コンサルとfreee工数管理 パートナー別原価と粗利管理の入口(概念)
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コンサルティング業やシステム受託開発など、人月単位で動くビジネスにおいて、最大のコストは「人件費」と「外注費」です。しかし、決算書上の数字は全体として黒字であっても、個別のプロジェクト単位で「どの案件がどれだけ利益を出したのか」を正確に把握できている企業は意外に多くありません。
特に、パートナー(外注)を多用するプロジェクトでは、支払通知書ベースの管理と自社メンバーの稼働管理が分断され、最終的な粗利(プロジェクト利益)が「終わってみるまでわからない」という状況に陥りがちです。
本記事では、freee工数管理を入り口として、freee会計と連携させたプロジェクト別原価・粗利管理の具体的な設計と実務フローを解説します。単なる時間の集計に留まらない、経営判断に直結する管理会計の基盤を構築しましょう。
コンサルティング・受託業におけるプロジェクト原価管理の核心
コンサルティングや受託案件において、プロジェクトごとの利益を把握するためには、以下の数式を「案件別」に算出する必要があります。
プロジェクト粗利 = 売上高 - 直接原価(自社労務費 + 外注費 + 直接経費)
この算出を難しくしているのが、以下の3つの要因です。
- 労務費の未配賦: 自社メンバーの給与は月額固定で支払われるため、どの案件に何時間使ったかの「工数比率」に基づき配賦しない限り、個別案件の原価には現れない。
- パートナー費用の紐づけ漏れ: 請求書処理の際、案件名(プロジェクトタグ)を指定せずに計上してしまうと、全体の外注費としては計上されても、個別案件の利益を圧迫している要因として可視化されない。
- リアルタイム性の欠如: 決算が締まる翌月末まで採算がわからないようでは、赤字の予兆を捉えて人員配置を見直すといった経営判断が間に合わない。
これらの課題を解決するための入り口が、freee会計とネイティブに連動する「freee工数管理」の導入です。
freee工数管理の基本仕様とfreee会計との役割分担
freee工数管理は、従業員やパートナーが「どのプロジェクトに何時間費やしたか」を記録するためのツールです。重要な点は、このツール単体では「金額(円)」を計算しないという点です。金額の管理はあくまでfreee会計側の責務となります。
freee工数管理ができること
- プロジェクト別・作業内容(タスク)別の工数入力(PC・モバイル対応)。
- 入力された工数の承認ワークフロー。
- freee会計の「プロジェクト」「従業員」マスタとの自動同期。
- 工数比率の集計と、freee会計への「振替仕訳」の下書き出力。
freee会計との役割分担
| 項目 | freee工数管理の役割 | freee会計の役割 |
|---|---|---|
| マスタ管理 | (参照のみ) | プロジェクト、部門、従業員の登録・管理 |
| 実績の収集 | 「時間(h)」および「比率(%)」を収集 | 「金額(円)」としての売上、支払、給与を計上 |
| 原価計算 | 工数比率に基づき配賦計算を実行 | 配賦結果を仕訳(振替)として反映 |
| 粗利の可視化 | – | 試算表やプロジェクト別収支表で確認 |
このように、工数管理側で「比率」を出し、会計側で「金額」に掛けていくという連携が基本構造となります。この構造を理解せずに導入すると、データの不整合に悩まされることになります。
関連記事: freee会計導入マニュアル|旧ソフトからの移行と基本設定の最適解
パートナー別・プロジェクト別原価を管理するための「事前設計」
システムを動かす前に、freee会計側での「タグ」と「勘定科目」の整理が必須です。これが不十分だと、いくら工数を入力しても正しい粗利は出せません。
1. プロジェクトタグの徹底運用
売上(請求書発行)、外注費(受取請求書)、旅費交通費(経費精算)のすべてにおいて、「プロジェクト」タグを選択することを社内ルール化します。特にパートナー(外注先)への支払時、1枚の請求書に複数案件が含まれている場合は、明細行を分けてそれぞれのプロジェクトタグを紐づける必要があります。
