Excelの顧客台帳を顧客管理システムに移すと、いくらかかるか|SaaS・kintone・自社開発で費用が変わる所と、移す前に揃えるデータ

Excelの顧客台帳を顧客管理システムに移す費用は、作り方で決まる分と、移すデータの状態で決まる分に分かれます。SaaSのCRM・kintone・自社開発ごとの利用料の決まり方、同じ要望がライセンス・設定・開発・移行のどこで費用になるか、移す前にExcelで揃える重複・書き方・担当者・履歴・添付、移し方の段取りと見積もりで聞くことを、各社の公式情報で整理しました。

この記事をシェア:
目次 クリックで開く

この記事の要点

  1. 費用は、作り方で決まる分と、移すデータの状態で決まる分に分かれます。製品の利用料は各社が公開していて、kintone®は1ユーザー月1,000円(ライトコース、税抜、最小10ユーザー)から、SalesforceのStarter Suiteは1ユーザー月3,000円、HubSpotには2ユーザーまで無料の版があります。移行と設定の作業は、Excelの台帳の重複、書き方のばらつき、列の意味、担当者、履歴、添付の状態で増えたり減ったりします。
  2. 同じ要望でも、作り方によって費用の出どころが違います。たとえば条件を満たしたら担当者に知らせる仕組みを自分たちで組む場合、kintoneでは画面の設定で組め、Salesforceのフロー(Flow Builder)はPro Suite以上、HubSpotのワークフローはProfessional以上の料金の段にある機能です。自社開発なら開発の範囲に入ります。見積もりは、要望ごとにライセンス・設定・開発・移行のどこで費用になるかを並べて比べます。
  3. 移す前にExcelの側で揃えておくと、外に頼む作業の範囲が小さくなり、各社の見積もりの前提もそろいます。元の台帳を写して残し、1行が会社か人かを決め、重複と書き方をそろえ、担当者を移し先のユーザーに対応させ、履歴と添付の移し方を決めます。見積もりには、入力する人と見るだけの人の数、つなぐ先、移す範囲を添えて頼みます。

費用の出どころは4つ

どれが大きくなるかは、作り方と、移すデータの状態で決まる

提供元に払う

ライセンス(利用料)

  • 使う人の数×1人の月額
  • 上の料金の段とオプション

大きくなりやすい:SaaSのCRMとkintone。使う人が多いほど

画面で作る

設定

  • 項目、一覧、権限、通知、決まった処理
  • 社内で作るか、支援する会社に頼む

大きくなりやすい:要望の数が多いとき。SaaSでは料金の段で設定できる範囲が変わる

作る

開発

  • 標準の機能で足りない画面や処理
  • ほかのシステムとのつなぎ(API)

大きくなりやすい:自社開発では全部がここ。つなぐ先が多いとき

移す

移行

  • 重複と書き方をそろえ、列を項目に対応させる
  • 履歴と添付を入れ、件数を照らす

大きくなりやすい:どの作り方でもかかる。台帳の状態で決まる

移行の作業の大きさは、どの作り方を選んでも、Excelの台帳の状態で決まる

当社の整理

Excelで管理している顧客台帳を、顧客管理システム(CRM)に移す費用は、二つに分けて考えます。一つは作り方で決まる分で、SaaSのCRMやkintoneの利用料、画面や項目の設定、足りない所を作る開発です。もう一つは、移すデータの状態で決まる分です。同じ会社が何行にも入っている、会社名の書き方がそろっていない、「状態」の列に入れる言葉が人によって違う、といった台帳ほど、移す前後の作業が増えます。

製品の利用料は各社が公開しています。kintoneは1ユーザー月1,000円(ライトコース、税抜)からで、最小10ユーザーから契約します(サイボウズ「料金|kintone」)。SalesforceのStarter Suiteは1ユーザー月3,000円(Salesforce「販売価格」)、HubSpotには2ユーザーまで無料の版があります(HubSpot「セールスソフトウェアの価格表」)。確認はいずれも2026年9月30日です。移行や設定の作業の費用は、台帳の状態と作る範囲で変わるので、この記事では作業の相場の金額は載せず、費用が決まる所と、見積もりの前に数えて揃えるものを書きます。

