ポイント還元禁止後のふるさと納税 — ふるなびマネー5%、楽天5と0の日、駆け込み需要と高単価層集中の半年間
2025年10月1日のポイント還元禁止施行から半年。楽天「5と0の日」5%還元、ふるなびマネー5%増量、楽天グループ7-9月期決算(国内EC+14.5%)、ライト層離脱と高単価層56.3%リピート意向、自治体DX推進協議会調査が示す自治体の対応策。2026年10月の段階的6割ルール後の景色まで、公的データと実在事例で論じる。
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2025年10月1日、ふるさと納税ポータルサイトによるポイント還元が全面禁止された。総務省告示の施行で、楽天ふるさと納税・Yahoo!ふるさと納税・さとふる・ふるなび・ふるさとチョイスの5大ポータル全社が一斉に対応。「ポイント還元率の高さ」を訴求してきた市場の主軸が消えた。
禁止施行から半年が経過し、各ポータルと寄附者と自治体の動きが見えてきた。「ポイントが消えて市場は冷え込んだか」と問われれば、データは違うことを示している。寄附総額は2024年度1兆2,727億円から2025年度も成長基調と見られ、楽天グループの2025年7-9月期決算では国内EC流通総額が前年同期比+14.5%とふるさと納税の駆け込み需要が成長を牽引したと報じられた。本記事では、ポイント禁止後の実際の動きと、これからの集客戦略を整理する。
ポータル側の対応 — 禁止対象は「直接付与」のみ、間接還元は競争中
総務省の指定基準で禁止されたのは「ポータルサイト経由で寄附した際の、ポータルによる直接のポイント付与」だ。これに該当しない間接的な還元手段は引き続き提供できる。各社はこの逃げ道をフル活用している。
楽天ふるさと納税は「5と0がつく日は楽天カード利用で最大5%還元」を継続展開している。これはクレジットカード会社による還元なので、ポータル直接付与には当たらない。期間限定の「限定・増量」特集も組み、実質1〜2割増しでお得に寄附できる商品を強調する設計だ。楽天経済圏のユーザー基盤と組み合わせると、依然として強力な訴求になる。
ふるなびは2025年12月3日に「ふるなびマネー」を開始。クレジットカードでチャージするとチャージ金額の5%が即時増量される独自決済手段だ。2025年12月〜2026年2月の開始時キャンペーンに続き、2026年4-5月にも5%増量を実施。通常時でも4%増量が継続している(Diamond Zai 2026年5月)。「ポータルが付与する」のではなく「ポータルが提供する決済手段が増額する」スキームで、規制の線引きを巧みに回避している。
こうした対応に対しては「実質的にポイントと同じではないか」という指摘もある。実際、日経新聞は2025年11月の解説「ポイント還元禁止後の『ふるさと納税』 それでもお得度を高める技」で、ポイント禁止後も実質的なお得度を維持する方法を複数紹介している。総務省が次に規制対象を広げるかは2026年以降の論点だが、ポータルとの構造的なせめぎ合いが続くのは明白だ。
寄附者の行動 — 駆け込み需要・ライト層離脱・高単価層集中
2025年4-9月の半年間は、寄附者の駆け込み需要が市場全体を押し上げた。「ポイントが消える前にやっておこう」という動機で、普段ふるさと納税を利用していない層が一時的に動いた。楽天グループの2025年7-9月期決算で国内EC流通総額が+14.5%と急伸したのは、この駆け込みが主要因と分析されている。
問題はその先だ。2025年10月以降の動きを観測すると、3つの変化が見えてきた。
第1に、ライト層(年1〜2万円の単発寄附)の離脱。「軽い気持ちのポイント目的」だった層は、ポイントがなくなった瞬間に行動を止める。ロイヤリティマーケティング社の調査によると、ポイント禁止後にふるさと納税利用を「減らす」と答えた層は、特に1万円台の寄附者で目立った。
第2に、高単価層(3万円以上)の構成比増加。同社調査では、10万円以上の高額寄付層で56.3%がリピート申し込みを予定と答えており、ポイントの有無は寄附決定にあまり影響しない。返礼品の中身が選定基準になるため、ライト層の離脱と相殺する形で平均寄附単価が押し上げられる構造になる。
第3に、ポータル乗換の選別が始まっている。楽天経済圏ユーザーは楽天に留まり、ふるなびマネーを使い慣れた層はふるなびに集約され、特定の代替還元施策がない自治体ポータルは選ばれにくくなる。さとふるの利用実態調査(2025年7月、Groov社・1,009名)が示す楽天62.7%・ふるなび13%・さとふる12.5%・ふるさとチョイス5%・Yahoo 2.4%という構造は、当面この方向で固定化していく見通しだ。
自治体側の打ち手の限界と転換
自治体側から見ると、ポイント禁止後の集客は明らかに難しくなった。同じ広告予算でもCPA(寄附者獲得単価)は上昇し、これまでポイントが担っていた「初回フック」を別の手段で作る必要がある。
