会員登録の離脱は、なぜ起きるのか|EFOの限界と「入力を消す」ソーシャル/LINEログイン
目次 クリックで開く
広告や検索でようやく連れてきたユーザーの多くが、最後の会員登録画面で引き返していきます。しかもこれは、「商品に魅力がなかった」から起きる離脱ではありません。ある実態調査では、ユーザーの53.5%が、数ある手続きのなかで「会員登録」を最も面倒だと回答しています(ECモール「あるる」/システムリサーチ調べ)。会員登録は、事業者が思う以上にはっきりと嫌われている工程です。裏を返せば、商品を変えずに画面の設計だけで取り戻せる余地が大きいということでもあります。この記事では、離脱が起きる理由を解きほぐし、王道のEFO(入力フォーム最適化)をautocomplete属性やリアルタイムバリデーションのレベルまで具体的に整理したうえで、それでも超えられない限界と、「入力そのものを消す」ソーシャル/LINEログインまでを順に考えます。
どれだけの機会が、最後の一画面で漏れているのか
まず、失われている機会の大きさを押さえます。オンライン購入における「カゴ落ち」——買う直前での離脱は、各種調査の平均でおよそ7割に達します(Baymard Institute が50件の調査を平均した値で70.22%)。集客に月100万円をかけて7割が最後のフォームで漏れるなら、実質70万円分の見込み客を、商品ではなく“手続き”で逃していることになります。会員登録の離脱は、マーケティング予算がいちばん静かに漏れていく穴なのです。
なぜ、人は会員登録で離れるのか
理由を分解すると、打ち手が見えてきます。Baymardの調査では、離脱理由の上位に「アカウント作成を求められた」(約19%)と「手続きが長い・複雑」(約18%)が並びます。さらに前述の国内調査では、会員登録を面倒だと感じる理由のトップが「個人情報の入力が面倒」(32.6%)でした。海外・国内のどちらの調査でも、離脱の中心にあるのは、商品の魅力とは無関係な“手続きの重さ”そのものだと分かります。
では、なぜ手続きが重いと人は離れるのか。二つの心理が働いています。一つは認知負荷です。フォーム入力は、ページを眺める受動的な行為とは違い、「思い出して、正しく打ち込む」能動的な負荷を強います。欄が増えるほど負荷は積み上がり、人はどこかで「もういいや」という閾値を越えます。実際、米国の平均的なチェックアウトはおよそ23個もの入力要素を並べており、最適化すれば12〜14個まで減らせるとされます(Baymard)。
もう一つは目的と作業のズレです。ユーザーは商品を見に来たのであって、アカウントを作りに来たわけではありません。だから入力欄が続いた瞬間に「今この場で登録する必要があるのか」という迷いが差し込み、人は迷いが生まれた場所で手を止めます。離脱は“入力量”そのものより、“今それをやる必然性を感じられないこと”から起きているのです。
EFO(入力フォーム最適化)で、フォームを技術的に「軽くする」
離脱の正体が“手続きの重さ”なら、第一手は明快です。重さを削ること——EFOです。ただ「入力欄を減らしましょう」という掛け声で終わりがちで、実際に効かせるにはブラウザの標準仕様を踏まえた具体的な打ち手があります。優先順位の高い順に整理します。
まず「入力の数」を疑う——項目削減と二度入力の廃止
もっとも効くのは、単純に欄を減らすことです。氏名の「姓」と「名」を一つにまとめる、任意項目は登録後に回す、性別や生年月日など“今すぐ要らないもの”は後ろの工程に送る。前述のとおり、最適化されたチェックアウトは12〜14個まで絞れるとされます。見落とされがちなのが二度入力です。「確認のためもう一度メールアドレスを」「パスワードを再入力してください」という念のための欄は、入力量を倍にするわりに、タイプミスの多くは本人が気づけます。確認欄を置くより、autocompleteとパスワード可視化で「一度で正しく入力できる」状態を作るほうが効きます。
手で打たせない——オートフィルと autocomplete 属性
