FAXで注文してくる取引先が残っても、受注のシステム化はできる|FAX・電話・Web・LINEの注文を同じ一覧で回す
FAXや電話で注文してくる取引先に切り替えを頼まなくても、受注のシステム化は進められます。入口はそのままに受注の置き場と状態の呼び方を一つにする設計、FAXと電話の注文の載せ方、Webに移ってもらう取引先の順番、並行期間に数えることを、東京商工会議所と中小企業庁の調査をもとに整理しました。
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この記事の要点
- FAXや電話で注文してくる取引先が残っていても、受注のシステム化はできる。入口(FAX・電話・メール・Web・LINE)はそのままにして、届いた注文を置く場所を一つの受注一覧に決め、状態の呼び方(受付・確認・引当・出荷・請求)を入口に関係なくそろえる。
- 取引先にWebでの注文を頼むのは、その後。注文の件数が多い取引先から順に頼み、件数が少ない取引先や、電話で話しながら決まる注文が多い取引先は、FAXや電話のまま受けると先に決めておく。
- 並行して動かす期間に、入口ごとの件数、打ち直しにかかる時間、誤りの件数を数えておけば、次にどの取引先へ頼むかを数字で決められる。
入口はそのまま、受注の置き場と状態の呼び方を一つにする
入口はそのまま
状態の呼び方は、入口に関係なくそろえる
入口ごとに違うのは、一覧に載るまでの手順だけ。確認から先は同じ手順
取引先にWebでの注文を頼むのは、その後。件数の多い取引先から順に
当社の整理(状態の呼び方は一例)
取引先の一部がFAXや電話で注文してくるうちは、受注のシステム化はできない、と考える必要はありません。注文の入口(FAX・電話・メール・Web・LINE)はそのままにして、届いた注文を置く場所を一つの受注一覧に決め、注文の状態の呼び方(受付・確認・引当・出荷・請求)を入口に関係なくそろえれば、どこから来た注文も同じ画面で追えるようになります。
取引先にWebでの注文をお願いするのは、その後です。注文の件数が多い取引先から順に頼み、件数が少ない取引先や、電話で話しながら決まる注文が多い取引先は、FAXや電話のまま受けると先に決めておきます。並行して動かす期間に、入口ごとの件数、打ち直しにかかる時間、誤りの件数を数えておけば、次にどの取引先へ頼むかを数字で決められます。
以下では、東京商工会議所と中小企業庁の調査で、FAXや電話の注文が残る理由を確かめたうえで、受注一覧の組み立て方、FAXと電話の注文の載せ方、取引先への頼み方、並行期間に数えることを順に書きます。
受発注が「電話・FAX」の会社は、ITを入れている会社に絞っても約4社に1社
東京商工会議所の「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2025年1月公表)には、受発注の状況を尋ねた設問があります。調査は2024年10月15日〜11月15日に、主に東京23区の中小企業10,000社へ調査票を送り、1,218社が回答しました(回答率12.2%)。受発注の設問の結果は次のとおりです。
受発注の状況(n=1,002)
口頭連絡・電話・帳簿での業務が多いと答えた企業を除いた集計。一つを選ぶ設問
出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果(詳細版)」2025年1月10日(調査概要はp.3、デジタル化の段階はp.5、受発注はp.8)
この数字を読むときは、次の点に気をつけてください。
- 1,002社は、自社のデジタル化の段階を「口頭連絡、電話、帳簿での業務が多い」と答えた企業(回答全体の17.7%)を除いた集計です。調査の言い方でいう、ITを「導入」している企業に絞っても、4社に1社が電話・FAXで受発注していることになります。除かれた企業も含めれば、この割合はさらに高くなると考えられます。
- 割合を足すとほぼ100%になる、一つを選ぶ形の設問です。「メール・ホームページ等」を選んだ会社にも、FAXで注文してくる取引先がいるかもしれません。入口が混ざっている会社がどれだけあるかは、この調査からは分かりません。
