営業リストの作り方|業種だけで切らず、公開されている実数で規模を判定する
営業リストを業種で絞って終えず、会社概要に書いてある従業員数・資本金・売上高・拠点数で払える規模かを判定し、連絡の経路と送ってよいかまで1社1行に並べてから送り先を決める進め方です。母集団の選び方、判定の線の決め方、資本金だけで小さいとしない理由、特定電子メール法の条文で確かめた範囲での仕分けを示します。
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「整骨院は1店舗のところばかりで、うちの価格には合わない」。営業リストを作っていて、そう考えて業種ごと外しかけたことがあります。ところが、会社概要に書いてある従業員数で判定してみると、従業員が300人を超えるグループ経営の会社が、規模の線を越えていました。業種ごと外していたら、リストに一度も載らなかった相手です。
私たち Aurant Technologies は、企業の営業とマーケティングの仕組みづくりを支援している会社です。2026年8月、自社のサービスの営業先を集めてリストを作りました。その時点の集計では、集めた候補が約1万1千件で、会社のページにアドレスがあり、規模の判定も通り、宛先の種類や断り書きでも外れなかった「送れる候補」は768件でした。規模は業種ではなく、会社概要に書いてある従業員数・資本金・売上高・拠点数で判定しています。
営業リストは、業種で当たりを付けて終えず、会社概要の実数で「払える規模か」を判定し、連絡の経路と、売りたい製品を使っている形跡まで1社1行に並べてから絞ります。そうすると、同じ業種に混ざる大きな会社と小さな会社を分けられ、送れる相手が何社かを、送る前に数えられます。進め方の全体は、次の7つの段です。
決めたいのは、誰に送るか・何社に送れるか・どの順で当たるか
最初に、リストで何を決めるのかを決めます。ここで決めたいのは3つです。誰に送るか(費用を払える規模で、売るものが合う会社)、何社に送れるか(連絡の経路があり、送ってよい会社)、どの順で当たるか(売りたい製品を使っている形跡がある会社から)。業種の列だけのリストでは、このどれにも答えられません。
3つめの「形跡」は、売るものによって変わります。当社のときは LINE 公式アカウントにかかわるサービスの営業だったので、LINE 公式アカウントを使っている形跡を会社のページで探しました。予約の仕組みを売るなら予約のページ、採用の支援なら採用のページ、というように、会社のページの外から見えるものを1つ決めておきます。
母集団は、件数ではなく「使える列があるか」で選び、出どころごとに分けて持つ
次に、送り先の候補を集めます。当社がいちばん迷ったのは、冒頭の約1万1千件を集計したあと、母集団をさらに広げようとしたときの、どこから集めるかでした。そのとき一度、件数が多く取れる一覧に手を伸ばしました。ある施設の一覧からは数千件が一度に取れましたが、開いてみると財団や公立の施設が大半で、費用を決める人がいる相手がほとんどいません。本線から外して、参考に回しました。取れるから拾う、をやると、目的から外れます。
公的な法人のデータでも、同じことがありました。件数は桁違いに大きくても、会社のページの URL まで持っている法人は1%に届きませんでした。名簿は件数ではなく、会社のページや規模の数字のように、このあと使う列を持っている割合を先に見ます。求人サイトや製品の導入事例の一覧も試しましたが、運用を請け負う会社の募集や大きな会社の事例が中心で、歩留まりが悪く使いませんでした。
決め手になったのは、業界団体の会員名簿です。会費を払って加盟している時点で、法人で、チェーンの事業者だと分かります。会員名簿は団体のトップページから「会員企業」「加盟社」といったリンクをたどって探しました。決め打ちの住所で探すと見つからないことが多かったからです。