2. 品目タグによるパートナー(外注先)の識別
勘定科目は「外注費」で一括りにしても構いませんが、「品目」タグにパートナー企業名や個人名を入れることで、パートナー別の発注額・粗利貢献度を分析できるようになります。これはfreeeの標準的な推奨運用です。
3. 直接労務費の勘定科目を分離する
全社的な「給与手当」をそのままにしておくと、プロジェクトに紐づくもの(直接原価)と、バックオフィス等の非生産部門の給与(販管費)が混ざってしまいます。あらかじめ「労務費」と「給与手当(販管費)」を分けて管理するか、プロジェクト振替によって「労務費」へと勘定科目を振り替える設計が必要です。
関連記事: 給与ソフトからfreee会計への「部門別配賦」と仕訳連携。労務と経理の分断を解決するアーキテクチャ
【実務】freee工数管理を用いた原価計算の4ステップ
実際にどのように運用を回していくか、ステップバイステップで解説します。
STEP 1:工数入力と承認フローの構築
まず、全メンバー(および必要に応じてパートナー)が日々工数を入力します。freee工数管理の「工数入力」画面では、カレンダー形式で直感的に時間を割り振ることができます。
- ポイント: 入力漏れを防ぐため、週次での「承認」を徹底します。承認が完了した工数データのみが、会計連携の対象となります。
- エラー対応: 「プロジェクトが選択できない」というエラーは、freee会計側でプロジェクトの有効期限が切れているか、従業員の権限設定でプロジェクト参照が許可されていない場合に起こります。
STEP 2:給与データ(労務費)の取り込み
freee人事労務を使用している場合は自動、他社ソフトを使用している場合はCSV等で、月次の「給与手当」をfreee会計に計上します。この時点では、給与は「部門(開発部、コンサル部など)」には紐づいていても、「各プロジェクト」には紐づいていません。
STEP 3:工数比率に基づく労務費の配賦(プロジェクト振替)
freee工数管理の「会計連携」機能を使用します。承認済み工数データから、各従業員がどのプロジェクトに何%の時間を使ったかが計算されます。
例えば、Aさんの給与が50万円で、案件Xに60%、案件Yに40%の時間を費やした場合、freee工数管理は以下の振替仕訳案を作成します。
- (借)労務費 300,000円 / プロジェクト:案件X
- (借)労務費 200,000円 / プロジェクト:案件Y
- (貸)給与手当 500,000円 / プロジェクト:指定なし
この仕訳をfreee会計へ送信することで、全社費用だった給与が、プロジェクトごとの直接原価へと「着地」します。
STEP 4:試算表・レポートでの粗利確認
freee会計の「レポート」>「試算表」から、「プロジェクト別」の表示に切り替えます。
これにより、売上高から、先ほど配賦した労務費、および直接紐づけた外注費・経費が差し引かれ、プロジェクトごとの正確な粗利が表示されます。
主要工数管理・原価管理ツールとの比較表
freee工数管理は非常にシンプルで低コスト(1ユーザーあたり月額数百円〜 ※プランによる)ですが、より高度な予算管理やガントチャート機能を求める場合は、他社ツールとの比較も検討すべきです。
| ツール名 | 特徴 | freee会計との親和性 | 主な対象層 |
|---|---|---|---|
| freee工数管理 | シンプル、低コスト。会計への振替機能が強力。 | ◎(ネイティブ連携) | 管理会計を始めたい中小〜中堅。 |
| TeamSpirit | 勤怠、工数、経費精算が一体化。大企業向け。 | △(CSV/API連携) | 内部統制を重視する上場企業。 |
| クラウドログ | リソース配置、ガントチャート等、多機能。 | ○(API連携あり) | PMが案件の進捗・予算を細かく追いたい企業。 |
| ZAC | 受発注管理を含めた本格ERP。 | △(仕訳出力が必要) | 数千人規模、複雑な原価計算が必要な企業。 |
※料金等の詳細は、各社公式サイトの最新情報をご確認ください。
関連記事: SaaSコストを削減。フロントオフィス&コミュニケーションツールの現実的な整理術
