情に沿って書きます。

レンタルサーバーのメールから移す場合の段取りは、別の記事に書きました。MX の切り替えと、SPF・DKIM・DMARC の付け替えは同じです。WorkMail で違うのは、メールを取り出す手段が IMAP と export の API に限られること、AWS のコンソールに入れる期限があること、複合機やアプリの送信先が WorkMail の SMTP であることです。そこを中心に書きます。

WorkMail はいつ終わるのか:終了日と、そのあと

終了までの日付

日付はどれも AWS の公式の文書にある

2026年3月31日AWS が WorkMail の終了を発表
2026年4月30日新規の顧客の受付が止まる。既存の顧客は使い続けられる
2026年10月5日この記事の確認日。終了まで177日
2027年3月31日終了。コンソールにも資源にも入れなくなる

出典:AWS「Amazon WorkMail end of support」「AWS サービスの提供状況に関する最新情報」(2026年3月31日)、管理者ガイドの更新履歴(2026年10月5日確認)

AWS の日本語のお知らせ(2026年3月31日付)は、WorkMail を、廃止されるサービスの一覧に載せています。管理者ガイドの更新履歴にも、同じ日に終了の通知が加わっています。発表から終了までは、ちょうど1年(365日)です。確認日は、発表から188日目にあたり、終了までは177日が残っています。

発表から終了までの1年(365日)のうち

確認日の時点で、発表から終了までの半分は過ぎている

発表(2026年3月31日)から、確認日まで188日
確認日から、終了(2027年3月31日)まで177日

日数は、AWS の公式の日付から当社が数えた(2026年10月5日確認)

終了後は、コンソールにも資源にも入れなくなります。メールを取り出す方法は、あとで書く export も IMAP も、WorkMail が動いていて初めて使えます。移行の作業は、終了日の前に終える必要があります(当社の読み取り)。日本時間で終了日の何時までかは、確かめた範囲の AWS の文書には書かれていません。当日ではなく、前の月に終える前提で組みます。

WorkMail の使い方の確認と、移行の計画を一緒に立てたい場合は、当社のMicrosoft 365・Google Workspace活用支援で受けています。

自社が WorkMail を使っているかを確かめる

数年前に作った人が辞め、管理画面を誰も見ていない場合は、WorkMail が本当に使われているかから確かめます。見る場所は3つです。

WorkMail を使っているかを確かめる3か所

管理画面を誰も見ていなくても、DNS と機器の設定から分かる

場所 1

DNS の MX レコード

  • ドメインの MX が、inbound-smtp.(リージョン名).amazonaws.com になっているかを見る
  • nslookup か dig で引ける(AWS の手順)

見る人:ドメインの DNS を管理している人

場所 2

AWS の WorkMail コンソール

  • ナビゲーションの Organizations に、組織が並ぶ
  • リージョンを切り替えて、WorkMail の使えるリージョンを順に見る

見る人:AWS アカウントの管理者

場所 3

使う側の設定

  • 社員の Web ログインが https://(別名).awsapps.com/mail
  • 複合機やアプリの設定に、imap.mail や smtp.mail で始まる awsapps.com が入っている

見る人:各部署の機器・アプリの担当

出典:AWS 管理者ガイド「ドメインの検証」「Amazon WorkMail とは」、AWS ユーザーガイド「IMAP の設定」(2026年10月5日確認)

いちばん手軽なのは DNS です。AWS のドメイン確認の手順は、MX の値が、優先度10の inbound-smtp.us-east-1.amazonaws.com、inbound-smtp.us-west-2.amazonaws.com、inbound-smtp.eu-west-1.amazonaws.com のどれかになっているかを、nslookup か dig +short (ドメイン) mx で確かめる、と書いています。

コンソールで気をつけるのは、リージョンです。WorkMail のエンドポイントの一覧に載っているリージョンは、米国東部(バージニア北部)、米国西部(オレゴン)、欧州(アイルランド)の3つです(AWS の一覧)。コンソールは画面上部のバーでリージョンを切り替えて見るので、東京リージョンだけを見て「WorkMail は無い」とは言えません。

