管理表と業務システムの突き合わせ方|キーを3つ当て、差を「どちらが正か」で仕分ける
同じ案件を営業の管理表と業務システムの2か所で持つときの突き合わせ方です。ID・案件名の行番号・社名の3つのキーで組を作り、差を1行1項目で書き出して種類ごとに仕分け、項目ごとに「どちらを正とするか」を決めてから直します。税込と税抜、月のずれ、10円以下の差の扱いも示します。
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たとえば月末、営業の管理表の見込みと、業務システムに入っている案件の見込みが合わない。管理表で ID の欄が空の行を数えると何十行もあり、「業務システムに入れ忘れた案件がこれだけある」と報告しかけた。念のため業務システムの側を社名で探すと、ほとんどの案件は入っていた――。
同じ案件を2か所で持つと、書き込む人も書き込む日も違うので、値は少しずつずれていきます。ずれを見つけるには2つの台帳を突き合わせるしかありませんが、照らすキーを1つに頼ると、ずれていない行まで「抜け」に見えます。抜けに見えた行を慌てて登録すると、今度は同じ案件が2件になります。
当社は、データの活用と業務の仕組みづくりを支援している会社です。2026年10月には、自社の営業の管理表と、社内の業務システムの案件を全行突き合わせました。そのとき決めなければならなかったのは、どの行が本当に抜けているのかと、食い違った値のどちらを信じて直すのか、の2つでした。
ここで書くのは、ID・案件名に入っている行番号・社名の3つのキーを確かなものから順に当てて組を作り、値の違いを1行1項目で書き出して種類ごとに仕分け、項目ごとに「どちらを正とするか」を決めてから直す進め方です。全体の流れは次のとおりです。
決めるのは、どちらの台帳に寄せるかではなく、項目ごとにどちらを正とするか
突き合わせを始める前に決めたいのは、「管理表と業務システムのどちらに寄せるか」ではなく、項目ごとに、どちらの値を正とするかです。1つの台帳を丸ごと正にすると、項目によっては、古い値で新しい値を上書きすることになります。
当社の突き合わせでは、ここで一度止まりました。前の見直しで、業務システムの値を優先し、金額と状態は変えない、と決めてありました。ところが突き合わせた結果をもとに直す段になって、管理表をもとに業務システムを上書きする、という受け取り方もあることが分かりました。決めた一文が残っていても、受け取る人によって中身が変わることがあります。結局、管理表をもとに上書きする範囲を絞ったうえで、状態は業務システムが先に進んでいればそのまま、管理表のほうが古いと分かっている行は上書きしない、と例外を決め直しました。
だから、決めたことは突き合わせの前に1枚の表に書いておきます。列は、項目、正とする側、その理由、決まりに当てはまらないときに誰が決めるか、の4つです。理由の列があると、例外が出たときにも、同じ考え方で寄せる側を決められます。表の中身は、差を仕分けたあとに、項目ごとに埋めていきます。
キーは確かなものから順に当てる。ID、行番号と社名の組、社名
2つの台帳で同じ案件を指す手がかりは、1つとは限りません。図の台帳では、管理表に業務システムの ID を写す欄があり、業務システムの案件名の頭か末尾には、管理表の行番号が入っています(「045_導入支援」「導入支援|R045」のように)。そして、両方に社名があります。この3つを、確かなものから順に当てていきます。
- 両方の台帳に「照合用の社名」の列を足し、全角と半角をそろえてから、「株式会社」「有限会社」「(株)」と空白を除いた社名を入れる。業務システムの側には、案件名から取り出した行番号の列も足す。
- まず ID で探す。ID の欄が空の行と、ID で見つからない行だけ、次のキーに進む。
- 2番目のキーは、行番号と照合用の社名をつないだもの(「45|朝凪食品」のような形)。行番号だけで当てると、番号が1つずれたときに隣の行の案件に当たってしまうので、社名と組にする。
- それでも見つからない行は、照合用の社名で探す。同じ社名の案件が2件以上あるときは、社名では決めない。社名で当たった行は、案件名の番号が行番号と合っているかを見て、合わなければ「番号のずれ」の印を付ける。
- 同じ案件に管理表の2行が当たったら「2行→1件」の印を付ける。業務システムの側で、どの行にも当たらなかった案件を「業務システムにだけある」とする。最後まで当たらなかった行は、略称や旧社名のことがあるので、担当と案件の中身を見て人が当てる。
どれも表計算の関数で作れます。そのまま使える式は、最後の節に置きました。
