freee MCP とマネーフォワード MCP を徹底比較【2026年6月】公式サーバーの機能・制約・選び方
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2026年3月、freee とマネーフォワードがほぼ同時期に公式の MCP サーバーを世に出しました。freee は「freee-mcp」を OSS として公開し(3月2日)、マネーフォワードは『クラウド会計』のリモートMCPサーバーを全プランへ開放しました(3月26日)。AI エージェントから会計ソフトを操作する環境は、コミュニティ実装に頼る時代から「公式をどう安全に使うか」の時代に変わっています。本記事では、両者の公式 MCP を提供形態・できる操作・認証・制約まで実装目線で比較し、最後に「どちらを選んでも共通で残る統制設計」を整理します。
比較サマリー(2026年6月時点)
| 比較項目 | freee「freee-mcp」 | マネーフォワード クラウド会計 リモートMCP |
|---|---|---|
| 提供開始 | 2026年3月2日に OSS 公開(GitHub / npm)。その後リモートMCP(mcp.freee.co.jp/mcp)も提供 |
2025年10月にβ版公開 → 2026年3月26日に全プランへ提供拡大(執筆時点ベータ段階) |
| 提供形態 | ローカル実行(OSS・npx)+リモートMCP の2系統。Claude Code はプラグインでも導入可 | リモートMCP 専用(マネーフォワードのクラウド上・構築不要) |
| 対象サービス | 会計・人事労務・請求書・工数管理・販売・IT管理・サイン(電子契約) | クラウド会計・クラウド確定申告 |
| 主な操作 | 約270本の公開 API を汎用ツール(freee_api_get / post / put / delete / patch)経由で呼び出し |
仕訳の一覧・個別取得・新規作成・更新、残高試算表・推移表の取得、勘定科目・補助科目・取引先・部門・税区分等のマスタ取得、入出金明細の作成 |
| 書き込み | 取引・請求書等の登録・更新が可能(カード明細の消込は API 仕様上不可) | 仕訳の新規作成・更新、入出金明細の作成が可能 |
| セットアップ | リモート接続/npx freee-mcp configure/Claude Code プラグイン(Agent Skills 同梱) |
アプリポータルで権限付与 → AI クライアントに接続 URL を設定するだけ |
| 認証 | OAuth 2.0 + PKCE(ローカルは freee アプリ登録=Client ID / Secret が必要) | マネーフォワード ID による OAuth(alpha 系は1時間ごとに再認証) |
| 料金 | freee 契約内・OSS は無償(Apache-2.0) | 追加料金なし(全プラン対象、仕訳件数等の制限はプラン準拠) |
| 対応クライアント例 | Claude Desktop / Claude Code / Claude Cowork / Cursor など | Claude Desktop / Claude Code / Claude Cowork / Cursor / Gemini CLI(beta 系 URL は Gemini CLI 非対応) |
一覧だけ見ると「freee は広く、マネーフォワードは深く絞って」提供していることが分かります。以下、それぞれの設計を見ていきます。
freee「freee-mcp」——約270本の API を丸ごと渡すゲートウェイ型
freee-mcp の特徴は、個別の業務操作をツール化するのではなく、freee の公開 API ほぼ全体を少数の汎用ツールに集約して渡す設計です。AI クライアントからは freee_api_get / freee_api_post などの汎用ツールと、どの API パスが存在するかを引く freee_api_list_paths、認証や事業所切り替えを担う freee_authenticate / freee_set_current_company などの管理ツールが見えます。電子契約(freee サイン)には sign_api_get 等の専用ツール群が分かれています(サインのリモートMCP対応は執筆時点で準備中)。
このゲートウェイ型を実務で使いやすくしているのが Agent Skills です。Claude Code にプラグインとして導入すると(claude plugin marketplace add freee/freee-mcp → claude plugin install)、API リファレンスや操作レシピがスキルとして同梱され、「見積書のフィールド名は?」のような質問に AI が自走で答えながら API を叩けるようになります。
導入ルートは3つあります。
- リモートMCP(推奨): クライアントに名前