過小評価されているのが、ブラウザのオートフィルを正しく効かせることです。利用者のブラウザやスマートフォンには氏名・住所・電話番号がすでに保存されており、一発で呼び出せれば入力は「打つ」から「候補を選ぶ」に変わります。鍵になるのが各入力欄のautocomplete属性です。これは「この欄に何を入れるのか」をブラウザに伝える標準仕様で、値には決まった語彙があります。氏名ならname(分割時はfamily-name/given-name)、メールはemail、電話はtel、郵便番号はpostal-code、都道府県はaddress-level1、市区町村以下はaddress-level2やstreet-address、といった具合です。ここを空欄にしたり自己流の名前付けに頼ったりすると、ブラウザは「何の欄か分からない」ため候補を出せません。属性を正しく振るだけで手入力そのものが消えるのに、実装されていないサイトは多いのです。
スマートフォンのキーボードを、欄に合わせる
モバイルでは、その欄を触った瞬間に出るキーボードの種類が完了率を左右します。数字だけを打つ欄で、いちいちフルキーボードから切り替えさせるのは確実なストレスです。ここで使うのがinputmode属性で、inputmode="numeric"を指定すればテンキーが出ます。メール欄にtype="email"を使えば@付きのキーボードが、電話欄にtype="tel"を使えばダイヤルパッドが最初から出ます。数字コード欄でtype="number"を使うと先頭のゼロが消えたり上下ボタンが出たりして扱いづらいため、type="text"にinputmode="numeric"を添えるのが定石です。
郵便番号から住所を、自動で埋める
日本のフォームで効果が大きいのが、郵便番号からの住所補完です。7桁を入れた時点で都道府県・市区町村・町名までを自動で流し込み、ユーザーには番地と建物名だけを残す。住所はもっとも入力が長く変換ミスも起きやすい欄なので、自動化できると体感的な負担は大きく下がります。補完後の欄にも前述のautocomplete(address-level1など)を振っておくと、ブラウザのオートフィルとも二重に噛み合います。
エラーは「その場で・やさしく」出す
入力の途中で人が心を折られる典型が、エラーの出し方です。最後まで入力して「登録」を押した瞬間に画面上部へ赤字でまとめて叱られ、どこが悪いのか探しに戻る——この体験は離脱に直結します。対策はリアルタイムバリデーション(インライン検証)です。欄から離れた時点で、その欄のすぐそばに直し方を即時に示す。ただし打ち終える前から赤くするとせっかちに感じさせるため、入力が終わった直後に、できるだけ肯定的な文言で示すのが基本です。もう一つ、全角・半角やハイフンの有無で弾く実装も多いのですが、多くはシステム側で吸収できます。「正しく入れているのに通らない」ほど、人が静かに去る理由はありません。
新規パスワードの負担を、最小化する
会員登録に固有の重さが新しいパスワードの作成です。まずパスワード可視化——目のアイコンで伏字を一時的に外せるだけで、打ち間違いの不安が減り、「確認用にもう一度」という二度入力も不要になります。新規作成欄にはautocomplete="new-password"、ログイン欄にはautocomplete="current-password"を振ると、ブラウザやパスワードマネージャーが候補生成や保存済みの差し込みを支援できます。SMSの確認コード欄にautocomplete="one-time-code"を添えれば、届いたコードを候補からワンタップで入力できます。ただし、こうした工夫を積んでも、“新しい認証情報をこのサービスのために一つ増やす”負担そのものは残ります——この点が、次に述べるEFOの限界に直結します。
進捗を見せる——ステップとプログレスの設計
入力が長くならざるを得ない場合は、今どこにいて、あと何が残っているかを見せると離脱が抑えられます。人は終わりの見えない作業をもっとも嫌うからです。「入力→確認→完了」のように段階を明示し、進捗バーで現在地を示す。ただし、ステップを増やすこと自体が目的化すると本末転倒で、分けるより減らせるものは減らすのが先です。ステップ設計は、項目が多いフォームを少しでも登りやすい階段にするための最後の手当てです。
それでも、EFOには超えられない一線がある
