【完全ガイド】介護業界レガシーシステム刷新:カイポケ・ほのぼのNEXT・ワイズマンシステムSPへの移行と介護報酬改定対応
介護業界の基幹システム(ケアマネジメント、介護報酬請求、訪問介護管理)の刷新戦略。カイポケ/ほのぼのNEXT/ワイズマンシステムSP/カナミック の比較、ICT導入加算、介護報酬改定対応、AI活用支援を徹底解説。
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介護業界の基幹システム刷新は、介護保険請求が業務の中心にある点で、他業界の ERP プロジェクトとは別物。介護報酬改定(3 年ごと)への追従、LIFE(科学的介護情報システム)への対応、夜勤・シフトを前提とした人事労務、介護サービスの多様性(在宅・施設・通所)といった、業界固有の論点が選定軸になる。本稿は、カイポケ・ほのぼの NEXT・ワイズマンシステム SP の三強を中心に、介護事業者のシステム刷新で実際に詰まる論点を整理する。
1. 介護業界の主要 3 ベンダの市場構造
介護業界の基幹システムは、市場シェアで 3 強に集約されている。それぞれの強みと利用者層が明確に分かれているため、自事業者がどの層に該当するかでまず候補が絞られる。
| ベンダ | 主要製品 | 得意領域 | 典型ターゲット |
|---|---|---|---|
| SMS | カイポケ | クラウド SaaS、月額定額、機能網羅 | 中小〜中堅、新規開設 |
| NDソフトウェア | ほのぼの NEXT | サービス種別の幅広さ、施設系 | 特養・老健・介護医療院、複合事業者 |
| ワイズマン | ワイズマンシステム SP | 地域密着サポート、医療法人向け | 医療法人系介護事業者、地域中堅 |
その他、福祉ソフト(茨城)、楽すけ(大阪)、ケアコラボ、寿美屋などの中小ベンダもあり、地域別の市場シェアは三強と並ぶ場合もある。新規参入では、Care Engineer(スマートシニア)、ケアパレット(スマイル・プラス)など SaaS 型新興ベンダも増えている。
2. LIFE 対応:選定で必ず確認するポイント
2021 年から運用が始まったLIFE(Long-term care Information system For Evidence)は、介護記録のデータを厚労省に提出することで、科学的介護推進体制加算(40 単位/月)などの算定を可能にする。LIFE 対応の有無は、選定時に必ず確認すべき項目。
- LIFE 提出フォーマットの自動生成:基幹システムから LIFE への提出 CSV を自動出力できるか。
- 科学的介護推進加算の算定支援:LIFE への提出と利用実績に基づき、加算算定の自動判定ができるか。
- 個別機能訓練加算 II / 排せつ支援加算 / 褥瘡マネジメント加算:LIFE 連携が前提の加算群。算定支援機能の有無。
- BI / ADL / DBD:標準化された評価指標の入力支援。
主要 3 ベンダはいずれも LIFE 対応済みだが、個別の加算算定支援の細かさはベンダごとに差がある。自施設の主要算定加算が支援されているかを試用環境で確認するステップが必須。
3. 介護報酬改定(3 年ごと)への追従コスト
介護報酬は 3 年ごとに改定され、加算・基本報酬・サービス区分が大きく変わる。直近では 2024 年 4 月に改定があり、次は 2027 年 4 月。この改定対応はベンダによって負担モデルが大きく異なり、契約時の確認が将来コストを左右する。
- 改定対応費が保守料に含まれる契約:カイポケなどの SaaS 系は、月額料金内でアップデート提供が標準。
- 改定対応費が別途発生する契約:オンプレ型・買い切り型で多い。1 回の改定対応で数十万円〜数百万円。
- 改定対応がベンダ任意の契約:保守契約が切れている場合、改定対応自体を提供されないことがある。
