生成AIで作った広告を出す前の3層チェック|景表法・薬機法、権利、「AI生成」の明記をだれが判定するか
生成AIで作った広告は、出す前に表示規制・権利・AI生成の明記の三つの層で確かめます。AIが足した数字や使用前後の画像、既存の作品や人物との類似、媒体のラベル規定までを、消費者庁・厚生労働省・文化庁・経済産業省の資料とJIAAの2026年調査をもとに整理し、層ごとの判定者と入稿時の申告項目を示しました。
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この記事の要点
- 生成AIで作った広告は、出す前に三つの層で確かめる。表示規制(景品表示法・薬機法など)、権利(著作権・商標・肖像など)、そして「AIで作った」と明記するかどうか。
- 層ごとに判定する人が違う。表示規制は広告審査・薬事の担当、権利は法務・知財、明記は宣伝・ブランドの責任者が受け持つのが自然。明記は、本稿で確かめた範囲では国内の法令に一律の義務が見当たらず、媒体の規定・ツールの利用規約・自社の方針で決める。
- どの層も「どの要素を、どのツールで、どう作ったか」が分からないと判定できない。入稿票にAIの使い方を申告する欄を設け、審査の入口にする。
出す前の3層チェックと、層ごとの判定者
どの層も、制作側の申告(どの要素を、どのツールで、どう作ったか)がないと判定できない
第1層
表示規制(景品表示法・薬機法など)
- AIが書き足した数字・比較・No.1に根拠はあるか
- 使用前後の画像、浸透のアニメーション、実物と違う見た目
- 医師風の人物と、AIで作った「利用者の声」
判定する人:広告審査・法務(表示等管理担当者)。化粧品・医薬品・健康食品は薬事の担当も
第2層
権利(著作権・商標・肖像など)
- 出す前の類似確認と、作り方の記録
- ロゴ・パッケージ、人物、声は、著作権とは別に確かめる
- ツールの利用規約(どのプランで、いつ作ったか)
判定する人:法務・知財(一次確認は制作側)
第3層
AI生成の明記
- 国内の法令に一律の表示義務は見当たらない(本稿で確かめた範囲)
- 配信する媒体の規定と、使うツールの利用規約を確かめる
- 義務のない部分は、自社の方針で決める
判定する人:方針は宣伝・ブランドの責任者、個々の要否は運用の担当
注意:明記は、第1層・第2層の確認の代わりにならない
当社の整理(判定する人は例)。根拠は、各層の節で出典とあわせて説明しています
生成AIで作ったバナーや動画、コピーを出す前に確かめることは、三つの層に分けると抜けが減ります。一つ目は景品表示法や薬機法などの表示規制で、AIで作ったかどうかに関係なく、表示の中身とその根拠が問われます。二つ目は著作権・商標・肖像などの権利で、AIを使うと「元の作品を知らなかった」が通りにくい場面があります。三つ目は「AIで作った」と明記するかどうかで、本稿で確かめた範囲では国内の法令に一律の表示義務は見当たらず、配信する媒体の規定、使うツールの利用規約、自社の方針で決める層です。
層ごとに、判定に要る材料も、判定できる人も違います。表示規制は根拠資料を持つ広告審査・薬事の担当、権利は生成の記録を読める法務・知財、明記は宣伝・ブランドの責任者が受け持つのが自然です。ただし、どの層も「どの要素を、どのツールで、どう作ったか」が分からなければ判定できません。AIを使った広告の審査は、制作側からのこの申告を入口にして組み立て直す必要があります。
見る側の目も厳しくなっています。日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が2026年8月に公表した調査では、生成AIを使った広告を「条件が整えば活用してよい」とした人は52.0%で、受け入れやすくなる条件の最多は「生成AIを活用していることが明記される」の37.6%でした(JIAA「2026年インターネット広告に関するユーザー意識調査(定量)」)。以下、層ごとに何を確かめ、だれが判定するかを、消費者庁・厚生労働省・文化庁・経済産業省などの公表資料に沿って整理します。個々の広告が適法かどうかは、最後に挙げる窓口や弁護士に確認してください。
AIで作っても、広告の中身に責任を負うのは広告主
最初に前提をそろえます。生成AIのツール、制作会社、配信する媒体がかかわっても、広告の内容に責任を負う立場は広告主から動きません。公的な資料と業界の基準は、この点で一致しています。
- 景品表示法の規制を受けるのは、商品・サービスを供給する事業者です。消費者庁は、わざと偽った場合だけでなく、誤って表示した場合でも優良誤認表示に当たれば規制されると説明しています(消費者庁「優良誤認とは」)。AIが書き足した一文も、出した時点で自社の表示です。
