【事例型】SESがfreee工数管理と請求で乖離を減らしたイメージ(匿名・概念)

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SES(システムエンジニアリングサービス)や受託開発を営む企業にとって、月末の「請求作業」は最も神経をすり減らす業務の一つです。エンジニアから提出される作業報告書(エクセルやPDF)、自社の勤怠管理システム、そして契約書に記載された精算条件。これらを突き合わせ、1円のミスもなく請求書を作成するのは至難の業です。

特に「現場の作業時間は162時間なのに、なぜか勤怠データは165時間になっている」「精算幅の計算を間違えて、超過請求を漏らしてしまった」といった工数と請求の乖離は、SES業界における永遠の課題といっても過言ではありません。本記事では、freee工数管理を中心に、人事労務・会計をシームレスに繋ぎ、事務工数を劇的に削減しながら乖離を撲滅する実務的な手法を解説します。

SES業界を悩ませる「工数と請求の乖離」が起きる3つの原因

なぜ、SESの実務においてデータの不一致が起きるのでしょうか。その原因は主に3つの分断に集約されます。

1. 現場報告書と自社システムの二重管理

SESの特性上、エンジニアは常駐先の勤怠管理システム(または手書きの作業報告書)と、自社の勤怠システムの双方に入力する必要があります。この「二重入力」が転記ミスを誘発します。月末、営業担当者がクライアントの承認済み作業報告書を回収し、自社のデータと照合する際に数時間のズレが発覚するケースが後を絶ちません。

2. 精算幅(140h〜180h等)による計算の複雑化

SES契約の多くには「精算幅」が存在します。月間の稼働時間が下限を下回れば控除、上限を上回れば超過請求が発生します。これをエクセルで管理している場合、関数ミスや最新単価の反映漏れにより、請求額の計算結果が実態と乖離してしまいます。

3. 部門間の情報のサイロ化

営業は「契約条件」を知っており、エンジニアは「稼働実績」を知っています。しかし、最終的に請求書を作る経理担当者は、その両方の最新情報をリアルタイムで把握できていないことが多々あります。この情報の非対称性が、最終的な請求データの不備へと繋がります。

freee工数管理で実現する「請求直結型」のデータアーキテクチャ

これらの課題を解決する鍵は、「勤怠」「工数」「請求」の3点を単一のプラットフォーム(Single Source of Truth)で管理することです。freee工数管理を用いると、以下のようなデータフローが構築可能になります。

  1. freee人事労務で日々の打刻を行う(または外部勤怠データをインポート)。
  2. freee工数管理上で、勤怠時間をプロジェクト(案件)ごとに配分する。
  3. 算出された工数実績に基づき、契約単価を乗じてfreee会計で請求書を発行する。

このフローの最大の特徴は、一度入力された「時間」というデータが、一度も人の手による転記(エクセルへの貼り付け等)を経ることなく請求書まで到達する点にあります。

【比較表】SESで採用される主要な工数管理・ERPツール

SES企業がツールを選定する際、freee工数管理以外にもいくつかの選択肢があります。それぞれの特性を比較しました。

ツール名 特徴 SESへの適合性 会計連携
freee工数管理 freee会計・人事労務と標準連携。安価で導入が極めて速い。 ◎(小〜中規模に最適) 強(freee会計)
ZAC SES・受託特化型ERP。購買・外注管理まで網羅。 ◎(大規模・複雑な案件) 中(仕訳出力)
TeamSpirit Salesforce基盤。勤怠・工数・経費が一体化。 ○(SF利用企業向け) 中(CSV連携)
クラウドログ 工数入力のUIが秀逸。ドラッグ&ドロップ操作。 ○(入力負荷軽減重視) 中(API/CSV)

※各ツールの詳細な仕様や最新の料金プランについては、それぞれの公式サイト(例:freee工数管理公式サイト)をご確認ください。

freee工数管理で「乖離」を減らす5つのステップ

実務担当者がfreee工数管理を導入し、運用を定着させるための具体的なステップを解説します。

Step 1:プロジェクト(案件)マスタと精算条件の定義

まず、freee工数管理側で「プロジェクト」を作成します。ここで重要なのは、契約上の「プロジェクト名」と「請求先(クライアント)」を正確に紐付けることです。また、SES特有の精算条件(140-180hなど)を、カスタム項目やメモ欄、あるいは外部連携ツールを用いて整理しておきます。

Step 2:freee人事労務からの勤怠データ連携

freee工数管理の強みは、freee人事労務とのダイレクトなデータ連携です。従業員がfreee人事労務で打刻した「総労働時間」が自動的に工数管理側に同期されます。これにより、「勤怠では160時間なのに、工数入力の合計が155時間しかない」といった乖離を、入力画面上でリアルタイムに検知できます。

