訴求は顧客の悩みから決める|公開の調査を集め、応えられるか・他社・裏づけで仕分ける
製品ページの訴求を強みから書かず、公開の調査と当事者の言葉から顧客の悩みを集め、「自社が応えられるか」「他社のページが書いているか」「裏づけの数字は誰が出したか」の3つの札で仕分けて、見出しの軸にする悩みと前に出さない悩みを決める進め方です。載せてよい数字と載せない数字の分け方も示します。
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たとえば、新しい製品ページの打ち合わせで、ホワイトボードに強みを並べる。「かんたんに使える」「作業が早く終わる」「すぐ始められる」。見出しはこの3つのどれかにしよう、と決めかけたところで、念のため同じ分野の他社のページを開くと、どのページにも似た言葉が並んでいる――。
強みから書き始めると、同じ分野の他社のページと同じ言葉に行き着くことがあります。顧客の悩みのほうから並べ直すと、自社が応えられるのに、まだ他社が見出しにしていない悩みが見つかることがあります。ただし、悩みを思いつくままに書き出すと、自社に都合のよい悩みばかりが残ります。
当社は、マーケティングとデータの活用を支援している会社で、自社でも業務向けの製品を売っています。2026年10月、経理の担当者向けの当社の製品のページの案を組み直す前に、悩みを公開の調査から集め、他社の製品ページの書き方と見比べました。この記事の手順は、そのときのやり方に近いものです。手順は別の題材のデモで追い、当社の経理の例は、軸を決めた場面と、数字を見直した場面の2か所で書きます。
この記事で書くのは、顧客の悩みを公開の調査と当事者の言葉から集め、悩みごとに「自社が応えられるか」「他社のページが書いているか」「裏づけの数字は誰が出したか」の3つの札を付けてから、訴求を決める進め方です。応えられて、他社がほとんど書いていない悩みを空きとして取り出し、そこに共通する原因を見出しの軸にします。最後にできあがる図は、次のようなものです。
地図は、横が自社が応えられるか、縦が他社のページが書いているかで、丸の番号は悩みの番号です。丸が黒く塗られているのは公的統計や業界団体の調査で裏づけがある悩み、白抜きは製品会社の調査だけの悩み、点線は数字の裏づけが無い悩みです。図の会社では、冒頭のような強みから書いた見出し(作業が早く終わる)は、左上の「応えられて、多くが書いている」マスに入ります。決める訴求は、地図の位置から決めた扱いです。
決めるのは、見出しの軸にする悩み1つと、前に出さない悩み
この進め方で決めたいのは、ページの見出しの軸にする悩みを1つと、ページで前に出さない悩みです。軸を1つに絞るのは、悩みを並べた見出しでは、どの人に向けたページかがぼやけやすいからです。前に出さない悩みを先に決めておくのは、応えられない悩みに触れた見出しが、ページで果たせない約束になるからです。
その間にある悩みは、本文の場面に入れるか、機能の説明に入れるかに分けます。進め方は次の7つの段で、このあとの節もこの順に書きます。
悩みは、公開の調査と当事者の言葉から集め、言い方を原文のまま写す
集める先は3つあります。1つめは、官庁の統計や白書、商工会議所のような経済団体や業界団体の調査です。読み手の職種や業種を対象にした設問を探します。2つめは、製品やサービスを売っている会社が出した調査の発表です。数字の扱いには注意が要りますが、選択肢の文言は、当事者がその悩みをどう言うかの材料になります。3つめは、調査の自由記述、質問サイトや相談の掲示板の書き込みです。自社の商談の記録があれば、そこからも拾えます(商談からお客さんの言葉を集める進め方は別の記事に書きました)。
集めるときは、悩み1件につき1行で、次の5つを書き写します。悩みを一言で、当事者の言い方(出典の文字列のまま)、どんな場面で起きるか、裏づけの数字、その数字を出したのは誰で、いつ、誰に聞いたか。言い方を要約してしまうと、あとで見出しの言葉を選ぶときに材料がなくなります。数字を書くときは、調査した会社と対象と時期を、数字と同じ行に残します。
言い方が違っても原因が同じものは、1つの群にまとめる
集めた悩みは、言い方が違っても原因が同じものを1つの群にまとめます。図の会社なら、「作り方が店長しか分からない」「希望の通り方で不満が出る」「割り当ての理由を説明できない」は、どれもシフトの決め方が店長の頭の中にしか無いことから来ているので、同じ群です。5群前後にしておくと、あとで地図を見たとき、空きがどの群に偏っているか、群をまたいで同じ原因が出ていないかが読めます。
3つの札は、付け方の決まりを先に書いてから付ける
