広告の月次レポートは会議で決める3つから作る|定義を固めて良い悪いの判定まで自動に
広告の月次レポートを、会議で決める3つ(予算をどこに寄せるか・どれを止めるか・何を見直すか)から逆に組み立てる進め方です。CV・税・締め日の定義を固定し、前年同月と月ごとの目標をもとに月×指標の良い・悪いを判定し、キャンペーンごとの打ち手まで出します。
目次 クリックで開く
月が明けると、検索広告、SNS 広告、ディスプレイ広告の管理画面から先月の数字を書き出し、表計算に貼って、前月比の列を足す。会議では「1件の購入にかかった広告費(CPA)が先月より少し高くなっています」「広告費あたりの売上(ROAS)は下がっています」と順に読み上げる。どの数字も上がったか下がったかの話で終わり、来月どこに予算を寄せるか、どのキャンペーンを止めるかは「もう1か月様子を見ましょう」になる。そんな月次の会議はないでしょうか。
私たち Aurant Technologies は、広告の運用と、社内のデータをまとめて見る画面(ダッシュボード)づくりを支援している会社です。以前、代理店に頼む月次レポートに入れてもらう項目を書きました。この記事はその続きで、自社で持つ側の月次レポートを、会議で決めることから組み立てる進め方をまとめます。
月次レポートを、読み上げる資料ではなく決めるための画面にするには、会議で決める3つ(予算をどこに寄せるか、どれを止めるか、何を見直すか)から逆に画面を決め、成果(CV。ここでは購入)・税・日付の定義を固定して、月×指標の「良い/悪い」の判定までを毎月自動で出します。こうしておくと、月初に人がやることを、表づくりではなく、良い・悪いと出たマスに打ち手を決めることに絞れます。
最後にできあがる判定の図は、次のようなものです。
上の表は、アカウント全体を月×指標で判定したものです。黒が良い、橙が悪い、灰色が「何もしなくても出る幅」の内です。下の表は、同じ判定をキャンペーンの行で出し、右端に打ち手を付けています。会議で話すのは、黒と橙のマスと、右端の打ち手だけです。
会議で決めるのは3つ:予算をどこに寄せるか、どれを止めるか、何を見直すか
最初に、月次の会議で決めることを書き出します。ここでは次の3つにします。
- 寄せる成果が目標を上回り続け、予算を使い切っているキャンペーンに、来月の予算を足す。
- 止める・縮める目標を下回り続けるキャンペーンを止めるか、予算を減らす。
- 見直す今月だけ悪いキャンペーンや、クリックされない・買われないキャンペーンの、広告文か着地ページ(広告から飛ぶページ)を直す。
次に、この3つを決めるのに使う指標だけを画面に残します。寄せるか止めるかには、ROAS(CV の金額÷広告費)か CPA(広告費÷CV 数)と、予算をどれだけ使ったか。見直すには、表示されたうちクリックされた割合(CTR)と、クリックした人のうち購入した割合(CVR)。それに、率がどれだけ当てになるかを見るための CV 数です。表示回数や平均のクリック単価は、3つのどれを決めるにも直接は使わないので、画面からは外し、元の表にだけ残します。
売上の金額が取れる通販なら ROAS を、問い合わせが目的で金額がつかないなら CPA を主にします。図の会社は通販なので、打ち手は ROAS で決めています。
進め方は、次の6つの段です。1〜3は最初に一度決め、4と5は毎月自動で回します。人が手を動かすのは、会議の6だけです。
定義を1枚に固定する:使う列、税込か税抜か、締め日
月次の数字は、数え方を変えると上がったり下がったりします。判定が数え方の違いで動かないように、媒体ごとに次の3つを決めて1枚に書き、画面の隅にも載せておきます。例は Google 広告のものです。ほかの媒体は、同じことをそれぞれのヘルプで確かめて、同じ表の別の行に書きます。
- 使う列CV に数える行動を1つに決め(図の会社は「購入完了」だけ)、管理画面のどの列を使うかを書きます。Google 広告なら、[コンバージョン] 列はメインに設定したアクションの数、[すべてのコンバージョン] 列はサブも含めた数です。CPA と ROAS は、取り込んだ広告費・CV 数・CV の金額から自分で割って出します。