手がかりはほかにもあります。独自ドメインを WorkMail に足すと、Amazon SES にそのドメインの送信許可のポリシーが自動で加わる、と管理者ガイドにあります(ドメインの追加)。SES のコンソールに、見覚えのないドメインが並んでいれば、確かめる手がかりの1つになります。

WorkMail の中身を数える:移行先で作り直すものの一覧

使っていると分かったら、組織の中身を、移行先の何に当たるかで並べます。メールボックスの数だけでなく、別名・グループ・共有の権限・会議室も、移行先で作り直す対象です。

WorkMail の中身と、移行先で受けるもの(公式に記載があるものは出典を付けた。ないものは当社の整理)
WorkMail にあるもの数える・確かめること移行先で受けるもの
ユーザー(メールボックス)人数と、1人ごとの容量(WorkMail は1人50GBまで)。別の場所にメールボックスを置いたまま、アドレス帳にだけ載る REMOTE_USER が混ざっていないかどちらの移行先でも、先にユーザーを作ってライセンスを割り当てる。IMAP の移行はそのあとに始まる(Microsoft・Google)
別名(エイリアス)別のアドレスを、ユーザーごとに書き出す。WorkMail は1人100個まで移行先でもユーザーの別アドレスとして作る。Google は追加料金なしで1人30個まで(Google のヘルプ)。30個を超えるユーザーがいれば、先に分かる
グループinfo@ や sales@ のような代表アドレスが、グループか、ユーザーか。グループは配布リストにも、セキュリティグループにもなり、メールボックスは持たないMicrosoft 365 は配布リスト(Learn)か共有メールボックス、Google Workspace はグループ(共同トレイ)
メールボックスの権限誰がどの共有アドレスを開けるか(Full Access)、誰の名前で送れるか(Send As・Send On Behalf)Microsoft 365 は共有メールボックス。権限を持つ人が、共有アドレスの名前で送れる(Learn)。Google Workspace はグループの共同トレイ
リソース(会議室・備品)会議室と備品の数と名前Microsoft 365 はリソースメールボックス(Learn)。Google のカレンダーのリソースは IMAP の取り込みでは移らないので、作り直す
メールフローのルール、SMTP ゲートウェイ、Lambda組織の設定にルールがあるか。Lambda で本文を見たり書き換えたりしていないか移行先で同じ動きができるかを、別に確かめる(当社の整理)
保持ポリシー日数が過ぎたメールを自動で削除する設定があるか。「完全に削除」にしていたメールは、戻せないコピーの前に、設定と日数を控える。すでに消えたメールは、どちらの経路でも取り出せない
モバイル端末Exchange ActiveSync でつないでいる端末端末ごとにアカウントを作り直す(当社の整理)
プログラムからのアクセスWorkMail の impersonation role を使って、EWS でメールを読み書きしているアプリがあるか移行先は別の方式になる。Exchange Online の EWS も終了が予定されている(当社の別の記事)

この表の「数える・確かめること」を埋めたものが、移行の見積もりの元になります。WorkMail の別名は1人100個まで、Google Workspace は追加料金なしで1人30個までと、上限が違うので、別名を多く持つユーザーがいれば、先に分かるようにしておきます。

移行先を決める:AWS が挙げる3社と、Microsoft 365・Google Workspace

AWS の管理者ガイドは、移行先の例として Kopano Cloud・Zoho Mail・Zoom Mail を挙げ、これ以外の市販サービスも使える、と書いています。Microsoft 365 と Google Workspace は、AWS の例には入っていませんが、IMAP のメールを受け入れる公式の移行手順が、それぞれにあります。公式ページにある条件を並べると、次の図のとおりです。Google は、IMAP の取り込みを、1〜100人ならデータ インポート ツール、101人以上なら GWMME で行う、と案内しています。

