空き家899万戸時代と立地適正化計画 — 人口減・空き家・公共施設老朽化の3重苦をどう乗り切るか

全国空き家899万戸・空き家率13.8%、35年で2.3倍。「その他空き家」385万戸が最大の問題。立地適正化計画策定率51%、2043年予測25.3%。総務省住宅土地統計と国交省データから「人口減×空き家×公共施設老朽化」の3重苦と打開策を5枚のSVGで整理する。

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2024年4月、総務省が公表した令和5年住宅・土地統計調査で、全国の空き家数が899万戸、空き家率13.8%と過去最多を記録した。2018年比で50万戸増、2043年には空き家率25.3%まで上昇する見込みだ。一方で、自治体側の対策——立地適正化計画・コンパクトシティ・空き家特措法に基づく除却——は遅々として進まない。本記事では、空き家統計の最新動向、立地適正化計画の進捗、そして「人口減 × 空き家 × 公共施設老朽化」の3重苦が自治体財政に与える影響を5枚のグラフで整理する。

空き家は35年で2.3倍 — 2023年に899万戸を突破

全国 空き家数(万戸)と空き家率(%)の推移紺=空き家戸数(左軸)/橙=空き家率(右軸)。2023年は899万戸・13.8%で過去最高0万250万500万750万1000万5%10%15%20%39444857665975782084989919881993199820032008201320182023出典: 総務省 住宅・土地統計調査(5年ごと、令和5年版2024年4月公表)

全国の空き家数は1988年の394万戸(空き家率9.4%)から2023年の899万戸(13.8%)へと、35年で2.3倍に膨張した。直近5年(2018→2023)でも50万戸の増加で、人口減少のペースを超える勢いで空き家が増え続けている。

これは「住宅需要が減ったから」というより、「相続発生時に処分も活用もされず、所有者不明のまま放置される住宅」が累積しているのが主因だ。2024年の改正空家特措法では「事後対応から予防対策へ」と方針転換され、将来空き家になる予備群の実態把握が始まっている。

本当の問題は「その他空き家」385万戸

空き家の種類別構成(令和5年・全国)最も問題なのが「その他」385万戸 — 売却賃貸の意思なく管理放置されている層。5年で+37万戸増加賃貸・売却用443 万戸(49.3%)二次的住宅(別荘等)38 万戸(4.2%)その他(管理放置含む)385 万戸(42.8%)分類不明33 万戸(3.7%)出典: 総務省 住宅・土地統計調査 令和5年版

空き家全体899万戸の内訳を見ると、賃貸・売却用443万戸(49.3%)、二次的住宅(別荘等)38万戸(4.2%)、その他385万戸(42.8%)、分類不明33万戸。問題なのは「その他空き家」385万戸で、これは売却・賃貸の意思もなく管理放置されているカテゴリ。5年で+37万戸増加と、空き家全体の増加分の約7割を占める。

「その他空き家」は固定資産税の特例措置(住宅用地軽減)を受けているのに住宅として機能していない状態で、自治体側にとっては税収減と管理コスト増のダブルパンチ要因になる。これに対応するのが、空家特措法に基づく「特定空家」「管理不全空家」の指定と税特例の解除だ。

都道府県別 — 地方21%、東京都10%

都道府県別 空き家率 — 地方ほど高く、都市部ほど低い▲ 空き家率 上位5県1. 和歌山県21.2%2. 徳島県21.2%3. 山梨県20.5%4. 鹿児島県20.4%5. 高知県20.3%▼ 空き家率 下位5都府道県1. 沖縄県9.3%2. 埼玉県9.4%3. 神奈川県9.8%4. 東京都10.9%5. 愛知県11.5%2043年予測:全国 25.3%(現状13.8%から大幅悪化)人口減少・高齢化が深刻な地方ほど空き家率は急速に上昇。一方、東京・大阪近郊は今後さらに悪化見込み出典: 総務省 住宅・土地統計調査 令和5年版