- 税込か税抜か広告費と CV の金額の税の扱いをそろえます。CV の金額に税込の購入額を送り、広告費が税抜なら、消費税10%の商品では ROAS が1割高く出ます。費用が税を含むかは請求書と突き合わせ、CV の金額に何を送っているかは計測の設定で確かめます。図の会社は税抜にそろえています。
- 日付と締め日CV をどの日付で数えるかと、月をいつ確定させるか。図の会社は、翌月7日に取り直して確定にしています。
締め日を決めるのは、月が明けてすぐの数字が、あとから動くからです。Google 広告のヘルプには、メインのコンバージョンの列は「コンバージョンの日時ではなくクリックの日時に基づいて計算されます」とあります。月末にクリックして翌月に購入した人は、前の月の CV として後から足されます。自社の注文の記録のように購入した日で数える数字と突き合わせたいときは、同じページにある「コンバージョンの日時別」の列を使います。何日後を締め日にするかは、過去の月を見て、月末から何日たつと CV がほぼ増えなくなるかで決めます。確定前の月は判定せず、表では点線の「まだ」にします。
媒体ごとの CV を足した数は、自社の注文の数とは別のものとして扱います。それぞれの媒体が、自分の広告が関わった購入を数えるので、同じ購入を2つの媒体が数えることがあるからです。判定は媒体ごと・キャンペーンごとの数字で行い、全体の売上は自社の注文の記録で見ます。
判定の基準を決める:前年同月をもとに比べ、同じ比べ方のぶれを幅にする
比べる相手は、5つの指標とも前年同月をもとにします。CV 数と CTR・CVR は前年同月の値そのもの、CPA と ROAS は月ごとの目標です。前月と比べないのは、11〜12月に増えて2月に減るような季節の波が混ざるからです。目標も同じ理由で、年に1つではなく月ごとに置きます。図の会社は、前年同月の実績から ROAS は3%上、CPA は3%下を、その月の目標にしています。
基準と少しでも違えば良い・悪いと出す作りにすると、毎月あちこちが橙になり、会議が読み上げに戻りやすくなります。そこで、何もしなくてもこれくらいはぶれる、という幅を決め、それを超えたときだけ良い・悪いにします。幅は、判定と同じ比べ方(前年同月比)のぶれから出します。前年度の前年同月比を出すので、データは3年分要ります。表計算なら次の順です。
- 前年度の12か月について、指標ごと・キャンペーンごとに、前年同月比でどれだけ動いたか(%)を出す。
- 12個の動きを大きさの順に並べ、ここでは大きいほうから3番目を幅にする。何番目にするかは例の値で、幅の外に出る月を年に何回まで許すかで決める(3番目なら、前年度でも12か月のうち2か月は幅の外に出ていた)。
- 基準より幅を超えて良ければ「良い」、幅を超えて悪ければ「悪い」、その間は「幅の内」にする。CPA は下がるほど良いとして扱う。
- 幅は年に1回決め直し、月ごとには動かさない。
目標を前年同月の実績から一定の割合で置いているなら、目標比は前年同月比と同じ幅でぶれる(中心が置き方のぶんずれるだけ)ので、CPA と ROAS の幅も同じ手順で出せます。図なら、全体の ROAS の幅は±4.1%、一般ワードのキャンペーンの ROAS は±6.4% です。前月比の動きで幅を出すと季節の波が入り、図の全体の CV 数なら±21.5%と、前年同月比で出した±3.6%よりずっと広くなり、CV 数の列には悪いマスがほとんど出なくなります。
目標を前年より3%良く置いているので、ここでの「悪い」は、前年を3%上回る目標に、幅を超えて届かなかったという意味です。前年並みに近い月でも、目標比では悪いと出ることがあります。図の全体の CPA が7〜9月と続けて悪いのは、この置き方によるものです。
もう一つ、件数の線を決めます。CV が少ないキャンペーンは、数件の出入りで率が大きく動き、幅の外に出やすくなります。ここでは、CV が月30件に届かないキャンペーンは判定せず、3か月まとめて見ることにしています。図では SNS 広告の再訪向けが9月に20件で判定せず、7〜9月の58件で見ます。30件は例の値で、自社の過去の月で、件数の少ないキャンペーンの率がどれだけ散らばるかを見て決めます。