札は、悩みを1件ずつ見ながら付けます。付け方の決まりを先に書いておかないと、自社に都合のよい側に寄ります。図の会社では、次のように決めました。
- 自社が応えられるか:応えられる、一部だけ、応えられない、の3つ。「一部だけ」を付けたときは、どこまで応えるかを同じ行に書きます(例:急な欠勤の穴なら「呼びかけを一斉に送る分だけ。来てくれるかは別」)。範囲が書けないなら、「応えられない」に寄せます。
- 他社のページが書いているか:比べるページを先に決めます。たとえば狙う検索語で上位に出る同じ分野の製品ページを10前後。悩みごとに、そのページが見出しか本文の冒頭で、その悩みを悩みとして書いているかを見て、多くが書いている、一部が書いている、ほとんど書いていない、の3つにします。機能の一覧に入っているだけなら、書いていない側に数えます。
- 裏づけの強さ:数字を出したのが誰かで決めます。官庁の統計と、経済団体・業界団体の調査は「強い」、製品やサービスを売る会社の調査は「中」、数字が無く当事者の言葉だけのものと、社内の見立てだけのものは「数字なし」です。
裏づけの札で手が止まるのは、強い側の数字にも条件が付いているときです。当社が経理のページで調べた数字の1つに、日本・東京商工会議所の調査があります。2025年6月23日から7月31日に、各地の商工会議所の会員企業2,710者が回答したもので、売上高5千万円超〜1億円以下の事業者(262者)では、40.1%が経理事務を1人で行っていました。回答した2,710者全体では52.4%が個人事業主で、この売上帯だけの内訳は資料にありません。札は「強い」のままにして、使うときは「商工会議所の会員企業への調査」「2025年6〜7月」を同じ文に添える、と条件の列に書きます。
札を付け終えた表が、次の画面です。
①の範囲が書けているか、②の条件が数字と同じ行にあるかを、地図にする前に確かめます。③の列は、次の節で地図から決めたあとに埋めます。
地図で空きを取り出し、そこに共通する原因を見出しの軸にする
札を付けたら、横に「自社が応えられるか」、縦に「他社のページが書いているか」を取り、悩みを9つのマスに置きます。丸の塗りで裏づけの強さを分けます。冒頭の図がそれです。空きは、応えられて、他社がほとんど書いていないマスです。扱いは、マスの位置で次のように決めます。
- 空きのマスに入った悩みを並べ、共通する原因を1つの言葉にして、見出しの軸にする。同じ群に悩みが集まっていれば、その群の原因が手がかりになる。群をまたいで同じ原因が出ていれば、そちらを取る。共通する原因が言えないときは、裏づけが強く、毎月のように起きる悩みを1つ選ぶ。
- 見出しの言葉は、空きの悩みの当事者の言い方から取る。
- 一部だけ応えられて、他社がほとんど書いていない悩みは、本文の場面に入れる。範囲を同じ文に書く。
- 他社も書いている悩みは、機能の説明に入れるが、見出しにはしない。他社と同じ言い方もしない。
- 応えられない悩みは、前に出さない。
冒頭の図では、空きに5件が入りました。7・8・9は同じ群(決め方が店長の頭の中にある)で、18(扶養の範囲を超えそうな人に気づけない)と29(辞めた人の連絡先が店長の電話に残る)は別の群です。それでも5件は、「シフトや手続きに関わることが、店長ひとりに残っている」という原因でつながります。18は、扶養の範囲を確かめる役が店長しかいないことから来ています。そこで軸をこの原因にし、見出しの言葉は悩み7の当事者の言い方から取って、「『店長が休むとシフトが作れない』を、なくす」とします。裏づけの強い7と18は対象と時期を添えて数字を見出しの近くに置き、数字の無い8と29は言い方を本文の場面に、製品会社の調査だけの9は注に回します。見出しの言葉に入らない18と29も、本文の場面で受けます。この並びはデモのために置いたもので、シフトの分野で一般にこうなるという話ではありません。
同じ図で、冒頭の「作業が早く終わる」は、左上のマスの悩み1(シフト表を作るのに毎月何時間もかかる)の裏返しです。応えられる悩みですが、多くの他社が書いているので、ここを見出しにすると他社のページと見分けがつきません。強みから決めた見出しが、地図ではどこに落ちるかを先に確かめておくと、打ち合わせで同じ案が出たときに戻れます。
当社の経理の例で軸を決めたときも、件数ではなく、群をまたいで共通する原因から取りました。集めた悩みは、月末に偏る作業、締めの遅さ、人の手当て、記帳を外に頼っていること、自動化を入れたあとの確認と、表面はばらばらでした。並べて読み直すと、どの群にも、判断が人によってぶれる、間違っても誰も気づかない、正しいかを確かめる手段が無い、という同じ原因が入っていました。当事者の言葉でも、1人で経理をしている人が、自分が間違えるとそのまま進んでしまうと書き、自動の判定の結果を信用しきれないと答える人がいました。一方、読んだ他社の製品ページの多くは、悩みを「手入力を減らす」「早く終わる」の側で書いていて、判断を会社に残すことや、正しいかを確かめることを悩みとして書いたページは、ほとんどありませんでした。
