【完全ガイド】富士通 GLOVIA から他社ERPへの移行:SAP S/4HANA・Oracle Fusion・Dynamics 365・NetSuite・Inforを徹底比較

富士通 GLOVIA SUMMIT/G2/smart/iZ から他社クラウドERPへの乗り換えを徹底解説。GLOVIA on Azure継続 vs SAP S/4HANA・Oracle Fusion・Dynamics 365・NetSuite・Infor LN の比較、移行コスト・期間目安、失敗回避策。

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本記事は、富士通 GLOVIA(GLOVIA iZ/GLOVIA smart/GLOVIA enterprise/GLOVIA きらら)を10年以上、製造業の生産・販売・原価の中核として動かしてきた中堅〜中堅大規模(売上300億〜3,000億円規模)企業で、「次の3〜5年で GLOVIA をどうするか」を経営に答える情シス部長と経営企画を読者として書きました。富士通の Modernization 500-Person Master Plan を背景に、GLOVIA 系列の継続性と、S/4HANA/Dynamics 365 F&O/OBIC7/NetSuite の現実的比較、BOM・原価データ移行で必ず詰まる地雷を整理します。

他ERPへの移行を含む全体像はERP移行 完全ガイドを参照してください。

【2026年最新】「GLOVIA サポート終了・撤退」の実際 ― GLOVIA One への統合とは

「GLOVIA サポート終了」「富士通 GLOVIA 撤退」で調べている方がまず押さえるべきは、これは単純な撤退ではなく、新しいクラウドERP「GLOVIA One」への統合・再編だという点です。ここを取り違えると、移行の判断軸を誤ります。

富士通は2026年4月22日より、これまで規模別に分かれていた「GLOVIA SUMMIT」「GLOVIA iZ」「GLOVIA きらら」のラインナップを、クラウドERP「GLOVIA One」へ統合し順次提供を開始しました。会計・人事給与・販売・生産の4領域をカバーし、主な対象は年商約30億〜1,000億円の中堅企業です。マルチテナントのクラウド、API連携を前提としたコンポーザブル構成、AIエージェントの標準搭載が特徴で、業務ルール・設計思想・設定手順を標準化・言語化した点が大きな方向転換です。つまり「アドオンを積み上げて自社に合わせる」従来型から、「標準に業務を寄せる」思想へ舵を切っています。

従来の規模別ラインナップ 2026年4月22日以降
GLOVIA SUMMIT(大企業向け) GLOVIA One へ統合
(クラウド・コンポーザブル・AIエージェント標準搭載)
GLOVIA iZ(中堅向け)
GLOVIA きらら(中小向け)

したがって現行 GLOVIA を使い続けている企業が本当に直面するのは「サポートが切れて使えなくなる」ではなく、「GLOVIA One に載せ替えるか、この機会に他社ERPへ移行するか」という選択です。GLOVIA One も新しいクラウド基盤への”再実装”である以上、どちらを選んでも一定規模の移行プロジェクトは避けられません。だからこそ「富士通に残る」を自動的な前提にせず、他社ERPも含めて一度フラットに比較する価値があります。

なお、GLOVIA iZ/smart/enterprise/会計 など現行製品ごとの具体的な販売終了日・保守期限は、エディションや契約内容によって異なります。自社の保守期限は、富士通(富士通Japan)のサポート窓口や契約書で必ずご確認ください。本記事では、この「載せ替え or 他社移行」を判断するための比較材料を、移行実務の目線で整理していきます。

1. 「GLOVIA はまだ動くのに動かす議論が出る」5つの理由

GLOVIA は 富士通 および GLOVIA 株式会社(旧富士通グループ)が継続提供しており、GLOVIA iZ/smart/enterprise の各系列は機能・サポートに大きな問題があるわけではありません。それでも次の3〜5年で動く議論が出る理由は次の5つ。

富士通の Modernization Plan。汎用機・専用機系のロードマップとあわせて、ユーザー企業に「中長期の選択肢」を提示する動きが続いています。GLOVIAも例外ではなく、ユーザー側で次の選択肢を準備する必要が出てきます。
IFRS/J-IFRS と連結基盤統合。GLOVIA を中核にしてきた製造業でも、グループ連結を SAP/Oracle 系に寄せる動きが出ています。
グローバル拠点との統合。海外拠点が SAP/Oracle/Dynamics を使っているケースが多く、本社GLOVIA との二重管理が負担になっています。
製造現場の MES/IoT/PLM 連携の刷新。GLOVIA 単独ではなく、現場系システムとの統合が経営課題になっています。
世代交代する社内SE と保守ベンダー。GLOVIA を熟知する世代が定年退職を迎え、改修コストが上がっています。