- 回答は主に東京23区の中小企業です。全国の割合として読むことはできません。
2026年6月に公表された同じ調査の新しい版(2026年6月17日の集計結果)には、受発注の手段を尋ねる設問がありません。そのため、ここでは2025年1月の版の数字を使っています。
Webで注文する手間は、頼まれる取引先の側にかかる
Webでの注文に切り替わって打ち直しが減るのは、注文を受ける側です。新しい画面を覚え、IDを管理し、注文のたびにログインする手間は、頼まれた取引先の側にかかります。取引先から見れば、仕入れ先ごとに違う注文の画面を使い分けることにもなります。
Webでの注文に切り替えると、手間はどちらにかかるか
注文を受ける側(自社)
打ち直しが減る
- Webに移った取引先の分だけ、打ち直しがなくなる
頼まれる取引先の側
手間がかかる
- 新しい画面を覚える
- IDを管理する
- 注文のたびにログインする
- 仕入れ先ごとに違う注文の画面を使い分ける(多画面問題)
手間の問題に、取引の関係が重なる:切り替えたとたんに取引先が他社へ移るおそれ、慣れた手順を変えることへの抵抗
目標を「すべての取引先をWebに移す」に置くと、最後の1社が移るまで、社内の受注はWebとFAXの二本立てのまま残る
当社の整理。「多画面問題」は中小企業庁の委託調査の報告書(令和3年度、p.16)の言葉。取引先が移るおそれと、手順を変えることへの抵抗は、東京商工会議所の調査(2025年1月公表、p.25〜26)の自由回答から
中小企業庁が委託した調査の報告書(令和3年度「中小企業の受発注のデジタル化推進方策に関する調査」報告書、2022年3月)は、取引先ごとに違う電子受発注の仕組みを使い分けなければならない負担を「多画面問題」と呼び、紙やFAXのほうが結果的に使いやすいという中小企業も一定数あると考えられる、としています(p.16)。電気工事と電材卸の業界への聞き取りでは、電気工事会社が、発注では卸ごと、受注では得意先ごとに操作の違う仕組みを使うことになり、電子化が広がるほど手間が増えかねないため、FAX・電話での受発注がなくならない、とまとめています(p.47)。発注する側にとっては電話やFAXのほうが手間がかからないため、従来のやり方が続いている、という記述もあります(p.48)。
FAXを使う理由が、取引先のさらに先にあることもあります。東京商工会議所が2026年6月に公表した調査の自由回答には、「取引先との関係」の課題として、顧客がFAXで指示してくることが最大の負担で、それが顧客の顧客に起因している、という声(情報通信業、5人以下)が載っています(2026年6月公表分のp.35)。
手間の問題に、取引の関係が重なります。2025年1月公表の同じ調査の自由回答では、FAXや郵送のやり取りが多い業界の卸売業(21〜50人)が、請求書などをデジタルに切り替えたとたんに取引先が他社へ移るおそれを拭えず、自社の効率化が業績の向上につながらない場合もある、と書いています(p.26)。別の卸売業(6〜20人)は、慣れた手順を変えることへの抵抗が、社内だけでなく取引先にも残ると答えています(p.25)。中小企業庁の報告書にある電材卸へのアンケート(718社に配布、132件回答、回収率18.4%)でも、電子受発注に対応しない理由は、価格交渉や信頼関係といった取引先との事情が4割近くで最も多くなっています(p.46)。聞き取りでは、電材卸の取引のやり方は顧客である電気工事会社の意向に左右され、「この前のあれ」といった電話の注文に柔軟に応じられることが、他社に対する強みになっていると記されています(p.47)。
目標を「すべての取引先をWebに移す」に置くと、頼みにくい取引先ほど後回しになり、最後の1社が移るまで、社内の受注はWebとFAXの二本立てのまま残ります。先に決めるべきなのは、取引先がどの入口を使っても、社内では同じ一覧と同じ手順で注文を処理することです。
入口はそのまま、受注の置き場と状態の呼び方だけを一つにする