- 薬機法の誇大広告の禁止(第66条)は、条文の主語が「何人も」で、広告主に限られていません。違反には措置命令のほか、対象商品の対価の合計額の4.5%にあたる課徴金も定められています(厚生労働省「医薬品等の広告規制について」)。
- JIAAの掲載基準ガイドライン(2026年3月改定)は、広告の内容の責任は広告主自らが負い、媒体側の掲載判断は広告主の責任を軽くするものではないとしています。あわせて、AIが生成した文章・画像・音声・動画には、既存の著作物や第三者の肖像・商標に似た要素や、事実と異なる情報が含まれうるとして注意を促しています(JIAA「広告掲載基準の策定及び運用に関するガイドライン」)。
- 媒体が用意するAI生成の機能でも同じです。LINEヤフーは広告用の画像生成機能の案内で、生成されたクリエイティブは広告審査の通過を保証せず、それを使った広告の問題は、同社の故意・過失による場合を除いて利用者の責任になると記しています(LINEヤフー プレスリリース(2025年1月21日))。
「ツールが出したから」「代理店が作ったから」「媒体の審査を通ったから」は、どれも広告主側の審査の代わりになりません。審査の仕組みは広告主の側に置き、制作を外部に任せる場合もその範囲に含めます。
第1層 表示規制:AIが足した言葉と絵を、根拠と照らし合わせる
生成AIの出力には、指示していない情報や誤った情報が混ざることがあります。経済産業省のガイドブックも、生成物に誤った情報が含まれうるとして、内容の正確性と根拠・裏付けを確かめるよう求めています(経済産業省「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」p.53)。第1層の審査は、AIが加えた部分を洗い出し、手元の根拠と一つずつ照らす作業が中心になります。
コピー:AIが書き足した数字・比較・No.1に根拠はあるか
効果や性能をうたう表示について、消費者庁は裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。出せなかったり、出した資料が根拠と認められなかったりすると、措置命令の場面では不当表示とみなされます(消費者庁「不実証広告規制」)。提出の期限は求めを受けた日から15日後で、試験や調査をこれから行う必要があるという理由では期限は延ばせないとされています(消費者庁「表示に関するQ&A」Q16)。AIが出した「〇日で実感」のような一文は、対応する資料が社内にあるかを出す前に確かめ、なければ削ります。
「売上No.1」や「医師の〇%が推奨」のような表示も、合理的な根拠に基づかず事実と異なれば、不当表示として問題になります。調査を調査会社に任せていても表示の責任は広告主にあり、調査の内容を自ら確かめる必要があると消費者庁は説明しています(同Q27・Q28)。AIが見出し案に入れてくるNo.1表現は、根拠になる調査が手元にない限り使わないのが基本です。
化粧品・医薬部外品・医薬品では、承認などで認められた範囲を超える効能効果の表現、効果や安全性を保証する表現、最大級の表現が、医薬品等適正広告基準で認められていません(厚生労働省「医薬品等適正広告基準」第4の3)。健康食品は、景品表示法に加えて健康増進法の誇大表示の禁止も確認の対象です(消費者庁「健康増進法(誇大表示の禁止)」)。
画像・動画:使用前後、浸透のアニメーション、実物と違う見た目
画像で特に注意が要るのは、AIで作った使用前・使用後の絵です。適正広告基準の解説は、使用前後を問わず、図や写真で承認外の効能を思わせる表現や、効果が出るまでの時間・効果の持続を保証する表現を認めていません(厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」)。日本化粧品工業会の適正広告ガイドライン改訂α版(2026年7月)は、使用前後の比較に使う写真を、同じ条件で撮影し、意図的な加工をしていないものに限っています(日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン 改訂α版」F7.2)。AIで生成した「使用後」の肌や髪は撮影した写真ではないため、この条件を満たすと説明するのは難しいでしょう。
成分が肌に浸透する様子や作用の仕組みを見せるアニメーションも、効果の保証や誇大な表現にならないよう求められています(同解説、同ガイドラインF7.4)。AIに描かせた場合も、実際の作用の説明と照らして確かめます。健康食品では、その食品では得られない体の変化をイラストや写真で見せることが、虚偽誇大表示等に当たるおそれのある例に挙げられています(消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」)。
商品そのものの見た目にも注意します。色、量、大きさ、質感をAIで整えた商品画像が実物よりよく見えるなら、それも表示の一部です。消費者庁は、著しく優良と示す表示かどうかを、特定の文章や写真だけでなく、表示の内容全体から受ける印象で判断するとしています(同留意事項)。
人物と声:医師風の人物と、AIで作った「利用者の声」
白衣の人物をAIで描き、医師が勧めているように見せる広告は、適正広告基準の「医薬関係者等の推せん」に照らして確かめます。基準の解説は、医薬関係者などが推薦しているかのような広告を、事実であっても原則として不適当とし、推薦が事実でなければ薬機法第66条第2項に抵触するとしています(同解説第4の10)。
実在しない利用者の体験談をAIで作れば、体験談の捏造になります。消費者庁は、体験者がいないのに体験談を作ることを健康増進法でいう事実に相違する表示の例に挙げ(健康食品の留意事項)、捏造した体験談を使う広告を景品表示法の不当表示に当たるおそれがあるものとしています(消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」)。
AIで作った一般の人の投稿やレビューを、自社のものと分からない形でSNSや口コミサイトに出す場合も同じです。事業者自身が出しているのに第三者の表示のように見せる表示は、2023年10月1日から景品表示法の規制対象になったステルスマーケティングに当たりえます(消費者庁「ステルスマーケティングは景品表示法違反となります」)。実在の口コミをAIで要約して自社サイトに載せる場合、運用基準は、評判を上げる意見だけを恣意的に抜き出したり内容を変えたりせずにそのまま引用するなら事業者の表示にはならない、という考え方を示しています(「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準)。要約の抜き出し方と言い換えが、この考え方から外れていないかを確かめます。
「AIで作成したイメージです」と添えても、受ける印象は変わりにくい
注記を添えれば済むと考えたくなりますが、公的な資料はこの考え方に慎重です。消費者庁の留意点は、強調した表示と、例外や条件を伝える注記(打消し表示)が矛盾する場合は誤認されるおそれがあるとしています。体験談に「個人の感想です」と添えても、多くの人に効果があるという受け止めはほとんど変わらないと、実態調査をもとに説明しています(打消し表示に関する留意点)。日本化粧品工業会のガイドラインも、使用体験談の項で、※印の説明文は説明がなくても認められる表現であることが前提で、認められない表現を救うものではないとしています(同改訂α版F7.3)。AI生成の注記は第3層の話で、第1層の確認の代わりにはなりません。
| AIで作ったもの | 確かめること | 根拠・確認先 |
|---|---|---|
| 数字・比較・No.1を含むコピー | 表示に対応する試験・調査の資料があるか。調査の対象と方法 | 消費者庁「表示に関するQ&A」Q16・Q27・Q28 |
| 化粧品・医薬部外品・医薬品の効能の表現 | 承認・効能の範囲内か。保証や最大級の表現がないか | 医薬品等適正広告基準 第4の3、都道府県の薬務主管課 |
| 使用前後の画像、浸透や作用のアニメーション | 承認外の効能や効果の保証を思わせないか。撮影した写真か | 適正広告基準の解説、日本化粧品工業会ガイドライン F7.2・F7.4 |
| 体の変化を見せる画像(健康食品) | その食品で得られない変化を描いていないか | 健康食品に関する留意事項 |
| 商品画像 | 色・量・大きさ・質感が実物と違って見えないか | 景品表示法(優良誤認) |
| 白衣の人物、専門家風の人物 | 医薬関係者の推薦に見えないか | 適正広告基準 第4の10、薬機法第66条第2項 |
| 利用者の声・体験談 | 実在する人の実際の体験か | 健康食品に関する留意事項、打消し表示に関する留意点 |
| 一般の人風の投稿、口コミの要約 | 自社の表示だと分かるか。抜き出し方と言い換え | ステルスマーケティング告示の運用基準 |
各資料へのリンクは本文中にあります。都道府県の薬務主管課は、厚生労働省が個別案件の問い合わせ先として案内している窓口です。
第2層 権利:出す前の類似確認と、作り方の記録
権利の層で押さえるのは、他人の権利を侵害しないことと、侵害していないと後から説明できるようにしておくことの二つです。後者は、生成AIならではの事情から出てきます。