移行先の3つの道

それぞれの公式ページにある条件だけを並べた。優劣は付けていない

AWS が例に挙げる3社

Kopano Cloud・Zoho Mail・Zoom Mail

  • AWS は、WorkMail 相当の機能と、移行しやすいツールがある、と案内している
  • この3社以外の市販サービスへ移ってもよい、とも書いている

この記事で確かめていないこと:各社の機能・料金・移行ツールの中身

Microsoft 365

Exchange Online

  • IMAP 移行で移るのはメールだけ。連絡先・予定表・タスクは移らない
  • 1人あたり最大50万項目、1通35MBまで
  • 共有メールボックスはライセンスなしで50GBまで
  • 予定表と連絡先は、使う人が Outlook から .pst で入れる

MX:旧 MX を消すか、優先度を下げる

Google Workspace

Gmail

  • IMAP の取り込みで移るのは、メールとフォルダだけ。予定表・連絡先・リソースは移らない
  • データ インポート ツールは1〜100人、101人以上は GWMME
  • 予定表と連絡先は、使う人が .ics・.vcf を読み込む。PST は GWMMO(1〜20人)
  • 代表アドレスは、グループの共同トレイで会話を担当者に割り当てられる

MX:smtp.google.com(優先度1)。旧 MX は消す

出典:AWS「Amazon WorkMail end of support」(Kopano・Zoho・Zoom は、AWS が案内している各社のページ)、Microsoft Learn「IMAP 移行について」、Google「IMAP サーバーから移行する」「移行サービスの一覧」(2026年10月5日確認)

メールだけを並べても、決まりにくいものです。同じ会社が日ごろ使う文書・表計算・会議・ファイル共有が、どちらに寄っているかを先に見ます(当社の整理)。メールの移行にかかる手間は、どちらを選んでも、ユーザー・別名・グループ・共有アドレスを作る作業が中心になります(当社の整理)。

段取りを逆算する:誰がどの画面で何をするか

WorkMail の移行は、AWS の管理者、DNS の管理者、移行先の管理者、機器とアプリの担当の4人が関わります。同じ人が兼ねていることもありますが、担当ごとに行を分けて書き出すと、抜けが見えます。

誰が、どの画面で、何をするか

担当を分けておくと、切り替えの日に画面の取り合いにならない

AWS の管理者WorkMail コンソール・S3・IAM・KMS
ユーザーのパスワードIMAP の移行に使う。分からなければ、リセットする
export書き出しのジョブを動かし、S3 の zip を取る
組織の削除取り出せたことを確かめてから、最後に行う
DNS の管理者Route 53 など、ドメインの DNS の画面
TTL切り替えの前に、MX の TTL を3,600秒以下にする
MX移行先の値に置き換える。旧 MX を消す
SPF・DKIM・DMARC など移行先に合わせて付け替える
移行先の管理者Microsoft 365 の管理画面・Google 管理コンソール
ユーザー・別名・グループ先に作る
共有アドレス・会議室共有メールボックス、グループ、リソースを作る
IMAP の取り込みバッチを作って、メールをコピーする
機器・アプリの担当複合機・業務アプリ・各部署の PC とスマホ
送信の設定WorkMail の SMTP を、移行先の送り方に直す
スマホ・Outlookアカウントを作り直す
予定表・連絡先使っている人が書き出して、入れ直す

担当の分け方は当社の整理。画面の名前は、各社の公式ページにあるものだけを使った(2026年10月5日確認)

日程は、終了日から逆算します。次の月の割り方は、当社の整理で、10月から11月に確かめて数え、12月に試し、1月から2月に切り替え、3月に閉じます。2026年12月末には、Exchange Online の SMTP AUTH の基本認証が、既存の組織でも既定で無効になる予定です(当社の別の記事)。複合機の送信設定を直すなら、Microsoft 365 に移す場合は、その前に決めておきます。