運用でよくある失敗と解決策
1. 「工数入力が定着しない」
コンサルタントやエンジニアにとって、工数入力は「本業を邪魔する事務作業」と捉えられがちです。解決策は、「粒度を細かくしすぎない」ことです。「要件定義」「設計」「実装」といった作業区分(タスク)を細かく作りすぎると、入力負荷が上がり、結局データの精度が落ちます。最初は「プロジェクト選択のみ」から始め、慣れてからタスクを分けるのが定石です。
2. パートナーへの権限付与
外部パートナーにfreee工数管理のアカウントを発行して直接入力させる場合、権限設定には細心の注意を払ってください。「全プロジェクトの閲覧」を許可してしまうと、関与していない他社の案件名や、自社メンバーのリストが閲覧可能になってしまいます。「特定のプロジェクトのみ参照可能」なカスタム権限を作成し、必要最小限の露出に留めるのがセキュリティの基本です。
3. 外注費の「前払い・未払い」との不整合
会計上の外注費は「発生主義」で計上されますが、パートナーへの支払(キャッシュアウト)とはタイミングがズレることがあります。原価管理を正確に行うためには、必ず「検収月(作業月)」に、プロジェクトタグを付与した未払金計上を行うよう、経理フローを徹底させてください。
まとめ:プロジェクト別採算管理の入口に立つために
freee工数管理を用いた原価管理は、単なるITツールの導入ではありません。それは、自社の「どの仕事が利益を生み、どの仕事がロスを生んでいるか」を数字で直視する文化を作ることです。
パートナー別の原価が可視化されれば、次の発注時の価格交渉や、自社での内製化判断も、客観的なデータに基づいて行えるようになります。まずはプロジェクトタグの運用徹底と、月次での工数振替から始めてみてください。それが、不透明なプロジェクト運営から脱却し、コンサル・受託業としての収益性を最大化させる唯一の道です。
導入前に必ず確認すべき「人件費単価」の算出ロジック
freee工数管理を導入してプロジェクト別原価を算出する際、最も多くの企業が迷うのが「従業員ごとの単価(アワーレート)をどう設定するか」です。前述の通り、freee工数管理は「比率」を算出するツールですが、会計側で配賦する金額の根拠には以下の2パターンが存在します。自社の管理レベルに合わせて選択してください。
- 実際原価方式: その月の給与・手当の総額を工数比率で分ける方法。賞与や残業代によって毎月の原価が変動しますが、決算数値と一致しやすくなります。
- 標準原価方式: あらかじめ「Aさんは時給5,000円」と決めておき、稼働時間を掛ける方法。予算管理はしやすいですが、実際の給与支払額との差額(配賦差異)の処理が必要になります。
どちらを採用する場合も、社会保険料の会社負担分(法定福利費)を原価に含めるかどうかで、プロジェクトの粗利は大きく変わります。経営判断の基準をどこに置くか、経理部門と事前に合意しておくことが重要です。
プロジェクト原価管理・導入準備チェックリスト
| 確認項目 | チェックポイント | 目的 |
|---|---|---|
| 配賦対象の定義 | 役員報酬やバックオフィス給与を原価に含めるか? | 営業利益とプロジェクト利益の整合性確保 |
| 工数入力の粒度 | タスク(会議、資料作成等)まで分けるか? | 現場の入力負荷と分析精度のバランス調整 |
| パートナーの招待 | 外部の方にIDを発行し、直接入力させるか? | 外注費計上の精度向上と管理工数削減 |
| 承認ルートの設定 | PMが承認するのか、部署長が承認するのか? | 工数データの正当性担保 |
公式リソースと実務のヒント
具体的な操作方法や最新の仕様については、freee公式のヘルプセンターを参照してください。特に、工数管理から会計への振替仕訳の作成手順は、運用開始前にテスト環境で確認しておくことを推奨します。
また、パートナーへの支払や経費精算がアナログなままでは、プロジェクト原価の「外注費・直接経費」の反映が遅れてしまいます。バックオフィス全体のデータをシームレスに繋ぐ手法については、以下の記事も参考にしてください。
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