古いシステムを使い続ける事業者の多くが、改定対応のタイミングで「ベンダから対応されない」事態に直面し、強制的に乗り換えを迫られる。選定時には、保守契約の「改定対応の範囲・タイミング・費用」を必ず文書で確認する。
4. 夜勤・シフトを前提とした人事労務システムとの連携
介護事業者の人事労務は、24 時間 365 日のシフト体制、夜勤・準夜勤・深夜勤の手当計算、処遇改善加算の配分など、一般企業とは大きく異なる特殊性がある。
- シフト管理:シフトベース・KING OF TIME 介護版・Synchro と給与計算の連携。
- 夜勤手当・特殊勤務手当:シフトデータから自動計算する仕組みが必要。
- 処遇改善加算(I/II/III)の配分:受給した加算額を職員に配分する処理。配分方法は事業者で決められるが、税務上の整合性確認が必要。
- 外国人介護職員(特定技能・EPA・技能実習):在留資格管理・送出し機関への報告・特定の人事処理。
主要 3 ベンダの基幹システムは勤怠・給与計算機能を含むが、シフト管理は別ツール(KING OF TIME 介護版・シフトベース・Synchro)と連携するパターンが標準。完全統合型を求めると、選択肢が大きく狭まる。
5. サービス種別ごとの選定優先度
| サービス種別 | 主要要件 | 典型選定 |
|---|---|---|
| 訪問介護 | サービス提供記録・実績入力・訪問ルート管理 | カイポケ / ほのぼの NEXT |
| 通所介護(デイサービス) | 送迎管理・利用者個別計画・LIFE 加算 | カイポケ / ほのぼの NEXT |
| 居宅介護支援(ケアマネ) | ケアプラン作成・サービス担当者会議・LIFE 連携 | ほのぼの NEXT / ワイズマン / カイポケ |
| 特別養護老人ホーム | 入所管理・看護記録・身体拘束最小化 | ほのぼの NEXT / ワイズマン |
| 介護老人保健施設 | リハビリ記録・在宅復帰率管理・医療連携 | ワイズマン / ほのぼの NEXT |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 賃貸管理+介護サービス管理 | カイポケ + 賃貸管理 SaaS 併用 |
| 有料老人ホーム | 入居一時金管理・特定施設加算 | ワイズマン / ほのぼの NEXT |
複数サービスを展開する複合事業者では、サービス種別ごとに別ベンダを使うか、すべて 1 ベンダに集約するかの選択が必要。集約のほうが運用効率は上がるが、各サービスの専門機能で妥協が必要になることが多い。
6. 移行プロジェクトの典型的な失敗パターン
- 改定対応スケジュールと移行を重ねる:4 月の介護報酬改定の直後・直前に新システム移行をぶつけると、改定対応とシステム移行のダブル負荷で現場が混乱する。改定の影響が落ち着く秋以降に移行するのが安全。
- LIFE 提出の準備不足:移行後すぐに LIFE 提出が止まると、加算算定が止まり収益が直撃する。移行前に LIFE 提出フローのリハーサルを必ず実施する。
- ケアマネ業務の効率低下:ケアマネは利用者一人あたり月 1 時間以上のシステム入力を行っている。新システムの UI が変わるだけで、ケアマネの稼働時間が 1.5〜2 倍に膨らむケースがある。事前トレーニングの十分さが定着率を分ける。
- 請求書発行・利用者負担金収納の停止:移行直後の月次請求が遅れると、キャッシュフローに直撃する。並行運用期間中に最低 1 ヶ月分の請求書を新システムで試行することが必須。
7. 介護記録の効率化:音声入力・タブレット・センシング
移行と並行して導入できる、介護記録の効率化技術。
- 音声入力:SmartNote、CareViewer など。介護現場で記録時間を削減。
