受託開発企業のfreee工数管理活用|スプリント単位工数と見積残の可視化設計

この記事をシェア:
目次 クリックで開く

受託開発において、プロジェクトの「着地」が見えなくなる最大の原因は、工数管理が「事後報告」になっていることにあります。月末に1ヶ月分の工数をまとめて入力し、集計が終わったときには既に予算をオーバーしていた——。こうした事態を避けるためには、「スプリント単位での工数集計」「見積残(あと何時間で終わるか)のリアルタイム可視化」が不可欠です。

本記事では、クラウド型工数管理システム「freee工数管理」を軸に、受託開発企業がどのようにスプリント単位の予実管理を構築し、freee会計と連携させて正確な原価計算を実現すべきか、その具体的な概念と設定実務を解説します。

受託開発における「工数管理」の致命的な欠陥と解決策

多くの受託開発現場では、工数管理が「給与計算のための勤怠管理の延長」として扱われています。しかし、経営やPMが本来必要としているのは、以下の3点です。

  • 予実の乖離:計画していた工数に対して、今どれだけ消費しているか。
  • 見積残の可視化:残りのタスクを完了させるのに、あと何時間必要なのか。
  • プロジェクト原価:外注費だけでなく、自社エンジニアの労務費を含めて利益が出ているか。

これらを解決するためには、プロジェクト全体を数ヶ月単位で見るのではなく、1週間〜2週間程度の「スプリント」という短い期間で区切り、その単位で見積(予算)と実績をぶつける運用が必要です。

関連記事:【完全版・第5回】freee会計の「経営可視化・高度連携」フェーズ。会計データを羅針盤に変えるBIとAPI連携術

freee工数管理を活用した「スプリント単位」の管理概念

freee工数管理(旧称:freeeプロジェクト管理)は、工数入力のしやすさとfreee会計へのデータ連携に強みを持つSaaSです。受託開発でスプリント管理を行うための構造を整理します。

スプリント(期間)とプロジェクト(案件)の階層構造

freee工数管理では、「プロジェクト」という単位で予算と実績を管理します。スプリント単位で詳細に管理したい場合、以下の2つのアプローチが考えられます。

  1. プロジェクトの下層に「スプリント」を配置する:作業内容(タスク)のマスターを「Sprint1」「Sprint2」のように定義する手法。
  2. レポートの期間フィルタを活用する:プロジェクト自体は1つに保ち、集計期間をスプリントの期間に絞って予算比を確認する手法。

実務上のおすすめは、「作業内容」タグを適切に設計することです。これにより、プロジェクトを跨いだ「設計」「開発」「テスト」といった工程別の集計も容易になります。

「作業内容」タグによるフェーズ管理

freee工数管理では、プロジェクトごとに「作業内容」を紐付けることができます。ここで、スプリントごとに作業内容を分ける(例:[S1]要件定義、[S1]実装)ことで、スプリントごとの予実が明確になります。ただし、マスターが増えすぎるデメリットもあるため、基本的には「期間」で集計し、作業内容は「工程」で分けるのが一般的です。

実践:スプリント単位での見積残・予実可視化ステップ

受託開発の現場で、見積残(Remaining Estimate)を可視化するための具体的な手順を解説します。

STEP 1:プロジェクトの基本設定と予算登録

まず、freee工数管理上で新規プロジェクトを作成します。この際、最も重要なのが「予算(工数)」の登録です。受託開発であれば、受注時の見積根拠となった工数を「予算」として入力します。

  • プロジェクト名:案件名(例:〇〇社 基幹システム開発)
  • 予算種別:工数(時間)または金額
  • メンバーごとの予算:エンジニア Aさんに100時間、Bさんに80時間といった具合に割り振ります。

STEP 2:スプリントごとの工数予算配分

プロジェクト全体の予算が決まったら、それを各スプリントに分配します。例えば、全体で400時間のプロジェクトを4つのスプリントで実施する場合、1スプリントあたり100時間の予算枠を設定します。freee工数管理の「ダッシュボード」機能を使えば、この予算に対する進捗率がグラフで表示されます。