自治体DX推進協議会の2025年5月調査(303自治体回答)では、今後取り組みたい施策のトップに「各ポータルサイトでのページ改善・広告運用」が69.3%、次いで「リピーター施策の実施」が63.0%に上った。これは「ポータルへの依存度を下げず、ただし獲得→リピートまでの設計を強化する」方向性を示している。
具体的な転換例として参考になるのが、都城市のLINE戦略だ。都城市は2022年からLINE広告を継続運用し、寄附者を自市のLINE公式アカウントに集約する設計を取ってきた。LINEヤフーが公表した事例によると、ターゲティングに「ふるさと納税」を加えたセグメントはクリック率が約2.3倍。さらにKANAMETO(LINE公式アカウントのAPI対応ツール)と24時間チャットボットを組み合わせ、寄附者の問合せ対応を自動化している。ポータル経由で獲得した寄附者を、自治体側のCRM資産にする動きだ。これができていれば、ポイント禁止後の新規CPA上昇の影響を最小化できる。
もう1つの転換例は「現地消費型」。自治体DX推進協議会の調査では、「現地決済型・現地消費型ふるさと納税」の実施率が42.2%に達し、検討中を含めると約3分の2の自治体が前向きだった。物品返礼の発送競争(送料負担も自治体側)から、地域経済への直接的貢献を重視するモデルへ。観光業比率の高い自治体ほど先行して取り組んでいる。
2026年10月新ルールとの組合せ — 「ポイント禁止」だけが課題ではない
ポイント禁止の話題が大きいため見落とされがちだが、自治体側にとってさらに重い影響を持つのは2026年10月施行の段階的「6割ルール」だ。寄附総額に対する自治体活用率の基準を2026年10月→52.5%、2027年→55%、2028年→57.5%、2029年→60%と段階的に引き上げる規制で、これに伴いワンストップ事務費・寄附金受領証発行費・税控除関連事務費が5割計算の対象に追加される。
つまり、自治体が使える経費の幅が狭くなる。広告予算の捻出はさらに難しくなり、自治体が直接運用する代わりに委託先(ポータル事業者、地場マーケ会社、SNS運用パートナー)への依存が深まる構造になる。詳細は 2026年10月 新ルール完全ガイド を参照されたい。
2026〜2029年の4年間は、ポイント禁止と6割ルールが同時に効いてくる。今のうちに自治体側のCRM資産(寄附者DB、LINEアカウント、リピート率データ)を蓄積しているかどうかで、2027〜2028年の寄附額に明確な差がつくと予想される。
「ポイントが消えた市場」で残るものは何か
ポイント還元という制度上の競争軸が消えた結果、ふるさと納税市場は「返礼品の中身」と「自治体ブランド」という、より本質的な軸での競争に戻りつつある。これは制度本来の趣旨に沿った変化だが、自治体側にとっては難易度の高い方向への転換でもある。
ポイントがあった時代は、自治体側が広報体制を持っていなくても、ポータルのポイント還元が初回寄附を呼んでくれた。今後は「自治体側で寄附者との関係を直接構築できる体制」がないと、ポータルに乗っているだけでは寄附が伸びない。担当者1〜3名の体制で何ができるか、外部委託先とどう分業するか、CRM資産をどう蓄積するか ── マーケティングというより自治体DX全般の話になっている。
市場全体の数字は 2024年度総括 1.27兆円、自治体マーケティングの体制論は 自治体マーケティングの現在地、寄附使途を通じた共感づくりは 「使途報告」と寄附者の共感 も併せて参照されたい。Aurant Technologies は予実管理BIと自治体体制設計の伴走を提供している(サービス詳細)。
参照した一次資料・調査
- 総務省「ふるさと納税の次期指定に向けた見直し」2024年6月通知
- 楽天「楽天ふるさと納税におけるポイント付与ルール変更のおしらせ」2025年9月
- 楽天グループ2025年7-9月期決算(2025年11月13日発表)
- Diamond Zai「ふるなびマネーにチャージすると5%分が増量されるキャンペーン開催!」
- ふるさと納税ガイド「『ふるなびマネー』を徹底解説」
- 日本経済新聞「ポイント還元禁止後の『ふるさと納税』 それでもお得度を高める技」2025年11月
- 株式会社ロイヤリティマーケティング「ふるさと納税ポイント制度廃止の影響とは? 寄付額別満足度No.1返礼品も調査」
- 一般社団法人 自治体DX推進協議会「2025年5月 ふるさと納税実態調査」(303自治体回答)
- Groov株式会社「ふるさと納税ポータルサイト利用実態調査」2025年7月
- LINEヤフー for Business「宮崎県都城市がLINE広告を始めた理由」
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