案件名に管理表の行番号を入れていない台帳なら、2番目のキーは、自分の台帳にある列の組み合わせから選びます。選ぶ条件は、両方の台帳にあること、一度書いたら変わりにくいこと、社名と組にすると1件に絞れること、の3つです。たとえば、社名と案件の種類、社名と最初に問い合わせを受けた日などです。金額・状態・担当・計上月のように突き合わせで比べたい項目は、ずれていると当たらなくなるので、キーには使いません。
キーを1つずつ足していくと、相手が見つからない行は次のように減ります。
上の段の左端が、ID の欄だけで当てたときです。ID の欄が空の31行が、そのまま「業務システムに無い」に見えます。行番号と社名の組を足すと12行、社名を足すと3行まで減り、人が確かめたあとに残る、本当に片方にだけあるものは、管理表の1行と業務システムの4件です。どこまで減るかは台帳によって違いますが、ID の欄だけで数えた数がそのまま抜けの数ではないことは、キーを足した段ごとの数を並べると見えてきます。
当社の突き合わせで最初に引っかかったのも、ID の欄でした。管理表の全156行のうち、ID の欄が空の行が26ありました。その26行を、案件名の行番号と社名で業務システムの側から探し直すと、どれも入っていました。業務システムに本当に無かったのは、全体で1行だけです。番号が1つずれていた行や、管理表の2行が1件に当たる組もあり、そうした行は自動では当てず、1件ずつ見て決めました。
差は1行1項目で書き出し、種類ごとに仕分ける
組ができたら、比べる項目(金額・月額・状態・担当・計上月など)ごとに、相手の台帳の値を横に引いてきて、違うかどうかを判定する列を足します。値が違う項目は、1行1項目で差の一覧に書き出します。1つの案件で金額と状態の両方が違えば、2行です。表計算なら、判定の列でフィルターをかけ、空でない行の「行・案件・項目名・両方の値・差の種類」を差の一覧に貼り、項目の数だけ貼り足していけば、1行1項目の一覧になります。ただし「2行→1件」の印が付いた行は、1行ずつ比べると金額や月が違って見えるので、金額・月の判定は貼らず、組として人が見る側に回します。
差の一覧に置く欄は、管理表の行、業務システムの案件、当たったキー、項目、管理表の値、業務システムの値、差の種類、どちらを正とするか、直し方(決まりで直す・人が判断・直さない)、理由のメモ、直した日(管理表と業務システムの両方)です。
金額を比べる前にそろえておくのが、税込か税抜かです。列の見出しに「税抜」と書いてあっても、別の表から写した値だけ税込になっていることがあります。金額の判定の列は、次の順に見ます(ここでの例は、税率10%の項目です)。
- 2つの値の差が10円以下なら「10円以下の差」。税抜の額に1.1を掛けて税込にし、端数を切り捨てて1.1で割り戻すと1円ずれることがあるので、差としては数えない。
- 片方が、もう片方に1.1を掛けて四捨五入した値と10円以内で合えば「税込と税抜」。金額の差には数えない。
- それ以外は「金額の差」。
税額の端数には、法令の決まりもあります。適格請求書に書く消費税額は、税率ごとの税抜の合計に10%(軽減税率の対象は8%)を掛けるか、税込の合計に110分の10(同じく108分の8)を掛けて出し、「一円未満の端数が生じたときは、当該端数を処理するものとする」とされています(消費税法施行令第70条の10)。この条文は、切り捨てるか四捨五入するかまでは決めていません。台帳ごとに計算のしかたが違えば、円単位の差は起こりえます。
月のずれは、売上の見込みを月ごとに足したときに効いてきます。同じ案件が管理表では11月、業務システムでは12月に入っていると、月ごとの合計はどちらの月でも合いません。判定の列にはずれた月数を入れておき、1か月と2か月以上を分けます。
仕分けた一覧が、次の画面です。
①に「社名」か「人」と付いた行は、差より先に、当たり方そのものを確かめます。②のメモが空の差は決まりで直せる差で、③に正とする側が入っています。
どちらを正とするかは、項目ごとに決まりと理由を書く
最初の節の表を、差の種類ごとに埋めていきます。中心の図の下の段と画面の③は、次の決まりで仕分けたものです。
- 状態:進んでいる側を残す。この台帳では、失注と保留のほかに状態を戻すことは無いので、進んでいる側が新しいとみるから。失注と保留は進む向きとは別なので、担当に確かめる。
- 金額:契約の前は管理表、内諾・稼働のあとは業務システム。この台帳では、見積もりを動かすのは営業で、契約したあとの額は業務システムに入るから。
- 税込と税抜:税抜にそろえる。列の見出しが税抜だから。