同じ要望でも、作り方によって費用の出どころが違います。条件を満たしたら担当者に知らせる仕組みを自分たちで組むなら、kintoneは画面の設定で組め、Salesforceのフロー(Flow Builder)はPro Suite以上、HubSpotのワークフローはProfessional以上の料金の段にある機能で、自社開発なら作る範囲に入ります。見積もりを比べるときは、要望を並べて、それぞれがライセンス・設定・開発・移行のどこで費用になるかを書き込むと、金額の差がどこから来ているかが見えます。

この記事では、作り方ごとの利用料の決まり方、要望ごとの費用の出どころ、移行の費用を決める台帳の状態の数え方、移す前にExcelの側で揃えること、移し方の段取り、見積もりの前に決めることと各社に聞くことを順に書きます。料金と仕様の出どころは、サイボウズ・Salesforce・HubSpot・Microsoftの公式の料金ページ、ヘルプ、開発者向けの資料と、個人情報保護委員会のガイドラインで、確認日はすべて2026年9月30日です。Aurant Technologiesは特定の製品の販売代理店ではなく、kintone・Salesforce・HubSpotの導入の支援と、専用のWebアプリの開発をしています。製品の優劣は書かず、どこで費用が出るかを並べます。

作り方は、SaaSのCRM、kintone、自社開発に分かれ、利用料の払い方が違う

Excelの台帳の移し先は、大きく三つの作り方に分かれます。違いは、利用料の払い方と、画面の設定で作れる範囲の広さです。

  • SaaSのCRM(Salesforce、HubSpotなど):顧客、案件、対応の記録を入れる形が最初から用意されています。使う人の数と料金の段(エディション)で利用料が決まり、上の段ほど使える機能が増えます。
  • kintone:顧客台帳の形は、アプリとして自分たちで作ります。利用料は使う人の数とコースで決まります。項目や一覧、通知は画面の設定で作れる一方、ライトコースには、APIやJavaScriptでのカスタマイズが含まれません(kintone FAQ「コースごとの違いを教えてください。」)。
  • 自社開発:自社専用のWebアプリを、社内で作るか、開発会社に頼んで作ります。月々の利用料の代わりに、開発の費用と、サーバーやクラウドの費用、保守の費用がかかります。どんな要望も作る範囲に入れられる代わりに、そのすべてが開発の費用になります。

各社の料金ページの表示は次のとおりです。SaaSとkintoneは使う人の数で利用料が積み上がり、HubSpotのProfessionalとEnterpriseは、利用料とは別に1回限りの導入支援が必ず付きます。

作り方利用料の決まり方料金ページの表示(1人の月額)利用料とは別にかかるもの
Salesforce(Sales Cloud)アクセスする人ごとの月額。エディションで使える機能が変わるStarter Suite 3,000円(月払いか年払い)/Pro Suite 12,000円(年間契約)。上のエディションもある設定と移行の作業。Pro SuiteでAPIを使うならアドオン
HubSpot(Sales Hub)シートごとの月額。表示のみのシートは追加費用なし無料(2ユーザーまで)/Starter 2,400円/Professional 12,000円/Enterprise 18,000円からProfessionalは1回限りの導入支援(180,000円)、Enterpriseは同じく420,000円が必ず付く。設定と移行の作業
kintonecybozu.comにログインする人ごとの月額(税抜)。コースで使える機能が変わるライト 1,000円/スタンダード 1,800円/ワイド 3,000円。最小はライトとスタンダードが10ユーザー、ワイドが1,000ユーザー設定と移行の作業。プラグインや連携サービスの利用料(提供元へ)
自社開発利用料は無い(利用料の表示は無い)開発の費用、サーバーやクラウドの費用、保守の費用

出典:サイボウズ「料金|kintone」、Salesforce「販売価格」、HubSpot「セールスソフトウェアの価格表」、サイボウズ「ライセンスに関するご案内(クラウド版)」(2026年9月30日確認)。kintoneの価格は税抜。Salesforceは中堅・中小企業向けの料金ページでドル建ての価格を税抜と書いていて、円の表示には税の記載が無い。HubSpotの料金ページにも税の記載は無く、表の額は請求期間が年額払いのときの表示の、割引前の額(新規の客向けの割引の表示がある)。