考え方は単純で、どの入口から届いた注文も、受注一覧に1件として載せます。FAXの注文はExcelに、電話の注文はメモに、Webの注文は受発注サービスの画面に、と入口ごとに置き場が分かれていると、「今日出荷する注文は全部で何件か」「まだ誰も確かめていない注文はどれか」に答えるたびに、置き場を一つずつ見て回ることになります。
一覧に載せたら、状態の呼び方を入口に関係なくそろえます。例えば次の5つです。
状態の呼び方をそろえる(例)
1受付
注文が届き、一覧に1件として載った。中身はまだ確かめていない
次の状態へ進める条件:品目・数量・単位・納期・単価を確かめ終えた
2確認
中身を確かめ、受けると決めた
次の状態へ進める条件:在庫を割り当てた(足りない分には入荷の予定を付けた)
3引当
在庫を割り当てた
次の状態へ進める条件:出荷した(出荷日と送り状の番号を入れた)
4出荷
出荷した
次の状態へ進める条件:締め日の請求データに入った
5請求
請求データに入った
状態ではなく印保留・取消
取引先への問い合わせで止まっている注文や、取り消された注文は、流れに状態を足さず印で表す
流れの途中に状態を増やすと、入口ごとに使う状態がばらけて、そろえた意味が薄れる
当社の整理(状態の呼び方は一例)
取引先が自社の品番で入れてくるWebの注文なら、登録のある品目でふだんどおりの数量のときは、受付と同時に確認まで進めて構いません。FAXや電話の注文は、人が確かめてから確認に進めます。入口によって確認までの速さは違っても、確認から先は同じ手順になります。取引先への問い合わせで止まっている注文や、取り消された注文は、この流れに状態を足さず、「保留」「取消」の印で表します。流れの途中に状態を増やすと、入口ごとに使う状態がばらけて、そろえた意味が薄れるからです。
状態のほかに、どの注文にも次の項目を持たせます。
- 入口(FAX・電話・メール・Web・LINE・取引先の発注サイト)
- 受付日時(打ち込んだ時刻ではなく、注文が届いた時刻)
- 受けた人と、確かめた人
- 原本(FAXの画像、メール、電話のメモなど、取引先から届いたもの)
- 取引先が書いたままの品名・品番と、対応させた自社の品番
入口ごとに違うのは、一覧に載るまでの手順だけです。
| 入口 | 一覧に載せる人と時点 | 原本として残すもの | 確認で人が見るところ |
|---|---|---|---|
| FAX | 受信した時点で、受付の担当が1件作る | 受信した画像 | 読み取った品目・数量・単位、読めない箇所 |
| 電話 | 受けた人が、話しながら入力する | 受けた人のメモ(録音していれば、その保存先) | 復唱した内容、初めて出てきた品目 |
| メール | 受信した時点で、受付の担当が1件作る | メール本文と添付ファイル | 取引先の書式で書かれた品目・数量 |
| Web(自社の注文画面) | 取引先が送った時点で、自動で1件になる | 送られた内容 | 登録のない品目や、ふだんより多い数量 |
| LINE | 受けた人が、その場で入力する | トークの画面 | 電話と同じ |
| 取引先の発注サイト | 受付の担当が取り込むか、入力する | 取り出したファイルや画面 | 取引先の品番と自社の品番の対応 |
この一覧から在庫の引き当て、出荷、請求データの出力までを一つの仕組みでつないだ場合の画面の例は、受発注・在庫管理システムの開発のページに載せています。今の販売管理システムを使い続ける場合は、確認まで済んだ注文を販売管理へ渡す形にもできます。
FAXの注文を一覧に載せるまで
FAXの注文が一覧に載るまで
紙に出すこと自体は止めなくてよい。受信した時点で一覧に1件ができていれば、打ち込み忘れは一覧で見つかる
当社の整理
紙に出さずに受け、届いた時点で1件にする
FAXを紙で受けて机の上で回していると、届いたのにまだ誰も入力していない注文が、一覧の上に現れません。複合機やインターネットFAXでデータとして受け、受信した時点で受付の1件を作って画像を付けておけば、入力の済んでいない注文も一覧で見えます。