終了日から逆算した段取り

月の割り方は当社の整理。終了日の当日ではなく、前の月に終える前提で組む

2026年10〜11月

確かめて、数えて、決める

  • MX・コンソール・機器で、使っているかを確かめる
  • 中身を数えて、一覧にする
  • 移行先を決める

終わりの状態:移行先で作り直すものの一覧ができている

2026年12月

移行先を作り、試す

  • ユーザー・別名・グループを移行先に作る
  • 数人で IMAP のコピーを試す
  • export を1本動かして、zip を開く

終わりの状態:コピーと保管の両方が、1回通っている

2027年1〜2月

全員分をコピーし、MX を切り替える

  • MX の TTL を短くしておく
  • 全員分をコピーして、MX を切り替える
  • 切り替えの後の1週間、送受信を確かめる

終わりの状態:機器とアプリの送信が、移行先で通っている

2027年3月

保管して、閉じる

  • export の zip を、保管の場所へ移す
  • 取り出せたことを確かめて、組織を消す
  • DNS の古いレコードを片づける

期限:2027年3月31日の前に終える

日付の根拠:AWS「Amazon WorkMail end of support」。月の割り方は、公式の記載ではない(2026年10月5日確認)

メールを出す:IMAP でコピーし、export は保管に使う

WorkMail からメールを出す経路は2つあります。移行ツールが IMAP で読みに行く方法と、WorkMail の API で S3 に書き出す export です。条件が違うので、並べます。

メールを出す2つの経路(公式ページにある条件)
IMAP でコピーするexport で取り出す(S3 の zip)
仕組み移行ツールが、WorkMail の IMAP(IMAPS・993)から各ユーザーのメールを読み、移行先へコピーする(AWS)StartMailboxExportJob という API で、メールボックスの中身を、S3 の zip(MIME 形式)に書き出す(AWS)
要るもの各ユーザーのパスワード。分からなければ、リセットして使う(Microsoft)プログラムが書けること、WorkMail の管理者、公開を許さない S3 バケット、KMS の対称キー、書き込み用の IAM ロール
入るものメールとフォルダメールと予定表の項目
入らないもの連絡先・予定表・タスク(Microsoft)。予定表・連絡先・リソース(Google)連絡先・タスクなど
数の制限Microsoft は1人あたり最大50万項目・1通35MBまで。Google のデータ インポート ツールは1〜100人まで組織あたり同時に10本まで。同じメールボックスは24時間に1回まで。組織・KMS・S3 は同じリージョン
時点Microsoft の移行バッチは、MX の切り替えを確かめるまで動かしておき、確かめた後に止める一時点の写しではない。書き出しの間に、メールボックスは変わる

コピーには IMAP を使い、export は保管用に取り出す、という分け方を勧めます(当社の整理)。理由は3つです。Microsoft も Google も、IMAP からの移行の公式の手順を持っています。export は、プログラムが書けることと、S3・KMS・IAM の準備が要ります。export の zip を、Microsoft 365・Google Workspace の取り込みがそのまま読めるかは、確かめられていません。保管用として取り、1つ開いて中身を見るところまでを、終了日の前に済ませます。

IMAP でコピーするには、ユーザーごとのパスワードが要ります。WorkMail の IMAP は、IMAPS・ポート993・認証は PLAIN で、サーバー名はリージョンごとに imap.mail.(リージョン名).awsapps.com です(AWS のユーザーガイド)。パスワードが分からなければ、リセットします。ディレクトリが AD Connector なら Active Directory 側、IAM Identity Center と連携していれば Identity Center 側で行う、と AWS は書いています(パスワードのリセット)。Microsoft は、新しいパスワードを知らないユーザーは、移行中と移行後に前のメールボックスを開けなくなる、と書いているので、リセットする日は、利用者に伝えておきます。

予定表と連絡先は、どちらの経路でも移りきりません。IMAP で移るのはメールだけで、export には予定表の項目は入りますが、連絡先は入りません。使っている人が、Outlook から .pst に書き出し(Microsoft のヘルプ)、Microsoft 365 では Outlook で取り込みます(Microsoft のヘルプ)。Google Workspace では、1〜20人なら GWMMO、それ以外は、使う人が予定表を .ics、連絡先を .vcf か CSV で読み込みます(Google の一覧表)。Outlook に WorkMail のアカウントを入れている人が対象です(当社の整理)。予定表と連絡先を実際に使っている人が、何人いるかを、先に数えます。

