FileMakerから移行するか、使い続けるか|作った人がいないファイルの調べ方と、帳票の移し方
FileMakerの業務アプリを移行するか使い続けるかを決める前に、版とライセンスがサポートの内側にあるかと、ファイルの中身を読めるかを確かめます。Claris公式のサポート期間と動作環境、作った人がいないファイルの設計をXMLに書き出して生成AIで読み解く手順、納品書・請求書などの帳票の移し方、旧ファイルと並べて動かす期間の進め方を整理しました。
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この記事の要点
- FileMakerは続いている(2026年6月にFileMaker 2026が出て、各版はリリースから2年サポートされる)。いまサポートの内側にあるのは2025と2026だけ。2024以前の版、ピアツーピア共有、共有フォルダに置いた運用なら、使い続ける場合も整え直す。
- 作った人がいなくても、完全アクセスのアカウントがあれば「XML として保存」で設計を書き出せる。生成AIに業務の言葉へ直させ、使う人と確かめてから、業務ごとに移し先を決める。
- 帳票の中身は、レイアウトパート・ソート・集計や計算のフィールド・スクリプト・印刷設定に分かれている。旧ファイルで出したPDFを正解の見本にして、同じレコードで新旧を並べる。
移行するか、使い続けるかを決めるまでの流れ
続ける場合も移す場合も、最初の三つは同じ作業
帳票のPDFは、書き出しの段階で旧ファイルから取っておく
当社の整理。版とサポートの条件は、Clarisの公式情報(2026年9月25日確認)による
社内の誰かや地元の開発会社が昔作ったFileMakerを、作った人がいないまま使っているなら、移行するか使い続けるかを決める前に確かめることは二つです。自社の版とライセンスがサポートの内側にあるか、そしてファイルの中身を読める状態にあるかです。FileMakerは2026年6月10日に最新版のFileMaker 2026が出ており、Clarisは各版をリリースから2年間サポートすると公表しています。いまサポートを受けられるのはFileMaker 2025と2026だけで、2024のサポートは2026年6月に終わりました。
作った人がいなくても、完全アクセスのアカウントが残っていれば、FileMaker Proの「名前を付けて XML として保存」で、テーブル・フィールド・リレーションシップ・レイアウト・スクリプトを文字に書き出せます(Clarisのヘルプ)。それを生成AIに読ませて業務の言葉に直し、使っている人に確かめます。続けるか移すかは、この下調べが済んでから、使う人・業務の形・直せる人を見て、ファイル単位ではなく業務ごとに決めます。納品書や請求書などの帳票は、旧ファイルで出したPDFを正解の見本として残し、同じレコードで新旧を並べて確かめます。
この記事は、Clarisの公式情報(サポート終了の予定、動作環境、廃止予定の機能の一覧、製品のヘルプとリリースノート)を2026年9月25日に確かめて書いています。受注・顧客・在庫などをFileMakerで回していて、ライセンスの更新やOSの入れ替えのたびに、このままでよいのか迷っている担当者を読み手に想定しています。
FileMakerは続いている。先に確かめるのは自社の版とライセンス
Clarisは2026年6月10日にFileMaker 2026の提供を始めました。発表では、FileMaker Serverの障害に備える二つの追加サービス(リモートバックアップとスタンバイサーバー)、AI機能の拡張、開発作業の改善などを挙げています(Clarisのニュースリリース)。この版から年の表記と中の版番号がそろい、FileMaker 2026は「26」、一つ前の2025は「22」です(Clarisのブログ)。FileMaker Proの最新は2026年9月の26.0.3です(リリースノート)。
製品の力の入れ先も、FileMakerに寄っています。Clarisは、Webで使う画面(ビュー)を作るサービスClaris Studioを2027年3月15日で終えると発表し、その理由の中で、開発の力をFileMakerのエージェント型開発(AIのコーディングツールと組み合わせた開発)と、基盤の安定性に集めると書いています(2026年8月27日のお知らせ)。Claris Studioで作った画面をFileMakerと組み合わせて使っているなら、その部分だけは期限までに移し先を決める必要があります。