読みやすさのために紙に出すこと自体は、止めなくても構いません。東京商工会議所が2026年6月に公表した調査の自由回答には、データでやり取りしても、従業員が間違えないようにと紙に出して入力している、という製造業(6〜20人)の声があります(2026年6月公表分のp.35)。紙に出しても、受信した時点で一覧に1件ができていれば、打ち込み忘れは一覧で見つかります。なお、紙に出さずにデータで受けたFAXの注文書は、電子帳簿保存法でいう「電子取引」にあたります(国税庁の一問一答、問2)。保存のしかたは、記事の最後の「よくある質問」に書きました。
手入力かOCRかは、件数と書式のそろい方で決める
読み取りを人が打ち込むか、OCRやAIに任せるかは、FAXの件数と、書式がどれだけそろっているかで決めます。取引先ごとに書式がばらばらで手書きも混ざるなら、読み取りを任せても確かめる手間は残ります。同じ2026年6月公表分の自由回答には、FAXの受注をOCRでデータにし、kintoneを通して製造の現場を見えるようにして、在庫や出荷の判断を早めている製造業(6〜20人)の例があります(2026年6月公表分のp.32)。
読み取った結果をそのまま信じず、確かめる手順を先に決めておきます。確かめ方の考え方はOCRの結果をどう信じる?突合・例外リスト・ルール化までの考え方で書いています。kintoneで受注一覧を組むなら、レコードに添付した画像やPDFをAIで読み取って項目に入れ、読み取った結果を人が直す流れを備えた当社のOCR入力補助プラグインもあります。どの方法でも、読めた後に自社の品番へつなぐ作業は別に要ります。
取引先の書き方を、自社の品番につなぐ表を持つ
FAXの注文書には、取引先が自分の呼び方で品目を書いてきます。略称、取引先側の品番、古いカタログの品番が混ざり、同じ品物でも取引先によって書き方が違います。中小企業庁の報告書も、電材卸で自社の品番とメーカーの品番が違い、同じ商品でも受注と発注で品番が異なるため、手で打ち換えて登録している業務があり、担当者に頼った作業になっていると書いています(p.43)。
そこで、取引先ごとに「取引先の書き方 → 自社の品番と単位」の対応表を持ちます。最初は過去の注文から作り、初めて出てきた書き方は、確かめた人がその場で表に足します。単位(ケースと個、箱と本など)も表に入れておくと、「10」が10ケースなのか10個なのかで迷わずに済みます。報告書は電材卸について、仕入れはケースでも販売はばらという商品があり、同じ商品でも扱う単位が変わるため、注文する側が単位を取り違えて数量を誤ることがあるとも書いています(p.48)。表が育つほど、読み取りの後で人が迷う箇所は減っていきます。
人が確かめる注文の条件を決めておく
全件を同じ重さで確かめる必要はありません。次のような注文を、確認の担当に回す決まりにします。
- 対応表にない書き方や品番がある
- 数量が、その取引先のふだんの注文と大きく違う
- 単価が決まっていない品目や、値引きの指定がある
- 読めない箇所がある、希望の納期がその取引先の締め時刻に間に合わない
確かめるために取引先へ連絡した回数も、その注文の記録に残します。中小企業庁の報告書は鉄鋼の業界について、電話・FAXの注文で書き間違いや聞き間違いによる誤りと、分かりにくい注文の確認が毎回起き、費用がかかっていると記しています(p.42)。連絡の回数が残っていれば、どの取引先の注文で手間がかかっているかを後から数えられます。
確認の担当に回す注文
対応表にない書き方や品番がある
数量が、その取引先のふだんの注文と大きく違う
単価が決まっていない品目や、値引きの指定がある
読めない箇所がある、希望の納期がその取引先の締め時刻に間に合わない
当社の整理
電話の注文は、聞きながら同じ画面に入れる
電話の注文をメモに書いてから後で打ち込むと、書き写す手間がかかるうえに、メモのまま一覧に載らない注文が出ます。受けた人が話しながら、FAXの注文と同じ入力画面に入れ、入口を「電話」、受付日時を通話の時刻にして1件を作ります。