集めたものは、1つの表に混ぜずに出どころの列を付けて分けて持ちます。冒頭の約1万1千件の集計でも、出どころによって形跡の見つかりやすさがはっきり違いました。LINE 公式アカウントを使っている形跡が見つかった割合は、大学で41%、自治体で25%、手元の名簿で20%。業種から企業向けの商売と見て外していた113の業種を、取りこぼしが心配で拾い直した層では4%と低く、この層を外した判断は合っていました。売り方も出どころで変わります。自治体は、費用の大きさによっては入札や企画提案の手続きになるので、当社は最後の送り先を、民間・大学・自治体・その他の4つの表に分けました。外していた業種の層を業種の名前の決まりで拾い分けようとしたときは、業種が多くて漏れ、民間の表に別の業種の会社が混ざりました。出どころごとに表を分けておくほうが確かです。
同じ会社が、別の出どころから二重に入ることもあります。社名の書き方は出どころごとに揺れる(「株式会社」の有無、略称)ので、名前だけでは重複をまとめきれません。国税庁の法人番号公表サイトでは、法人の「商号又は名称」「本店又は主たる事務所の所在地」「法人番号」の基本3情報を検索でき、CSV 形式などでダウンロードもできます。名前と所在地を合わせて引き、法人番号の列を足しておくと、重複をまとめやすくなります。ただし、個人で営む店には法人番号がありません。小さな店の多い業種では、法人番号の無い行が残るので、その行は名前と所在地で見比べます。また、公表されているのは基本3情報のほか、フリガナや名称・所在地の変更の履歴などで、従業員数や売上高はありません。規模の数字は、次の段で会社のページから拾います。
1社1行に、規模の数字・連絡の経路・形跡を拾う
集めた会社ごとに、会社のページから1行に拾います。拾うのは、会社概要に書いてある規模の数字(従業員数・資本金・売上高・拠点数)、連絡の経路(メールアドレス・問い合わせフォーム・電話)、売りたい製品を使っている形跡の3つです。どのページから拾ったかも列に残します。数字が古くなったときや判定に迷ったときに、すぐ開き直せるようにするためです。
拾えなかった欄は、空にせず「不明」と書きます。空のままだと、拾い忘れたのか、書いていなかったのかが、あとから分かりません。規模の判定でも、「書いていない」と「小さい」は別に扱います。
連絡の経路は、メールを当てにしすぎないようにします。当社が最初に199社の会社のページからメールアドレスを集めたとき、取れたのは66社(33%)でした。特定商取引法に基づく表記、会社概要、プライバシーポリシーのページまで開いても、アドレスが無い会社が大半でした。会社のページは問い合わせフォームと電話で連絡を受ける作りが多く、メールはフォームの代わりになりません。経路の列は、メール・フォーム・電話のみ、の3つに分けておきます。担当者の個人の名前は拾わず、会社が窓口として出しているアドレスとフォームにとどめます。
規模は線を決めて判定し、資本金だけで小さいと決めない
業種で規模を決められないのは、同じ業種の中に大きな会社と小さな会社が混ざっているからです。同じ工務店でも、年商50億円の会社と職人3人の会社が並びます。冒頭の整骨院も、1店舗の院が多い業種だと思って外しかけましたが、従業員数で判定すると、300人を超えるグループが線を越えました。逆に、繊維やアパレルの製造のように、規模では線を越えても企業向けの商売で売るものが合わない業種は、業種で外しています。業種は売るものが合うかの当たりに使い、払える規模かは数字で見る、という分け方です。
次の図は、集めた会社を業種ごとに並べ、会社概要に書いてあった従業員数を点で示したものです。
この図では、業種で絞る作りで「外す」に入れた工務店や学習塾の行にも、線の右にオレンジの点があり、「残す」に入れた業種にも、線の左に灰色の点が並びます。業種で切ると、どちらもそのまま残ります。
そこで、線を決めて判定します。当社は、サービスの費用を払えるかを目安に、従業員50人・資本金5,000万円・売上高10億円・拠点10のどれか1つを越える数字があれば◎、としました。線は売るものと値段で変わります。自社で決めるなら、いま取引のある会社の規模を同じ4つの列で拾ってみるのが近道です。受注した相手のうち小さいほうの数字が、◎の線の目安になります。