STEP 3:日次の工数入力と「進捗率」の相関

現場のエンジニアには、毎日工数を入力してもらいます。freee工数管理はGoogleカレンダーやOutlookカレンダーとの連携が強力で、カレンダーの予定をクリックするだけで工数登録が完了します。この「入力の低コスト化」が、データの精度を左右します。

重要:見積残の計算式

見積残 = 全体予算 – 累積実績工数

ただし、これは「順調に進んでいる」前提の数値です。実際には、Jira等のBTS(バグトラッキングシステム)で管理されている「残タスクの想定工数」と、freee上の「消費工数」を比較し、乖離が出た時点でアラートを出す運用が理想的です。

関連記事:Excelと紙の限界を突破する「Google Workspace × AppSheet」業務DX完全ガイド

freee工数管理と他社ツールの比較表

工数管理やプロジェクト管理ツールは多岐にわたります。受託開発企業が選定する際の比較表を以下に示します。

ツール名 主なターゲット 強み 会計連携
freee工数管理 受託開発、コンサル、士業 カレンダー連携、freee会計とのシームレスな原価計算 ◎ 直接連携可能
Jira Software ソフトウェア開発チーム アジャイル開発(スクラム、カンバン)の高度な管理 △ 外部連携ツール経由
TeamSpirit 中堅・大手企業 勤怠・経費・工数の一体管理。Salesforce基盤 ○ CSV連携が主
Backlog 国内ITチーム、制作会社 直感的なUI、ガントチャートの標準搭載 △ API開発が必要

※料金の詳細は、freee工数管理公式ページをご確認ください。

スプリント工数と見積残の可視化、開発会社の請求設計はお済みですか?Aurant の経理DX支援は、電帳法・インボイス対応から請求・経費精算・支払フロー、月次決算の早期化まで、業務プロセスの再設計を支援します。✓ 請求・経費・支払の業務再設計✓ 電帳法・インボイス対応✓ 月次決算の早期化経理DX支援を見る →会計ソフト導入だけで終わらせない紙・属人運用経理DX月次早期化電帳法・経費・支払フローの再設計

freee会計への連携と「プロジェクト原価計算」の自動化

freee工数管理を使う最大のメリットは、入力された工数データがそのまま「労務費配賦」の根拠になり、freee会計上でのプロジェクト別利益管理を自動化できる点にあります。

労務費配賦のロジック

通常、エンジニアの給与は「給与手当」として一括で費用計上されます。これをプロジェクト原価に振り分けるには、以下の計算が必要です。

特定のプロジェクトの労務費 = その人の給与単価 × 当該プロジェクトへの従事時間

freee工数管理とfreee会計を連携させると、この計算をシステムが自動で行い、freee会計側に「振替伝票」を自動作成します。これにより、営業利益ベースでのプロジェクト別損益(PL)が、経理の手を介さずとも可視化されます。

月次締めフローとよくあるエラー

運用を安定させるための標準的なステップは以下の通りです。

  1. 工数入力の締め(毎月1〜3日):全メンバーの工数入力漏れがないか確認し、管理者が承認します。
  2. 給与確定(freee人事労務):残業代等を含めた正確な給与総額を確定させます。
  3. 配賦実行(freee工数管理 → 会計):ボタン一つで、確定した給与総額を工数比率に応じて各プロジェクトに配賦します。

よくあるエラーと対処法:

  • 「配賦対象の給与データが見つかりません」:freee会計側で給与の仕訳が未作成、または部門設定が不一致の場合に発生します。仕訳タグの確認が必要です。
  • 「工数合計が100%を超えています」:重複した工数入力がある場合に発生します。重複チェック機能で修正します。

関連記事:【完全版】給与ソフトからfreee会計への「部門別配賦」と仕訳連携。労務と経理の分断を解決するアーキテクチャ

受託開発企業 規模別 工数管理×プロジェクト管理 ツール組み合わせパターン

前述の比較表は「1ツールで何ができるか」の比較でしたが、実際の受託開発現場では「課題管理はJira/工数・原価はfreee」のように複数ツールを組み合わせて使うケースが多いです。ツールを増やすと連携コストが発生しますが、各ツールが得意な領域を分担することで運用効率が上がる場合もあります。下表は、会社の規模や開発スタイル別に、工数管理とプロジェクト管理のツール組み合わせパターン・導入ポイント・freeeとの連携方式をまとめたものです。