サポートは各版のリリースから2年
Clarisは、FileMakerの各版(FileMaker Pro・FileMaker Go・FileMaker Serverを含む)をリリースから2年間サポートすると公表しています(Claris 製品のサポート終了について)。FileMaker 2023は2023年4月(日本は5月)に出て2025年12月に、FileMaker 2024は2024年6月に出て2026年6月にサポートを終えました。FileMaker 2025(2025年7月)は2027年7月まで、FileMaker 2026(2026年6月)は2028年6月までの予定です。2026年9月25日の時点でサポートの内側にあるのは、2025と2026の二つです。FileMaker 19は、テクニカルサポートやライセンスキーの販売も含めて2024年12月19日に終わっています(Claris サポートポリシー)。
FileMakerの各版のサポート期間(Clarisの公表)
各版をリリースから2年間サポートする。2026年9月25日の時点で内側にあるのは2025と2026
FileMaker 2023
サポート終了
リリース:2023年4月(日本は5月)
期限:2025年12月
FileMaker 2024(21)
サポート終了
リリース:2024年6月
期限:2026年6月
FileMaker 2025(22)
サポート中
リリース:2025年7月
期限:2027年7月
FileMaker 2026(26)
サポート中(最新)
リリース:2026年6月
期限:2028年6月
出典:Claris「Claris 製品のサポート終了について」。かっこ内の版番号はClarisのリリースノートとブログによる
サポートの中身にも区切りがあります。セキュリティ更新・不具合の修正・OSへの対応といったアップデートと、電話やWebでの1対1のサポートは、どちらもFileMaker 2026と2025のプラットフォームが対象です(サポートポリシー)。新しい版を受け取れるのは、年間ライセンスを続けている利用者か、保守契約付きの永続ライセンスの利用者です。セキュリティ更新は、有効なライセンスを持つ利用者か、期限が切れて12か月以内の利用者に出ます(サポート終了について)。昔買った永続ライセンスで保守が切れていると、2026に上げるには新しいライセンスの手当てが要る、ということです。
版・OS・共有の仕方・ライセンスを見る場所
自社の状態は4か所で確かめられます。版は、FileMaker Proでは[FileMaker Pro について]に、FileMaker ServerとFileMaker CloudではAdmin Consoleに数字で出ます(Claris FileMaker 2026 動作環境)。組み合わせには決まりがあり、FileMaker Server 2026につながるのはFileMaker Pro・FileMaker Goの26と22だけです(同)。FileMaker Pro 2026をFileMaker Server 2024(21)以前につなぐ場合は、先にサーバーを上げるようClarisは注意しています(リリースノート)。
OSも見ます。FileMaker Pro 2026が動くのは、Windows 11のEnterprise・Pro(24H2・25H2、64ビット)と、macOS Sequoia 15・Tahoe 26です(動作環境)。Windows 10に対応する最後の版はFileMaker Pro 22.0.4でした(廃止予定・削除された機能の一覧)。iPadやiPhoneのFileMaker Go 2026にはiOS・iPadOS 18以上が要り、古い版のFileMaker GoはApp Storeから消えていきます(FileMaker Go 19は2025年4月28日に提供終了。サポートポリシー)。端末を入れ替えたときに、古い版を入れ直せないことがあります。
共有の仕方は、使い続けるかどうかに関係なく確かめます。FileMaker Pro同士でファイルを開き合うピアツーピア共有は、接続が暗号化されず、Clarisはテストの目的にだけ使うよう書いています。つなげるのはFileMaker Pro・FileMaker Goを合わせて5台までです(ピアツーピア共有)。この共有の仕方は、Clarisの廃止予定の機能の一覧にも入っています(一覧)。ファイルを共有フォルダ(NASなど)に置いて複数のPCから同時に開く使い方も、ファイルが壊れるおそれがあるとして、Clarisのヘルプはしないよう書いています(ネットワーク上でのファイルの共有)。どちらかに当たるなら、続ける場合もFileMaker ServerかFileMaker Cloudで共有する形に移します。
FileMaker Proのランタイム機能(ファイルを単体で動くアプリにまとめる機能)は削除されています(一覧)。ランタイムの形で納品されたアプリは、今の版では同じ形に作り直せません。
ライセンスは、Claris から直接買った場合、購入時に届いたメールのダウンロードページにライセンス証明書があります(動作環境)。販売店や開発会社を通して買ったなら、その窓口に、年間ライセンスか保守付きの永続ライセンスか、期限はいつかを尋ねます。今の購入プランは、FileMaker Cloud・FileMaker Serverとも「1ユーザ・1か月あたり」の料金を年払いする形で、5ユーザからです(購入プラン、FileMaker Server)。ほかの人とデータを共有しない使い方なら、FileMaker Proのシングルライセンスもあります(同)。
自社の状態を確かめる4か所
版
FileMaker Pro・Serverの数字の版
- FileMaker Proは[FileMaker Pro について]
- ServerとCloudはAdmin Console
内側の条件:2025(22)か2026(26)。Server 2026につながるのは26と22
OS
PCとiPadのOS
- FileMaker Pro 2026:Windows 11(24H2・25H2)、macOS 15・26
- FileMaker Go 2026:iOS・iPadOS 18以上
注意:Windows 10に対応する最後の版は22.0.4
共有の仕方
どこでファイルを開いているか
- FileMaker ServerかCloudで共有しているか
- PC同士のピアツーピア共有は5台まで・暗号化なし
注意:共有フォルダに置いて複数台で開くと、ファイルが壊れるおそれ
ライセンス
契約の種類と期限
- 年間ライセンスか、保守付きの永続ライセンスか
- 購入時のメールのダウンロードページか、買った窓口で確かめる
注意:期限切れから12か月を過ぎると、セキュリティ更新も出ない
出典:Claris「FileMaker 2026 動作環境」・「サポート終了について」・廃止予定・削除された機能の一覧、FileMaker Proヘルプ「ピアツーピア共有」・「ネットワーク上でのファイルの共有」
移すかどうかは、使う人・業務の形・直せる人で決める
版と共有の仕方は、FileMakerのままでも整えられます。移すかどうかを分けるのは、その業務を誰が使い、どんな流れで回し、誰が直すかです。「作った人がいない」こと自体は、どちらを選ぶ理由にもなりません。移す場合も、今のファイルが何をしているかを書き出さないと、移し先に何を作ればよいかが決まらないからです。
移す検討を始める合図(当社の整理)
取引先や顧客が、このアプリに直接入力したり見たりする必要があるか
社外の人まで、ユーザ単位の契約(5ユーザから。100ユーザ以上は相談)に入れることになる
その業務は、既製のサービスの標準の流れで回せるか
受注・在庫・会計のように、自社だけの工夫が少ない業務
ファイルを直せる人を、社内にも社外にも確保できないか
完全アクセスのアカウントが無い、FileMakerの開発を頼める会社が見つからない
当社の整理。契約の単位はClarisの購入プラン(2026年9月25日確認)による