切り替えの日:MX と、WorkMail が作らせた DNS レコード

メールの届き先を移すのは、MX の切り替えです。切り替えの前に MX の TTL を短くしておくところから、手順は他のサーバーから移す場合と同じです。違うのは、DNS が Route 53 にあることが多い点です。Google の MX の手順には、Amazon(AWS)Route 53 向けの案内が載っています(Google)。Microsoft は、以前のメールプロバイダーを指す MX を消すか、優先度を Microsoft 365 より下げる、と書いています(Learn)。

DNS の変更が行き渡るまでの時間は、AWS が最長48時間、Google が最長72時間と書いています。Microsoft の IMAP 移行のページは、移行を始める前に、MX の TTL を1時間(3,600秒)以内にしておくことを案内しています(Learn)。旧 WorkMail は、行き渡るまでは止めません。

DNS の変更が行き渡るまで、公式が書く最長の時間

切り替えの後、旧 WorkMail は、行き渡るまでは止めない

AWS:DNS レコードの更新が処理されるまで最長48時間
Google:新しい MX が認識されるまで最長72時間

出典:AWS「ドメインの追加」、Google「MX レコードを設定する」(2026年10月5日確認)

WorkMail に独自ドメインを足すと、管理画面は、ドメインごとに複数の DNS レコードを並べます。切り替えのときは、MX だけを置き換えるのでは足りません。残ったレコードが、移行先の送信の認証や、Outlook の接続先を邪魔することがあるので、一覧にして、1本ずつ行き先を決めます。

WorkMail の管理画面がドメインごとに並べるレコード(AWS 管理者ガイド「ドメインの追加」の項目)
WorkMail が作らせたレコード役目切り替えのとき
所有確認の TXT(_amazonses)ドメインの持ち主の確認同じドメインで SES から送っているシステムがないかを確かめてから、消すかどうかを決める(当社の整理)
MX受信を WorkMail に向ける。値は inbound-smtp.(リージョン名).amazonaws.com移行先の値に置き換える。これが切り替えそのもの
AutoDiscover の CNAMEOutlook などの接続先の自動設定移行先の指示に合わせて置き換える
DKIM の CNAME送信メールの署名移行先で新しく発行して、付け替える
SPF の TXT送信元の宣言ドメインごとに1本にまとめ、移行先と、機器・アプリの送信元を入れる(レンタルサーバーから移す記事)
DMARC の TXT認証に失敗したときの扱い今の方針の値を控えてから付け替える(同じ記事)
MAIL FROM の TXT・MX返送先ドメインの設定WorkMail のための設定なので、移行後に使わなければ片づける(当社の整理)

SPF・DKIM・DMARC の付け替えの考え方は、レンタルサーバーから移す記事に書いたとおりです。WorkMail の場合は、WorkMail の SPF と DKIM が Amazon SES の仕組みで作られているので、SES から別のシステム(問い合わせフォームなど)が同じドメインで送っていないかを、消す前に確かめます(当社の整理)。

移したあとに止まりやすいもの:送る側と共有の側

受け取る側は、MX を切り替えれば移ります。止まりやすいのは、送る側と、共有の側です。次の問いで、担当に聞く範囲を決めます。

切り替えの前に、担当に聞いておくこと

受け取る側は MX で移るが、送る側と共有の側は自動では移らない

1

複合機・スキャナ・業務アプリが、smtp.mail.(リージョン名).awsapps.com のポート465に、メールアドレスとパスワードで送っている

移行先の送り方に直す。WorkMail の SMTP は SMTPS(465)だけで、STARTTLS は使えない(AWS の手順)

2

info@ や sales@ のような代表アドレスを、グループや Full Access で、複数の人が開いている

Microsoft 365 は共有メールボックスか配布リスト、Google Workspace はグループで作り直す

3

EC2 や Lambda のプログラムが、WorkMail の SMTP、メールフローの Lambda、EWS(impersonation)のどれかを使っている

どれも WorkMail の仕組み。移行先で同じ動きができるかを、別に確かめる

4

スマホが Exchange ActiveSync で WorkMail につながっている

端末ごとにアカウントを作り直す

1つでも当てはまる切り替えの前に、その機器・プログラムの担当に、移行先での送り方を決めてもらう
どれも当てはまらない切り替えの後の1週間の送受信の確認で、抜けがないかを見る

問いの立て方は当社の整理。出典:AWS「IMAP の設定」「メールボックスの権限」「impersonation role」(2026年10月5日確認)

複合機とアプリの送信は、移行先ごとに送り方が違います。Google の手順は、SMTP リレー(smtp-relay.gmail.com、ポート25・465・587)を推奨としていて、Gmail の SMTP サーバーを使う場合は、アプリパスワードで認証します。ユーザー名とパスワードだけでログインさせるアプリや機器は、2025年5月1日から、Google Workspace のアカウントでは使えません(Google のヘルプ)。Microsoft には、クライアント SMTP 送信・SMTP リレー・直接送信・High Volume Email の4つがあり、クライアント SMTP 送信の基本認証は、廃止が予定されています(Learn)。機器が OAuth に対応しているかを、先に確かめます。

WorkMail にメールフローのルールがある場合は、本文を Lambda で見たり書き換えたりしていないかを確かめます。外へ出すメールを、SMTP ゲートウェイ経由にしているルールもあります(SMTP ゲートウェイ)。これらは WorkMail の仕組みなので、移行先で同じことをしたければ、別に作ります。impersonation role を使ったアプリは、EWS でメールを読んでいるので、移行先でも EWS が使えるかを確かめます。Exchange Online の EWS の終了は、別の記事に書きました。

切り替えの後の1週間は、届かないメール、迷惑メールに入るメール、送れない機器の3つを見ます。見方は、レンタルサーバーから移す記事の最後の節にあります。

WorkMail を閉じる:取り出せたことを確かめてから、組織を消す

移行が終わったら、取り出せたことを確かめてから、WorkMail の組織を消します。AWS は、組織の削除は取り消せず、削除したあとは、メールボックスのデータを戻せない、と書いています(組織の削除)。保管用に取った export の zip と、IMAP でコピーしたメールの件数を、消す前に確かめます。

削除のときは、ディレクトリを残すか消すかを選びます。WorkMail が作ったディレクトリを残すと、WorkMail・WorkDocs・WorkSpaces のどれからも使われていなければ、課金が続く、と書かれています。どちらを選ぶかは、削除の前に決めておきます。終了日のあとに、組織やディレクトリの課金がどう扱われるかは、確かめた範囲の AWS の文書には書かれていません。

この記事で確かめられなかったこと
  • 終了日(2027年3月31日)の、日本時間での何時までか(AWS の文書に時刻は書かれていません)。
  • 終了日のあとに、組織・メールボックス・ディレクトリの課金がどう扱われるか(読んだ AWS の文書には書かれていません。無いことの証明ではありません)。
  • export で取り出した zip を、Microsoft 365・Google Workspace の取り込み機能が、そのまま読めるか。
  • WorkMail の IMAP で、管理者の資格情報を使い、ユーザーのパスワードを知らなくても全員分を読めるか。
  • Kopano Cloud・Zoho Mail・Zoom Mail の機能・料金・移行ツールの中身。
  • Microsoft・Google の IMAP の移行ツールが、WorkMail の IMAP(ポート993・PLAIN 認証)に、そのままつながるか(数人の試験で確かめます)。
  • Outlook に WorkMail のアカウントを入れている人が、予定表と連絡先を .pst に書き出して、移行先に入れ直す手順の実際(Microsoft の公式の手順は、Outlook 一般のものです)。

使っているかの確かめ方から、中身の数え方、移行先の選び方、切り替えの段取りまで、Aurant Technologies のMicrosoft 365・Google Workspace活用支援で受けています。メールボックスの移行や、複合機・アプリの設定替えが絡む場合は、移行と設定のスポット相談で扱っています。

Microsoft 365・Google Workspace の移行と設定のスポット相談

メールの移行、ドメインとDNS、共有アドレスや代理人の権限、新しいOutlookへの切り替え、Copilot・Geminiを使うときの社内ルール。調べた手順で直らないとき、同じことが何人もで起きているときに、いま困っていることを1件から相談できます。

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aurant technologies 編集

上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

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