入力画面には、その取引先の最近の注文と、よく頼まれる品目を並べておきます。中小企業庁の報告書では、「この前のあれ」といった注文に柔軟に応じられることが電材卸の強みだとされる一方で、電話での発注で誤りが起きた例も多いと書かれています(p.47)。過去の注文が画面に出ていれば、あいまいな注文にもその場で候補を示して確かめられ、柔軟さを保ったまま聞き違いを減らせます。電話を切る前に品目・数量・単位・納期を復唱し、復唱したことも記録に残します。
担当者の個人のLINEに届く注文も、受けた人にしか見えない入口という点では電話と同じです。まずは受けた人がその場で一覧に入れる決まりにし、会社のLINE公式アカウントで受ける形に移すかどうかは、別に考えます。LINE公式アカウントの構築と運用の支援は、LINE公式アカウントの運用・構築支援のページで紹介しています。
取引先ごとに、入口と締めの時刻を台帳に書いておく
取引先の台帳(取引先マスタ)に、受注の側で使う列を足します。
- ふだん使う入口(複数あればすべて)
- 差出元(FAX番号、メールアドレス、LINEの名前)。届いた注文がどの取引先のものかを、差出元から引けるようにします
- 注文の締め時刻(その日の出荷に間に合う受付の時刻)
- 受けた内容を返す必要があるか(注文請書や受付の返信)
- 品番の対応表
- 請求の締め日
締め時刻に間に合ったかどうかは、受付日時で決めます。例えば12時締めの取引先から11時50分に届いたFAXを13時に打ち込んだとき、打ち込んだ時刻で決めると、締めに遅れた注文として扱われてしまいます。一覧に載るまでの時間は入口ごとに違うので、届いた時刻を基準にしないと、FAXや電話で注文する取引先だけが不利になります。
締めに間に合ったかは、受付日時で決める(12時締めの取引先の例)
受付日時で決める → 締めに間に合った注文
打ち込んだ時刻で決める → 締めに遅れた注文として扱われてしまう
当社の整理
受付の時刻が仕組みに残るようになると、締め切りを厳しく運用することもできるようになります。東京商工会議所の2025年1月公表の調査の自由回答には、FAXと電話が中心だった受注をWebの受発注に置き換え、販売システムの納品伝票の登録につないだ製造業(21〜50人)が、転記の誤りと登録の手間が減っただけでなく、納期に応じた注文の締め切りも厳格にできた、と書いています(p.23)。
Webに移ってもらう取引先の順番と、頼み方
一覧を数週間動かすと、取引先ごと・入口ごとの注文件数が出ます。Webへの切り替えは、この件数の多い取引先から頼みます。Webに移った取引先の分だけ打ち直しがなくなるので、減る手間は、その取引先の注文件数と明細の行数でほぼ決まります。注文が一部の取引先に偏っていれば、上位の数社が移るだけで打ち直しは大きく減ります。
件数のほかに、次のような取引先も早めに頼む候補です。
- すでにメールに添付したExcelで注文してくる取引先(パソコンで注文を作る流れがある)
- 同じ品目を繰り返し注文する取引先(Webの画面にその取引先の品目を並べておけば、選ぶだけで済む)
- 確かめの連絡や、打ち直しの誤りが多い取引先
頼むときは、取引先の側の得を先に用意します。その取引先がよく頼む品目と単価が最初から並んでいる、前回と同じ注文を呼び出せる、受け付けたことがすぐに返ってくる、出荷したかどうかが見える、といったことです。社内の処理が短くなる分、Webの注文だけ締め時刻を遅らせる方法もあります。案内は、その取引先を担当している営業から直接伝え、最初の1回は一緒に注文を入れます。FAXや電話での注文もこれまでどおり受けることは、必ず添えておきます。
中小企業庁の報告書には、電力会社が低圧電気工事の申込みをインターネットに切り替え、FAXでの申込みを受け付けなくした例も載っています(p.46)。ただ、申込み先をほかに選べない手続きと違って、仕入れ先を選べる取引先に同じことをすれば、先に見た取引先離れのおそれにつながりかねません。
FAXを残す取引先を、先に決めておく
頼む取引先を決めるのと同時に、FAXや電話のまま受ける取引先も決めて、台帳の入口の列に書いておきます。決めておかないと、営業が同じ取引先に何度も切り替えを頼んだり、逆にFAXの受け方の手当てが後回しになって、FAXの注文だけ処理が遅れたりします。