使う人については、社内の人だけか、取引先や顧客も使うかで話が変わります。FileMakerのままWebブラウザから使う手段としてFileMaker WebDirectがあり、FileMaker ServerかFileMaker Cloudで共有したファイルを、Safari・Chrome・Edgeから使えます(FileMaker WebDirect でデータベースを公開する、動作環境)。人数についても、FileMaker Server 2026の検証値はFileMaker Proのクライアントで500です(動作環境)。気にするのは、同時に何人つなげるかより、社外の人までユーザ単位の契約に入れるかどうかです。100ユーザ以上は法人営業の窓口への相談になります(購入プラン)。
ほかのシステムとのやり取りも、FileMakerのままで持てます。FileMaker Serverには、ほかのアプリから使うREST形式のFileMaker Data API、OData、ODBC・JDBCがあります(FileMaker Server の購入プラン)。連携があるかどうかだけで決めるより、その業務が既製のサービスの標準の流れで回るか、社内で手を入れ続けたいかで考えると、移し先を選びやすくなります。
直せる人は、社内にいなくても、FileMakerの開発を頼める会社を外に確保できれば足ります。Clarisのサイトでは、開発会社などのパートナーを地域で探せます(パートナーを見つける)。ただし、社内で直す場合も外に頼む場合も、次の節で扱う完全アクセスのアカウントが無いと、直すことも中を調べることもできません。
作った人がいないファイルの設計を書き出す
作った人がいないのが FileMaker のファイルではなく、プログラムのソースコードの場合は、AI で仕様書を起こす範囲と人が確かめる範囲を「作った人がいない業務システムの仕様書をAIでソースコードから起こす」で解説しています。
ここからは、続ける場合も移す場合も同じ作業です。目的は、画面を見れば分かることではなく、ファイルの中の決まり(テーブルとフィールド、計算の式、スクリプト、リレーションシップ)を文字にして手元に残すことです。
作った人がいないファイルの設計を書き出す手順
1
完全アクセスのアカウントを確かめる
- 作った人・開発会社・引き継ぎの書類に当たる
- 拡張子が.fmp12か(それより前の形式は変換が要る)
つまずき:管理アクセスを完全に削除したファイルからは、設計を読めない
2
コピーを開き、高度なツールを使えるようにする
- [名前を付けて保存]でコピーを作る。サーバーならバックアップを使う
- [設定]の[一般]で[高度なツールを使用する]、再起動
出てくるもの:XML として保存、データベースデザインレポート、スクリプトデバッガ
3
「XML として保存」で書き出す
- カタログごとに別のファイルに分ける
- レコードのデータは入らない
つまずき:XMLの書式は版ごとに変わる。比べるなら同じ版で書き出す
4
ファイルの外を書き出す
- プラグイン、オブジェクトの保存先、ESS、ほかのファイルへの参照
- Admin Consoleのスケジュールと設定の画面
つまずき:FileMaker Cloudではプラグインを使えない
出典:FileMaker Proヘルプ「データベースのスキーマのドキュメント化」・「高度なツールの使用」・「Developer ユーティリティのオプションの指定」、Claris「最新バージョンへのアップグレードの準備」・共有方法の比較
完全アクセスのアカウントがあるかを最初に確かめる
FileMakerのファイルには、あらかじめ「完全アクセス」「データ入力のみ」「閲覧のみアクセス」の三つのアクセス権セットがあり、ファイルのすべての要素を見て変えられるのは完全アクセスだけです。どのファイルにも、完全アクセスを持つ有効なアカウントが少なくとも1つ要ります(事前定義済みアクセス権セットについて)。このあと使うXMLの書き出しもデータベースデザインレポートも、完全アクセスでファイルを開かないと使えません(データベースのスキーマのドキュメント化)。
パスワードが分からないときは、作った人や開発会社、引き継ぎの書類に当たります。気をつけたいのは、納品のときに開発会社がDeveloper ユーティリティの[管理アクセスをファイルから完全に削除]を使っている場合です。この処理をしたファイルには、管理アクセスをもう一度設定できません(Developer ユーティリティのオプションの指定)。そのファイルから設計を読むことはできないので、処理をする前の元のファイルが開発会社に残っていないかを尋ねます。残っていなければ、画面・帳票・書き出したデータから仕様を組み立て直すことになります。
ファイルの拡張子も見ておきます。.fmp12はFileMaker Pro 12以降で作ったファイルで、今の版でそのまま開けます。それより前の形式は変換が必要で、変換できるのはFileMaker Pro 7〜11で作ったファイルだけです。変換した後は、スクリプトやアクセス権が意図どおりに動くかを試すようClarisは書いています(FileMaker Pro 11 以前のファイルの変換)。
コピーを開き、「XML として保存」で書き出す
書き出しは本番のファイルではなく、コピーで行います。FileMaker Proの[名前を付けて保存]には、現在のファイルのコピーや、レコードを含まない「データなしのコピー」などの選び方があります(名前を付けて保存)。FileMaker Serverで共有しているなら、サーバーのバックアップのスケジュールで作られたファイルを使います(管理タスクのスケジュール)。
コピーを開いたら、[設定]の[一般]で[高度なツールを使用する]を選び、FileMaker Proを再起動します。これで[ツール]メニューに[名前を付けて XML として保存…]と[データベースデザインレポート…]が出ます(高度なツールの使用)。XMLには、テーブル・フィールド・リレーションシップ・レイアウト・スクリプトなどが入り、レコードのデータは入りません(ヘルプ)。FileMaker Pro 2026では、複数のファイルをまとめて書き出す、カタログ(スクリプト・レイアウト・フィールドといった要素の種類)ごとに別のファイルに分ける、といった選び方ができるようになり、文字コードもUTF-8になりました(リリースノート 26.0.1)。後で生成AIに読ませるなら、カタログごとに分けておくと、一度に渡す量を抑えられます。
データベースデザインレポート(DDR)は、HTMLで全体の一覧を見渡すのに便利ですが、ClarisはDDRのXML形式を廃止予定とし、代わりに「XML として保存」を案内しています。HTML形式もFileMaker 16で廃止予定になっています(廃止予定・削除された機能の一覧)。記録として残すのは「XML として保存」の出力にし、DDRは画面で追うための補助にとどめます。
「XML として保存」とデータベースデザインレポートの違いを見る
| XML として保存 | データベースデザインレポート(DDR) | |
|---|---|---|
| 出力 | XML。カタログごとに別のファイルに分けられる | HTMLまたはXML |
| 入るもの | テーブル・フィールド・リレーションシップ・レイアウト・スクリプトなど。レコードのデータは入らない | ファイルごとの要素の一覧と、構造の統計。HTMLの内容はXMLの一部 |
| Clarisの扱い | DDRのXML形式の代わりとして案内されている | XML形式は廃止予定。HTML形式はFileMaker 16で廃止予定 |
| 使い方 | 記録として残す。生成AIに読ませる。比べるなら同じ版で書き出したもの同士 | 全体を画面で見渡す。壊れた参照を探す |
| 要るもの | 完全アクセスでファイルを開くこと。[高度なツールを使用する]を選んでおくこと | |
出典:FileMaker Proヘルプ「データベースのスキーマのドキュメント化」、Clarisの廃止予定・削除された機能の一覧
ファイルの外にある仕掛けも書き出す
XMLに出るのはファイルの中身だけです。Clarisが版を上げる前の準備として挙げている確認の項目には、ファイルの外にあるものが並んでいます(Claris FileMaker 最新バージョンへのアップグレードの準備)。移す場合にも、同じものを押さえておきます。
- プラグイン(FileMaker ProとFileMaker Serverの両方)
- オブジェクトフィールドの保存先(ファイルの中か、サーバー上の外部の保存先か)
- 外部SQLデータソース(ESS)や、ほかのFileMakerファイルへの参照
- FileMakerにつながるWebの仕組み(PHPなど)と、Webビューアで読み込むページ
- ODBC・JDBCでFileMakerのデータを読むほかのシステム
- サーバーで決まった時刻に動かしているスクリプト
決まった時刻に動く処理は、FileMaker ServerのAdmin Consoleにスケジュールとして登録されていることがあります。共有しているファイルのスクリプトを、時刻と頻度を決めて動かせる仕組みだからです(管理タスクのスケジュール)。Clarisは、書き出せない設定を残すために、Admin Consoleの全画面のスクリーンショットを撮ることを勧めています(アップグレードの準備)。なお、FileMaker Cloudではプラグインを使えません(共有方法の比較)。Cloudへ移して使い続ける案を考えるときは、プラグインの有無が分かれ目になります。
書き出した設計を生成AIに読ませて、業務の言葉にする
XMLは機械が読むための書式で、そのままでは担当者には読めません。ここで生成AIを使います。AIに頼むのは、スクリプトや計算の式を、業務の言葉の説明に直す下書きです。説明が正しいかどうかは、使っている人と、コピーの上で動かした結果で確かめます。
生成AIに頼むことと、人が確かめること(当社の整理)
スクリプト
ボタンや時刻で何が起きるか
- きっかけ(ボタン・スクリプトトリガ・サーバーのスケジュール)
- 検索・ソートと、書き込むフィールド
- 外に出すもの(印刷・PDF・書き出し・メール)
AIに頼む:1本ずつ表にする。読めない所は「不明」と書かせる
人が確かめる:コピーの上でスクリプトデバッガを使って動かす
計算・集計フィールド
業務の決まりが式に入っている
- 消費税の端数、締め日の判定、単価の選び方など
- どのレイアウトや帳票で使っているか
AIに頼む:式を一つずつ文章に直す
人が確かめる:使っている人に、今もその決まりかを聞く
リレーションシップ
テーブルのつながり
- どのフィールドでつながっているか
- 「受注1件に明細が何件」のような数え方
AIに頼む:つながりを業務の言葉で説明させる
人が確かめる:移し先のデータの形の案と照らし合わせる
スクリプトデバッガとデータビューアは、FileMaker Proの高度なツールに含まれる(Clarisのヘルプ)
順番は、スクリプトから始めるのがおすすめです。ボタンを押したときや決まった時刻に何が起きるかは、スクリプトに書かれているからです。1本ごとに、何をきっかけに動くか(ボタン、スクリプトトリガ、サーバーのスケジュール)、どのレイアウトで何を検索・ソートするか、どのフィールドに何を書き込むか、何を外に出すか(印刷、PDF、書き出し、メール)、途中で止まる条件は何か、を表にしてもらいます。読み取れない箇所は、推測で埋めずに「不明」と書くよう頼んでおきます。
計算フィールドと集計フィールドは、式を一つずつ文章に直してもらいます。消費税の端数の扱い、締め日の判定、単価の選び方のような業務の決まりが、フィールドの式に入っていることがあるからです。リレーションシップは、どのテーブルがどのフィールドでつながっているかを、「受注1件に明細が何件」のような言い方に直してもらうと、移し先のデータの形を考える材料になります。
説明を確かめるときは、コピーのファイルで、スクリプトデバッガとデータビューアを使って1行ずつ動かすと、AIの説明と実際の動きを突き合わせられます。どちらも[高度なツールを使用する]で使えるようになる機能です(高度なツールの使用)。使っている人には説明を読んでもらい、「この処理は今も使っているか」「この分かれ道はどんなときに通るか」を聞きます。使われていない画面やスクリプトが見つかれば、移す範囲を減らせます。
Claris自身も、AIのコーディングツールがFileMakerのスキーマとスクリプトを理解して、ファイルに直接スクリプトを作る仕組みを進めていて、開発者向けのプレビューを準備中としています(FileMaker によるエージェンティック開発、2026年9月25日確認)。使い続ける場合も、書き出した設計と業務の説明が手元にあれば、直す人が替わっても同じところから始められます。
AIに渡す前に確かめること
XMLには機密に当たる情報が入ることがあり、ClarisはXMLへのアクセスを制限するよう勧めています(ヘルプ)。FileMaker Pro 26.0.1では、レコードのインポートのスクリプトステップに保存したODBCの資格情報が、XMLに平文で出てしまう不具合が直されました(リリースノート)。古い版で書き出したXMLは、渡す前に、パスワードや接続先らしき文字列が入っていないかを検索します。渡す先は、社内で使ってよいと決めている生成AIのサービスと契約の範囲にとどめます。