取り込むのは6つの数だけにし、率は自分で割り直す
取り込むのは、媒体・キャンペーン・月ごとの、予算、広告費、表示回数、クリック数、CV 数、CV の金額の6つの数です。CTR・CVR・CPA・ROAS は、取り込んだあとに自分で割り算して出します。媒体の画面に出ている率をそのまま持つと、全体の行を作るときに率を平均してしまい、合計から割った値と合わなくなるからです。
集め方は、管理画面の書き出しか API(外から数字を取り出す仕組み)です。Google 広告の例では、表の右上のダウンロードから CSV や Excel などで書き出せ、毎日・毎週などの頻度でメールに送る設定もできるとヘルプに書かれています。人の手を介さずに取るなら、API で取りたい項目と取り元を書いた問い合わせを送ってレポートのデータを取る、と開発者向けの説明にあります。ほかの媒体も、書き出しと定期の送信、API があるかをそれぞれのヘルプで確かめ、媒体ごとに取り方を決めて定義の表に書いておきます。
取れなかった日を空欄のままにすると、ゼロに見えて「悪い」と判定されます。画面に取得の記録を置き、取れなかった日は「穴」と出して、その月の判定を止めておきます。定期の送信に頼る場合も、毎月届いたかをこの記録で確かめます。Google 広告では、保存したレポートを18か月間一度も利用しない(開く、ダウンロードする、そのレポートを入れたダッシュボードを開く、のどれもしない)と、自動的に削除されると書かれています。
判定から打ち手を決める:上から順に当てはめる
判定が出たら、打ち手は次の決まりで付けます。1つのキャンペーンが2つ以上に当たるときは、上から順に見て、最初に当たったものにします。決まりは先に書いておき、会議ではそれに当てはめます。
- 判定しない:CV が月30件に届かない。ROAS が良く見えても寄せるの対象にせず、3か月まとめて見る。
- 止める・縮める:ROAS が2か月続けて悪い(判定しない月は、続いたと数えない。寄せるも同じ)。CTR や CVR も悪くても、見直すより先に、止めるか縮めるかを会議で決める(要判断)。
- 寄せる:ROAS が2か月続けて良く、予算をほぼ使い切っている(ここでは95%以上。何%にするかは例の値)。
- 見直す:ROAS が今月だけ悪い、または CTR か CVR が悪い。CTR が悪ければ広告文、CVR が悪ければ着地ページを見る。
- そのまま:上のどれにも当たらない。
2か月続いたかで分けるのは、幅を超える月は、何もしなくても年に何回かは出るからです。前年度でも2か月は幅の外に出ていたので、1か月だけの外れでは予算を動かさず、まず見直しにとどめます。予算を使い切っていないキャンペーンは、ROAS が良くても、予算を足したぶん使われるとは限らないので、寄せる候補にしません。
図の9月なら、一般ワードは ROAS が2か月続けて良く、予算を99%使っているので寄せる。SNS 広告の新規向けは ROAS が2か月続けて悪いので、CTR と CVR も悪いものの、まず止める・縮めるの候補。商品カテゴリは9月だけ ROAS が悪く、CVR も悪いので着地ページの見直し。ディスプレイ広告の似た人向けは、8月は悪かったものの9月は幅の内なので、そのまま、となります。
止める・縮めるを人の判断に残すのは、ROAS だけでは切れないことがあるからです。新規の人に向けた広告は、あとで再訪向けの広告が届く相手を集めていることがあり、止めると別のキャンペーンの数字が下がる場合があります。会議では、止めたときに何を見て戻すかまで決めておきます。
全体の行とキャンペーンの行は、役割を分けて使います。図では9月の全体の行は CPA だけが悪く、ROAS は幅の内ですが、キャンペーンの行には良いも悪いもあります。良いキャンペーンと悪いキャンペーンが合計の中で打ち消し合うので、全体の判定だけでは打ち手は決まりません。全体の行は「今月どの指標から見るか」の入口にし、打ち手はキャンペーンの行で決めます。
月次の1画面では、印を付けた3か所だけを見る