- タブレット入力:その場で入力できる UI。介護ソフト各社が標準対応。
- センシング:見守りセンサー(眠り SCAN、aamsoy)・行動分析カメラ(Cubiox)からの自動記録。
- AI による記録補助:音声認識・自然言語処理による記録の構造化。
8. あなたの介護事業の刷新方針:4つの問いで主要3ベンダから絞り込む
カイポケ・ほのぼのNEXT・ワイズマンシステムSPの3社は累計で18万事業所超を抱える業界の選択肢の中心だが、機能網羅型で価格帯も近いため「並べて比較しても決まらない」事業者が多い。実務的には、自社事業の特性に関する次の4つの問いに答えると、候補が1〜2社に絞り込める。
問1:サービス種別は単独か複合か
- 単独サービス(訪問介護のみ・デイサービスのみ等):カイポケが第一候補。クラウド SaaS で月額定額、新規開設・小規模事業所への導入実績が最も厚い。LIFE 対応も標準。
- 施設系(特養・老健・介護医療院)中心:ほのぼの NEXT が第一候補。入所管理・看護記録・身体拘束最小化・在宅復帰率管理など施設系の細かい機能が充実。
- 居宅介護支援+医療連携が重い:ワイズマンシステム SP が候補。医療法人系介護事業者・地域中堅で導入実績、医療連携機能に強み。
- 複数サービスを複合運営:1社集約か複数社併用かの判断。集約のほうが運用効率は上がるが、各サービスの専門機能で妥協が必要になる。事業所数10以下なら集約優位、それ以上なら専門機能優先のことが多い。
問2:将来の事業拡大計画はあるか
- 3年以内に新規サービスを追加予定:マルチサービス対応のほのぼの NEXT・ワイズマンが有利。後からモジュール追加で対応可能。
- 事業所数を倍増以上に増やす計画:カイポケのクラウド SaaS が拡大コストで有利。新事業所追加が即日可能、初期コストが低い。
- 当面は現規模を維持:3社いずれでも対応可。むしろ料金体系(買い切り vs 月額)で選ぶ。
- M&A・事業承継を視野:ベンダ買収・継承時のデータ可搬性を契約段階で確認。後述の契約5項目で確認すべき。
問3:IT 担当者・情報システム担当者の社内体制は
- 専任IT 担当者がいない・常勤介護職員のみ:カイポケが第一候補。サポート窓口・経営支援サービス・タブレット貸与等の周辺サービスが充実。
- 事務職員に IT リテラシーがある:3社いずれでも対応可。機能・価格・将来性で判断。
- 本部に IT 部門あり:ほのぼの NEXT のオンプレ運用も選択肢。カスタマイズ自由度が高い。
問4:直近1年で介護報酬改定への対応負担を許容できるか
- 許容できない(事務負荷をベンダ任せにしたい):SaaS 型カイポケが優位。月額料金内で改定対応が標準提供される。
- 許容できる(社内 IT 部門で対応可能):ほのぼの NEXT・ワイズマンも選択肢。買い切りでトータルコストが低くなる可能性。
- 古いオンプレを継続中:改定対応のたびに数十万〜数百万円の追加費用が発生しているなら、SaaS 移行で総コストが下がる可能性が高い。
4問の組合せから導かれる候補
| サービス種別 | 拡大計画 | IT体制 | 第一候補 |
|---|---|---|---|
| 単独・在宅系 | 維持〜中規模拡大 | 専任なし | カイポケ |
| 単独・在宅系 | 大規模拡大 | 事務職員 | カイポケ+経営管理BI追加 |
| 施設系 | 維持 | 事務職員 | ほのぼの NEXT |
| 施設系 | 新サービス追加 | IT部門あり | ほのぼの NEXT(モジュール追加前提) |
| 居宅+医療連携 | 維持〜中規模拡大 | 専任あり | ワイズマン |
| 複合(10事業所以下) | 維持 | 事務職員 | 3社いずれかに集約。価格優位で選定 |
| 複合(10事業所超) | 拡大 | 本部 IT 部門あり | サービス種別ごとに最適ベンダ+本部統合BI |