規模・開発スタイル 工数管理 課題管理 会計連携 組み合わせのポイント 注意点
小規模(〜10名)シンプル受託 freee工数管理のみ Notionまたはバックログ(軽量運用) freee会計へ直接連携 1ツールでカレンダー連携・工数集計・原価配賦まで完結。最小コストで回せる スプリント管理の細かい可視化は弱い。課題件数が多くなると別途BTS導入を検討
中規模(10〜30名)アジャイル型受託 freee工数管理(原価計算) Jira Software(スクラム管理) Jira工数→CSV/API→freee会計(手動またはZapier経由) Jiraでスプリント・バーンダウン管理、freeeで原価・請求を担当。「開発管理」と「経営管理」を分離 Jiraの作業時間ログとfreeeの工数入力の二重管理になりやすい。どちらを正とするかルール化が必要
中規模 国内チーム中心 freee工数管理(原価計算) Backlog(ガントチャート+課題管理) Backlogの工数はCSVエクスポート→freeeへインポート Backlogは日本語UIが強くPM・ディレクター層に受け入れられやすい。開発者以外のメンバーにも使いやすい Backlog→freeeの連携は公式API非対応のため定期的な手作業が発生。件数が多い場合は自動化を検討
大規模(30名以上)複数案件並行 freee工数管理 or ZAC(SES特化ERP) Jira + Confluence ZACの場合はfreeeと別で経理システム連携。freeeの場合は直接連携 ZACはSES・受託特化型で購買・外注費・請求まで一気通貫。複雑な案件構造に強い ZACはfreeeより導入コストが高く運用定着に時間がかかる。小規模案件中心ならfreeeで十分
デザイン/マーケ会社(工数管理が主) freee工数管理 Asana or ClickUp freee会計へ直接連携 IT開発に特化しないプロジェクト管理ツール(Asana等)とfreeeを使い分け。デザイン案件の工数見積・原価把握に有効 Asanaには標準の工数集計機能があるが原価計算には不向き。原価はfreee側で管理するルールに統一

最も多い失敗パターンは、「Jira(またはBacklog)に工数を入力しているのに、月末になってfreeeにも同じ工数を手入力する二重作業が発生する」ことです。この問題を解消するためには、どちらかを「入力の一次ソース」と決め、もう一方はレポートや集計用と割り切ってAPIまたはCSV連携で自動同期する設計が必要です。自社の開発スタイルと会計要件の両方を満たすツールスタックを選ぶことが、運用が長続きする最大の要因です。

まとめ:見積残を可視化し「赤字案件」をゼロにする

受託開発における工数管理は、単なる記録作業ではありません。スプリント単位で予算を区切り、freee工数管理で日次の進捗を追うことで、初めて「見積残」が意味を持つようになります。

もし現在、Excelやスプレッドシートで工数管理をしており、プロジェクトの赤字化が納品間近まで判明しないという課題を抱えているのであれば、会計直結型の工数管理への移行は非常に効果的です。データの整合性を保ちながら、PMが「攻めのマネジメント」に専念できる環境を構築しましょう。

導入にあたっては、まずスモールスタートとして特定の1プロジェクトからスプリント管理を適用し、徐々に全社展開していくフローを推奨します。初期設定の複雑さを乗り越えれば、正確な「原価の見える化」が、企業の利益体質を根本から変えてくれるはずです。

経理・会計DXと仕訳/請求/債権自動化のご相談

仕訳・請求・入金消込・債権管理といった経理業務の自動化と、会計データの可視化までを一気通貫で支援します。ツール選定や既存運用の見直しについて、導入前後のセカンドオピニオンとしてもご相談いただけます。

経理DX支援を見る → 会計領域の支援を見る →

会計・経理DX

freee・マネーフォワードの導入から、AI仕訳・請求書自動化・銀行連携まで一貫対応。経理工数を大幅に削減し、月次決算を早期化します。

AT
aurant technologies 編集

上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

この記事が役に立ったらシェア: