【マーケティング提案の裏側①】老舗企業へ戦略をどう伝えるか。「全体像の合意」から入る提案書の作り方

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【マーケティング提案の裏側①】老舗企業へ戦略をどう伝えるか。「全体像の合意」から入る提案書の作り方

公開日:2026年4月11日 | 対象:マーケター、DX推進担当、経営企画

クライアントから「Webからの集客や予約を増やしたい」と相談を受けた際、あなたなら提案書の最初の一枚に何を書きますか?

いきなり「サイトのデザインが古いです」「LINEを導入しましょう」と具体的な施策(How)から語り始めるのは悪手です。多忙な経営層が最初に知りたいのは、「自社のビジネス構造(配管)の全体像」であり、それを叩き台にして「自社が長年培ってきた深い知見や現場の経験をどう活かすか」という対話(ディスカッション)を求めているからです。

本連載では、私たちが実際に全国展開する老舗文化企業に向けたマーケティング戦略の提案書を題材に、プロのマーケターがどのように全体像を提示し、クライアントの知見を吸い上げるプレゼンを展開していくのか、その思考プロセスを全3回で解説します。

1. プレゼンの鉄則:表紙(タイトル)で「大義名分」を掲げる

提案書の表紙を、単なる「Webサイト改修のご提案」や「お見積書」にしてはいけません。経営層が求めているのは、部分的なツール導入ではなく経営課題の解決です。

タイトルスライド

▲ 【実際の提案スライド①】「新規顧客獲得」「LINE活用」「顧客体験設計」という、経営に直結するキーワードをタイトルに置く。

スライドにあるように、「新規顧客獲得のためのLINE活用・マーケティング提案」「顧客体験設計と施策ロードマップ」といった言葉を並べます。
これにより、会議のスタート地点で「今日は単なるサイトデザインの話ではなく、自社の資産を利益に変えるための構造改革の話をするのだ」という強固なフレームワーク(枠組み)をセットし、議論の目線を一気に引き上げます。

2. 課題を局所化させないための「カスタマージャーニー診断」

目線合わせができた後、最初に提示すべきは、細かなデータ分析でも局所的なUIの指摘でもありません。まずは「カスタマージャーニー全体を俯瞰し、どこにボトルネックがあるのか」を1枚の絵で示します。

全体像の整理スライド

▲ 【実際の提案スライド②】全体のジャーニー(認知〜行動)を俯瞰し、各フェーズの摩擦を特定する。上段でクライアントの「流入の強さ(ファクト)」を共有している点に注目。

Webサイトの改善提案はどうしても「フォームが〜」「ナビゲーションが〜」と局所的な議論(部分最適)に陥りがちです。しかし、上図のようにカスタマージャーニーを一枚で示すことで、課題がどのフェーズで発生しているのかを構造化できます。

  • 【認知フェーズ】 ブランド力による検索流入は業界トップクラスだが、親しみやすさに懸念あり。
  • 【興味・関心フェーズ】 記事を読んだ後のCTA(行動喚起)が弱く、SNS等への回遊が生まれていない。
  • 【比較・検討フェーズ】 教室案内が文字情報に偏っており、情緒的な不安を払拭できていない。

3. 提案の成否を分ける「対話の起点」としてのファクト共有

このカスタマージャーニー・スライドを提示する際、プロのコンサルタントはこれを「一方的な発表」で終わらせません。

【プロの視点】なぜ、全体像とファクトの共有から始めるのか?

