医療業界DXの実践戦略:電子カルテHOPE/Forest/MegaOakからの移行と医療データ活用

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医療機関のシステム刷新は、5〜7年ごとにやってくる電子カルテの更新を軸に動きます。問題は、更新が単なるバージョンアップで済むことは少なく、ベンダーそのものを乗り換える「ベンダー変更」になりがちな点です。データ形式が各社固有のため、過去の診療データをどう引き継ぐか、現場の運用とオーダー入力をどう切り替えるかで、プロジェクトの成否が決まります。本記事では、富士通HOPE・NEC MegaOak といった主要電子カルテの位置づけ、クラウド移行で必ず参照すべき「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」、HL7 FHIR を中心とした標準化と地域連携、オンライン診療・医療AIの実装を整理します。

電子カルテ刷新が「ベンダー変更」になると何が起きるか

電子カルテの更新で最も重いのは、同じベンダーの新版に上げる場合ではなく、別ベンダーへ移る場合です。実際に、NEC の MegaOak-NEMR から富士通の HOPE/EGMAIN-GX へ移行した大学病院の事例が学会で報告されているように、ベンダー変更は移行プロジェクトとして相応の負荷を伴います。具体的には、

  • 過去データの移行範囲を決める:全診療科の全期間を移すのか、直近数年+PDFアーカイブにするのか。テキスト・オーダー・画像参照・文書を一律には移せません。
  • オーダーと部門システムの再連携:検査・放射線・薬剤・給食など部門システムとのインターフェースを作り直す必要があります。
  • 現場の運用切替と再教育:医師・看護師の操作が変わるため、稼働直後の生産性低下を見込んだ移行計画が要ります。

「新しいカルテのほうが画面がきれい」だけで選ぶと、この移行コストに足をすくわれます。更新を機にベンダーを変えるかどうかは、現行ベンダーの保守継続性・部門システム資産・移行費用を並べて判断するのが現実的です。

主要ベンダーの位置づけ(病院規模で分かれる)

電子カルテは「どれが優れているか」より「自院の規模と既存資産に合うか」で選びます。代表的な製品を規模軸で整理します。

区分 製品 提供元 主な対象
大病院・基幹 HOPE/EGMAIN・HOPE LifeMark シリーズ 富士通 大学病院・急性期の中核病院
大病院・基幹 MegaOak シリーズ NEC 急性期・基幹病院
中堅病院 各社中堅向けパッケージ 富士通・NEC・ソフトウェア・サービス 等 200〜400床規模
クリニック・診療所 CLIUS・Medicom・Qualis 等 各社 外来中心の小規模医療機関
オンライン診療 CLINICS・curon・YaDoc メドレー・MICIN・インテグリティ・ヘルスケア 非対面診療・慢性期フォロー

大病院の刷新は富士通HOPEとNEC MegaOakが二強で、ここに部門システムの連携が絡みます。一方クリニックは別系統の小規模パッケージやクラウド型が中心で、オンライン診療プラットフォームと組み合わせる形が増えています。規模が違えば検討すべき製品群そのものが変わる、という前提を外さないことが大切です。

クラウド電子カルテと「安全管理ガイドライン第6.0版」

クラウド型電子カルテを検討するなら、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の最新版(第6.0版・令和5年5月)への準拠が出発点です。従来「3省2ガイドライン」と呼ばれてきた枠組みは整理が進み、医療機関側が参照すべき要件はこのガイドラインに集約されています。

近年はランサムウェアによる病院システムの停止事例が相次いだこともあり、ガイドラインはバックアップの世代管理・ネットワーク分離・認証の強化といった実務的な対策に踏み込んでいます。クラウド事業者(AWS・Azure・GCP)の利用自体は否定されていませんが、責任分界点(どこまでが事業者の責任で、どこからが医療機関の運用責任か)を契約と運用設計で明確にすることが求められます。「クラウドだから安全」でも「クラウドだから危険」でもなく、ガイドラインの要件をどう満たすかという設計の問題です。

HL7 FHIR・SS-MIX2 と地域医療連携

医療データの標準化は、施設内の電子カルテ更新だけでなく、施設をまたいだ連携のために重要性を増しています。従来からの SS-MIX2(標準化ストレージ)に加え、HL7 FHIR(RESTベースの新しい交換規格)への対応が、新規システム選定での事実上の要件になりつつあります。

国の「電子カルテ情報共有サービス」など、医療機関の間で診療情報を共有する仕組みも段階的に動き始めています。自院のデータが標準形式で外に出せる状態か(ベンダー固有形式に閉じ込められていないか)は、将来の地域連携・データ活用の自由度を大きく左右します。電子カルテを選ぶ段階で、FHIR API の提供有無とデータのエクスポート性を確認しておくと、後の選択肢が広がります。

オンライン診療・医療AIをどこから入れるか

オンライン診療は、CLINICS(メドレー)が院内システム・電子カルテとの連携に強く、curon(MICIN)は予約・決済まわり、YaDoc は慢性疾患のフォローに特徴があります。診療科と運用(初診をどう扱うか、対面とどう併用するか)に合わせて選ぶのが基本です。

医療AIは、画像診断の補助やドキュメント作成支援から実用が進んでいます。画像診断補助などの一部にはプログラム医療機器として保険上の評価が設けられているものもありますが、対象や算定要件は診療報酬改定ごとに変わるため、導入前に最新の改定内容を確認することをおすすめします。まずは現場の負担が大きく効果が見えやすい領域(読影補助・文書作成・問診の事前整理)から小さく始め、効果を確認しながら広げるのが堅実です。

現場でよく出る疑問

電子カルテのクラウド移行は安全管理ガイドライン的に問題ない?

クラウド利用そのものは第6.0版でも否定されていません。重要なのは、事業者と医療機関の責任分界点を明確にし、バックアップ世代管理・ネットワーク分離・認証強化といった要件を満たす運用を設計することです。クラウドだから自動的に安全になるわけではなく、要件を満たす構成にできているかが評価軸です。

いま電子カルテを選ぶなら FHIR 対応は必須ですか?

将来の地域連携やデータ活用を考えるなら、FHIR API の提供とデータのエクスポート性は確認すべき要件です。ベンダー固有形式にデータが閉じ込められると、次の更新や連携で再びベンダー変更の重い移行が発生します。標準形式で外に出せる状態を保てるかが、長期的な選択肢の広さを決めます。

医療AIは導入したらすぐ保険で回収できますか?

一部のプログラム医療機器には保険上の評価が設けられていますが、対象・算定要件は診療報酬改定で変わるため「導入=即回収」とは限りません。まずは保険算定を前提にせず、読影補助や文書作成など現場の工数削減効果が明確な領域から始め、効果を測りながら広げるのが安全です。

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参考:Aurant Technologies 実プロジェクトのLooker Studio実装

診療科別・部門別の収支や資金の動きを可視化する際の参考として、Aurant Technologies が支援した実案件で構築した Looker Studio ダッシュボードの一例です。数値・施設名・部門名はマスキングしていますが、実際に運用されている可視化です。

Aurant Technologies 実プロジェクトの経営ダッシュボード(勘定科目別×部門別資金分析・Looker Studio実装、数値マスキング済)
勘定科目別×部門別の資金分析ダッシュボード(Looker Studio実装、数値マスキング済)

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上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

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