国内HRテック市場 2025 — SmartHR 70,000社、市場1,385億円、4強シェア構造と人的資本開示の追い風
国内HRテッククラウド市場は2023年度1,077億円→2024年度見込1,385億円(+28.6%)、2028年度まで年率25-30%成長見通し。労務管理クラウドはマネーフォワード16%/ジョブカン15.6%/freee 14.3%/SmartHR 12.8%の4強構造、SmartHRは7年連続シェアNo.1で登録社数70,000社突破。人的資本開示義務化・社保適用拡大が需要を底支え。各社の戦略ポジションと選定3軸を、ミック経済研究所・BOXIL Magazine・SmartHRプレス等の実数値で論じる。
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「給与計算」「勤怠管理」「労務手続き」── かつてはバックオフィスの隅で紙とExcelで回されていたこれらの業務が、過去10年でクラウドSaaSの主戦場に変わった。SmartHRは2018年以降7年連続で労務管理クラウド市場のシェアNo.1を獲得し、2025年4月には登録社数70,000社を突破した(SmartHR プレスリリース)。市場全体も2023年度1,077億円→2024年度見込1,385億円と前年比約30%の高成長で、2028年度までに年率25-30%の拡大が見込まれている(ミック経済研究所「HRTechクラウド市場の実態と展望」)。
この急成長を支えているのが、2023年から義務化された有価証券報告書の人的資本開示、社会保険の適用拡大、男女間賃金格差是正、そしてバックオフィスのデジタル化推進だ。本記事では、国内HRテック市場の規模・シェア・主要プレイヤー比較、そしてfreee/マネーフォワード/SmartHR/ジョブカンなどの選定論点を整理する。
市場規模 — 2028年度までに3,000億円超へ
HRテッククラウド市場の規模感は、調査機関によって範囲定義が異なる。ミック経済研究所の最新調査では、2023年度1,077億円、2024年度見込1,385億円(前年比+28.6%)。シード・プランニング社の広めの定義では、2022年時点で2,068億円、2025年に3,278億円との予測も出ている(One人事の市場まとめ)。
市場成長を支える3つの構造要因:
- 人的資本開示の義務化(2023年〜): 有価証券報告書での開示要件として、男女賃金差・育休取得率・正社員女性比率等の開示が必須化。タレントマネジメントシステムの需要が「導入」から「活用・分析」へシフトしている
- 社会保険・雇用保険の適用拡大: 社会保険は企業規模要件・賃金要件の縮小/撤廃により、週20時間以上の短時間労働者の対象が広がる。加えて雇用保険は2028年度中に週10時間以上へ拡大予定。パート・アルバイト領域の労務管理・給与計算システムの改修需要が発生
- 賃上げ・働き方改革の継続: 賃金構造の見直し、副業対応、リモートワーク労務管理が継続的な需要を生む
これらは法令対応起点の需要であるため、景気変動に左右されにくく、市場の底堅さの理由になっている。
主要プレイヤー — 4強+α の構造
労務管理クラウド分野の2024年シェアでは、マネーフォワード クラウド人事管理 15.97%、ジョブカン労務HR 15.65%、freee人事労務 14.33%、SmartHR労務管理 12.77%と上位4社が均衡している(BOXIL Magazine 労務管理システムシェア調査)。これら4社で約59%、続くオフィスステーション・ジンジャー労務を加えた上位6社で約70%を占める。
注意点として、上記は「労務管理」セグメント単体のシェアだ。広義のHRテック(給与計算・勤怠管理・タレントマネジメント・採用管理を含む)では、SmartHRがレイヤー全体での導入社数70,000社で頭ひとつ抜けている。SmartHRが「7年連続シェアNo.1」を訴求しているのは、労務管理クラウド総合(複数セグメントを束ねた評価)での順位だ。
各社の戦略的ポジショニング
SmartHR: 「すべての人が、自分らしく働くために。」をミッションに、労務管理を入口に給与・勤怠・タレントマネジメントへ機能拡張。登録社数70,000社(2025年4月時点)はクラウド人事領域で圧倒的。年末調整の電子化、入社手続きの完全オンライン化など、紙作業の徹底削減で支持を集めた。最近はfreee人事労務との連携も発表され、労務管理と給与計算のシームレス化が進む。
マネーフォワード クラウド人事管理: マネーフォワード経済圏(会計・確定申告・経費)の人事部分。モジュール組合せ型で、クラウド勤怠・クラウド給与・クラウド年末調整などを必要に応じて選べる。IPO準備企業に強く、上場企業対応の機能が充実している。
freee人事労務: freee会計と統合された人事労務サービス。「1つの製品で各機能を網羅」する一体型設計で、SmartHRと同様のアプローチ。会計データとの連動(仕訳の自動化、給与振込の自動化)がfreee経済圏ユーザーの支持基盤。
ジョブカン労務HR: ジョブカンシリーズ(採用・勤怠・経費・労務)の労務部分。低価格を武器に中小企業層で実績。中堅以上の企業ではジョブカン勤怠との組合せが定番。
オフィスステーション: 株式会社エフアンドエムが提供。e-Gov連動による社会保険手続きの電子化が強み。社労士事務所との連携で、月次の手続き運用を社労士にアウトソースしている企業に支持される。
jinjer(ジンジャー労務): ネオキャリアグループの人事管理一体型。jinjer勤怠・jinjer給与・jinjer人事と組み合わせて一気通貫運用するパターンが多い。
選定の3つの分岐軸
HR Tech製品の選定は、企業の「規模 × 既存システム × 業務範囲」の3軸で大きく決まる。
規模軸 — 50名以下/50-500名/500名以上
従業員50名以下: ジョブカン労務HR、SmartHR Light、マネーフォワードクラウド人事管理(小規模プラン)が現実的。月額数千円〜数万円。重要なのは「複雑な機能より、年末調整・入社手続きが完結すること」。
従業員50-500名(中堅): SmartHR・freee人事労務・マネーフォワード クラウド人事管理が主戦場。月額10万円〜50万円。勤怠・給与・労務手続きの3点セットが必要になる。
従業員500名以上(準大企業以上): SmartHR Enterpriseプラン、マネーフォワードクラウド人事管理Enterprise、Workday、SAP SuccessFactorsなどの大規模対応製品が候補。月額100万円超。タレントマネジメント・サクセッションプランニング・グローバル対応が要件に入る。
既存システム軸 — 会計ソフトとの連動
会計ソフトとの連動は実務上の生命線だ。freee会計を使っている企業はfreee人事労務、マネーフォワード クラウド会計を使っている企業はマネーフォワード クラウド人事管理、勘定奉行を使っている企業は奉行クラウド人事が自然な選択。SmartHRは中立だが、CSV連携やAPI連携の整備状況を確認する必要がある。
業務範囲軸 — 単機能 vs 一体型
「労務管理だけ」「給与計算だけ」を切り出して使う場合は、特化型サービスを選んで連携する設計が可能。一方、「人事業務全般をひとつのSaaSで完結したい」場合はSmartHR・freee人事労務・jinjerなどの一体型が向く。モジュール組合せ型(マネーフォワード等)と一体型(SmartHR・freee)のどちらが自社に合うかは、業務担当者の体制(人事専任者の有無)にもよる。
タレントマネジメントへの拡張 — 「労務管理」から「人材活用」へ
2023年の人的資本開示義務化を境に、HR Tech市場の重心は「労務管理(後ろ向きの定型業務)」から「タレントマネジメント(前向きの戦略業務)」へ徐々にシフトしている。
タレントマネジメント領域では、カオナビ、HRBrain、タレントパレット、SmartHR タレントマネジメント、Workdayなどが競合する。従業員データを単に保管するのではなく、配置・評価・育成・サクセッションに活用するのが要件になる。具体的には、スキルマップの作成、1on1の記録、目標管理(OKR/MBO)、後継者候補リスト、給与制度シミュレーションなど。
労務管理SaaSとタレントマネジメントSaaSは、従業員マスタを共有するのが理想的だ。SmartHRはタレントマネジメント機能を内製化、freee人事労務はタレントパレット等との連携を強化、マネーフォワードはタレントマネジメント領域への投資を継続している。
