ふるさと納税 リピーター戦略 — コニカミノルタAccurioDX「お礼はがきパーソナライズでリピート2.6倍」の中身

ロイヤリティマーケティング調査では10万円以上寄附層の56.3%が再寄附意向。コニカミノルタAccurioDXがある自治体と取り組んだ事例では、寄附内容に応じたパーソナライズお礼はがきでリピート率2.6倍を実現した。寄附者データ統合、オプトイン取得、最初の1施策を絞る ── 構造的に「リピート施策が回らない」自治体が次に何をすべきかを、公的データと実在事例で論じる。

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ふるさと納税の自治体平均リピート率は約1割といわれる。100人の寄附者を獲得しても、翌年同じ自治体に再寄附するのはおよそ10人。残り90人は別の自治体に流れるか、ふるさと納税自体をやめる。2025年10月のポイント還元禁止で新規寄附者の獲得コストが上昇した今、既存寄附者を維持する重要性は明確に増している

リピート率を改善する方法論は多くの記事で語られる。だが、現場で実際に成果を出した取り組みは案外少なく、断片的に紹介されるだけのことが多い。本記事では、株式会社ロイヤリティマーケティングの寄附額帯別調査と、コニカミノルタAccurioDXが地方自治体と取り組んだ「お礼はがきパーソナライズでリピート率2.6倍」の事例を中心に、リピート率を引き上げる現実的な道筋を整理する。

「高額寄附者ほどリピートする」という事実

株式会社ロイヤリティマーケティングが実施したふるさと納税ポイント制度廃止の影響調査では、寄附額帯別に「翌年も同じ自治体に再寄附したい」と答える割合に明確な階段が現れた。最も高いのが10万円以上の高額寄附層で56.3%、続いて5〜10万円が46.8%、3〜5万円が34.0%、1〜3万円が27.2%、1万円以下のライト層は18.5%だった。

寄附額帯別 リピート寄附意向(10万円以上で56.3%)高額寄附者ほどリピート意向が強い。リピーター施策の主戦場は3-10万円帯と10万円超寄附額帯「翌年も同自治体に再寄附したい」割合〜1万円18.5%ライト層、ポイント目的の単発寄附が多い1〜3万円27.2%標準層、再寄附の伸び余地あり3〜5万円34.0%コア層、関係性構築で伸びる5〜10万円46.8%高関与層、CRM施策の主戦場10万円以上56.3%高額層、強い再寄附意向出典: 株式会社ロイヤリティマーケティング「ふるさと納税ポイント制度廃止の影響」調査

この数字が示すのは2つの事実だ。第1に、高額寄附者は元々リピート意向が強いこと。10万円以上を寄附する人は「ポイント目的の軽い気持ち」ではなく、その自治体や返礼品に明確な関心を持っている。第2に、1万円以下のライト層はそもそもリピート率が低いこと。2025年10月のポイント禁止後にこの層がさらに離脱したのは、調査でも明確に観測されている。

戦略的な意味合いとして、「リピート率を上げる施策」は「全層に平等に投下」するのではなく「3-10万円帯と10万円超に集中投下」するほうが投資対効果が高い。元々リピート意向の高い層を、お礼状やコミュニケーションで「実際に再寄附する」段階に引き上げるほうが、ライト層を新規獲得し直すよりはるかに安い。

コニカミノルタ AccurioDX の自治体事例 — リピート率2.6倍の中身

では、具体的に何をすればリピート率は上がるのか。コニカミノルタが運営する共創プラットフォーム「AccurioDX」が、ある地方自治体と取り組んだ事例が参考になる(同社の事例ページ「リピート率2.6倍達成!ふるさと納税で地方自治体が挑む顧客体験向上の戦略」より)。

その自治体の担当者の課題認識はシンプルだった。「ふるさと納税の寄付額が減少傾向にあり、リピート率が低い」。何年も同じ「お礼状」を全寄附者に一斉に送っていたが、効果検証もできず、改善のサイクルも回せていなかった。