権利ごとに確かめること
著作権
既存の作品に似ていないか
- 類似性と依拠性で判断される
- 学習データにその作品が含まれていれば、元を知らなくても依拠性が推認されうる
- 差止めは、故意や過失がなくても認められうる
確かめ方:インターネット検索などで類似を確かめ、プロンプトなど生成の過程を後から確かめられるようにしておく
商標権・意匠権
ロゴや商品デザインが、登録商標・登録意匠と同じか似ていないか
- 依拠性は要件ではないので、元を知らなかったかどうかは関係しない
確かめ方:J-PlatPatで登録商標や意匠を調べる
肖像権・パブリシティ権
人物や声が、実在の人に似ていないか
- 本人と特定できれば肖像権、著名人であればパブリシティ権の問題になりうる
- 著名人の声に似せた合成音声を許諾なく使うのも同じ
確かめ方:特定の実在の人物に似ていないかを確かめる。実在しないモデルをAIで作る場合も省けない
出典:文化庁「AIと著作権に関する考え方について」・「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」、経済産業省「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」p.44・46〜51
著作権:学習データに入っていれば「知らなかった」は通りにくい
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)は、AIで作ったものの著作権侵害も、人が作った場合と同じく、既存の作品との類似性と依拠性で判断するとしています。そのうえで、利用者が既存の作品を知らなくても、使った生成AIの学習データにその作品が含まれていれば、通常は依拠性があったと推認され、侵害になりうると整理しています。既存の画像を読み込ませて似たものを作らせたり、作品名やキャラクター名をプロンプトに入れたりすれば、依拠性はさらに認められやすくなります(文化庁「AIと著作権に関する考え方について」)。
侵害と判断された場合、差止めの請求は故意や過失がなくても認められうるとされています(同)。元の作品を知らずに使っていたとしても、配信中のキャンペーンを止めることになりかねません。
文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月)は、業務でAIを使う側の対応として、生成物を使う前にインターネット検索などで既存の作品に似ていないかを確かめること、依拠性がないことを説明できるよう、プロンプトなど生成の過程を後から確かめられる状態にしておくことを挙げています(文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」3-1-5、3-1-7)。
経済産業省のガイドブックが紹介する広告の事例でも、同じ手順が取られています。大日本除虫菊のCMでは、画像生成AIを案出しに使い、既存の作品に似たものが出ないようプロンプトに固有名詞を入れず、画像検索で類似を確かめたうえで、最終的な映像はクリエイターが3Dソフトで作り直しています。伊藤園のCMでは、「AIタレント」の体はモデルを撮影して許諾を得たうえで使い、CM全体について画像検索などで類似を確かめています(同ガイドブックp.16〜17)。
ロゴ・パッケージ、人物、声は、著作権とは別に確かめる
AIで作ったロゴや商品デザインが登録商標・登録意匠と同じか似ていれば、商標権・意匠権の侵害になりえます。こちらは著作権と違って依拠性が要件ではないため、元を知らなかったかどうかは関係しません(同ガイドブックp.44)。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で登録商標や意匠を調べるなど、AIを使わない場合と同じ確認が要ります。
人物の画像は、特定の実在の人物に似ていないかを確かめます。似ていて本人と特定できれば肖像権、著名人であればパブリシティ権の問題になりえます。声も同じで、著名人の声に似せた合成音声を許諾なく使えば、パブリシティ権の侵害にあたる可能性があります。ガイドブックはこれらの確認を必須の対応として挙げています(同p.46〜51)。実在しないモデルをAIで作る場合も、この確認は省けません。
ツールの利用規約は「どのプランで、いつ作ったか」まで残す
