決算統計(地方財政状況調査)の効率化|時間を食うデータ加工は予算科目の段階で減らす
決算統計(地方財政状況調査)で時間を食うのは、表への入力や突合より前のデータ加工です。4人日と47人日の比較からデータ加工が重い理由を読み、予算科目に決算統計の区分を持たせる手と、BIが効く範囲を書きます。
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この記事の要点
- 決算統計(地方財政状況調査)で時間を食うのは、表への入力や突合より前の「データ加工」です。財務会計システムの執行データを、目的別・性質別・補助と単独・経常と臨時に分け直し、財源を充てる工程です。
- 総務省と地方公共団体金融機構の調査研究(令和7年3月)では、市町村どうしで、データ加工が4人日の町と平均47人日の4団体がありました。報告書は差の理由を、決算統計で要る区分を予算を組む段階で整理していたことと、財源充当で前年度の情報を使っていたことに見ています。
- BIや自動チェックが効くのは、表どうしの関係と前年との増減を見る審査・検収の工程です。毎年の振り直しを記録して、次の予算に生かすところにも使えます。まず次の決算統計で、工程ごとの人日と、毎年振り直している科目を書き出してください。
決算統計の回答を作る5つの工程
市町村4団体の平均は合計108人日のうちデータ加工が47人日。h町は合計27人日のうちデータ加工が4人日
決算統計(地方財政状況調査)の作業で時間がかかっているのは、調査表への入力や表どうしの突合より前の「データ加工」です。財務会計システムから出した執行データを、決算統計の区分(目的別・性質別、補助事業と単独事業、経常と臨時)に分け直し、どの歳入をどの歳出に充てたか(財源充当)を整える工程です。地方公共団体金融機構が総務省と共催した調査研究の報告書(令和7年3月)では、多くの団体でこの工程の割合が大きくなっていました。市町村どうしで比べると、データ加工が4人日で済んだ町と、平均47人日かかった4団体がありました。報告書は、町の側の負担が軽い理由を、決算統計で要る区分を予算を組む段階で整理していたことと、財源充当のときに前年度の情報を使っていたことにあると考えています。
当社は、自治体の予算と実績を比べる管理(予実管理)や、ふるさと納税の寄附データを、画面で並べて見られるようにする支援をしています。決算統計の調査表を作る立場ではありません。今これを書くのは、この報告書で決算統計の工程ごとの業務量が団体の数字で出され、国の決算統計システムの更新(報告書の時点で令和10年度の予定)に向けた提言もまとまったからです。更新を待つ間に団体の側で変えられることを、財政課で決算統計を担当する方に向けて書きます。公営企業の決算状況調査と、各表の細かな記入の仕方は扱いません。
出納を閉じてから数週間、6月の仕事と重なる
地方財政状況調査は、各団体の決算を統一した会計の区分で集める統計調査で、公営事業会計以外の会計をまとめた「普通会計」で答えます。調査のあらましはe-Stat「地方財政状況調査」、記入の決まりは総務省「令和6年度 地方財政状況調査表作成要領」(市町村分)、同(都道府県分)にあります。決算の状況は、出納を閉じる翌年度の5月31日現在で調べます。報告の期日は、毎年の照会の通知で示されます。出納の閉鎖から決算の認定までの条文は、予算の執行管理の記事の「決算につなぐ」の節で書いています。
作業に使える期間は短く、出納を閉じてから2週間から1か月弱で調査表を出します。市町村は、総務省に出す調査表に加えて、検収調書を都道府県に出します。検収調書は、数値の増減の分析や表どうしの確認を書いた書類です。提出の期限が早い都道府県では、6月半ばまでに両方を作ります。6月は通常の決算と定例議会が重なり、小規模な団体では財政課の1人で対応することも多くあります。報告書にある令和5年度の聞き取りでは、都道府県や政令指定都市の多くが、部局ごとに回答をとりまとめて表計算ソフトで集計しています。財政課は、その正誤の確認や問い合わせに時間がかかる場合があるとされています。
出納の閉鎖から提出まで
出典:地方自治法第235条の5、総務省「令和6年度 地方財政状況調査表作成要領」(市町村分)、同(都道府県分)、地方公共団体金融機構の報告書
時間が消えているのは、表を埋める前の「データ加工」
報告書の聞き取りによると、今の作り方は次の流れです。財務会計システムから決算のデータを出し、調査の様式に合うようにデータを調整します。調整したデータを財務会計システムに取り込み、各表を作ります。時間がかかるのは取り込む手前の調整です。検討会の構成員の8団体(3県・4市・1町)に、冒頭の図の5つの工程ごとの業務量を尋ねた結果でも、多くの団体でデータ加工の割合が大きくなっていました。市町村4団体の平均では、合計108人日のうち47人日がデータ加工です。