2023年に実施した施策は、「全員に同じメッセージ」から「寄附内容に応じたパーソナライズ」への転換だ。市の名産物を選択した寄附者に向けて、「1回の寄附で商品が月を分けて2種類届く2回定期便」をレコメンドするお礼はがきを送付した。レコメンド内容は寄附者の購入履歴に基づくため、人によって違う。

コニカミノルタ AccurioDX × ふるさと納税自治体 事例「同じメッセージの一斉送付」から「寄附内容に応じたパーソナライズはがき」への転換でリピート率2.6倍昨年(〜2022年)• 全寄附者に同じメッセージ送付• 「いつものお礼状」のテンプレ運用• 寄附者属性での出し分けなし6回定期便のリピート率基準値(=1)施策変更2023年(AccurioDX施策)• 名産品寄附者に「2回定期便」レコメンド• パーソナライズしたお礼はがき送付• QR React Appで効果計測6回定期便のリピート率×2.62回定期便を注文した寄附者のうち、はがき送付者の割合は 9.5%(10月末時点・自治体公表値)6回定期便の施策では、対象寄附者の 24% が翌年も6回定期便を注文出典: コニカミノルタ AccurioDX「リピート率2.6倍達成!ふるさと納税で地方自治体が挑む顧客体験向上の戦略」事例ページ

結果は2つの数字で示された。第1に、10月末時点で2回定期便を注文した寄附者のうち、お礼はがきを送付した方の割合が9.5%に達した。第2に、より上位の「6回定期便」を新たに注文した寄附者のうち、24%が翌年も6回定期便を注文。前年同じメッセージを一斉送付していた時と比べると、6回定期便のリピート率は2.6倍に上がった。

事例の中で注目したいのは、効果測定にQR React Appを使い、はがき → QR読取 → サイト訪問 → 寄附完了を1人ずつ追跡している点だ。「施策をやって終わり」ではなく、効果計測 → 翌年の改善 → 再実施というサイクルが回る。紙のはがきとデジタル計測を組み合わせることで、デジタル単独では取れない年配層・現役世代の中堅層にも届く。コニカミノルタが「紙に精通している」からこそ実現できる組み合わせで、印刷会社的な発想を持つベンダーと組むメリットの好例といえる。

「数を増やす」より「単価を上げる」リピート戦略

AccurioDX事例のもう1つの教訓は、リピートの方向性を「数」ではなく「単価」に振ったことだ。2回定期便の寄附者に6回定期便をレコメンドすることで、年間の寄附単価が3倍に上がる。1人の寄附者が翌年「もう一度1万円寄附する」のと、「次は6万円の6回定期便にする」のでは、自治体の収入は6倍違う。

定期便モデルは別の調査でも、リピート率が約85%、平均寄附単価が通常の5〜10倍という驚異的な数字を出している(さとふる関連調査)。米、肉、海産物、果物など、年に複数回届けても継続的に消費される商品で特に効果が大きい。「年12回お米定期便」「春夏秋冬の旬の魚介セット」のような商品設計が、リピート率と単価の両方を引き上げる。

都城市が2024年度に176億円(全国4位)を実現できているのも、牛肉や焼酎の定期便モデルが安定したリピーター層を抱えていることが大きい。「単発の高還元商品で初回獲得 → 翌年に定期便で深いリピート」という設計が、上位自治体の共通パターンになっている。

LINEを使った継続接点の作り方 — 都城市の例

パーソナライズはがきが効くなら、デジタルチャネルでも同じ発想は通用する。都城市が2022年からLINE広告とLINE公式アカウントの統合運用を続けているのは、ふるさと納税で獲得した寄附者を自市のLINE資産として蓄積する狙いがある。