2. GLOVIA 系列の整理(自社のシステムがどれかを確認)

「GLOVIA」は単一製品ではなく、複数製品の総称です。次の5系列を自社で確認しないと、移行議論がかみ合いません。

系列 ターゲット 主な業務領域 後継ロードマップ
GLOVIA iZ 中堅製造業 生産・販売・会計・原価 iZ 継続+クラウド版展開
GLOVIA smart 中堅製造業(業種別テンプレ) 業種別生産管理 smart 継続
GLOVIA enterprise 大企業向け エンタープライズERP S/4HANA との併用提案も
GLOVIA きらら 会計・販売単体 会計・販売管理 きらら 継続+クラウド
GLOVIA G2 過去のレガシー 事実上の延命

「自社が iZ/smart/enterprise/きらら のどれを使っているか」「クラウド版(iZ クラウド等)が用意されているか」「いつまで保守が続く設定か」を、まず富士通/GLOVIA 担当に文書で確認します。

3. 三択の整理:GLOVIA系列継続/S/4HANA等に動く/部分置換

選択肢 向いている状況 3年で必要な投資 主なリスク
A. GLOVIA iZ/smart のクラウド版に切替 業務に大きな変更不要/オンプレ更改負担を消したい 移行費 5,000万〜1.5億円 クラウド版の機能差・帳票差を要確認
B. S/4HANA/D365 F&O/OBIC7 等に全面移行 グループ統合・IFRS・グローバル展開が必須 初年度〜2年目で 5〜20億円 業務再設計の合意形成と移行プロジェクトの炎上
C. 部分置換(会計だけ・人事だけ・販売だけ) 生産管理は GLOVIA で残し、周辺領域だけクラウド化 領域ごとに 2,000万〜1億円 連携I/Fの維持コストが残る

製造業で「生産管理を動かすコストが圧倒的に大きい」ため、Cの「生産管理は GLOVIA 継続+会計・人事だけ他社SaaS」というハイブリッド構成は、現実解として有力です。

4. 移行先候補の本音比較(製造業中堅向け)

候補 強み 注意点
SAP S/4HANA 製造業の世界標準(PP/PP-PI/QM/PM/CO-PC)/海外拠点との統合 SI費が大規模/カスタム抑制の規律が必須
Microsoft Dynamics 365 F&O 離散・プロセス両対応/Power Platform 統合/中堅向け価格帯 日本の製造業特有要件(複雑BOM・原価)で要件確認
OBIC7(クラウド) 日本制度・販売・会計・人事の統合/中堅製造業の実績 製造領域は GLOVIA/mcframe 比でやや薄め
Oracle NetSuite SaaS純度・グローバル・多通貨 製造業の細かい要件はカスタムで対応
Infor CloudSuite Industrial 製造業特化・離散製造の標準テンプレ 日本SI/パートナー網が薄い
mcframe X(クラウド) 日本の製造業向け原価・BOMの厚み 「乗り換え」というより「並列の選択肢」

「全部 SAP S/4HANA」が必ずしも正解ではありません。中堅製造で売上500〜1,000億円規模なら、D365 F&O / OBIC7 / mcframe X の方がROIに合うことが多いです。

5. BOM 移行の地雷:これが工数の半分を持っていく

製造業ERP移行で最も時間が溶けるのはBOM(部品表)移行です。GLOVIA で10年以上育ててきたBOM構造を、新ERPのデータモデルに落とすときに必ず詰まる論点を挙げます。

多階層BOMの最大階層数:GLOVIA 時代に7〜10階層まで深くなっているケースが多く、新ERPの推奨階層(5〜7)に再設計するか、そのまま持ち込むかの判断が必要。
設計BOM(E-BOM)と製造BOM(M-BOM)の分離:GLOVIAでは1つのBOMで両方を表現していることが多く、PLM(Windchill/ENOVIA/Teamcenter)導入時はこの分離が前提になります。
代替部品・等価部品:GLOVIA固有の代替ロジックを、新ERPの「Substitute Component」機能で再現できるか確認。
有効期限・期間別BOM:「いつからいつまでこのBOMが有効」のロジック差。
工程と部品の紐付け(Routing-BOM 連携):投入工程・払出工程・歩留まり率の表現方式。

BOM 移行は「データ変換ツール」ではなく「業務側の判断」で工数が決まります。設計部門・生産技術・調達部門の3部門合意が必要で、情シス単独では進みません。

6. 原価計算ロジックの再設計

GLOVIA の強みは原価計算の柔軟性で、標準原価/実際原価/工程別/配賦ルールを細かく作り込んできた企業が大半です。S/4HANA の CO-PC や D365 F&O のCost Management は世界標準ロジックで動くため、GLOVIA時代のロジックをそのまま再現するのではなく、世界標準+差分で再設計するのが定石です。

具体的に再設計が必要な論点:
原価計算実行のタイミング(日次/月次/随時)
配賦階層(部門→製品/工程→製品/間接費の配賦キー)
標準原価の改定サイクル(年次/半期/月次)
差異分析(材料費差異/労務費差異/製造間接費差異)
仕掛品評価(投入時/月末/工程完了時)

原価ロジックを「全部再現」しようとすると、SI費が2〜3倍に膨れます。「GLOVIA時代のどのロジックは廃止できるか」を経理・工場経理が決断する必要があります。

GLOVIA からの移行、選択肢が多すぎて迷っていませんか比較軸の整理から始めませんか?Aurant のシステム統合支援は、SaaS・基幹・Excelに分散したデータの統合基盤づくりから、段階的な基幹刷新までを一貫して支援します。✓ データ統合基盤の構築✓ 段階刷新のロードマップ✓ SaaS連携の設計・実装システム統合支援を見る →つなぐものと変えるものを分ける分散SaaS統合基盤基幹刷新統合基盤・段階刷新・連携

7. MES/PLM/IoT との接続設計

現代の製造業ERP移行は、MES/PLM/IoT との接続が必須要件です。GLOVIA時代は「ERPの中で全部やる」が成立しましたが、現代はERP・MES・PLMの役割分担が明確化しています。

PLMWindchillENOVIA/Teamcenter)から E-BOM がERPに渡る I/F
MES(製造実行システム)に作業指示が降り、実績がERPに戻る I/F
IoT(設備データ・トレーサビリティ)の収集と原価計算への取り込み

これらのI/Fを移行プロジェクトの要件定義段階で凍結しないと、後工程で「PLMから渡ってくるBOMの構造が違う」「MESの実績粒度が違う」が頻発します。

8. プロジェクト期間の典型値(製造業・売上1,000億規模)

選択肢 要件定義 構築・データ移行 並行稼働 合計
GLOVIA iZ クラウド切替 3〜4カ月 6〜8カ月 2〜3カ月 12〜15カ月
S/4HANA 移行 6カ月 12〜15カ月 3カ月 24〜30カ月
D365 F&O / OBIC7 移行 4〜6カ月 10〜12カ月 3カ月 18〜24カ月
部分置換(会計+人事のみ) 2カ月 4〜6カ月 2カ月 9〜12カ月

9. 3年TCOの実数試算(売上1,000億・従業員1,000名規模)

項目 GLOVIA 据え置き iZ クラウド切替 S/4HANA 移行
ライセンス/サブスク 年間保守 数千万円 サブスク 5,000万〜1億円/年 サブスク 1〜2億円/年(規模次第)
サーバー/インフラ 5年に1回 1〜2億円 不要 不要
運用人件費 属人化リスクあり 数千万円/年 同等 初年度後逓減
移行プロジェクト 5,000万〜1.5億円 5〜20億円(カスタム量で振れる)
3年合計の方向感 2〜3億円 2〜3億円+初期費 10〜25億円(初年度集中)

注意:これは目安レンジで、グループ会社数・カスタム量で大きく振れます。経営への提示は必ず複数SI/ベンダーから取得した実見積を使ってください。

10. 失敗事例から逆算する「やってはいけない3つ」

BOM を「全件そのまま」移行する計画で予算化。実装フェーズで「使われていないBOM」「廃止製品」「重複定義」が大量発覚し、再仕分けで6〜12カ月の遅延。
原価ロジックを GLOVIA 時代のまま新ERPで全再現。S/4HANA の CO-PC を諦めてアドオンで再現した結果、保守不能のブラックボックスが新ERPに復活。
海外拠点を要件定義に巻き込まず、本社だけで決定。本社GLOVIA の業務を新ERPに乗せた後、海外展開フェーズで現地業務とのギャップが発覚し、テンプレート再設計で1年以上の追加工事。

11. 来期予算化までに、いま動かす3アクション

① BOM・原価マスタの現状棚卸しを設計・生産技術・経理の3部門合同で開始する。「使われているBOM/いないBOM」の判定だけで、移行費の見積もり精度が大きく上がる。
② GLOVIA/富士通/第三者SI の3社からアセスメント提案を取る。GLOVIA継続案・iZ クラウド切替案・S/4HANA/D365 F&O 移行案の3案を、同じ前提条件で比較する。
③ 海外拠点のERP状況棚卸しを経営企画と一緒に開始する。本社移行の意思決定前に、グローバルテンプレートの方向性を握っておく。

GLOVIA の今後3〜5年は、「動かすか・据え置くか・部分置換するか」を根拠付きで経営に提示できる状態を作ることがゴールです。BOM・原価という「製造業の急所」をどこで動かすかを軸に、三択を整理することが成否を決めます。


GLOVIA からの移行を検討するなら、移行全体の型やレガシー刷新の考え方も参照してください。ERP 移行の詳細パターンは ERP 移行の詳細(日本企業の典型パターン)、レガシー ERP の刷新は レガシー ERP 刷新ガイド が参考になります。

GLOVIA One そのものの機能・対象企業・特徴を詳しく知りたい方は 富士通 GLOVIA One 完全ガイド もあわせてご覧ください。

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上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

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