freee・URLhttps://mcp.freee.co.jp/mcpを登録して接続 - ローカル実行:
npx freee-mcp configureで対話的に OAuth 認証と事業所選択(freee アプリの登録=Client ID / Secret とコールバックhttp://127.0.0.1:54321/callbackが前提) - Claude Code プラグイン: MCP サーバーと Agent Skills を一括導入
OSS(Apache-2.0)なのでコードを読めること、ローカル実行を選べば通信経路や実行環境を自社の統制下に置けることは、情シスにとって大きな利点です。更新も活発で、執筆時点の最新版は v0.30.0(2026年6月10日)、リリース数は69を数えます。freee 側 API の制約や「できないこと」の詳細はfreee 会計 MCP で「できること/できないこと」一覧で、権限の絞り方はfreee 公式 MCP を Claude Code に繋ぐ前に決める、権限の絞り方で扱っています。
マネーフォワード——会計操作を絞って提供するリモート専用型
一方のマネーフォワードは、自社クラウド上にホストされたリモートMCPサーバー専用です。ユーザー側でのサーバー構築・運用は一切不要で、アプリポータルで権限を付与し、AI クライアントに接続 URL を設定すれば使えます。2025年10月のβ公開を経て、2026年3月26日から全プラン(追加料金なし)に開放されました。
提供される操作は freee と対照的に、会計実務に直結するものへ意図的に絞られています。仕訳の一覧・個別取得・新規作成・更新、残高試算表・推移表の取得、勘定科目・補助科目・取引先・部門・税区分・事業者情報・会計年度といったマスタの取得、入出金明細の作成です。「AI に渡すのは会計操作だけ」という境界が最初から明確で、対象外の人事労務や請求書系のデータに触れる心配がそもそもない、と整理できます。
接続エンドポイントは2系統あります。
| 系統 | 提供開始 | 特徴 |
|---|---|---|
alpha.mcp.developers.biz.moneyforward.com/mcp/ca/v3 |
2026年3月26日〜 | 1時間ごとに再認証が必要 |
beta.mcp.developers.biz.moneyforward.com/mcp/ca/v3 |
2026年4月1日〜 | 認証が延長され自動化向き。ただし Gemini CLI は認証方式の差異により非対応 |
具体的な接続手順とプロンプト例はマネーフォワード クラウド会計 公式MCPサーバー接続ガイドに分けてまとめました。
設計思想の違い——「自由度の freee」と「境界の MF」
両者の違いは機能の多寡ではなく、AI に何をどこまで見せるかの思想にあります。
- freee-mcp はゲートウェイ型。約270本の API が視野に入るため、会計に限らず人事労務や販売まで横断する自動化を1本で組めます。裏返すと、「AI がどの API を呼べてしまうか」の制御はプロンプトと権限設計側の責任になります。OAuth スコープの絞り込みと、操作の種類(参照系か登録系か)の運用ルールが実質的な安全柵です。
- マネーフォワードはキュレーション型。提供される操作自体が会計の参照・登録に限定されており、境界がサーバー側で引かれています。一方でリモート専用のため、実行環境を自社内に置く選択肢はなく、ベータ段階ゆえ仕様の変化も見込んでおく必要があります。
ローカル実行(コードを読める・ネットワークを閉じられる)を重視するなら freee-mcp、構築ゼロで素早く試したい・触らせたくないデータが多いならマネーフォワード、という整理がまず成り立ちます。
「できないこと」の比較——つまずきやすい制約
freee: カード明細の消込は MCP でもできない
クレジットカード明細と取引の紐付け(消込)は freee API の仕様上実行できず、freee-mcp を経由しても同じです。これを知らずに AI へ「カード明細を取引登録して」と繰り返すと、二重計上の温床になります。明細起点の処理は人の画面操作に残す、という線引きが現実解です。
マネーフォワード: 対象はクラウド会計・確定申告のみ、かつベータ
請求書・経費など周辺サービスはまだ対象外です。また alpha 系エンドポイントは1時間ごとの再認証が必要で、夜間バッチ的な使い方には beta 系を選ぶ必要があります。ベータ段階のため、操作の追加・変更が今後も入る前提で、検証環境から始めるのが安全です。
共通の制約としては、API のレート制限(大量データの一括処理はページネーション設計が必要)、スキーマや仕様の変更リスク、そして「AI が間違った内容を自信を持って登録し得る」というエージェント特有のリスクがあります。
どちらを選ぶか——判断は「ソフト」ではなく「統制」で決まる
まず大前提として、すでに使っている会計ソフトの MCP を使うのが出発点です。MCP のために会計ソフトを乗り換える判断は、移行コストに見合いません。そのうえで迷うのは、複数の顧問先で freee とマネーフォワードが混在する会計事務所や、これから会計ソフトごと選定する企業でしょう。