都道府県別の空き家率は、和歌山・徳島が21.2%でトップ、続いて山梨・鹿児島・高知が20%超。一方、沖縄9.3%・埼玉9.4%・神奈川9.8%・東京10.9%と都市部は1割前後にとどまる。地方ほど空き家率が高い構図は、人口減少と相続放棄の集積を反映している。

ただし、2043年予測の全国25.3%は、東京・大阪を含む都市部でも空き家率が大きく上昇することを意味する。これまで「地方の問題」と捉えられてきた空き家が、全国共通課題へと拡大する。

立地適正化計画は5割が策定済 — でも実効性に課題

立地適正化計画 策定状況(全市町村)過半が策定済だが、目標通り「居住誘導区域」へ住民が集まっているかは別問題。実効性に課題立地適正化計画 策定済51%全1,741団体中 約900団体策定中・予定あり18%概ね中規模都市検討中17%政策効果に懐疑的な団体多数策定予定なし14%小規模町村中心出典: 国土交通省 立地適正化計画 策定状況(半年ごと公表)

コンパクトシティの推進ツールとして都市再生特別措置法に基づく「立地適正化計画」が導入されてから10年、全市町村のうち51%(約900団体)が策定済。策定中・予定18%、検討中17%、策定予定なし14%という分布だ。

策定済の自治体でも、「居住誘導区域」に実際に住民が集まっているかは別問題。多くの自治体で計画と実態の乖離が指摘されており、誘導区域外への新規宅地開発を抑制する強制力が弱いことが課題になっている。

3重苦 — 人口減 × 空き家 × 公共施設老朽化

自治体財政の「3重苦」— 人口減 × 空き家 × 公共施設老朽化人口減少税収減・労働力不足空き家急増固定資産税は減・除却費は増公共施設老朽化年9.5兆円規模の更新需要××3要素が同時進行 = 自治体財政が複合悪化立地適正化計画 + 公共施設マネジメント + 空き家対策を一体で進めるしかない

自治体財政が直面しているのは、「人口減(税収減・労働力不足)×空き家急増(固定資産税減・除却費増)×公共施設老朽化(年9.5兆円規模の更新需要)」の3重苦。これらは別々の問題のように見えるが、根は同じ「日本社会の人口構造変化」にあり、同時進行で財政を圧迫する。

これを単独の対策で乗り切ることはできない。「立地適正化計画+公共施設マネジメント+空き家対策」を一体的に動かして、コンパクトな都市構造へと再編するのが現実的な答えだ。当社が支援する自治体でも、財政・都市計画・建築・税務の各部署が同じデータを見て議論する基盤の構築が、最初の壁になることが多い。

解決の方向性 — 都市構造データを公会計BIに統合

当社が支援する自治体では、固定資産台帳(公会計)に空き家台帳・立地適正化計画の居住誘導区域・公共施設位置データを重ね合わせたBIダッシュボードを構築している。これがあると、「どの地区で空き家が集中していて、どの公共施設が更新候補で、立地適正化と照らしてどう統廃合・コンパクト化すべきか」のエビデンスが揃う。

詳細は下記のサービスページで紹介している。

SERVICE / 関連ページ

自治体向け 都市構造 × 公会計BI 統合ダッシュボード

空き家台帳・立地適正化計画・固定資産台帳・公共施設マネジメントを地図ベースで統合可視化。財政・都市計画・建築・税務の各部署が同じ画面で議論できる基盤を構築。

サービス詳細・導入事例を見る →

関連する調査・解説記事

参照した一次資料

  • 総務省「住宅・土地統計調査 令和5年版」(2024年4月公表)
  • 国土交通省 立地適正化計画 策定状況(半年ごと公表)
  • 改正空家特措法(令和5年12月改正、令和6年6月施行)
  • 都市再生特別措置法 立地適正化計画
  • 各都道府県・市町村 空家対策計画

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