SES企業のfreee人事労務活用|プロジェクト別工数と人事評価の連携設計

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SES(システムエンジニアリングサービス)企業において、経営の健全性を左右するのは「エンジニアがどのプロジェクトに、どれだけの時間を費やし、それがいくらの利益(あるいは評価)に繋がったか」というデータの可視化です。

しかし、多くの現場では「勤怠は客先のシート」「給与計算は人事ソフト」「プロジェクト収益はエクセル」とデータが分断されています。この分断は、適正な人事評価を妨げるだけでなく、労務費の原価算入を複雑にし、経営判断を遅らせる要因となります。

本記事では、freee人事労務をハブとして、SES特有のプロジェクト別工数管理と人事評価、さらには会計への連動をどのように設計すべきか、実務担当者の視点で解説します。

SES経営を支える「プロジェクト別工数管理」と「人事評価」の相関

SES企業におけるエンジニアの評価は、往々にして「現場からの評判」や「単価アップの成否」といった定性的な情報、あるいは結果指標に偏りがちです。しかし、持続可能な組織を作るためには、以下の3つのデータを統合する必要があります。

  • 工数(稼働時間):どのプロジェクトにどれだけコミットしたか
  • 収益(売上・粗利):その工数がどれだけの付加価値を生んだか
  • 評価(パフォーマンス):期待された役割を果たし、スキルが向上したか

これらを繋ぐ鍵となるのが「プロジェクト別工数」です。freee人事労務で工数を管理することで、単なる給与計算に留まらず、管理会計や人事評価の基礎データを自動的に蓄積することが可能になります。

例えば、工数データが正しく管理されていれば、特定のプロジェクトで発生している超過勤務を「現場の過負荷」として検知し、評価の調整やクライアントへの条件交渉に活かすことができます。このように、労務管理と評価、そして経営数字を同一線上につなげることが、モダンなSES経営の第一歩です。このデータ基盤の重要性については、【図解】SFA・CRM・MA・Webの違いを解説。高額ツールに依存しない『データ連携の全体設計図』でも触れている「データの共通言語化」に通ずる考え方です。

freee人事労務でプロジェクト別工数を管理する3つの手法

freee人事労務で工数を管理し、それを評価に繋げるには、企業の規模やITリテラシーに応じた3つのアプローチがあります。

【手法1】freee人事労務の標準「工数管理機能」を活用する

freee人事労務の「アドバンスプラン」以上(旧:プロフェッショナルプラン)では、標準機能として工数管理が提供されています。管理者は「プロジェクト」を作成し、従業員は日々の打刻とあわせて「どのプロジェクトに何時間使ったか」を入力します。

メリット:
追加コストなしで導入でき、データが最初からfreee人事労務内に存在するため、給与計算や会計連携(労務費配賦)が極めてスムーズです。

公式リファレンス:
freee人事労務 ヘルプ:工数管理機能を利用する

【手法2】外部勤怠・プロジェクト管理ツールからのAPI連携

エンジニアが既にBacklogやJira、あるいはTeamSpiritなどの外部勤怠ツールを使用している場合、そこからAPI経由でfreee人事労務に工数データを流し込む手法です。

メリット:
エンジニアが使い慣れたツールをそのまま入力インターフェースにできるため、入力漏れを防ぎやすいのが特徴です。

【手法3】Google Workspace(AppSheet)を活用した独自入力フロント

SES特有の「客先常駐」という環境下では、PCを開かずにスマホから数タップで工数を報告したいというニーズがあります。Google Workspaceを導入している企業であれば、AppSheetを用いて簡易的な工数入力アプリを構築し、そこからfreee APIを叩く構成が有効です。

この手法は、Excelと紙の限界を突破する「Google Workspace × AppSheet」業務DX完全ガイドで詳述しているような、現場の入力負荷を最小化するアプローチです。