もう1本、小さいと言い切る線も決めます。こちらは、取引のある会社の中でいちばん小さい規模より、さらに下に置きます。当社は従業員20人未満か売上高3億円未満と分かった会社を「費用に届かない」と見て×にしました。2本の線の間に入る会社と、数字が足りない会社は、捨てずに残します。判定は次の4つで、◎と○を候補に残します。
- ◎線を越える数字が1つでもある。
- ○線には届かないが、小さいと言える数字も無い(従業員20〜49人など)。
- ×従業員数か売上高から、小さいと分かる。
- 不明数字が無い、または資本金・拠点数だけで線に届かない。
判定の決まりは、拾った結果を見ながら直していきました。売上高の欄では、「売上高 2024年度」のような書き方から年号を金額として拾っていたので、単位の無い1900から2100までの数は捨てるようにしました。資本金は、低く据え置いている中堅の会社があるので、資本金だけでは×にせず、×は従業員数か売上高が取れたときだけに付けています。大学のように従業員数も資本金も公表しない相手には、数字が無いから×、とはせず、名前から学校の種類を見る決まりを別に作りました。
表で見るのは①の列です。判定の横に、どの数字で決めたかを残しておくと、判定がおかしいときに、どの欄を見直せばよいかが分かります。写真館の1行は、資本金が3,000万円で、ほかの数字がありません。資本金だけでは小さいと言えないので「不明」にして、目で確かめる側に回しています。業種で外す側の学習塾でも、従業員268人と書いてある会社は◎です。
送ってよいかは、アドレスと併せた断り書きと宛先の種類で仕分ける
会社のページにアドレスが出ていれば、営業のメールを送ってよいのか。ここは特定電子メール法の第3条第1項で、送ってよい相手が4つの号に分けて決まっています。あらかじめ同意した相手などと並んで、第4号が「総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては、営業を営む者に限る。)」です。リストで関係するのは、この第4号です。
では、その「定めるところ」は何か。施行規則の第3条は、アドレスをインターネットで誰でも見られる状態に置くことを公表の方法としたうえで、アドレスと併せて特定電子メールの送信をしないように求める旨の文言を置いたときは、この限りでないとしています。会社のページにアドレスが出ていても、併せて「営業のメールはお断りします」とあれば、送ってよい相手には入りません。送らないでほしいと連絡を受けた相手にも送れません(法第3条第3項)。
そこで、メールの行には、アドレスと併せて送らないでほしい旨の文言があるかの列を足します。問い合わせフォームに営業の連絡を断る旨が書いてある会社も、同じ列で送らない側に入れます。前に送ったことのある相手にも印を付けておきます。同じ会社に、別の出どころから二度送らないためです。
宛先の種類も見ます。当社は、採用の窓口、個人情報の窓口、IR(株主・投資家向け)の宛先は、アドレスが出ていても使いませんでした。営業の連絡を受けるための窓口ではないからです。断り書きの拾い方にも落とし穴があります。営業の記録のメモには「営業お断り無」のような打ち消しの書き方が多く出てくるので、「営業お断り」という言葉が含まれるかで拾うと、送ってよい会社まで送らない側に入ってしまいます。言葉で探さず、ある・ない・未確認の札で持つほうが確かです。
業種で絞った場合と並べて、送り先を決める
ここまでの列がそろうと、業種で絞った場合と実数で判定した場合を、同じ表から数えて並べられます。図の「送ってよい」は、前の節の宛先の種類・断り書き・送ったことがあるかで見たもので、規模の判定は入れていません。
この図では、「業種で絞る」で2,400社のうち1,198社を残し、メールがあって送ってよいのは265社になります。ただ、その中に、従業員数か売上高から小さいと分かる会社が80社、規模の数字が無い会社が44社入っています。外した側にも、規模で候補に残る会社があります。