9. ベンダ契約時に必ず確認する5つの条項:改定対応・データ可搬性・解約
介護ソフト選定で「導入時の機能」は試用版で確認できるが、3〜5年後に問題化するのは契約条項。介護報酬改定・データ可搬性・解約の3軸に関わる次の5項目は、契約書の文言レベルで確認・交渉する。後から「言った言わない」になりがちな領域。
条項1:介護報酬改定対応の費用と範囲
- 確認するポイント:3年ごとの介護報酬改定への対応費用が「保守料に含まれるか/別途請求か」。別途請求の場合、過去改定での請求実績(金額レンジ)。
- SaaS(カイポケ等):月額料金内での標準提供が一般的だが、契約書上は「ベンダの判断で対応する」となっている場合も多い。明示的に「全改定への自動対応を含む」と記載されているかを確認。
- オンプレ・買い切り:保守契約の範囲を細かく確認。「軽微な改定」と「大規模改定」で対応範囲が変わる契約が多く、想定外の出費の原因になる。
- 古いシステム継続中:保守契約切れの場合、改定対応自体を提供されないケースがある。次回改定(2027年4月)前に判断が必要。
条項2:データ可搬性(解約時の引継ぎ)
- 確認するポイント:解約時に過去の利用者データ・記録・請求履歴を「どの形式で」「どの範囲で」出力できるか。データ持ち出しの追加費用の有無。
- 利用者基本情報のみ:多くのベンダでは標準対応。CSV・Excel での出力が可能。
- 過去のサービス提供記録・LIFE 提出データ:ベンダによって対応範囲が大きく異なる。特に LIFE データの引継ぎは加算算定の継続性に直結するため、明確に確認。
- 過去の請求・国保連伝送データ:保管義務(5年間)への対応が必要。出力可能か、別契約での保管継続が必要か。
条項3:解約条件・違約金
- 最低契約期間:1年・3年・5年等の最低契約期間と、期間内解約時の違約金の有無・金額。
- 解約予告期間:解約申出から契約終了までの予告期間(30日・90日等)。次システムへの移行スケジュールへの影響。
- 自動更新条項:自動更新の有無と、更新拒否の手順・期限。
- 契約途中での条件変更:契約期間中のベンダ側からの値上げ・機能変更の権利範囲。
条項4:サポート水準(SLA)
- 対応時間:問合せ対応の対応時間(営業時間内のみ・24時間等)。介護事業の業務時間(早朝・夜勤対応)との整合。
- 対応手段:電話・メール・チャット・訪問対応の選択肢。
- レスポンス時間:問合せから初回回答までの目安時間。緊急時の対応保証。
- システム障害時の対応:障害発生時の連絡・復旧目標時間・補償の有無。
- 導入時のサポート:データ移行・初期設定・職員研修の費用と範囲。
条項5:追加機能・オプションの料金体系
- 標準機能と追加機能の境界:標準料金に含まれる機能と、追加料金が必要なオプションの明確化。
- 事業所数による課金:事業所追加時の料金加算の仕組み。マルチ事業所運営での総コスト試算。
- 利用者数による課金:利用者数による課金の有無。施設系で利用者数が増える場合の影響。
- サードパーティ連携:他社サービス(勤怠管理・会計等)との連携費用。API 連携・データ連携の料金。
- 付帯サービス:タブレット・スマホレンタル・経営支援サービス等の付帯サービス料金。
契約交渉での実務的なアドバイス
- RFP段階での明示:複数ベンダから見積を取る際、5項目を RFP に明記。各社の回答を横並びで比較できる状態にする。
- 契約条項の修正交渉:標準契約のままではなく、自社にとってリスクのある条項は修正交渉する。中堅事業者ならベンダも応じることが多い。
- 業界団体・専門家への相談:全国介護事業者連盟・社会福祉法人経営者協議会等への相談。同業他社の契約事例の参考に。
- 法務確認:500万円以上の契約は法務専門家による契約書レビューを推奨。長期にわたる影響を回避。