データ加工には、日々の執行データを決算統計の定義に沿って区分に分ける「変換」と、変換した結果を実態に合わせて直す「修正」の2つが入っています。修正の重さは、総務省が都道府県と市町村に行った財務関係データの整備状況の調査に表れています。調査には339団体が答え、振り直しを尋ねた問いの有効回答は298団体でした。その大多数が、予算を組むときに決算統計の区分と結び付けていても、回答を作るときに振り直しをしていました。振り直しは主に歳出で起きています。歳出の中で結び付けの度合いが低かった区分は、都道府県では臨時と経常、補助と単独、歳出の小区分でした。市町村では、これに性質別が加わります。検討会の8団体を詳しく調べた追加の調査では、財源充当はそもそも振り分けができていない団体が多くありました。振り分けていた団体も、後からすべて振り直していました。
表でいうと、手作業がとくに重いのは次の3つです。
| 表の番号 | 表の名前(令和6年度の作成要領) | 報告書が挙げたこと |
|---|---|---|
| 07表〜13表 | 歳出内訳及び財源内訳(その1〜その7) | 財務会計システムのデータを1件ずつ手で目的別・性質別などに分類している団体があり、非常に多くの工数がかかる |
| 21表〜25表(都道府県分)/21表〜23表(市町村分) | 投資的経費の状況 その1 普通建設事業費の状況 | 07〜13表との突合で、整合をとるための端数の処理に時間がかかる(報告書は第21表〜第24表と記載) |
| 37表(都道府県分)/33表(市町村分) | 地方債の状況 その1 現在高の状況(市町村分は地方債現在高の状況) | 地方債の区分ごとに集計し直すので、ミスが起きやすい |
端数の処理が重いのは、国の決算統計システムの報告の単位が千円で、合計の欄や表どうしの数字を合わせる必要があるからです。国の電子調査表は表計算ソフトのファイルです。報告書には、マクロが多く動きが遅い、複数の人で同時に編集できない、コピーと貼り付けができない、という声も挙がっています。
例:予算科目の「修繕料」1つが、3つの性質に分かれる
修正が重くなる理由を、1つの例で見ます。総務省の調査で団体が答えた振り直しの例に、「修繕料を物件費と維持補修費へ振り直す」「物件費を維持補修費または普通建設事業費に振り直す」があります。作成要領の決まりでは、性質別の区分は原則として予算の節に応じて計上し、節の需用費は物件費に入れます(家屋などの修繕で維持補修費に計上するものを除く)。ただし維持補修費と普通建設事業費は、節ではなく、目(目の一部でも独立の1事業であるものを含む)の総額で計上します。同じ節のものでも、支出の効果によって分類が変わる場合があります。
修繕料が入る性質別の区分(作成要領の決まり)
維持補修費
施設の効用を保つ修繕
- 点検・補修・修繕で、直した後の効用が当初を上回らないもの
- 庁舎などの補修で目が無い場合も、人件費を除いて計上
- 除排雪の経費(委託を含む)
物件費
物や車の修繕
- 物件費で買った物(自転車・コピー機器・机など)の修繕料
- 自動車の修繕料
普通建設事業費
形や構造を良くする工事
- 施設の増改築など、形状や構造そのものを改良した経費
出典:総務省「令和6年度 地方財政状況調査表作成要領」(市町村分)の「性質別歳出内訳」。維持補修費と普通建設事業費は、節ではなく目(独立の1事業を含む)の総額で計上する。目の中の人件費などは除く
施設の修繕が維持補修の目や独立した事業に分かれて予算に載っていれば、その目の決算額が維持補修費になります。ただし、目の中の人件費は人件費へ、車や備品の修繕料は物件費へ移します。いろいろな修繕が1つの目の「修繕料」に混ざっていると、執行の記録を1件ずつ見ないと区分が決まりません。予算を組むときの目と事業の立て方が、決算のときの手作業の量を大きく左右します。
ここで決めた区分は、1つの表で終わりません。調査表は、07〜13表で目的別の歳出を性質別に分け、14〜30表でその性質別の額をさらに細かく分けて書く作りです。性質別経費の状況の表(市町村分は14表)の金額は、07〜13表の性質別の金額と一致するものとされています。普通建設事業費に入れた分は、普通建設事業費の状況の表(市町村分は21〜23表)で財源の内訳を書きます。その財源は、07〜13表の目的別の財源内訳の内書(内訳の一部)になります。決まりはいずれも総務省「令和6年度 地方財政状況調査表作成要領」(市町村分)、同(都道府県分)によります。1件の振り分けを後から直すと、性質別の表、普通建設事業費の表、財源の内訳が一緒に動きます。07〜13表の1件ずつの分類と21表以降との突合が重いのは、この連鎖があるからだと読めます。作成要領も、各項目が正確に入っていないと後で数値の訂正に多くの労力と日数がかかるとして、表どうしの数値を突き合わせるよう求めています。