使うAIサービスの利用規約では、商用利用の可否、生成物の権利の帰属と利用条件、生成AIを使ったことの表示義務、入力データの学習への利用、補償の規定などを確かめます(同p.53)。規約はプランや時期で変わるため、広告ごとに使ったツール、プラン、生成した日を記録しておきます。主な画像生成ツールの商用利用の条件は「Midjourney と Adobe Firefly と DALL·E|画像生成の商用ガイドライン比較」でも整理しています。
第3層 AI生成の明記:法令の義務ではなく、媒体・規約・方針で決める
国内の法令・指針と、業界団体の考え方
景品表示法・薬機法とその運用基準、AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)に基づく国の指針、AI事業者ガイドラインを確かめた範囲では、広告にAIで作ったことを表示するよう一律に求める規定は見当たりませんでした(2026年9月時点)。AI法に基づく指針(2025年12月、人工知能戦略本部決定)が求めているのは、AIを使った製品・サービスを開発・提供する事業者による、AIの生成物だと判断できる技術(電子透かし、来歴管理など)の開発と、必要に応じた実装です(内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」)。総務省・経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版、2026年3月)は、関係者の自主的な取り組みを促す、拘束力のない指針と位置づけられています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」)。
業界団体では、日本広告業協会のAIポリシー(2024年5月)が、AIを利用した事実を合理的な範囲で対外的に説明できるよう努めるとしています(日本広告業協会「AIポリシー」)。求めているのは説明できる状態で、表示の方法までは定めていません。
媒体とツールの規定で、明記が必要になる場合
明記が必要になるのは、まず配信先の規定です。TikTokの広告ポリシーは、AIで全部または大幅に作ったり変えたりした画像・動画・音声を含む広告に、AI生成のラベルか、独自の注記・キャプション・透かしなどを付けることを求め、明示がなければ広告を却下または制限するとしています。照明や色の調整、背景の除去・修正、ノイズの除去は軽微な編集として扱われます(TikTok広告ポリシー「誤解を招くコンテンツおよび虚偽のコンテンツ」)。
Metaは、自社の生成AI機能で作成・大幅に編集した広告や、他社の生成AIツールで作成・編集したと検知した広告に、[AI情報]ラベルを自動で付ける仕組みを説明しています。他社ツールの使用は、C2PAなど業界標準のメタデータで検知するとしています(Metaビジネスヘルプセンター「生成AIツールで作成または編集した広告の[AI情報]について」。地域によっては使えない場合があるとの注記付き)。広告主が明記しないと決めても、素材に残ったメタデータから、媒体側でラベルが付くことがありえます。
もう一つは、使ったツールの利用規約です。前の章のとおり、規約に生成AIの利用を表示する定めがないかを確かめます。
「AIで作った」と明記するかの見分け方
明記しないと決めても、素材に残ったメタデータから媒体側でラベルが付くことがある(Meta)
配信する媒体の広告ポリシーが求めているか
例:TikTokは、AIで全部または大幅に作ったり変えたりした画像・動画・音声を含む広告に、AI生成のラベルか注記を求める
使ったツールの利用規約に、生成AIの利用を表示する定めがあるか
規約はプランや時期で変わるので、使ったツール・プラン・生成した日を記録しておく
出典:TikTok広告ポリシー、Metaビジネスヘルプセンター。見分け方は当社の整理
生活者は「何をAIで作ったか」で受け止めを変えている
義務のない部分は、ブランドとしての判断になります。材料になるのが、先のJIAAの調査です(2026年2月、15〜69歳の3,591人へのWeb調査)。受け入れやすくなる条件は「生成AIを活用していることが明記される」37.6%が最も多く、「法律やガイドラインで規制されている」30.4%、「実在人物やキャラクターの使用が適切に許諾されていることが明記されている」26.8%が続きました。インターネット広告を「信頼できる」とした人は18.3%で、2025年調査の21.6%から下がっています(JIAA 2026年調査)。
広告のどの部分をAIで作ったかでも、抵抗感は変わります。実在の人物・キャラクター・故人は許諾を得ている前提で尋ねていますが、それでも抵抗感が最も高く、キャッチコピーや音楽は相対的に低い結果でした。
広告の部分ごとの、生成AIで作ることへの抵抗感