10. LIFE 提出を業務に組み込む:加算算定を取りこぼさない運用設計
2021年運用開始の LIFE(科学的介護情報システム)は、提出と利用実績に基づき科学的介護推進体制加算・個別機能訓練加算 II・排せつ支援加算・褥瘡マネジメント加算等の算定が可能。基幹システム選定で LIFE 対応の有無は確認するが、実際の加算算定には日々の業務フローへの組込みが必須。提出データの精度と継続性が、収益を直接左右する。
LIFE 提出に関連する主要な加算と対象事業所
| 加算 | 対象事業所 | 算定の主要要件 |
|---|---|---|
| 科学的介護推進体制加算 | 通所介護・特養・老健・介護医療院等 | LIFE 提出の継続実施・PDCA への活用 |
| 個別機能訓練加算 II | 通所介護・地域密着型通所介護 | LIFE 提出+機能訓練計画の作成・実施 |
| 排せつ支援加算 | 特養・老健・介護医療院等 | 排尿排便の自立支援に向けた計画・LIFE 提出 |
| 褥瘡マネジメント加算 | 特養・老健・介護医療院等 | 褥瘡リスク評価・計画・LIFE 提出 |
| ADL 維持等加算 (II) | 通所介護・地域密着型通所介護 | ADL 維持・改善の評価・LIFE 提出 |
| 口腔衛生管理加算 (II) | 特養・老健・介護医療院等 | 口腔衛生管理計画・LIFE 提出 |
| 栄養マネジメント強化加算 | 特養・老健・介護医療院等 | 栄養スクリーニング・LIFE 提出 |
LIFE 提出を継続するための業務フロー設計
- 評価のタイミング統一:個別計画見直し時・四半期等の決まったタイミングで評価を実施。担当者ごとのバラつきを排除。
- 評価者の明確化:誰が・どの評価項目を入力するかを業務分担として明確化。看護師・介護職員・機能訓練指導員・管理栄養士等の役割分担。
- 入力ツールの統一:基幹システムへの直接入力か、紙→入力の二段階か。二段階の場合、入力漏れ・遅延のリスクを減らす運用ルール。
- データ品質のチェック:提出前の入力データの品質チェック。明らかな入力ミス・矛盾を検知する仕組み。
- 未提出のアラート:提出期限が近づいたら、未提出データをアラート。期限切れによる加算未算定の防止。
- 提出後のフィードバック確認:LIFE から返送されるフィードバックデータの確認・現場へのフィードバック。PDCA への活用。
加算未算定を引き起こす典型パターン
- パターン1:評価入力が漏れる:担当者の異動・退職時の引継ぎ不足で評価入力が止まる。月次の入力状況チェック体制が必要。
- パターン2:提出データに不備:必須項目の未入力・数値の入力ミス。提出前のシステム側チェック機能の活用。
- パターン3:システム改修待ち:新加算対応のシステム改修が遅れ、算定機会を逃す。ベンダの対応スケジュール確認。
- パターン4:算定要件の理解不足:算定要件の細かい部分の理解不足。研修・マニュアルでの周知。
- パターン5:PDCA への活用記録なし:単に提出するだけで終わり、PDCA の記録がない。実地指導で指摘される。
2027 年改定に向けた準備
- 新加算への対応:3年ごとの改定で新加算が追加される可能性。最新動向の追跡。
- 既存加算の要件変更:既存加算の要件が改定で変更される可能性。改定後速やかな対応。
- システム改修への対応:ベンダのシステム改修スケジュールと、自社の業務フロー変更スケジュールの整合。
- 職員研修:改定内容を職員に周知。実務での変更点の理解。
- 料金設定の見直し:改定後の介護報酬を踏まえた、自社サービスの料金設定見直し。
11. ICT・介護ロボット投資の判断フレーム:助成金×加算×ROI で決める