勤怠管理 — KING OF TIME・ジョブカン勤怠の2強
勤怠管理は労務管理と密接に関連するが、市場の主要プレイヤーは別だ。KING OF TIME(ヒューマンテクノロジーズ)とジョブカン勤怠管理(DONUTS)の2強構造が長年続いており、両者を合わせると勤怠管理クラウド市場の約半分を占める。
SmartHR・freee・マネーフォワードの労務管理SaaSは、いずれも自社の勤怠管理機能を持つが、「すでにKING OF TIMEまたはジョブカン勤怠を使っている企業がそれを残しつつ、労務管理だけSmartHR等に統合する」パターンが多い。連携API・CSV連携は各社対応している。
「給与計算ソフト」の選択肢 — freee・MF・奉行・PCA・弥生
給与計算ソフトは老舗系(奉行・PCA・弥生)と新世代クラウド(freee・マネーフォワード・SmartHR・ジンジャー)の競合構造だ。中堅以上の企業では奉行クラウド給与・PCA Cloud 給与の伝統的選択肢が残るが、中小企業ではクラウド系が急速に置き換えている。
| 製品 | 適合規模 | 強み |
|---|---|---|
| freee人事労務(給与) | 小〜中規模 | freee会計と一体運用、UI親和性 |
| マネーフォワード クラウド給与 | 小〜中規模 | MF会計と統合、社労士連携 |
| SmartHR 給与計算 | 小〜中堅 | SmartHR労務管理との連動 |
| ジョブカン給与計算 | 小〜中規模 | 低価格、ジョブカン勤怠連動 |
| 奉行クラウド給与 | 中堅〜大企業 | 給与制度の複雑さに対応、勘定奉行連動 |
| PCA Cloud 給与 | 中堅 | 長年の安定運用実績 |
| 弥生給与(オンライン) | 小規模 | 低価格、弥生会計と連動 |
2026年以降の見通し — AI活用とコンプライアンス強化
HR Techの今後の主な論点は3つ。
1. AI活用の本格化: 採用領域での履歴書スクリーニング、面接動画分析、退職予兆検知、給与シミュレーション、人材配置最適化など、AIを活用した機能が各社で実装されている。OpenAI/Anthropic Claude/Google Geminiといった汎用LLMをHR領域に組み込む製品競争が激化する見通し。
2. コンプライアンス対応の継続的負荷: 人的資本開示、社会保険適用拡大、賃上げ・最低賃金引き上げ、外国人労働者の雇用管理、フリーランス保護法など、人事領域の法令変更は頻繁に起きる。SaaS各社の対応スピードが選定の重要な観点になる。
3. グローバル展開対応: 海外拠点を持つ日系企業の需要に応えるため、SmartHR・freee・マネーフォワードの各社が海外子会社対応機能を強化している。Workday・SAP SuccessFactorsといった海外勢との競合がさらに進む。
関連する市場動向は 国内SaaS市場全体 2025、会計ソフト市場との関連は 国内クラウド会計市場 2025、生成AI企業活用は 生成AI/LLM 企業市場 をあわせて参照されたい。Aurant Technologies は人事系SaaS・会計系SaaS・業務システムの統合設計を支援している(システム統合サービス)。
参照した一次資料・調査
- デロイト トーマツ ミック経済研究所「HRTechクラウド市場の実態と展望 2024年度版」
- シード・プランニング社「HRテック市場調査」
- 株式会社SmartHR「SmartHRが7年連続シェアNo.1を獲得&登録社数70,000社を突破」2025年4月
- SmartHR「SmartHRと人事労務freeeが相互の強みを生かした連携を開始」
- BOXIL Magazine「労務管理システムのシェア・市場規模」
- BOXIL Magazine「SmartHR・freee・オフィスステーション・マネーフォワード・ジンジャー・ジョブカン 競合比較」
- One人事「HRテックの市場規模とは?」
- 各社公式(SmartHR、freee、マネーフォワード、ジョブカン、オフィスステーション、ジンジャー)
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