- 計上月:1か月のずれは管理表。この台帳では見込みの月を動かすのは営業で、1か月なら業務システムへの書き写しが追いついていないだけ、とみるから。2か月以上ずれていれば見込みそのものが変わった可能性があるので、担当に確かめる。
- 担当:業務システム。この台帳では、担当替えの手続きを業務システムでするから。
- 2行→1件、番号のずれ、社名の言い換え、片方にだけあるもの:人が決める。当たり方そのものが確かでないから。失注済みの古い案件は、管理表に戻す理由が無いので直さない。
- 10円以下の差:直さない。端数の処理のずれで、どちらの値も誤りではないから。
決まりは会社ごとに違って構いません。理由の列まで埋めておけば、当てはまらない差が出たときも、表を読んだ人が同じ側に寄せられます。
直す順番は、決まりで直せる差、人が判断する差、直さない差
直す前に、両方の台帳をその時点のまま書き出して控えます。あとで「前はいくらだったか」を聞かれたとき、控えが無いと答えられません。
次に、決まりで直せる差を、決まりのとおりにまとめて直します。そのあと、人が判断する差を1件ずつ見ます。決めた理由は、業務システムの備考のように、次に突き合わせる人が読める場所に書きます。当社でも、迷った行の判断は業務システムの案件の備考に書いてあり、上書きする前にそこを読んで、上書きから外した行がありました。直さない差(10円以下の差や、失注済みの古い案件)は、一覧に「直さない」と残しておけば、次の突き合わせで同じ差が出たときに見直さずに済みます。
2行→1件の組は、中身で扱いが分かれます。同じ値の行が2つ入っているなら、管理表で見込みを合計すると、その案件が二重に入っています。1つの契約を2期に分けて書いた行なら、業務システムの1件の金額が2行の合計になっているはずです。どちらなのかを確かめてから、まとめるか分けるかを決めます。
片方を直したら、もう片方も同じ日に直す
突き合わせて直しても、書き込む場所が2つあるかぎり、またずれます。片方だけ直すと、両方を見ている人には、同じ案件の数字が2通りに見えます。当社でも、業務システムの側だけ先に直して、管理表とずれたことがありました。直す段取りには、両方を書き終えてから報告する、を入れておきます。管理表から業務システムへ移す途中のように、2か所で持つ期間が長いほど、ずれる機会も増えます(移し方はExcel の顧客管理から CRM へ移す手順の記事に書きました)。
流し直しは月に1回、見込みを締める前に行います。見るのは、新しく出た差と、前の回から残っている差の数です。同じ種類の差が毎月新しく出るなら、直すより先に、書き込み方か決まりのほうを見直します。
突き合わせで分かるのは、見込みがどこで食い違っているか
突き合わせの結果で分かるのは、見込みの売上が、管理表と業務システムのどこで食い違っているかです。二重に入っている案件、税込と税抜が混ざっている列、月をまたいでずれている案件が、行の単位で分かり、人が1件ずつ見る行を絞れます。どちらの台帳から出しても同じ見込みになることを目指すのは、そのあとの直しの仕事です。
当社の突き合わせでは、管理表155行のうち、差があったのは43行でした。いちばん多かったのは月ごとの見込みの差で、次が状態の差です。1つの行に差が2つ以上重なることもあり、月額の欄だけ別の表から写していて税込(1.1倍)になっていた行もありました。キーで自動に対応がつかず、どの案件に当たるかを手で決めたのは、7行と、2行→1件の2組です。そのうち1組は、その場では決めずに確かめる側に回しました。
この突き合わせが受け持たないこと
突き合わせで分かるのは、2つの台帳が食い違っている場所までです。どちらの値が事実として正しいかは、契約書や請求の記録を見ないと決まりません。決まりで「正」とした側も、その台帳に正しく書き込まれている前提での話です。また、社名をそろえる規則は、名前の似た別の会社を同じ会社として当ててしまうことがあります。社名で当たった行は、行番号やほかの項目と合わせて確かめます。突き合わせで手間がどれだけ減るかは、当社では測っていません。
この図と画面の作り方(表計算の式)
2つの台帳を表計算の2つの表(「管理表」と「システム」)に置き、列を足していけば、図と画面と同じ一覧が作れます。式は、Excel(XLOOKUP のある Microsoft 365 か Excel 2021 以降)と Google スプレッドシートの両方にある関数だけで書いています。管理表は A列が行番号、B列が業務システムの ID、C列が会社名、F列が金額、G列が計上月、業務システムは A列が案件番号、B列が ID、C列が案件名、D列が会社名、G列が金額、H列が計上月の並びです。どれも2行目に入れて、下へ写します。
- システムの K列(案件名の行番号。番号が無ければ空)
=IFERROR(VALUE(LEFT(C2,3)),IFERROR(VALUE(MID(C2,FIND("|R",C2)+2,3)),"")) - システムの L列と管理表の J列(照合用の社名。上がシステム、下が管理表)
=SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(ASC(D2),"株式会社",""),"有限会社",""),"合同会社",""),"(株)",""),"(有)","")," ","")," ","")=SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(ASC(C2),"株式会社",""),"有限会社",""),"合同会社",""),"(株)",""),"(有)","")," ","")," ","") - システムの M列と管理表の K列(行番号と社名をつないだキー)
=IF(K2="","",K2&"|"&L2)=A2&"|"&J2 - 管理表の L・M・N列(ID で/つないだキーで/社名で当たった案件。社名は1件に決まるときだけ)
=IF(B2="","",IFERROR(XLOOKUP(B2,'システム'!B:B,'システム'!A:A),""))=IFERROR(XLOOKUP(K2,'システム'!M:M,'システム'!A:A),"")=IF(COUNTIF('システム'!L:L,J2)=1,XLOOKUP(J2,'システム'!L:L,'システム'!A:A),"") - 管理表の O・P列(当たった案件と、当たったキー)
=IF(L2<>"",L2,IF(M2<>"",M2,N2))=IF(L2<>"","ID",IF(M2<>"","行番号",IF(N2<>"","社名","当たらない"))) - 管理表の Q列(2行→1件と、番号のずれの印)
=IF(O2="","",IF(COUNTIF(O:O,O2)>1,"2行→1件",IF(AND(P2="社名",XLOOKUP(O2,'システム'!A:A,'システム'!K:K)<>""),IF(XLOOKUP(O2,'システム'!A:A,'システム'!K:K)<>A2,"番号のずれ",""),""))) - 管理表の R・S列(業務システムの金額と、金額の差の種類)
=IF(O2="","",XLOOKUP(O2,'システム'!A:A,'システム'!G:G))=IF(O2="","",IF(F2=R2,"",IF(ABS(F2-R2)<=10,"10円以下の差",IF(OR(ABS(R2-ROUND(F2*1.1,0))<=10,ABS(F2-ROUND(R2*1.1,0))<=10),"税込と税抜","金額の差")))) - 管理表の T・U列(業務システムの計上月と、ずれた月数。月は「2026-11」の形の文字)
=IF(O2="","",XLOOKUP(O2,'システム'!A:A,'システム'!H:H))=IF(O2="","",IF(G2=T2,"",ABS((VALUE(LEFT(G2,4))-VALUE(LEFT(T2,4)))*12+VALUE(RIGHT(G2,2))-VALUE(RIGHT(T2,2))))) - システムの N列(業務システムにだけある案件)
=IF(COUNTIF('管理表'!O:O,A2)=0,"業務システムにだけある","")
行番号は VALUE で数に直しています。案件名から取り出した「045」は文字のままだと、管理表の 45 と一致しないからです。社名は ASC で半角にそろえてから「株式会社」などを消すので、「(株)」も「(株)」になってから消えます。ASC の効き方は表計算ソフトによって違うことがあるので、全行に写す前に、「(株)」や全角の空白を含む社名の1行で結果を確かめてください。計上月は「2026-11」の形の文字として入れておきます。Excel ではそのまま打つと日付に変わることがあるので、列を文字列の書式にしてから入れます。式は、図と画面に使った台帳に入れて、同じ当たり方になることを、別の表計算ソフトで確かめました。Excel と Google スプレッドシートの上では試していません。
まずは、ID の欄が空の行を社名で探してみる
明日からできるのは、管理表で ID の欄が空の行を数え、そのうち10行ほどを、業務システムで社名から探してみることです。入っていた行が多ければ、ID の欄だけで数えた「抜け」は、数え直す価値があります。
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