工数データを「人事評価」へ昇華させるためのデータ設計

収集した工数データを、具体的にどう人事評価に結びつけるべきでしょうか。概念として重要なのは、「稼働率」と「プロジェクト適正」の二軸管理です。

1. 稼働率による定量的評価

SESエンジニアにとって、プロジェクトにアサインされている時間(ビルバブルな時間)は直接的な収益貢献です。freee人事労務の工数レポートから、全労働時間に占めるプロジェクト稼働時間の割合を算出します。
ここで注意すべきは、「待機期間」や「社内業務(勉強会・採用協力等)」の扱いです。これらを評価から一律に除外するのではなく、「評価対象外の工数」として定義し、コストとして正しく計上することが、不公平感のない評価制度に繋がります。

2. プロジェクト難易度とスキルの紐付け

工数データには、使用している「技術スタック」をタグ付けすることをお勧めします。freee人事労務のプロジェクト名に「【Java】A社基盤開発」のように技術名を含めるか、メモ欄を活用します。これにより、「どの技術に何時間投資したか」が可視化され、昇給判断時のスキル習熟度エビデンスとして活用できます。

【実務フロー】freee人事労務から人事評価・原価計算へのつなぎ方

実際の運用フローをステップバイステップで解説します。

Step 1:プロジェクト(項目)の定義とマスタ整備

まず、freee人事労務側でプロジェクトマスタを作成します。この際、freee会計側の「品目」や「部門」とコードを統一させることが重要です。

  • プロジェクト名:クライアント名+案件名
  • プロジェクトコード:会計側の管理番号と一致させる

Step 2:エンジニアによる工数入力の徹底

入力漏れはデータの信頼性を著しく損なうため、以下の運用を検討してください。

  • 週次での入力リマインド(Slack/Chatwork連携)
  • 未入力者リストの自動抽出(API活用)
  • 「1分単位」ではなく「15分〜30分単位」での入力を許容し、心理的ハードルを下げる

Step 3:freee会計への労務費配賦

freee人事労務で確定した工数比率に基づき、freee会計側で労務費の振替伝票を作成します。これにより、「プロジェクトAの利益は、エンジニアBさんの給与コストを差し引いて◯◯円」という正確な損益が見えるようになります。このステップについては、【完全版】給与ソフトからfreeeへの「配賦」連携と原価計算で具体的な仕訳ロジックを解説しています。

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プロジェクト管理・人事評価ツールの比較表

freee人事労務との連携を前提とした、SES企業向けツール比較です。自社のフェーズに合わせて選択してください。

ツール名 主な役割 freee連携 SES向けの強み
freee人事労務 勤怠・給与・工数管理 ネイティブ 給与・会計と直結。追加ツール不要でミニマムスタートが可能。
TeamSpirit 勤怠・経費・工数 API/CSV 複雑な就業規則や大規模組織の工数管理に強い。
Backlog タスク・工程管理 API エンジニアが日常的に使うため、工数入力の心理的障壁が低い。
カオナビ 人事評価・タレントマネジメント API連携 freeeの工数データをインポートし、評価シートと並べて閲覧可能。
Co-Assign SES要員管理・工数 CSV/API SES特有のスキル管理と案件アサイン管理に特化。

SES案件規模 × freee人事労務工数設定 × 人事評価連動 設計早見表

前のセクションで実務フローのつなぎ方を解説しましたが、「自社のSES案件の規模や契約形態によって、freee人事労務での工数設定の粒度と人事評価への反映方法が変わる」という点は、設計段階でよく見落とされます。小規模の常駐1名案件と、大規模チームで複数プロジェクトを兼任するエンジニアでは、管理の複雑さが大きく異なります。以下の表は、SES案件の規模・形態ごとの推奨設計をまとめたものです。