LINEヤフー社が公表した同市の事例によると、ターゲティングに「ふるさと納税」を加えたセグメントはクリック率が約2.3倍。さらにKANAMETO(LINE公式アカウントのAPI対応ツール)を導入し、寄附履歴やアンケート回答に応じたセグメント配信を運用している。寄附情報や配送情報の問い合わせには、24時間365日対応のチャットボットを提供する。これで「ふるさと納税で1度寄附した人」と「2年連続で寄附してくれる人」の間にあるコミュニケーション空白を埋めている。

LINE公式アカウントは月間配信数に応じた料金体系で、2026年10月から大量配信のコストが約3倍に上がる料金改定が予定されている。これに対応するには「全員にプッシュ配信」から「セグメント別にパーソナライズ配信」へ移行する必要があり、その動きはすでに先進自治体で始まっている。

多くの自治体で「リピート施策が回らない」理由

リピーター戦略の重要性は理解されているのに、多くの自治体で運用が回らないのは、構造的な理由がある。

第1に、寄附者データが分散していること。楽天・さとふる・ふるなびなど複数ポータル経由の寄附者を、自治体側で1つのデータベースに統合できていない。「Aさんは複数ポータルで合計何回寄附しているか」が分からない状態では、お礼状のパーソナライズも難しい。

第2に、個人情報の取扱いルール。ポータルから提供される寄附者情報の利用範囲は契約で制限されており、リピート施策のためのDM・メール送付に使うには、寄附時のオプトイン取得や利用目的の明示が必要になる。これが「やりたいけど踏み出せない」要因になることが多い。

第3に、運用人材の不足。お礼はがきのパーソナライズを毎年継続するには、寄附データの分析、はがきデザイン、印刷、発送、効果測定という一連のプロセスを誰かが担う必要がある。担当者1〜3名の自治体にとっては、この負荷が物理的に難しい。AccurioDXの事例で外部パートナーと組んでいるのは、この問題を解決するための現実的な選択だ。

同協議会の2025年5月調査でも、今後取り組みたい施策として「リピーター施策の実施」が63.0%と高い数字を示した。多くの自治体が必要性を認識しながら、実装に踏み出せずにいる構造が浮かぶ。

「やる」と決めた自治体が最初に取り組むこと

リピーター戦略を本格化する自治体が、最初に着手するのは概ね3つだ。

1つ目は、寄附者データを統合できる仕組み作り。ポータル各社から月次でCSV取得し、自治体側のCRMまたはBIに統合する。kintoneやSalesforce、ふるさと納税専用CRM(ふるさとLab等)など、自治体が既に保有しているシステムやコストに応じて選択肢が変わる。

2つ目は、寄附者からのオプトイン取得。ポータルの返礼品ページや自治体特設サイトで、「翌年以降の特別ご案内をお送りしてもよろしいですか」を明示し、同意を取る。同意率は20-40%程度になることが多いが、これが将来のリピート施策の母集団となる。

3つ目は、最初の1施策を絞り込む。AccurioDXの事例のように、「お礼はがきで定期便レコメンド」のような具体的・測定可能な施策を1つだけ選び、年間でPDCAを回す。「全部やろう」とすると、結局1つも回らずに終わる。

2026〜2029年はポイント禁止と段階的6割ルールが同時に効いてくる4年間になる。新規獲得のCPAは上昇し、自治体側の経費の使い方も厳しくなる。この4年間で寄附者を「自治体のCRM資産」として積み上げられた自治体と、ポータル依存のまま留まった自治体の差は、2027〜2028年には決定的になる。

市場全体の見取り図は 2024年度総括 1.27兆円、ポイント禁止後の状況は ポイント還元禁止後のふるさと納税、自治体マーケ全般の体制設計は 自治体マーケティングの現在地 も併せて参照されたい。Aurant Technologies は予実管理BIと寄附者データ統合の伴走を提供している(サービス詳細)。

参照した一次資料・調査

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ERP・基幹システムの刷新、SaaS選定・導入支援、DX戦略立案まで対応。中小企業のDX推進を一気通貫でサポートします。

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aurant technologies 編集

上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

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