ここまでを会議で開く1画面にまとめると、次のようになります。
①で、今月どの指標に黒と橙があるかを見ます。理由を確かめたいときだけ、隣の ROAS の推移を見ます。前年の線と月ごとの目標の線を重ねてあるので、季節の波か、今年だけの動きかが分かります。②には、判定の決まりから出た打ち手の候補が並びます。会議では候補ごとに、誰が、いつまでに、何をするか、来月どの行で確かめるかを書き込みます。③は、その月の数字がそろっているかと、定義です。穴がある月は判定が止まっているので、打ち手を決める前に取り直します。
効き目は、翌月以降の判定表で、そのキャンペーンの行を追って確かめる
会議で決めた打ち手は、翌月以降の判定表で、同じキャンペーンの行を追って確かめます。寄せたキャンペーンは、予算を足したあとも ROAS が幅の内か良いに残っているか。止めた・縮めたキャンペーンは、全体の CV 数が幅を超えて落ちていないか。見直したキャンペーンは、直した指標(CTR か CVR)が幅の内に戻ったか、です。
動いたとみなす幅は、判定と同じ幅を使います。図の一般ワードなら、ROAS が目標から±6.4% を超えて離れたときに、動いたとみなします。
待つ期間も決めます。Google 広告のヘルプには、予算、目標(アクション単価または広告費用対効果)、コンバージョン目標を手動で頻繁に調整すると、標準の7〜14日間の学習期間がリセットされ、最適化が遅れると書かれています。Google 広告で予算や目標を変えた月は、月の途中まで動きが落ち着かないので、その月の判定は参考にとどめ、次の丸1か月で確かめます。ほかの媒体の自動の最適化にどれだけ日数がかかるかは、それぞれのヘルプで確かめます。同じキャンペーンの予算を同じ月に何度も変えないことも、会議の決まりにしておきます。
月次レポートを作る時間がどれだけ減るかは、この記事では測っていません。確かめるなら、仕組みを作り始める前に、月初の作業にかかった時間を記録しておきます。
この判定が受け持たないこと
この判定がそろえるのは、目標や前年と比べた良い・悪いを、毎月同じ物差しで見ることです。媒体の数字には、その広告がなくても起きた購入も含まれるので、判定が良くても、広告で増えた分がどれだけかは分かりません。それを確かめるには、配信しない群や期間を分けて比べる方法が別に要ります。目標そのものが妥当かも、この判定では決められません。判定が毎月良いキャンペーンばかりなら、目標の置き方を見直す合図として扱います。なお、本文の Google 広告のヘルプの内容は、2026年10月17日に確かめたものです。
表3つと、割り算と判定の列で作れる
図と画面は、3つの表から作りました。媒体の月次の表(月、媒体、キャンペーン、予算、広告費、表示回数、クリック数、CV 数、CV の金額。3年分)、目標の表(キャンペーンと月ごとの目標の ROAS と CPA)、幅の表(前年度の前年同月比から出した、指標とキャンペーンごとの幅)です。率は月次の表から割り算で出し、判定は「基準からの動き」と幅を比べる列で出します。表計算でも、毎月書き出した表を貼れば同じ判定表は作れます。取り込みを自動にするときは、貼る作業を、書き出しの定期の送信か API からの取り込みに替えます。
まずは、先月の会議で決めたことを3つに分けてみる
明日からできるのは、直近の月次の会議の記録を開き、決めたことを「寄せる」「止める・縮める」「見直す」に分けて書き出し、それぞれを決めるのに使った数字に印を付けることです。印の付かなかった数字が、画面から外す候補です。そのあと、管理画面から3年分の月次の数字を書き出し、主にする指標(ROAS か CPA)の前年同月比から、幅を1本出してみます。
媒体の数字を毎月集め、判定と打ち手の候補までを自動で出す仕組みづくりは、当社の広告運用の支援とデータ分析・BI の支援で一緒に進められます。
広告運用支援
Google広告・Meta広告・LINE広告・Yahoo!広告の運用を、GA4やCRMとのデータ連携を土台に立て直します。コンバージョン計測の整備から媒体をまたいだ改善まで、社内で判断できる形で伴走します。