これらを丁寧に積み上げれば、完了率は目に見えて動きます。どんなサービスでも、まず取り組むべき土台です。とはいえ、EFOには構造的に超えられない一線があります。項目をどれだけ削り、オートフィルをどれだけ効かせても、「入力する」という行為そのものと、「新しいパスワードを一つ作る」負担は残るからです。5つの欄を3つに減らせば離脱はいくらか減るでしょう。しかし「別のサービスに自分のアカウントを作る」という心理的な負担は、項目数を削っただけでは消えません。壁を低くすることはできても、壁そのものは残るのです。しかもオートフィルは、そもそもブラウザに情報が保存されていない初回のユーザーには効きません。この一線を越えるには、発想を変える必要があります。
そもそも「体験の前」に登録を強制していないか
壁を越える前に、確認すべきことがあります。その登録は、本当に“今このタイミング”で必要かという点です。前述のとおり離脱理由の上位には「アカウント作成を求められた」(約19%)が入っていました。裏を返せば、アカウント作成を必須にしなければ、この離脱の多くは起きないということです。有効なのがゲスト購入(登録なしでの購入)と、登録タイミングの後ろ倒しです。まず商品を選ばせ、買わせ、価値を体験させる。そのうえで「次回のために、今の情報を保存しておきますか?」と促せば、パスワードを一つ決めるだけでアカウントが完成します。氏名も住所も購入時に受け取っているため、追加の入力はほとんど発生しません。登録という作業を、意欲がもっとも高まった“購入後”に移すだけで、心理的な重さがまるで変わるのです。入口を「登録しないと何もできない」から「登録しなくても進めるが、登録するとお得」へ変えるわけです。
ソーシャルログインは、入力を「速く」するのではなく「消す」
それでも登録は必要、けれど入力の壁は取り払いたい——この要求に応えるのがソーシャルログインです。ポイントは、入力を速くするのではなく、入力という行為を丸ごと消す点にあります。ユーザーがすでにSNS側に預けている氏名やメールなどの属性を、本人の同意のもとで受け取るため、フォームに打ち込む工程が要らず、新しいパスワードも考えずに済みます。
仕組みを少し具体化します。裏側ではOAuth 2.0/OpenID Connectという標準の認可・認証の枠組みが動いています。ユーザーが「LINEで登録」を押すと、いったんLINE側の画面に移り、「このサービスにあなたのプロフィールを渡してよいか」という同意画面が出ます。許可すると、こちらのサーバーには認可を示す一時的な符丁(認可コード)が返り、それを引き換えにアクセストークンとID情報を受け取ります。ユーザーが手で行うのは「許可する」のタップだけで、パスワードの照合はLINE側が済ませているため、こちらはパスワードを預からずに本人確認を済ませられます。フォームを速く通過させるのではなく、フォームそのものを経路から外している——ここがEFOと決定的に違い、限界を超えられる理由です。
EFOが「壁を低くする」施策なら、ソーシャルログインは「壁を取り払う」施策です。両者は対立せず、順番に効きます。
だからこそ、離脱を本気で減らすなら、EFOとゲスト購入で土台を整えたうえで、ソーシャルログインで入口そのものを軽くするのが理にかなっています。ここで二つの疑問に答えておきます。「ソーシャルログインを嫌う人もいるのでは?」——その通りです。だからこそ従来のメール登録やゲスト購入と併存させ、ソーシャルログインは主導線として目立たせつつ、他の入口も残すのが正解です。もう一つ、「自動入力に頼ると、取れる情報が減るのでは?」——これはむしろ逆です。ソーシャルログインで得られる情報はユーザーの同意にもとづくぶん質が高く、メールや氏名・住所といった項目も、必要であれば所定の申請をふまえて取得できます(取得できる情報)。手入力を減らしながら、活きたデータを集められるのです。
なぜ、日本ではLINEログインなのか
提供元はGoogle・Apple・Yahoo! JAPAN・LINEなど複数ありますが、日本のBtoC・スマートフォン主体のサービスなら、答えはかなりはっきりしています。LINEログインです。業界調査では、スマホでのソーシャルログイン利用のうち、およそ9割をLINEログインが占めるとされます。この数字の意味は単純で、「使える人が多い」ことは、そのまま「離脱が少ない」ことに直結する——ユーザーが日常的に開いていて、パスワードを覚えている必要もないアカウントで登録できるなら、迷う理由がそれだけ減るからです。背景には、日本人のパスワード使い回しの多さ(各調査で7割前後)もあります。“もう一つパスワードを作る”ことへの抵抗が強いからこそ、それを不要にするLINEログインが効くのです。iPhoneアプリではGoogle・Appleを併設する判断もありますが、主軸はLINEに置くのが現実的でしょう。