無料や最小の版には上限があります。HubSpotの無料の版は2ユーザーまでで、コンタクトは1,000件までです(HubSpot「無料ツール」の価格表)。kintoneのライトとスタンダードは、使う人が少なくても最小10ユーザーからの契約です。見るだけの人の数え方も製品で違い、それは見積もりの前に決めることの節で書きます。

どの作り方が安くなるかは、使う人の数、使う年数、変更の回数で入れ替わります。5年の総額の足し方と、使い始めてから直せる人の決め方は「業務システムは買うか作るか」で、今kintoneを10人に満たない人数で使っている会社の最小契約の扱いは「kintoneの最小契約が10ユーザーに切り替わる」で扱っています。この記事では、その手前にある、要望ごとの費用の出どころと、移すデータの準備を扱います。

同じ要望でも、費用の出どころが違う:ライセンス・設定・開発・移行

見積もりの金額の差は、同じ要望がどこで費用になるかの違いから生まれます。顧客台帳を移すときによく出る要望を五つ選び、作り方ごとの出どころを並べると次のようになります。

要望SalesforceHubSpotkintone自社開発
条件を満たしたら担当者に知らせる仕組みを、自分たちで組むライセンスフロー(Flow Builder)はStarter Suiteに無く、Pro Suiteは組織で5つまで。リードを担当者に割り当てる機能はStarter Suiteにもあるライセンス条件と処理を組むワークフローはProfessional以上設定レコードの条件通知やプロセス管理を、アプリの設定画面で組む開発作る範囲に入れる
標準に無い種類の台帳(契約、物件、機器など)を、顧客とつないで持つライセンスカスタムオブジェクトはPro Suite以上ライセンスカスタムオブジェクトはEnterprise設定アプリを足してつなぐ。作れるアプリの数はライト200、スタンダード1,000開発表と画面を作る
会計ソフトなど、別のシステムとAPIでつなぐライセンス開発APIはStarter Suiteに無く、Pro Suiteはアドオン(1ユーザー月25米ドル、税抜)。Core以上のエディションには含まれる開発APIは無料の版から使え、1日に使える回数の上限が段で違うライセンス開発APIはスタンダードコース以上。プラグインや連携サービスで足りれば、その利用料開発つなぐ先ごとに作る
同じ会社・同じ人を二重に登録しない設定重複を止める機能は、料金ページの機能表ではStarter Suiteにもある。何を同じとみなすかは一致ルールで決める移行コンタクトはメールアドレス、会社はドメイン名で自動で見分ける。インポートにそれらの固有のIDが無いと、各行が新しいレコードになる設定[値の重複を禁止する]で、同じ値の入力を止める開発見分ける決まりを作る
過去の対応履歴と添付ファイルを移す移行画面のデータインポートウィザードで入るのは取引先・取引先責任者・リードなど。添付は、データローダー(Enterpriseなどのエディションで使える)などの道具で入れる移行インポートでメモ・電話・タスクなどの活動も入る。ファイルは先にHubSpotに上げ、そのIDで結び付ける移行テーブルなら1件を複数の行で読み込む。添付ファイルはファイルから読み込めず、APIか手作業移行移すためのプログラムを作る

札は費用の出どころ(ライセンス・設定・開発・移行)。料金の段と機能の対応は、各社の料金ページとヘルプの表示(2026年9月30日確認。出典は下の本文)による。段の名前や含まれる機能は変わることがあるので、見積もりの時点で確かめる。

条件を満たしたら知らせる仕組みを自分たちで組む場合、Salesforceの機能の比較では、フロー(Flow Builder)がStarter Suiteに無く、Pro Suiteは組織で5つまでです。リードを担当者に割り当てる機能(リードの割り当てとルーティング)は、Starter Suiteにもあります(Salesforce「販売価格」)。HubSpotで条件と処理を組むワークフローは、ProfessionalとEnterpriseで使える機能です(HubSpot ナレッジベース「ワークフローを作成する」)。kintoneは、フィールドの値が条件を満たしたときに通知するレコードの条件通知や、状態・作業者・アクションを決めるプロセス管理を、アプリの設定画面で組みます(kintone ヘルプ「レコードの条件通知」・「プロセス管理でできること」)。同じ要望が、SaaSでは料金の段の差として、kintoneでは設定の作業として見積もりに出てきます。