案件規模・形態 freee人事労務での工数設定方法 人事評価への連動設計ポイント よくある設計ミスと対策
小規模・単一案件常駐
(エンジニア1名×1社客先)
勤怠管理の「部門」タグ1つをクライアント名に対応させる。工数は月次の実稼働時間=請求工数として管理 稼働率100%で月次の評価データが揃うためシンプル。精算幅(160〜200h)内の稼働時間を評価の定量指標として直接使用できる 客先が変わるたびに部門タグを変更するのを忘れると、工数が前案件に紐付いたまま蓄積する。案件切替時のfreee設定変更を「業務引継チェックリスト」に必須項目として組み込む
中規模・複数案件掛け持ち
(1名が複数クライアント対応)
freee人事労務の「勤務区分」または「備考欄」でクライアント別稼働時間を記録。Excelの工数入力シートと連動させて集計 クライアントA:60%、クライアントB:40%という稼働比率を評価に反映。案件の難易度・売上単価の重み付けを評価係数として設計することで公平性が担保できる freee人事労務標準の勤怠管理はプロジェクト別の細かい時間入力に向いていない。複数案件掛け持ちは「日次の案件別時間入力」をSlackボット等で収集してfreeeに月次集約する運用設計を推奨
チーム常駐
(同一クライアントに複数名)
クライアント名を「部門」として設定し、そのプロジェクト配下のメンバー全員を一括管理。マネジャー役のエンジニアは「チームリード」として別部門タグを付与 個人の技術貢献(稼働時間・成果物)とチームマネジメント貢献(後輩育成・レビュー時間)を分けて評価する二軸設計が有効。後者の工数はfreee外でkintoneやSpreadsheetに記録して評価時に参照 チームリードの評価が「自身の稼働時間」だけで判断されると、育成・ドキュメント整備に時間を使うほど評価が下がるという逆インセンティブが生まれる。マネジメント工数を可視化する別項目を人事評価シートに明示的に設ける
自社開発×SES混在
(内部プロジェクトと外部常駐の両立)
「SES案件」と「自社開発」を部門で明確に分離。自社開発への稼働時間は「投資工数」として原価計算と分離して管理する SES部門の売上貢献(直接利益)と自社開発への投資工数(将来利益への貢献)を評価に両方反映する設計が必要。自社開発比率が高いエンジニアを「SES稼働率が低い=評価低」と誤判定しないよう評価ロジックの整理が必須 自社開発の工数がfreee上の「部門:自社開発」に正しく記録されないと、原価計算において自社開発コストが過小評価される。月初に各エンジニアの当月稼働配分をfreeeに登録する「工数計画入力」の運用を義務化する

この表で最も設計難易度が高いのが「自社開発×SES混在パターンの原価計算分離」です。SES専業の会社ならシンプルですが、自社プロダクトを育てながらSES案件で収益を確保する成長期のSES企業では、エンジニアの工数がSESと自社開発に分かれて混在します。freee人事労務の部門設定だけで完結させず、原価計算ツール(kintone/Spreadsheet等)と連動させた「工数×原価×評価」の3層設計を早めに構築することが、会社の成長に応じた経営管理の土台になります。

よくある失敗例と解決策

失敗例1:「現場の勤怠」と「社内の工数管理」の二重入力でエンジニアが疲弊する

解決策:
客先への提出が必要な「作業報告書」をfreee人事労務のデータからエクスポートできる形式にカスタマイズするか、逆に客先への報告用エクセルをインポートしてfreeeの工数に変換するGAS(Google Apps Script)を構築します。入力箇所を「1箇所」に絞ることが成功の秘訣です。

失敗例2:プロジェクトコードが運用途中でバラバラになる

解決策:
マスタ管理の権限を「経理・労務」に集約します。営業担当や現場リーダーが自由にプロジェクトを作れる設定にすると、表記ゆれ(「A社案件」と「(株)A社プロジェクト」など)が発生し、集計が不可能になります。

まとめ:データ駆動型のSES経営へ

SES業界において、「人」は最大の資産であり、同時に最大のコストでもあります。その資産がどのように使われているかを可視化する「プロジェクト別工数管理」は、単なる事務作業ではありません。それは、エンジニアの頑張りを正当に評価し、会社の利益率を改善するための、極めて戦略的な投資です。

freee人事労務を単なる給与ソフトとして使うのではなく、プロジェクト別収益と人事評価を繋ぐ「データ基盤」として再定義してみてください。まずは現在の入力フローを見直し、どこにデータの分断があるかを確認することから始めましょう。


システム構成やAPI連携の具体的な設計、あるいは導入支援が必要な場合は、公式のヘルプセンターや認定アドバイザーへの相談を検討してください。自社のビジネスモデルに最適な「繋ぎ方」を見つけることが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の核心です。

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AT
aurant technologies 編集

上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

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