どこで、なぜ落ちているのかを測る
ここまでの打ち手は、当てずっぽうで入れても効きません。自社のフォームが、どの欄で、どれだけ落ちているかを先に把握することが、改善の出発点です。全体の完了率だけを眺めていても、原因の欄は特定できません。見るべきはフィールド単位の離脱です。フォーム分析の考え方では、各入力欄について「到達した人」「入力を始めた人」「入力を終えて次に進んだ人」を数え、どの欄で人が止まり、どの欄で離脱したかを追います。特定の欄——たとえば電話番号や、条件の厳しいパスワード欄——で急に脱落が増えていれば、そこが最初に直すべき場所です。何度も打ち直された欄も、文言かバリデーションに問題があるサインです。こうした計測は、フォーム分析ツールやアクセス解析のイベント計測(各欄のフォーカスや離脱を記録する仕組み)で実現できます。
そのうえで、打ち手の良し悪しはA/Bテストで確かめます。変更版と現行版を来訪者に振り分けて完了率を比べれば、良かれと思って入れた変更が逆効果だったことにも気づけます。ソーシャルログインについても、「どのログイン方法が、どれだけ完了率を上げたか」を方法別に測ってはじめて、導線の配置を最適化できます。入れて終わりにせず、変更のたびに数字で検証する——地味ですが、これがいちばん確実に効きます。
ソーシャルログインは「置けば効く」ボタンではない
最後に、釘を刺しておきます。ソーシャルログインは、設置さえすれば自動的に効くボタンではありません。計測は前節のとおりなので、残る二つのポイントに触れます。
一つ目は見せ方です。「LINEで登録」と一目で伝わる文言で、目立つ位置に置いてはじめて、ユーザーは安心して押せます。逆に取得する情報を欲張ると、同意画面で「なぜそこまで渡すのか」という不安を生み、かえって離脱を招きます。求めるのは最小限でいい——これは前述の「個人情報の入力が面倒」という本音の裏返しでもあります。
二つ目は、もっとも見落とされがちな既存会員との名寄せです。ここを設計しないまま導入すると、同じ人が「メールで登録した会員」と「LINEで登録した会員」に分裂し、重複会員が量産されます。入口を軽くしたはずが、かえって顧客データを濁らせてしまうのです。受け取ったメールアドレスをキーに既存会員と突き合わせる紐付けを、導入と同時に設計しておく必要があります。
「登録が増える」で終わらせない
離脱が減れば、新規会員は増えます。ただ、価値の本番はその先です。ソーシャルログインで受け取ったIDを自社の会員基盤に名寄せし、LINE公式アカウントの接点につなげれば、獲得したユーザーとの関係は一度きりで終わらず、次の来訪や購入——つまりLTVにまで効いてきます。「離脱を減らす」は入口の話ですが、本当に効かせるには出口(活用)まで一続きで設計することが欠かせません。
離脱の計測から、EFO、LINE/ソーシャルログインの実装、既存会員基盤との名寄せまでを一続きで設計したい場合は、LINE活用の実装支援で対応しています。まずは「自社のフォームが、どこで、なぜ落ちているのか」を突き止めるところからで大丈夫です。
▶ 全体像は 「LINEログインとは?仕組み・できること・導入の判断」 にまとめています。
参考にした情報:カゴ落ち率・チェックアウトの入力要素数・離脱理由(「アカウント作成を求められた」約19%、「長い・複雑」約18%)は Baymard Institute の公開データ。会員登録を最も面倒と感じる割合(53.5%)や理由(個人情報の入力が面倒 32.6%)、退会のしやすさ重視(約39%)は、ECモール「あるる」/株式会社システムリサーチの実態調査による。ソーシャルログインの利用傾向・LINEログインのシェア(スマホで約9割)、パスワード使い回しの割合は各種の業界調査による。autocomplete/inputmodeなど各入力属性の仕様はWHATWG/MDNの公開仕様にもとづく。改善効果はサービスによって変わります(数値は執筆時点)。
LINE公式アカウント支援
LINE公式アカウントの配信設計からCRM連携、LINEミニアプリ開発まで。顧客接点のデータを統合し、LTVと売上を上げるLINE活用を実現します。