介護事業者の ICT・介護ロボット導入は、補助金活用・介護報酬上の加算評価・労務コスト削減の3軸で投資判断する。「とりあえず最新機器を導入する」では投資回収が見えないため、導入前の判断フレームで効果を試算することが重要。
主要な助成金と適用条件
| 助成金 | 所管 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 介護ロボット導入支援事業 | 厚労省・都道府県 | 移乗支援・移動支援・排泄支援・見守り等の介護ロボット |
| 介護分野における ICT 導入支援事業 | 厚労省・都道府県 | 介護ソフト・タブレット端末・Wi-Fi 環境 |
| 地域医療介護総合確保基金 | 厚労省・都道府県 | 地域単位での介護サービスの確保・効率化 |
| 業務改善助成金 | 厚労省 | 事業内最低賃金引き上げと設備投資 |
| IT 導入補助金 | 経産省 | 業種横断的な IT 導入。介護分野も対象 |
介護報酬上の加算評価(システム連動)
- 夜勤職員配置加算の特例:見守りセンサー等の活用により、夜勤職員数の特例的取扱いが可能。夜勤の人件費削減と加算継続の両立。
- 科学的介護推進体制加算:LIFE 連携を含む科学的介護の推進。データ提出と PDCA への活用。
- 業務継続体制加算:BCP 策定・実施に対する評価。
- サービス提供体制強化加算:ICT 活用による業務効率化・サービス向上の評価(一部加算)。
ROI 試算のフレーム
導入判断のための ROI 試算は、次の4要素を3年スパンで積算する。
- 導入コスト:機器・システム・工事・初期研修の合計。助成金分を差し引いた純コスト。
- 運用コスト:3年間の保守・通信・消耗品・追加研修費。
- 労務コスト削減:職員作業時間の削減効果。記録時間削減・夜勤負担軽減等の時間削減を時給換算。
- 加算収入の増加:新規算定可能な加算・特例による収入増。利用者数×単価×月数で算定。
3年累計で「労務削減+加算収入>純コスト」が成立すれば投資価値あり。実際の事業所では、見守りセンサー等の夜勤負担軽減系で3年累計の労務削減が大きく、LIFE 連動の加算機器で加算収入が大きく出る傾向。
投資判断の落とし穴
- 落とし穴1:機器を入れただけで終わる:機器導入後の業務プロセス変更がなく、職員が従来通りの作業を続ける。導入と同時の業務改革が必要。
- 落とし穴2:現場の抵抗:機器導入に現場が抵抗。「いつもと違うやり方」への不安。導入前の現場説明・トライアル・段階導入が必要。
- 落とし穴3:保守費用の見落とし:機器の保守・更新費用を見落とし、3〜5年後に追加投資が必要になる。初期試算に保守費用も含める。
- 落とし穴4:助成金頼みの計画:助成金前提の計画が、助成金不採択時に頓挫。助成金なしでも回るプランで先に決め、助成金で投資回収を早める発想。
- 落とし穴5:加算要件の細部見落とし:加算算定の細かい要件(職員研修・記録様式・PDCA等)を満たさず、加算算定が始まらない。事前に要件チェックリスト化。
規模別の現実的な投資パターン
| 事業規模 | 優先投資 | 3年累計予算目安 |
|---|---|---|
| 小規模(10事業所以下) | 介護ソフトSaaS+タブレット入力 | 数百万円〜千万円規模 |
| 中規模(10〜50事業所) | 左記+見守りセンサー+本部経営BI | 数千万円規模 |
| 大規模(50事業所超) | 左記+介護ロボット(移乗・排泄)+AI 記録支援 | 数億円規模 |
ICT・介護ロボット投資は、3年スパンの戦略投資。助成金・加算評価・労務削減を組合せた現実的な ROI 試算と、現場の業務改革を一体で進めることが、投資効果を最大化する。基幹システム選定と並行して、3年スパンの投資ロードマップを策定することを推奨する。
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