Step 3:エンジニアによる工数入力の習慣化

エンジニアには、日次での工数入力を徹底してもらいます。freee工数管理はスマートフォンアプリからも入力可能なため、移動中などの隙間時間を活用できます。
「総労働時間 = プロジェクトA + プロジェクトB + 非稼働(社内業務)」
という計算式が常に成立するよう、未入力者へのアラート機能を活用しましょう。

Step 4:工数実績と請求金額の算出

月末、蓄積された工数データに基づき、売上のプレビューを行います。freee工数管理では「標準単価」を設定しておくことで、稼働実績に応じた概算売上を自動計算できます。ここでクライアントから届く確定作業報告書(エビデンス)と照らし合わせ、差異があれば修正します。この段階で差異を潰し切ることで、後の請求ミスをゼロにします。

Step 5:freee会計への請求書一括発行

確定した工数データに基づき、freee会計で請求書を作成します。現在、freee工数管理とfreee会計はAPI連携を強化しており、工数実績を元にした請求金額の自動反映が可能です。手動での金額転記が不要になるため、最後の最後で起きる「入力ミス」を物理的に排除できます。

実務で直面する「よくあるトラブル」と対処法

ツールを導入しても、運用が始まるといくつかの壁にぶつかります。よくある事例とその解決策を紹介します。

Q. 勤怠時間と工数合計がどうしても一致しない場合は?

A. 「休憩時間」と「端数処理」の定義を見直してください。
多くの原因は、勤怠管理側では「分単位」で管理し、工数管理側では「0.25時間(15分)単位」で入力しているといった単位の乖離です。運用ルールとして、工数入力の最小単位を定めるか、freee人事労務の連携設定で「実労働時間をそのままコピーする」設定を有効にしてください。

Q. 月を跨ぐ夜勤や休日出勤の処理はどうすればいい?

A. 締め日設定をfreee人事労務と完全に一致させてください。
SESでは、クライアント側の締め日(例:20日締め)と自社の締め日(例:末締め)が異なることがあります。freee工数管理ではプロジェクトごとに集計期間を柔軟に変えることは難しいため、基本的には「自社の給与計算期間」をベースにしつつ、請求書発行時に期間指定フィルタを用いて対象データを抽出するのが実務的です。

まとめ:事務作業を8割削減し、収益性の可視化へ

SES企業において、工数管理と請求を紐付けることは、単なる「事務の効率化」に留まりません。「どのプロジェクトが、どれだけの利益を生んでいるのか(プロジェクト別利益)」を、月末を待たずにリアルタイムで把握できる経営基盤を構築することと同義です。

エクセルや紙の報告書による管理に限界を感じているのであれば、まずはfreee人事労務とfreee工数管理の連携からスタートすることをお勧めします。初期設定には一定のパワーが必要ですが、一度構築された「乖離のないフロー」は、貴社のバックオフィスを劇的に軽くするはずです。

自社の現行フローとfreeeの仕様が合致するか不安な場合は、公式サイトのヘルプセンターや、認定アドバイザーへの相談を通じて、要件定義を行うことが成功への近道です。


SES実務を加速させるための補足ガイド

freee工数管理を導入しても、SES特有の「商習慣」に対応するには、システムの標準機能だけでなく運用の工夫が必要です。導入検討時に見落としがちなポイントをまとめました。

SES特有の「精算幅(上下限)」管理に関するよくある誤解

freee工数管理の標準機能では、契約ごとの「140h〜180h」といった精算幅に基づいた超過・控除額の自動計算までは、2024年時点では完全対応していません(※要確認。最新のアップデート状況は公式ドキュメントを参照)。そのため、多くの企業では以下のいずれかの運用を組み合わせています。

  • freee会計の「請求書テンプレート」活用:工数実績(h)をfreee会計へ飛ばし、会計側で超過単価を乗じて調整する。
  • スプレッドシート連携:API等で工数データを抽出し、精算幅計算を行った数値をfreee会計にインポートする。

【比較】freee工数管理と上位ERPツールの機能境界線

本文中で触れたツール群について、特に「SES実務で重視される機能」に絞って比較表を作成しました。

機能項目 freee工数管理 ZAC(SES特有機能)
得意領域 勤怠・給与計算とのシームレスな同期 商談管理から外注費・支払管理まで一気通貫
精算管理 手動調整または外部連携が必要 契約マスタに上下限設定が可能
導入スピード 最短即日(freeeユーザーの場合) 数ヶ月(要件定義・設定が必要)
コスト感 低(ユーザー単位の安価な月額) 中〜高(初期費用+保守+月額)

公式ドキュメント・活用リソース

導入・運用の具体的な手順については、以下の公式リソースが最も正確です。特に外部勤怠データの取り込み制限などは、事前に最新仕様を確認することをお勧めします。

あわせて読みたい:バックオフィスの自動化アーキテクチャ

工数管理の次は、経理全体の自動化を検討すべきです。特に他SaaSとの連携については、以下の記事が参考になります。

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上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

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