残す取引先の目安は、例えば次のとおりです。
- 注文が月に数件で、打ち直しの手間が小さい
- 注文の前に、現場の確認や仕様の相談が要る(話しながら決まる注文が多い)
- 取引先にパソコンやインターネットの環境がない、または使える人が限られている
- 切り替えをはっきり断られた、または今のやり方を取引の条件として求められている
中小企業庁の報告書は、流通のボランタリーチェーンについて、パソコンやWi-Fiの環境が整っていない店舗があることや、商品を見てから仕入れを決める営業のやり方があることを挙げ、すべての事業者に同じ内容のデジタル化を進めるのではなく、取引のやり方やデジタルの環境、ニーズを踏まえて進め方を考える必要がある、としています(p.55)。
残すと決めた取引先には、FAXの側を軽くする手当てをします。その取引先がよく頼む品目と自社の品番をあらかじめ印刷した、FAX用の注文書を渡しておくと、読み違いが減り、品番の対応にも迷いにくくなります。Webへの切り替えより小さなお願いなので、頼みやすい手当てです。残した取引先の一覧は、半年に一度など時期を決めて見直し、件数が増えた取引先には改めて切り替えを相談します。
取引先ごとに、Webを頼むか、FAX・電話のまま受けるかを決める
早めにWebを頼む
件数の多い取引先から
- 注文の件数が多い(減る手間は、件数と明細の行数でほぼ決まる)
- すでにメールに添付したExcelで注文してくる
- 同じ品目を繰り返し注文する
- 確かめの連絡や、打ち直しの誤りが多い
FAX・電話のまま受ける(目安)
先に決めて、台帳の入口の列に書く
- 注文が月に数件で、打ち直しの手間が小さい
- 注文の前に、現場の確認や仕様の相談が要る
- パソコンやインターネットの環境がない、または使える人が限られている
- 切り替えをはっきり断られた、または今のやり方を取引の条件として求められている
頼むときは、取引先の側の得を先に用意し、FAXや電話での注文もこれまでどおり受けることを添える
残した取引先には、よく頼む品目と自社の品番を印刷したFAX用の注文書を渡し、時期を決めて見直す
当社の整理
並行期間に数えること:入口別の件数、打ち直しの時間、誤りの件数
新しい一覧と今のやり方を並べて動かす期間は、数字が合うかを確かめる期間であると同時に、次の手を決める材料を集める期間です。状態が変わった時刻を一覧に残しておけば、多くの数字は後から一覧を集計するだけで出ます。
並行期間に数えること
入口別の件数
週ごと・取引先ごとに、入口の列で集計する
使いみち:次にWebを頼む取引先の順番、FAXを残す取引先の見直し
打ち直しの時間
受付から確認までの時間を入口ごとに比べる。何件かは、入力にかかった時間を実際に測る
使いみち:入口ごとの手間の差を、件数と掛け合わせて比べる
誤りの件数
確認の後で直した件数を、直した項目(品目・数量・単位・納期・単価)と、見つかった段階(確認・出荷・請求・取引先からの指摘)に分けて数える
使いみち:誤りが出る入口・取引先・項目を見つけ、対応表やFAX用の注文書で手当てする
取引先への確かめの連絡
確かめるために取引先へ連絡した回数を、注文ごとに数える
使いみち:手間のかかっている取引先を見つける
締めに遅れた件数
受付日時が締めの前なのに、出荷が翌日以降になった件数
使いみち:締め時刻の運用と、受付の人手の配り方を見直す
比べる相手切り替える前の数字
同じ項目を、切り替える前の今のやり方でも1〜2週間数えておく
前の数字がないと、打ち直しが減ったのか、たまたま注文が少なかったのかが分からない
当社の整理
同じ項目を、切り替える前の今のやり方でも1〜2週間数えておくと、並行期間の数字と比べられます。前の数字がないまま始めると、打ち直しが減ったのか、たまたま注文が少なかったのかが分かりません。
入口別の件数からWebの割合だけを追うと、誤りや確かめの連絡が減ったかどうかを見落とします。Webに移った取引先ごとに、移る前と後で誤りと連絡の回数がどう変わったかも並べて見ます。
よくある質問
取引先が指定する発注サイトから来る注文も、同じ一覧に入れられますか?