「かなり抵抗感がある」と「少し抵抗感がある」の合計(n=3,591)。濃い色は、実在する人物・キャラクター・故人をAIで再現する場合で、いずれも許諾を得ている前提の設問。棒の長さは0〜100%の目盛り。出典:JIAA「2026年インターネット広告に関するユーザー意識調査(定量)」調査結果詳細図表4
この結果からは、明記の方針を広告全体で一つにするより、AIで作った要素ごとに決めるほうが、生活者の受け止めに合わせやすいと考えられます。たとえば次のような分け方です。どの方針をとっても、明記が第1層と第2層の確認の代わりにならない点は同じです。
| AIで作った要素 | 方針の例 | 調査での抵抗感 |
|---|---|---|
| 実在の人物・故人・既存のキャラクター(許諾あり) | 許諾を得ていることと、AIで作ったことを示す | 57.8〜64.7% |
| 実在しない人物、合成した声や会話、広告のすべて | AIで作ったことを示すのを基本にする | 49.1〜54.8% |
| 画像や動画の一部(背景・小物など) | 媒体と規約の要件に従い、それ以外は方針で決める | 45.0%、46.2% |
| キャッチコピー、音楽・効果音 | 表示の要否は方針で決め、第1層・第2層の確認を優先する | 38.4%、40.1% |
抵抗感は「かなり抵抗感がある」と「少し抵抗感がある」の合計。出典:JIAA 2026年調査 調査結果詳細図表4。方針の欄は当社が示す例です。
だれが判定するか:層ごとに持ち主を決め、入稿時にAIの使い方を申告させる
景品表示法は、表示を管理する体制を整えることを事業者に求めています。同法第22条に基づく指針(内閣府告示、2024年4月改正)は、表示を管理する担当者または担当部門(表示等管理担当者)をあらかじめ決め、自社の表示を監視・監督する権限と、制作を外部に任せる場合は委託先の表示に指示・確認する権限を持たせること、担当が複数いるなら権限と所掌をはっきりさせること、表示の根拠となる情報を後から確かめられるよう資料を保管することなどを挙げています(「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」)。生成AIを使う広告では、この担当の分け方を三つの層に当てはめると、抜けている部分が見えやすくなります。
層ごとに、だれが・何を材料に・いつ判定するか
第1層表示規制
判定する人(例):広告審査・法務(表示等管理担当者)。化粧品・医薬品・健康食品は薬事の担当も
判定に使う材料:根拠資料、承認の内容、AIが足した訴求と数字の一覧、使用前後の写真の撮影記録
確かめる時点:言ってよい範囲は企画時、個々の表現は入稿前
第2層権利
判定する人(例):法務・知財(一次確認は制作側)
判定に使う材料:使ったツールとプラン、プロンプトと読み込ませた素材、類似の確認結果、人物・声の許諾
確かめる時点:ツールを選ぶときと入稿前
第3層明記
判定する人(例):方針は宣伝・ブランドの責任者、個々の要否は運用の担当
判定に使う材料:媒体のポリシー、ツールの利用規約、自社の方針
確かめる時点:方針は事前に、個々は入稿時
当社の整理。表示等管理担当者の決め方は景品表示法第22条に基づく指針による
どの層でも、判定の材料を持っているのは作った側です。そこで、入稿票(制作物の申請書)にAIの使い方を申告する欄を設けます。外部の制作会社や代理店に任せる場合も、同じ欄を埋めてもらいます。
| 申告する項目 | 中身 | 使う層 |
|---|---|---|
| AIで作った要素 | コピー、人物、声、背景、商品画像、動画の一部など | 1〜3 |
| ツールとプラン | ツール名、プラン、生成した日、利用規約を確かめた日 | 2・3 |
| プロンプトと読み込ませた素材 | 参照画像、他社の作品名・人名・キャラクター名を入れていないか | 2 |
| 類似の確認結果 | 画像検索、商標・意匠の検索、人物が特定の人に似ていないか | 2 |
| AIが足した訴求 | 数字、比較、No.1、効能の表現と、対応する根拠資料 | 1 |
| 実物と変えた点 | 色、量、大きさ、質感、使用後の状態 | 1 |
| 明記の扱い | ラベルや注記の有無と、その理由 | 3 |
申告票と生成の記録は、広告と一緒に保管します。先の指針は、表示の根拠となる情報を、その商品が消費者に供給されうる期間は後から確かめられるようにしておくことを求めています。文化庁のチェックリストが勧める生成過程の記録も、同じ場所に置けば一度で済みます。