もう一つ、XMLの書式はFileMaker Proの版ごとに変わることがあります。二つの時点の設計を比べるなら、同じ版で書き出したもの同士で比べます(名前を付けて XML として保存)。
納品書・請求書などの帳票は、中身のありかを分けて移す
移し先で作り直すときに見落としやすいのが帳票です。FileMakerの帳票は1枚のレイアウトに見えて、中身が次の5か所に分かれています。画面の見た目を写しても、この五つがそろわないと同じ紙は出ません。
帳票の中身がある5か所
見た目のレイアウトだけを写しても、同じ紙は出ない
1レイアウトパート
ヘッダ・ボディ・小計・総計・フッタ。ボディは1件ごと、ヘッダとフッタはページごと、小計はグループごとに出る
タイトルヘッダは最初のレコード、タイトルフッタは最後のレコードの値を出す
2ソート
小計パートの合計は、区分けのフィールドでソートしたときだけ、グループごとに出る
伝票ごとの合計は、印刷の前に動くスクリプトのソートにも支えられている
3計算の式
合計・件数・税額などの式は、レイアウトではなくフィールドの定義にある
書き出したXMLのFieldCatalogから式を拾う
4スクリプト
検索の条件、ソート、レイアウトの切り替え、印刷やPDFとしての保存
ボタンに付いたスクリプトを読むと、どの伝票をどう出しているかが分かる
5印刷設定とスライド
用紙と向き、空いた場所を詰めるスライドの設定
スライドはプレビューと印刷でしか見えない。共有しているファイルの印刷設定は利用者ごと
出典:FileMaker Proヘルプ「レイアウトパートのタイプについて」・「小計によるレコードのソート」・「印刷時の余分なスペースの除去」・「ネットワーク上でのファイルの共有」
レイアウトはパートに分かれていて、ボディは対象レコードの1件ごとに、ヘッダとフッタはページごとに、小計パートはグループごとに出ます(レイアウトパートのタイプについて)。小計パートの合計は、区分けに使うフィールドでレコードをソートしたときにだけ、グループごとに出ます(小計によるレコードのソート)。つまり、請求書の「伝票ごとの合計」は、レイアウトだけでなく、印刷の前に動くスクリプトのソートにも支えられています。
見た目にも落とし穴があります。印刷のときに空いた場所を詰めるスライドの設定は、プレビューモードと印刷でしか効き目が見えません(印刷時の余分なスペースの除去)。共有しているファイルでは、印刷設定が利用者ごとに別々に持たれます(ネットワーク上でのファイルの共有)。ブラウズモードの画面を撮っても、紙の出方は分かりません。また、書き出しのファイル形式のほとんどはデータだけを運び、フォントや大きさ、色は運びません(サポートされているインポートおよびエクスポートファイルフォーマット)。帳票は、書き出して持っていくものではなく、移し先で作り直すものです。
旧ファイルで出したPDFを、正解の見本として残す
作り直す前に、旧ファイルから帳票を出して残します。
- 書き出したXMLのスクリプトから、印刷・PDFとして保存・レコードのエクスポート・メールの送信にあたるステップを含むものを拾い、帳票と外に出すものの一覧を作る
- 帳票ごとに、元になるレイアウト、そのレイアウトのテーブル、検索とソートの条件、用紙と向き、合計や税の計算に使う集計・計算フィールドを書き添える
- 明細が多くて改ページが起きる伝票、金額が0やマイナスの行、長い品名、税率の違う品が混ざる伝票など、実際のレコードから代表を選び、旧ファイルでPDFにする
- そのPDFを正解の見本として保管し、移し先で同じレコードから出したものと並べて比べる
PDFで保存するには、アクセス権で印刷が許されている必要があります(PDF ファイルでのレコードの保存および送信)。使い続ける場合も、この見本は無駄になりません。FileMaker 2026では、複数の元からPDFを組み立てるスクリプトステップ(PDFを作成・追加・閉じるなど)が加わっていて(リリースノート 26.0.1)、帳票の作り方を変えるときにも、見本が比べる相手になります。
移し先は、ファイルではなく業務ごとに決める