契約、物件、機器のように、標準の顧客や案件に無い種類のデータを台帳として持つ場合も同じです。Salesforceのカスタムオブジェクトは、機能表ではStarter Suiteに無く、Pro Suiteにあります(Salesforce「中堅・中小企業向けCRMの料金プラン」)。HubSpotのカスタムオブジェクトはEnterpriseの機能です(HubSpot ナレッジベース「カスタムオブジェクトの作成と編集」)。kintoneはアプリを足してつなぐ形で、作れるアプリの数はライトコースで200、スタンダードコースで1,000です(「料金|kintone」)。

会計ソフトなどとAPIでつなぐ場合、SalesforceはStarter SuiteにWebサービスAPIが無く、Pro Suiteでは1ユーザー月25米ドル(税抜)のアドオンで、Core以上のエディションには含まれます(Salesforce「販売価格」)。HubSpotのAPIは無料の版から使え、非公開のアプリで1日に送れる回数は、無料とStarterでアカウントあたり250,000回、Professionalで625,000回、Enterpriseで1,000,000回までです(HubSpot「API usage guidelines and limits」)。kintoneのAPIはスタンダードコース以上で使えます。どの作り方でも、つなぐ部分を作る開発か、連携サービスの利用料がかかります。

二重登録の防ぎ方は、製品によって、設定の作業になるか、移すデータの準備になるかが分かれます。Salesforceは、一致ルールで重複の見分け方を決め、重複ルールで警告するか作成を止めるかを決めます(Salesforce ヘルプ「重複レコードの管理」)。HubSpotは、コンタクトをメールアドレス、会社をドメイン名で自動で見分けるので、設定より、その欄をExcelの側で埋めておく準備が効きます(HubSpot ナレッジベース「HubSpotのレコードの重複削除」)。kintoneは、フィールドの[値の重複を禁止する]にチェックを入れると、複数のレコードで同じ値を入力できなくなります(kintone ヘルプ「[文字列(1行)]」)。

履歴と添付は、どの作り方でも移行の作業になり、入れ方が製品で違います。Salesforceの画面のデータインポートウィザードで入れられるのは、取引先、取引先責任者、リード、ソリューション、キャンペーンメンバー、個人取引先、カスタムオブジェクトで、取引先と取引先責任者のメモも入れられます(エディションによる)。ほかのレコードは、このウィザードでは入れられません(Salesforce ヘルプ「どのデータをインポートできますか?」)。HubSpotのインポートは、電話、Eメール、ミーティング、メモ、タスクといった活動も入れられます(HubSpot ナレッジベース「インポートツールについて」)。kintoneは、1件の中のテーブルに履歴を持たせるなら、1件のデータを複数の行で書いたファイルを読み込みます。添付の入れ方は、後の段取りの節で書きます。

見積もりを並べるときは、要望の一覧を作り、各社にそれぞれの出どころを書き込んでもらいます。

要望ごとに、費用の出どころを書き込む

要望を書き出す知らせる、つなぐ、二重登録を防ぐ、履歴を移す、など
作り方ごとに分ける設定で足りる/上の料金の段が要る/作る
移行の作業を足す重複、書き方、担当者、履歴、添付
見積もりと照らすその費用がどの行に入っているか

同じ要望で金額が違うときは、どの出どころに入っているかの違いを先に見る

当社の整理

移行の費用を決める、Excelの台帳の状態を数える

行の数や同時の編集は、Excelでもある程度まかなえます。Excelの1枚のシートには1,048,576行まで入り(Microsoft「Excel の仕様と制限」)、Microsoft 365のサブスクリプションがあれば、OneDriveやSharePoint Onlineに置いたブックを複数人で同時に編集できます(Microsoft「Excel ブックの共同編集を使用して同時に共同作業を行う」)。移し先を探すきっかけが、重複や書き方のばらつき、どのファイルが最新か分からないこと、対応の記録が人ごとに散らばることなら、それは入れ物より台帳の決まりの問題です。移し先に重複の見分け方や選択肢を決めずにそのまま移すと、ばらつきも一緒に移ります。

そこで、見積もりを頼む前に、今の台帳でそれがどれだけ起きているかを数えます。数えた結果は、移行の作業の量を見積もる材料になり、何社かに頼むときも同じ前提を渡せます。

移す前に数えるもの

数えた結果は、見積もりを頼むときにそのまま渡す

1

台帳のファイルとシートは、いくつあるか

担当者や部署ごとの写しがあるか。どれを最新として扱うか

2

1行は何を表しているか。行はいくつあるか

会社か、先方の担当者か、案件か。1社に何人も入っている行があるか

3

同じ会社・同じ人が入っている行は、いくつあるか

会社名、メールアドレス、電話番号で数える

4

書き方がそろっていない列は、どれか

法人格(株式会社と(株))、全角と半角、電話番号のハイフン、住所

5

列はいくつあり、中身の決まりが無い列はどれか

「状態」「ランク」に入っている言葉の種類。ほとんど空の列

6

担当者の欄に、何人の名前が入っているか

辞めた人、移し先を使わない人の名前が残っていないか

7

履歴と添付は、どこにどれだけあるか

備考のセルに書き足した記録、名刺の画像や見積書のファイルへのリンク

当社の整理

重複は、Excelの[条件付き書式]で同じ値に色を付けて見るか、COUNTIF関数で同じ値が何回出てくるかを数えます(Microsoft「重複しない値を抽出する、または重複する値を削除する」、「Microsoft Excel で COUNTIF 関数を使用する」)。Officeの編集言語が日本語に設定されていると、条件付き書式の[重複する値]は半角と全角を同じ文字として扱うので、英数字の幅だけが違う値にも色が付きます。一方、「株式会社」と「(株)」のような書き方の違いは同じ値にならないので、会社名は法人格を外した列を作ってから数えると、取りこぼしが減ります。

列の中身の決まりは、その列に入っている値を一覧にすると見えます。Microsoft 365やExcel 2021以降なら、UNIQUE関数で列の値の種類を並べられます(Microsoft「UNIQUE 関数」)。「状態」の列に「商談中」「商談」「提案中」が混ざっているなら、移し先で選択肢を作るときに、どれにまとめるかを決める作業が要ります。

台帳から宛名の印刷や見積書の作成をするマクロが組まれているなら、それも数えておきます。移した後にその処理をどこでするかで、設定や開発の範囲が変わります。作った人がいないマクロの読み解き方は「作った人がいないExcelマクロの引き継ぎ方」で書きました。

移す前に、Excelの側で揃えておくこと

移す前に台帳を揃えておくと、外に頼む作業の範囲が小さくなり、各社の見積もりの前提もそろいます。順番は、元の台帳を残すことから始めます。

Excelの側で揃える順番

1 最初に

元の台帳を写して残す

  • 作業は写したブックで行う
  • [重複の削除]で消した行は元に戻らない

2 行の単位

会社と人を分ける

  • 1行が会社か、先方の担当者かを決める
  • 会社の表と人の表に分け、結ぶ列を残す

3 重複

残す行を決めてからまとめる

  • 新しい行が上に来るように並べ替える
  • 消す行にしか無い電話番号やメモを、残す行に写す

4 書き方

書き方と選択肢をそろえる

  • 法人格、英数字の全角と半角、電話番号、ドメイン
  • 「状態」の言葉を、移し先の選択肢に合わせる

5 担当者

ユーザーに対応させる

  • 名前と、移し先のログイン名やメールアドレスの対応表
  • 辞めた人の行を、誰の担当にするか

6 履歴と添付

移し方を決める

  • 備考のセルの記録を、1件1行に分けるか
  • ファイルの場所と、どの顧客のものかの一覧

当社の整理。[重複の削除]の動きはMicrosoftのサポート、担当者の書き方はkintone ヘルプ・HubSpot ナレッジベース(2026年9月30日確認)による

Excelの[重複の削除]は、選んだ列の値がそろった行のうち、最初に出てきた行を残してほかを消します。消した行は元に戻らないので、Microsoftは、元の範囲を別のシートかブックに写してから使うよう勧めています(Microsoftのサポート)。最初の行が残るので、更新日の列があるなら新しい順に並べ替えてから使うと、新しい行が残ります。消える行にしか無い電話番号やメモは、先に残す行へ写しておきます。

SalesforceもHubSpotも、会社と人を別のレコードとして持ちます。Salesforceでは取引先と取引先責任者、HubSpotでは会社とコンタクトです。kintoneでは、顧客のアプリと担当者のアプリを分けるか、1件の中にテーブルで持つかを、アプリの作り方で決めます。Excelで1行に会社と先方の担当者が一緒に入っている台帳は、会社の表と人の表に分け、どの人がどの会社かを結ぶ列(会社名やドメイン名)を残します。HubSpotのインポートは、1つのファイルから会社とコンタクトを作って関連付けることもできます(HubSpot ナレッジベース「インポートツールについて」)。

書き方は、法人格(「株式会社」と「(株)」)、英数字の全角と半角、電話番号のハイフン、メールアドレスとWebサイトのドメインをそろえます。HubSpotは、インポートするファイルにメールアドレスやドメイン名などの固有のIDが無いと、各行を新しいレコードとして入れるので(HubSpot ナレッジベース)、この二つの列は空欄をできるだけ埋めておきます。kintoneの[値の重複を禁止する]が止めるのは同じ値の入力なので、書き方の違う同じ会社は別の値として入ります。全角の英数字を半角にするExcelのASC関数は、カタカナも半角のカタカナに変えるので(Microsoft「ASC 関数」)、会社名の列にはそのまま使わず、電話番号やメールアドレスの列に使います。

「状態」や「ランク」のように選択肢にする列は、Excelに入っている言葉を一覧にして、移し先の選択肢のどれに当てるかを決めます。HubSpotでは、選択肢のプロパティーに入れる値は、定義した選択肢のラベルか内部の値と一致している必要があります(HubSpot ナレッジベース「インポートファイルの形式設定」)。ほとんど使われていない列は、移さないと決めてもかまいません。

担当者の欄は、移し先のユーザーとの対応表を作ります。kintoneのユーザーを選ぶ欄にはログイン名を書き、作成者と更新者の欄には、停止・削除されたユーザーや、kintoneを使っていないユーザーを指定できません(kintone ヘルプ「レコード登録・上書き用のファイルの記載形式」)。HubSpotでは、担当者の列にユーザーの名前かメールアドレスを入れ、同じ名前のユーザーが何人もいるときはメールアドレスを使うよう案内されています(HubSpot ナレッジベース「インポートファイルの形式設定」)。辞めた人や、移し先にアカウントを作らない人の行は、誰の担当にするかを先に決めます。

備考のセルに日付と対応を書き足していく台帳は、そのまま1つの項目として移すか、1件1行の記録に分けて移すかを決めます。分けると、移し先で対応の記録を日付順に見たり数えたりできますが、分ける作業が増えます。kintoneのテーブルに入れるなら、ファイルの先頭の列を「レコードの開始行」にして、1件の始まりの行に「*」の印を付けて書きます(kintone ヘルプ「[テーブル]を含むレコードを登録・上書きするためのファイルを準備する」)。添付は、ファイルの置き場所と、どの顧客のものかの一覧を作っておきます。

移し方の段取り:少ない件数で試してから、切り替え日に本番を入れる

揃えた台帳は、いきなり全件を入れず、少ない件数で試してから本番を入れます。

移し方の段取り

手順1

移す範囲を決める

  • 移す列と移さない列
  • 何年前までの顧客と履歴か、添付をどこまでか

手順2

対応表を作る

  • Excelの列と、移し先の項目
  • 選択肢の言葉と、担当者

手順3

少ない件数で試す

  • 移し先に入れて、画面で見る
  • 直すときは上書きの手順も試す

手順4

件数と中身を照らす

  • Excelの行数と、入った件数
  • 重複、選択肢、担当者、日付

手順5

切り替え日に本番を入れる

  • その日までの台帳を入れる
  • その日までの更新の扱いを決めておく

手順6

履歴と添付を入れる

  • 顧客のレコードを入れた後に
  • ファイルと顧客の対応表を使う

切り替え日からは、Excelの台帳を読み取り専用にして、入力を移し先にそろえる

当社の整理。少ない件数で試す手順はSalesforce ヘルプ「データインポートウィザード」、上書きの手順はkintone ヘルプ「ファイルからレコードのデータを登録・上書きするときのポイント」(2026年9月30日確認)を参考にした

最初に、何を移すかを決めます。移す列と移さない列、何年前までの顧客と履歴を移すか、取引の無くなった顧客を移すか、添付をどこまで移すかです。次に、Excelの列と移し先の項目の対応表を作り、選択肢の言葉と担当者の対応もここにまとめます。

ファイルの形式と上限は、移し先ごとに違います。kintoneのファイル読み込みの上限は、Excel形式が1MB・1,000行、CSV形式が100MB・10万行です(kintone ヘルプ)。Salesforceの画面のデータインポートウィザードはCSVだけを扱い、1回に入れられるのは5万件までです(Salesforce ヘルプ「データインポートウィザード」)。データローダーは500万件までのファイルを扱えますが、使えるのはEnterprise、Performance、Unlimited、Developerの各エディションです(Salesforce Developers「データローダーについて」)。HubSpotは、有料の版で1ファイル512MB・1,048,576行まで(無料の版は20MB)で、英語以外の文字を含むファイルはUTF-8で保存します(HubSpot ナレッジベース「インポートファイルの形式設定」)。kintoneに移すときに読み込めない項目は「kintoneの導入支援・伴走支援の料金は何で決まるか」でも触れました。

本番の前に、少ない件数で試します。Salesforceのヘルプも、最初に小さなCSVファイルで試して、元のデータが正しく準備できているかを確かめるよう勧めています。試しに入れたら、移し先の画面で、選択肢が正しく入ったか、担当者が割り当てられたか、日付が崩れていないかを見ます。直して入れ直すときの手順も、このときに試します。kintoneでは、既に入れたレコードを直すとき、[更新キー]にした項目の値で、ファイルの行とレコードを結び付けて上書きします(kintone ヘルプ「ファイルからレコードのデータを登録・上書きするときのポイント」)。

照らすのは、Excelの行数と移し先に入った件数、重複が増えていないか、選択肢と担当者です。本番は切り替え日を決めて入れ、その日からはExcelの台帳を読み取り専用にして、入力を移し先にそろえます。切り替え日までに台帳が更新された分をどう扱うか(全件を入れ直すか、差分だけを足すか)も、見積もりの段階で決めておきます。

添付ファイルは、顧客のレコードを入れた後に入れる

顧客を入れる会社、人、案件のレコード
IDを書き出す移し先がレコードに付けたID
対応表を作るファイルの場所と名前、付けるレコードのID
添付を入れる道具やプログラムで

Salesforce Developers「添付ファイルのアップロード」、HubSpot ナレッジベース「インポートファイルの形式設定」、cybozu developer network「ファイルをアップロードする」(2026年9月30日確認)をもとに当社が整理

添付ファイルは、顧客のレコードを入れた後に入れます。Salesforceのデータローダーで添付ファイルを入れる場合、CSVには、親のレコードのSalesforceのID、ファイルの名前、手元のパソコンにあるファイルの場所を書きます(Salesforce Developers「添付ファイルのアップロード」)。HubSpotのファイルの項目に入れるのは、先にHubSpotに上げたファイルのIDです(HubSpot ナレッジベース)。kintoneの添付ファイルはファイルから読み込めないので、画面で1件ずつ付けるか、APIでファイルを一時的な置き場に上げ、それをレコードに結び付ける処理を作ります(cybozu developer network「ファイルをアップロードする」)。どれも、ファイルの場所とレコードの対応表が要るので、前の節で作った一覧がここで使えます。

移行の作業を外に頼むと、顧客の個人データの取扱いを委託することになります。個人情報保護法は、個人データの取扱いを委託する会社に、委託先の監督を求めています。個人情報保護委員会のガイドラインは、委託する業務に必要のない個人データを渡さないことを当然としています(個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」3-4-4)。見積もりの段階なら、列の名前と件数、中身を伏せた数行の見本で足ります。作業で実データを渡すときは、渡す列、置き場所、作業の後の消去を、契約で決めておきます。

見積もりを頼む前に決めることと、各社に聞くこと

見積もりを頼む前に、入力する人、見るだけの人、つなぐ先、移す範囲を決めておきます。どれも、利用料の人数や料金の段、移行の作業の量を左右します。

見積もりの前に決めること

利用料の人数になる

入力する人

  • 顧客、案件、対応の記録を書き込む人
  • 担当者として割り当てる人

製品で扱いが違う

見るだけの人

  • kintone:ログインする人は全員が契約の人数に入る
  • HubSpot:表示のみのシートは追加費用なし
  • Salesforce:アクセスする人ごとに月額

料金の段が変わる

つなぐ先

  • 会計ソフト、名刺管理、Webのフォーム、LINEなど
  • APIが要るか、連携サービスで足りるか

移行の量が決まる

移す範囲と切り替え日

  • 件数、列、期間
  • 履歴と添付の量

当社の整理。見るだけの人の扱いは、サイボウズ「ライセンスに関するご案内(クラウド版)」、HubSpot「セールスソフトウェアの価格表」、Salesforce「販売価格」(2026年9月30日確認)による

見るだけの人の扱いは製品で違います。kintoneは、cybozu.comにログインする人の数で契約し、1つのユーザーアカウントを複数の人で共有することもできません(サイボウズ「ライセンスに関するご案内(クラウド版)」)。HubSpotは、有料のシートとは別に、変更を加えずに見るための表示のみのシートを追加費用なしで使えます(HubSpot「セールスソフトウェアの価格表」)。Salesforceは、アクセスを必要とするユーザーごとに月額がかかると案内しています(Salesforce「販売価格」)。一覧を見るだけの人が多いほど、この違いが利用料の差になります。

つなぐ先は、会計ソフト、名刺管理、Webの問い合わせフォームなどを書き出し、それぞれAPIでつなぐのか、連携サービスで足りるのかを見ます。前の表のとおり、APIが使えるかは製品と料金の段で変わります。LINE公式アカウントの友だちと台帳をつなぐ場合の作り方は「LINEと今の顧客管理をつなぐ3つの作り方と、費用が決まる所」で書きました。

材料を渡したら、各社に同じことを聞きます。金額が同じでも、台帳の整理を誰がするか、履歴や添付が入っているかで、中身は違います。

各社に同じように聞くこと

1

台帳の重複・書き方・担当者の対応は、誰がどこまでする前提か

こちらでする作業と、頼む作業の境目

2

試しの移し替えは何回で、何を照らして確かめるか

件数、重複、選択肢、担当者

3

履歴と添付は、移す範囲に入っているか

入れ方(画面の道具か、プログラムか)と、入れる量

4

要望ごとに、設定で作るのか、上の料金の段が要るのか、開発するのか

要望の一覧に書き込んでもらう

5

利用料の人数と料金の段、提供元に払う費用は書かれているか

入力する人と見るだけの人。導入支援など、提供元に払うもの

6

つなぐ先ごとの方式と、動かす回数の見込みは

APIの回数の上限に収まるか

7

切り替え日までの更新は、どう扱うか

入れ直すか、差分だけを足すか

8

個人データの受け渡しと、作業の後の消去は、どう決めるか

渡す列、置き場所、消去の確かめ方

当社の整理

届いた見積書を行ごとに読むときの質問は「システム開発の見積もりは妥当か」にまとめています。

Aurant Technologiesは、kintone・Salesforce・HubSpotの導入と、専用のWebアプリの開発の両方を手がけています。標準の機能、プラグインや連携サービス、開発の使い分けは、業務ツール導入・活用支援のページにある「作り方は3通り」の比較の表にまとめています。製品ごとの支援の内容は、kintone 導入支援、Salesforce 導入支援、HubSpot 導入支援の各ページに載せています。

kintoneおよびサイボウズは、サイボウズ株式会社の登録商標です。Salesforce は Salesforce, Inc. の商標です。HubSpot は HubSpot, Inc. の商標です。Excel、Microsoft、Microsoft 365、OneDrive、SharePoint は、Microsoft グループの企業の商標です。そのほかの社名・製品名は、各社の商標または登録商標です。本記事は当社が独自にまとめたもので、各社の承認や後援を受けたものではありません。

kintone導入・内製化支援

kintoneを現場の業務に合わせて設計・構築し、Excelや紙業務の置き換え、他システムとのデータ連携、社内メンバー自身が改修・運用できる内製化までを支援します。

AT
aurant technologies 編集

上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

この記事が役に立ったらシェア:

導入・外注のご相談

進め方と、費用が何で決まるかをお伝えします。

費用感だけのご相談でも構いません。フォームで相談する費用の考え方を見る