AIでバリエーションを大量に作ると、1本ずつゼロから審査していては追いつきません。同じ指針は、企画・設計の段階で、どんな表示ができるか、そのためにどんな根拠が要るかを検討することを例に挙げています。これにならい、使ってよい訴求・数字・言い回しの一覧と、作らせない要素(使用前後の比較、白衣の人物、実在の人物に似た顔など)を先に審査で決め、AIへの指示に組み込みます。入稿時の審査では、一覧から外れた表現を重点的に見られるようになります。
バリエーションを大量に作るときの審査の組み方
当社の整理。企画・設計の段階での検討は、景品表示法第22条に基づく指針が例に挙げている
当社の導入事例では、株式会社ワシツが、素材の画像に文字をのせた広告画像の候補をAIに作らせ、人が選ぶ形にしています。生成から発信までをつなぐ仕組みを試している段階でも、出る前に人が一度目を通す形を残しています。AIに任せる範囲を広げるほど、人が止める地点を先に決めておく必要があります。
社内で判断がつかないときの確認先
- 景品表示法:消費者庁の表示対策課が、事業者がこれから行う企画についての相談を受け付けています。実施の直前だと回答できない場合があるとされているので、日程に余裕をもって相談します(消費者庁「景品表示法に関する情報提供・相談の受付窓口」)。
- 薬機法の広告:厚生労働省は、個別の案件は都道府県の薬務主管課に問い合わせるよう案内しています(厚生労働省「医薬品等の広告規制について」)。
- 著作権・肖像・パブリシティ:文化庁の考え方とチェックリスト、経済産業省のガイドブックで論点を確かめたうえで、弁護士に相談します。商標・意匠は、J-PlatPatでの調査とあわせて弁理士に相談します。
- AI生成の表示:配信する媒体ごとの広告ポリシーを、入稿の前に確かめます。
よくある質問
海外に配信する広告も、同じ考え方でよいですか?
本稿は国内の法令と資料に基づいています。Metaは、AIの透明性について法律やガイドラインで特定の要件がある地域として、ヨーロッパ地域、カリフォルニア州、ニューヨーク州、インド、台湾を挙げ、これらの地域に配信する広告では広告主が生成AIの使用を自主的に開示できる仕組みを用意しています(Metaビジネスヘルプセンター)。海外に配信する場合は、配信先の国・地域の規制を現地の専門家に確認してください。
AIで作ったキャラクターやロゴを、自社の資産として長く使えますか?
文化庁の考え方では、AIで作ったものが著作物と認められるかは、人の創作的な関与がどの程度あるかで個別に判断され、指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合は認められないとされています。人が創作的な加筆・修正をした部分は、通常、著作物と認められます。経済産業省のガイドブックは、AI生成物でも商標法や不正競争防止法で保護されうる一方、意匠法の保護には人が創作に実質的にかかわることが必要と考えられるとしています(p.54)。長く使うキャラクターやロゴは、人の手による仕上げと商標登録の検討をあわせて進めるのが安全です。
社内の企画書やラフ案でAI画像を使う場合も、同じ確認が要りますか?
文化庁のチェックリストは、生成と利用とでは著作権の判断が分かれうるとしています。企業の中で、権利者の許諾を得て利用することを前提に検討の過程で生成する場合は、権利制限規定の範囲内なら許諾なく行える一方、インターネットでの配信などの利用は権利制限の範囲外となる場合が多いとしています(3-1-4)。ラフの段階でも、その画像を最終の広告に使うかどうかと生成の記録を残しておくと、入稿時の確認が一度で済みます。
AIを使うほど、審査は作り方の記録から始まる
生成AIを使った広告の審査で変わるのは、判断の基準よりも、判断の材料の集め方です。表示規制と権利の基準はAIを使わない場合と同じで、そこに「AIが足した言葉や絵」「既存の作品や人物に似てしまった生成物」「AIで作った人物や声」という確認点が加わります。AI生成の明記は、媒体と規約の要件を満たしたうえで、何をAIで作ったかに応じて方針を決めます。どれも、作った側からの申告と生成の記録がなければ判定できません。
Aurant Technologiesでは、生成AIを業務で使うためのルールづくりや、利用ログ・記録の残し方の設計を生成AI活用の支援で、広告のクリエイティブ検証や運用の判断基準を社内に残す取り組みを広告運用の支援でお手伝いしています。AIで作った広告の申告と記録を、どの工程でだれが見るかといった運用の設計も、あわせてご相談ください。
広告運用支援
Google広告・Meta広告・LINE広告・Yahoo!広告の運用を、GA4やCRMとのデータ連携を土台に立て直します。コンバージョン計測の整備から媒体をまたいだ改善まで、社内で判断できる形で伴走します。