データ加工が4人日の町と、平均47人日の4団体の違い
検討会の8団体の中で、h町(報告書の表記)は業務の総量が少なく、データ加工の割合も小さい団体でした。報告書はh町を、ほかの市町村4団体の平均と工程ごとに比べています。手順そのものに差は無く、工数が大きく違いました。4団体の平均とh町で比べると、データ準備は25人日と12人日、データ加工は47人日と4人日です。変換した後の歳入・歳出データの修正は、報告書の図の表記で、4団体が3割程度、h町が1割程度です。
工程の業務量(人日)
検討会の構成員のうち市町村5団体の比較
差が出た3つの点
市町村4団体の平均
データ加工 47人日
- 予算科目は、歳入は細節、歳出は細々節まで細かく設けている
- それでも目的・性質・補助と単独・経常と臨時を、決算のときに直すものが多い
- 財源充当は、主に前年度の計算の結果を見ながら表計算ソフトで手作業している
h町
データ加工 4人日
- 予算科目は細々節の単位で細かく設けている
- 目的・性質・補助と単独・経常と臨時を、予算を組む段階から整理している
- 財源充当は、財務会計システムの中に前年度の充当先が出て、それを踏まえて作業する
4団体も予算科目は細かいので、細かさだけでは差を説明できません。報告書が挙げる違いは2つあります。その科目に決算統計の区分を予算の段階で持たせているかと、財源充当で前年度の情報をシステムの中で使えるかです。報告書は、この2つが予算科目の細かさと合わさると負担が軽くなると考えられる、とまとめています。修繕料でいえば、施設の修繕と改良の工事を予算の段階で別の目や事業、細々節に分けておくことと、去年どの財源を充てたかを画面で見ながら充てることです。
ただ、これは5団体を1回比べた結果です。町と市では予算の規模が違い、規模をそろえた比較ではありません。報告書も、予算の段階で結び付けていても後からの振り直しは一定程度残り、データ加工の業務量はゼロにならないと断っています。予算の段階で分けても、執行のときの選び間違いや工事の中身の変更があれば、修繕料の振り直しは残ります。
データ加工を減らす手の多くは、予算を組む段階にある
h町との差から言えるのは、データ加工を軽くする手の多くは決算の6月ではなく、予算を組む段階で打つということです。手は3つに分けられます。
| 手 | 修繕料での例 | 報告書・作成要領の根拠 |
|---|---|---|
| 予算の目・事業・細々節に、決算統計の区分を持たせる | 施設の修繕・物や車の修繕・改良の工事を、予算の段階で別の目や事業、細々節に分ける | h町は目的・性質・補助と単独・経常と臨時を予算の段階から整理。維持補修費と普通建設事業費は目の総額で計上(作成要領) |
| 前年度の読み替えと充当先を引き継ぐ | 去年、維持補修費に読み替えた科目は今年も引き継ぎ、中身が変わったものと新しく設けた科目だけ区分を決める | 作成支援機能のある財務会計システムでは、前年度からある予算科目の読み替えを引き継いで手間を減らしている。h町は前年度の充当先を画面で見て充当 |
| 各課・各部局への照会に、判断のよりどころを付ける | 修繕料の照会に、作成要領の維持補修費の項と、去年の振り分けを添える | 報告書の課題①:回答に必要な情報(用語の定義など)やマニュアルが分散している。報告書はこれをデータ準備とデータ加工の両方の課題としている。各課の資料の精度が異なり、確認に時間を要する場合もある。照会に何を添えるかは当社の提案 |
財務会計システムを調査表とつなぐ改修を考えたものの、更新にかかる初期の費用が多額になるため断念した都道府県もあったと、報告書は書いています。システムを入れ替えるかどうかの前に、予算の目・事業・細々節の側で区分を持たせる手から始められます。
財務会計システムと結び付かない調査表もあり、報告書の照会では基金の状況の表が例に挙がっています。基金の3つの分け方(決算統計の区分)は基金の管理の記事で書いています。寄附金を決算統計でどう数えるかの入口(普通会計、一般財源等)は、寄附金の会計処理の記事で扱っています。
BIと自動チェックが効くのは、審査・検収と、次の予算に生かすところ
会計のデータを自動で集めて並べる仕組み(BI)や表計算ソフトの自動チェックは、データ加工が済んだ後の工程と、その結果を翌年の予算に生かすところで役に立ちます。当社が見える化の支援で扱う領域に近いので、公開の資料から言える範囲で、使いどころを4つに分けます。
BIと自動チェックで並べるもの
1
表どうしの関係
- 作成要領が一致や内書の関係を求める表の組を一覧にする
- 例:14表と07〜13表の性質別、21〜23表の財源と07〜13表の財源内訳