一つのFileMakerファイルには、テーブルをいくつでも入れられます(Developer ユーティリティの使用)。長く使ってきたファイルほど、顧客・受注・在庫・請求・作業の記録といった別々の業務が一つに同居していることがあります。書き出したXMLのテーブルの一覧を業務ごとに分け、業務ごとに移し先を決めます。全部を一度に同じ先へ移す必要はありません。
移し先は業務ごとに決める(当社の整理)
当社の整理。残した業務と移した業務の間は、FileMaker ServerのData API・OData・ODBCでつなげる(Claris「FileMaker Server」の購入プラン)
受注・在庫・出荷のように既製のサービスや定番の作りがある業務は、業務の流れを製品に合わせる前提で、置き換えを考えます。FileMakerで受発注や在庫を回している場合の作り直し方は、当社の受発注・在庫管理システムの開発のページにまとめています。自社だけの工夫が多い業務は、FileMakerに残して2025・2026とServerかCloudに整えるか、ノーコード・ローコードで組み直すか、専用のWebアプリにするかを、使う人と直す人の顔ぶれで選びます。
一部の業務だけを先に移すと、しばらくはFileMakerと新しい仕組みが並びます。その間のデータのやり取りは、FileMaker ServerのData APIやOData、ODBC・JDBCで持てます(FileMaker Server の購入プラン)。移す順番は、移す理由がはっきりしている業務を先にし、帳票の多い業務は並べて確かめる期間を長めにとります。
旧ファイルと並べて動かす期間に確かめること
切り替える前に、しばらく旧ファイルと新しい仕組みの両方に同じ入力をして、結果を比べます。比べるのは、件数、金額と数量の合計、帳票のPDF、書き出したデータの四つです。期間は、月次の締めや請求のような業務の区切りを少なくとも1回またぐように置きます。締めの日にだけ動く計算やスクリプトが入っていることがあるからです。
旧ファイルと並べて動かす期間(当社の整理)
月次の締めや請求を1回以上またいでから切り替える
切り替えた後も、旧データはCSV・Excel・XML・PDFで残す
並べている間もFileMakerのライセンスが要る。期限切れから12か月でセキュリティ更新も止まる
ライセンスとセキュリティ更新の条件はClaris「サポート終了について」、書き出せる形式はFileMaker Proヘルプ「サポートされているファイルフォーマット」による
差が出たら、原因を三つに分けます。新しい仕組みの作りの誤りなら、新しい方を直します。旧ファイルの計算が昔の決まりのまま残っていたなら、どちらに合わせるかを使っている人と決めます。データを移したときの形の問題なら、移し方を直します。品番やコードのように数字に見える文字列は、取り込む側で数値として扱われて形が変わることがあります。Clarisも、FileMaker 2026でExcelから取り込むときにこれを防ぐ選択肢を足しています(リリースノート 26.0.1)。
並べている間も、FileMakerのライセンスは要ります。期限が切れて12か月を過ぎるとセキュリティ更新も受けられなくなるので(サポート終了について)、並べる期間と切り替えの日は、ライセンスの期限から逆算して決めます。
切り替えた後も、旧ファイルの中身は、FileMakerが無くても読める形で残します。テーブルごとのデータはCSVやExcel(.xlsx)に書き出せます(ファイルフォーマット)。オブジェクトフィールドに入れた画像やPDFは、フィールドの内容を書き出す機能で、ファイルとして取り出せます(フィールドの内容のエクスポート)。これに設計のXMLと帳票の見本のPDFを添えておけば、後から「昔はどう計算していたか」を確かめられます。
書き出した設計と帳票の見本は、どちらを選んでも残る
FileMakerを使い続けるか移行するかは、版とライセンス、共有の仕方を確かめたうえで、使う人・業務の形・直せる人で決まります。どちらを選んでも最初の作業は同じで、完全アクセスで設計をXMLに書き出し、生成AIの下書きを使う人と確かめ、帳票を旧ファイルからPDFにして残すことです。この三つがそろえば、業務ごとに移し先を選び、並べて確かめる期間を組めます。
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