提案の場は、コンサルタントが一方的に「正解」を押し付ける場ではありません。
スライド②の上段で「現状のWeb流入は他社ドメインと比較しても非常に多く、ここまでのブランドパワーを持っている会社様はほぼないです」という客観的なファクト(事実)を共有するのは、単にクライアントを褒めるためではありません。
データという「共通の地図」をテーブルに広げることで、「この圧倒的な流入を、現場ではどう捉えられていますか?」「歴史的にどのような施策や背景があって、今の状態が形作られたのでしょうか?」といった、クライアント側が持つ深い知見や経験を吸い上げるための対話の起点を作るためです。全体像を俯瞰し、共に現在地をすり合わせて初めて、意味のあるディスカッションが生まれます。

4. 構造的ギャップを「問い」として言語化する

全体像を共有した上で、最終的にこのスライドで「何が問題なのか」を結論づけます。「SNSが弱い」「デザインが古い」と決めつけるのではなく、構造的なギャップを提示します。

スライドから導き出す「共創」のための問いかけ

【事実(Fact)】
入り口(認知層)において、
他社を圧倒するトラフィックがある。
【課題(Issue)】
しかし、各フェーズの「デジタル接点」に摩擦があるため、
情報消費が体験・入会へ繋がっていない。

「SNSが弱いです」と一方的に指摘するのではなく、「右側の歴史的資産による集客力は素晴らしいですが、それを体験に繋ぐ左下(デジタル接点)の配管が少し抜けているように見受けられます。現場の肌感覚としてはいかがでしょうか?」と問いを投げかけます。構造的なギャップを提示することで、クライアントの知見を引き出し、共に解決策を探る「共創」のスタンスを作ります。

まとめ:全体像の合意から、次回は「UI/UXの深掘り」へ

提案書の序盤で「①大義名分の設定 → ②ジャーニーによる課題箇所の特定と、対話を通じた構造的ギャップの合意」を行うことで、クライアントと「どこを直すべきか」の強固な目線合わせが完了します。

次回【第2回】では、この合意を踏まえた上で、実際にトップファネル(認知・興味層)のサイト上でどのような「UXの摩擦」が起きているのかを共に解剖していく、具体的なUI/UX分析スライドの構成方法を解説します。お楽しみに。

「通る提案書」は、構造の理解と対話から生まれる。

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提案の精度を上げるための「データ」と「対話」の補足

老舗企業の経営層へ提案を行う際、最も陥りやすい罠は「デジタルツールさえ入れれば解決する」という誤解を助長してしまうことです。本記事で触れた「全体像の合意」をより確実なものにするために、準備段階で整理しておくべきポイントをまとめました。

提案前にセルフチェックすべき3つのポイント

  • 現場の「用語」に翻訳されているか: 「CVR」や「LTV」といった専門用語をそのまま使わず、クライアントの業界で使われる言葉(例:入会率、リピート頻度)で全体像を語れているか。
  • 既存資産(アナログ)との接続: Web上のデータだけでなく、店舗や教室での接客といった「オフラインの強み」をどうデジタルに反映させるか、その接続点を明確にしているか。
  • 期待値のコントロール: 「ツール導入=自動で売上向上」ではなく、あくまで「現場の知見を最大化するためのインフラ整備」であることを伝えているか。

戦略を具体化するためのシステム構成とデータ連携

全体像の合意が取れた後、次に必要となるのは「どのデータをどこに集約し、どう活用するか」という具体的な設計です。例えば、LINEを導入する場合でも、単なる配信ツールとして使うのか、それとも顧客データベースと紐付けてパーソナライズされた体験を作るのかで、提案の深みが全く異なります。

検討フェーズ 重視すべき設計ポイント 参考ドキュメント
認知・集客 広告データとWeb行動ログの紐付け GA4 公式ヘルプ
顧客体験(UX) LINE IDと既存会員情報の統合 LINE Developers 公式
全体最適化 SFA/CRM/MAの役割分担の明確化 (要件定義書にて定義)

より詳細な「設計の考え方」を知るために

本記事で紹介したジャーニーの整理は、具体的なシステム設計へと繋がります。高額なツール導入で失敗しないための全体像については、こちらの【図解】SFA・CRM・MA・Webの違いと『データ連携の全体設計図』も併せて参照してください。提案の裏付けとなる「構造の理解」がより深まります。

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上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

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