- 差や超過がある組だけを出す
2
前年度との増減
- 検収調書の増減の分析に使う
- 大きく動いた科目を先に出す
3
振り直しの記録
- どの予算科目を、どの区分からどの区分へ直したか
- 毎年直す科目を、次の予算で目・事業・細々節を分ける候補にする
4
出した値と比較
- メールで送るファイルと国のシステムに上げた値を突き合わせる
- 他団体との比較には総務省のダッシュボードを使う
出典:地方公共団体金融機構「地方財政に関するシステムのあり方等を検討するための調査研究 報告書」(令和7年3月)、総務省「令和6年度 地方財政状況調査表作成要領」(市町村分)、同(都道府県分)
1つ目は、作成要領の突き合わせの決まりをそのまま点検にするものです。一致の組は差を、内書の組は内訳が全体を超えていないかを見ます。2つ目では、たとえば修繕料を普通建設事業費に入れすぎると、前年度と比べて維持補修費が減り、普通建設事業費が増えて見えます。増減を見れば気づける場合があります。
3つ目は、4人日と47人日の差につながる使い方です。h町は、前年度の充当先を画面で見て作業していました。報告書も、コンバータでは前年度の変換の記録を使うと書いています。去年の判断の記録は、翌年の手間を減らすと考えられます。振り直しを「科目・直す前の区分・直した後の区分・理由」の4つで残して並べると、毎年同じ直しをしている科目が見えます。それが、次の予算でどの目や事業を分けるかを決める材料になります。4つ目について、報告書は、審査する国や都道府県が団体の側と同じデータを確かめられない、という課題を挙げています。この課題そのものは、国のシステムの改修で直すものとされています。団体の側でできるのは、メールで送る表計算のファイルと国のシステムに上げた値が同じかを、1か所に残して突き合わせておくところまでです。他団体や経年の比較の情報を集めにくい、という課題には、総務省がデジタル庁と連携して公開している都道府県ごと・市町村ごとのダッシュボードが使えます。
自動チェックは差があることを示すだけで、どの区分が正しいかは作成要領を見て人が決めます。いちばん重い振り直しそのものは、BIを入れても消えません。千円単位の端数の調整も国のシステムの報告の単位から来るので、団体の側の画面では減らしきれません。決算統計の数字を議会への説明などに使う段階は、公会計の財務書類が使われない理由の記事で書いています。
報告書(令和7年3月)の時点で、国のシステムは令和10年度に更新の予定
報告書によると、総務省の決算統計システムは保守の関係で令和10年度に更新が予定されています。報告書は「ワンスオンリー」「シームレス」「アクセシビリティ」の3つの考え方で、更新に合わせた改善を提言しています。提言では、帳票に集計結果を入れて出すのをやめ、円単位の執行データを変換ツール(コンバータ)で「標準的なデータ」に変えて出す形にします。こうすると、千円単位にするための端数の調整は要らなくなります。健全化指標など、同じ内容を別の照会で再び答える負担も、減らす対象に挙がっています。健全化判断比率の考え方は、健全化法の4指標の記事で書いています。いずれも提言で、総務省が決めた仕様ではありません。
報告書が提言する、更新後の流れ
コンバータは、導入した初年度に変換のルールを決める作業が要り、翌年度からは前年度の変換の記録を使える、とされています。報告書は、コンバータを使っても、予算を組むときの結び付けが足りなければ振り直しが残る場合があるとしています。そのうえで、予算科目に細々節を設けて決算統計の科目と1対1で対応させることを、さらに効率を上げる手に挙げています。今つくる対応表(予算科目と決算統計の区分)と振り直しの記録は、更新の後も変換のルールを決める材料にできる見込みです。
次の決算統計で、工程ごとの人日を数える
次の決算統計では、5つの工程ごとに、かかった人日を書き残してください。データ加工の人日が大きければ、修繕料のように1つの予算科目が複数の区分に分かれるものと、毎年振り直している科目を一覧にします。その一覧が、次の予算編成で目や事業、細々節を分けるか、例外として残すかを決める材料になります。
予算科目と決算統計の区分の対応、振り直しの記録、工程ごとの数字を同じ画面に並べたいものの手が足りない、という場合は、当社のふるさと納税・自治体の予実管理の支援で、並べる項目の整理から一緒に進められます。自治体のDX全体の話は行政・自治体DXの記事にまとめています。
報告書、作成要領(令和6年度、市町村分・都道府県分)、総務省の資料は2026年10月14日時点のものです。表の番号や区分の決まりは年度ごとに変わることがあるので、その年度の作成要領で確かめてください。
サービス一覧
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