「実数で判定する」では、メールがあって送ってよいのは186社で、左より少なく出ます。そのかわり、どの会社も規模の数字で確かめてあり、業種で外していた側の会社も入ります。差の大きさは、業種の中で規模がどれだけ散らばっているかで変わるので、この図の数では決まりません。変わらないのは、業種で切って数えた数には、小さいと分かる会社と数字の無い会社が混ざる、という点です。送れる相手が何社かを送る前に言えるのは、実数で判定したほうです。
送り先は、2,400社すべてを次の5つのどれかに入れて決めます。
- A先に送る(40社)。規模で候補に残り、メールで送ってよく、形跡もある。
- B次に送る(146社)。規模で候補に残り、メールで送ってよいが、形跡はまだ見えない。
- Cフォームで1社ずつ(427社)。規模で候補に残り、メールは無いがフォームがある。
- D目で確かめる(568社)。規模の数字が無い。捨てずに、メールで送ってよい127社から会社のページを開く。
- E送らない(1,219社)。小さいと分かる会社と、電話だけ・営業お断り・採用やIRの窓口・送ったことのある相手。
C のフォームは、文面を1社ずつ書くので、1か月に送れる数は書き手の手間で決まります。文面の組み立ては営業の型を業種×段階の表で作る記事に書きました。5つに分けておくと、「今月は何社に送れるか」「次に何社を確かめるか」を、送る前に言えます。
送ったあとは、出どころと札ごとに数えて線を見直す
送ったら、出どころと送り先の札(A〜C)の列を残したまま、返事・商談・受注を記録します。どの出どころの、どの札から商談が生まれたかで、次に集める出どころと判定の線を見直します。受注した相手の規模を同じ4つの列で拾い、線の下の会社からの受注が出てくれば、線を下げます。返事のあと誰にいつ電話するか、数が少ないうちの読み方は、メールの開封を合図に電話しない記事に書きました。
この進め方が受け持たないこと
会社概要の数字は、更新されていないことがあります。グループ全体の人数か、その会社だけの人数かも、書き方からは分からないことがあります。判定は送るかどうかを決める目安で、相手の予算を確かめたものではありません。数字を出さない会社が多い業種では D が大きくなり、目で確かめる手間がかかります。送ったあとの返事や商談を、出どころと札ごとに数えた記録は、当社にもまだありません。送ってよいかの仕分けは、特定電子メール法と施行規則の条文で確かめた範囲で書いています。判断に迷う送り先は、条文と所管の案内を確かめてから送ってください。
画面と図は、1社1行の表1枚から作れる
画面と図は、1社1行の表から作りました。列は、出どころ、業種、法人番号、拾ったページ、従業員数・資本金・売上高・拠点数、どの数字で判定したか、連絡の経路、送らないでほしい旨の文言、送ったことがあるか、形跡、送り先です。当社は、会社のページを開いて数字とアドレスを拾う作業を、決まりを書いて機械で回しました。そのときは、各サイトの robots.txt(巡回してよい範囲を示すファイル)に従い、同じサイトへは1秒以上の間隔を空けています。
まずは今のリストに、規模の数字と拾ったページの列を足す
明日からできるのは、いま手元にある営業リストに、従業員数・資本金・売上高・拠点数と、それを拾ったページの列を足し、上から20社だけ会社概要を開いて埋めてみることです。業種の列だけでは見えなかった規模の違いが、同じ業種の行の中に並びます。
20社で列の形が決まったら、その先は手で開く数を減らします。従業員数や所在地を列に持つ公的な一括データや、業界団体の会員名簿を同じ列に流し込み、数字が埋まらなかった行だけ会社のページを開きます。一括データは、使う前に利用規約で、営業のリスト作りに使ってよいかを確かめてください。
営業リストの作り方から、送ったあとの数え方までは、当社の営業DX・SFA運用設計の支援で一緒に進められます。
CRM・SFA導入・活用支援
Salesforce・HubSpot などのCRM/SFAを規模や運用体制に合わせて選定し、設計・構築、部門をまたぐデータ連携、社内で改修・運用できる内製化までを支援します。