入口の一つとして扱えます。取引先ごとに違う受発注の仕組みを使い分ける負担は、中小企業庁の報告書でも「多画面問題」として取り上げられています。取引先のサイトから注文をファイルで取り出せるかを確かめ、取り出せれば一覧に取り込み、取り出せなければ受付の担当が一覧に入力します。入口の列に「取引先の発注サイト」と残しておけば、件数と手間をほかの入口と並べて比べられます。取引先とEDIでつなぐ話が出たときは、中小企業庁が中小企業の受発注を電子化するための仕様として策定した中小企業共通EDIも確かめておくとよいでしょう。
FAXを紙に出さず、データのまま受けるときに気をつけることはありますか?
国税庁の電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係、令和8年7月)は、ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を使った取引や、メールに添付して届く取引を「電子取引」の例に挙げ、注文書も対象の書類に含めています(問2)。受け取ったデータは、受け取った側でのタイムスタンプの付与や、事務処理規程に沿った管理などの措置を取ったうえで、税法で決まった保存期間が終わるまで保存するよう求められています(問5)。要件を満たせない相当の理由がある場合の猶予措置もありますが、その場合も紙に印刷したものだけを残すのでは足りず、データそのものを保存しておく必要があります(問89)。受注一覧に打ち込んだデータとは別に、受信したデータそのものを残し、保存のしかたは経理の担当者や顧問の税理士と決めておきます。自社のWebの注文画面で受けた注文も、サイトを通じた取引として電子取引の例に含まれています(問2)。
受注一覧は、共有のExcelではいけませんか?
注文の件数が少なく、入力する人が限られているうちは、共有のExcelに入口・受付日時・状態の列を足すところから始めても構いません。この記事の考え方は道具を問いません。ただ、何人もが同時に入力する、注文ごとにFAXの画像を付けて残す、状態が変わった時刻を自動で残す、在庫の引き当てや請求データにつなぐ、といったことが要るようになると、Excelの上で仕組みを足す手間が大きくなります。そのころが、受注一覧を業務システムに移すかどうかを考える時期です。
一覧を先にそろえ、移ってもらう取引先は数えて決める
FAXで注文してくる取引先に合わせることと、社内の受注を一つにまとめることは両立します。先に受注一覧と状態の呼び方をそろえ、入口ごとの件数を数えながら、Webに移ってもらう取引先を1社ずつ増やしていけば、取引先に無理を頼まずに、打ち直しと誤りを減らしていけます。
Aurant Technologiesでは、FAX・電話・Webの注文を同じ受注一覧に集め、在庫の引き当てから請求データまでをつなぐ仕組みを、取引先ごとの入口や締め時刻の整理から一緒に組み立てています。既製のサービスで足りる業務にはそちらをお勧めし、合わない部分だけを専用のWebアプリとして作ります。進め方と、費用が決まる要素は受発注・在庫管理システムの開発のページにまとめています(費用は、業務の内容を伺ったうえでお見積りします)。
LINE運用・伴走支援
LINE公式アカウントの友だち獲得の設計、セグメント配信・ステップ配信・リッチメニューの構築、自動応答、CRM/MAや基幹データとの連携までを支援します。