| 判断軸 | freee-mcp が向く | MF リモートMCP が向く |
|---|---|---|
| 自動化の範囲 | 会計+労務・販売・契約まで横断したい | 会計(仕訳・試算表)に集中したい |
| 実行環境の統制 | ローカル実行・コード監査・閉域運用をしたい | 構築ゼロ・メンテ不要を優先したい |
| 立ち上げ速度 | アプリ登録や設定の初期工数を許容できる | 接続 URL の設定だけで今日試したい |
| 権限の境界 | スコープ・運用ルールを自分たちで設計できる | サーバー側で会計操作に絞られている方が安心 |
そして実務では、この選択よりも重い共通課題が残ります。どちらを選んでも、「AI に渡す情報の範囲」「書き込みの承認」「操作ログ」は利用者側の設計に委ねられていることです。
共通で残る本丸——権限・承認・ログの統制設計
公式 MCP の登場で「繋ぐこと」は簡単になりましたが、繋いだ後の統制はむしろ重要になりました。仕訳の登録(書き込み)が公式にできるようになった以上、誤登録・二重計上・権限過多は設計で防ぐしかありません。マネーフォワード自身も、認可コードが AI ツールの学習に使われないよう設定すること、複数事業者を扱う際は操作開始時に事業者を確認することを公式に注意喚起しています。最低限、次の3点をルール化してください。
- 読み取りから始める: 試算表・仕訳の参照で価値を確認してから、書き込みを段階的に解放する
- 書き込みは人の承認を挟む: AI の出力はプレビューに留め、承認した分だけ会計ソフトへ反映する
- 操作ログを残す: 誰が・いつ・どの操作を実行したかを、AI クライアント側ではなく統制側で記録する
この「AI に渡す情報を絞り、人が承認した分だけ書き戻す」統制をプロダクトとして実装したのが、freee / マネーフォワード両対応のセキュア記帳基盤 RuleHub です。導入先の田村直大公認会計士・税理士事務所では、AI に渡すのは正規化済みの摘要のみとし、口座番号や API トークンはサーバー側に保管したまま、約500件の共通ルールで仕訳を判定して、人が承認した分だけを freee へ書き戻しています。記帳の自動化率は段階的に最大95%を見据え、月次決算のリードタイムは5営業日から0.5営業日まで縮みました(田村事務所 × RuleHub 導入インタビュー)。
FAQ
- freee-mcp とマネーフォワードのリモートMCPは、無料で試せますか?
- どちらも各サービスの契約プラン内で利用でき、MCPサーバー自体の追加料金はありません(freee-mcp は Apache-2.0 の OSS、マネーフォワードは全プラン対象・執筆時点ベータ)。ただし Claude など AI クライアント側の利用料は別途必要です。
- freee とマネーフォワードの両方を、1つの Claude Code に同時に接続できますか?
- できます。それぞれ別の MCP サーバーとして登録すれば共存します。ただし会計事務所などで複数事業者を扱う場合、「どの会社のデータを操作しているか」の取り違えが最大のリスクになるため、サーバー名の命名と、操作開始時に事業者を復唱させるプロンプト運用をセットにしてください。
- 仕訳の登録(書き込み)まで AI に任せても大丈夫ですか?
- 両者とも書き込み系の操作を提供していますが、AI の出力をそのまま本番の帳簿に流すことは推奨しません。読み取りから始めて、書き込みは人がプレビューして承認した分だけ反映する形にし、誰がいつ何を実行したかのログを残すのが実務の最低線です。
- クレジットカード明細の消込はできますか?
- freee は、カード明細と取引の紐付け(消込)が API の仕様上実行できないため、freee-mcp 経由でもできません。知らずに取引登録を繰り返すと二重計上の温床になります。マネーフォワードのリモートMCPも、対応操作として明示されているのは仕訳・試算表・マスタ取得・入出金明細の作成までで、消込フローを AI に任せる設計は現時点では慎重に検討すべき領域です。
関連ガイド
会計 SaaS 全体の MCP 対応状況は会計SaaS × MCP の比較表に、マネーフォワード側の実装アーキテクチャはマネーフォワード クラウド × MCP連携に、AI へ渡す情報そのものの設計はfreee・マネーフォワードの記帳を自動化する前に、AIへ渡す情報を設計するにまとめています。API トークンの保護はfreee・マネーフォワードの API トークンを、AI 記帳でどう守るかも参照してください。
freee / マネーフォワード × AI 記帳の設計をご相談ください
どちらの公式 MCP を、どの権限と承認フローで本番に載せるか——Aurant が中立の立場で、PoC 設計から統制の実装までを支援します。すでに進めている構成のセカンドオピニオンもお気軽にどうぞ。