見直したのは、それまでのページの案が「担当者の引き継ぎ」を軸にしていたことです。引き継ぎは、担当が替わるときに一度起きる話です。確かめる人がいないことは、毎月起きています。当社の製品は、引き継ぎと同じ仕組みでこちらにも応えられます。そこで軸を「仕訳の判断を、会社に残す」へ広げ、1人で経理を回している人や、自動化を入れたのに1件ずつ確かめている人の場面を足しました。月次の締めが早くなることは、応えられるのが記帳の分だけなので、言い切らないと決めました。締めの言葉も、「処理する経理から仕組みを作る経理へ」のような対比は、すでに求人票で使われていて見慣れた型なので避けました。
数字は「条件を添えて使う」と「使わない」の2つの箱に分ける
見出しが決まったら、ページに載せる候補の数字を2つの箱に分けます。条件を添えて使う箱には、誰が、いつ、誰に聞いた数字かが分かり、その条件を同じ文に書けるものを入れます。使わない箱には、次のものを入れます。
- 回答数が小さい、または対象が狭すぎて、ページの読み手と重ならない数字。
- 母集団・定義・期間が違う数字を並べて比べたもの(回答した人が別の2つの調査を並べる、比べる年の取り方で増減が変わる、など)。
- 同じ発表の中で、本文の言い方と図の値が食い違っている数字。
- 直接の競合が出した調査の数字(ページでは使わない。出典を付けた解説記事なら使える、と分けておく)。
- 出典の原文にたどり着けなかった数字。
当社の経理の例で見直したのは、当社自身が前に書いたメモの数字です。人が採れないことの根拠に、求人倍率と資格試験の受験者数の数字を使っていました。一次の統計を開き直すと、求人倍率は、一般事務と比べた差が前に書いたより小さく、倍率そのものも1倍を下回っていました。受験者数は、10年前と比べれば減っていても、底の年からは戻っていました。どちらも比べる期間の取り方で見え方が変わる数字でした。前に書いた言い方は使わない箱に移し、直した値は、条件を添えて使える側に残しました。ほかにも、ある会社の発表で、本文の「約何割」という言い方と図の値が合わなかったものなど、集めた数字の半分以上は使わない側に入りました。箱に分けた理由を1行ずつ残しておくと、あとでページを直す人が同じ数字を拾い直さずに済みます。
条件を添えるのは、読む人が確かめられるようにするためでもあります。消費者庁の長官記者会見(2024年9月26日)では、No.1表示の実態調査について、満足度No.1と表示しながら、商品やサービスの利用経験の有無を確かめずにアンケートを取っていた例など、「表示に見合った調査が行われていないもの」が少なからず見受けられたと述べています。そのうえで、広告主がNo.1表示の根拠となる情報をしっかり確かめる必要性を示し、一般の消費者がその情報を確認できるようにすることが望ましい、とも述べています。No.1表示についての話ですが、調査の数字をページに載せるときも、誰がいつ誰に聞いた数字かを添えておけば、読む人が自分で確かめられます。
見出しを変えたら、変える前の月ごとの幅と、変えていないページの同じ月と比べる
見出しを変えたあとは、そのページからの問い合わせや資料請求が動いたかを見ます。先に、変える前の12か月で、月ごとにどれくらい散らばっていたかを出しておきます。図の会社では、このページからの資料請求は、変える前の12か月で月17件から26件の間でした。何もしなくても、このくらいは動きます。
見出しを変えた月は数えず、翌月から2か月続けて26件を上回ったら、動いたとみます。同じ月に、見出しを変えていない別のページの資料請求も並べます。そのページも、自分の変える前12か月の幅の上を同じ月に超えていれば、季節や広告の動きとみて、見出しの効き目には数えません。1か月だけ上回ったときは、もう1か月待ちます。
この地図が受け持たないこと
地図が示すのは、自社が応えられて、他社がまだ書いていない悩みの場所までです。その悩みを解決するためにお金を払いたい人がどれだけいるかは、公開の調査からは分かりません。当社の経理の例でも、判断を会社に残すことそのものへの需要を聞いた調査は見つからず、裏づけはすべて隣の悩み(担当者による判断のぶれ、確認の負担、1人で経理を回していること)からの推論でした。他社のページも変わるので、読んだ日を表に残し、ページを直すたびに読み直します。当社のページはまだ案の段階で、公開後の変化は測っていません。
表は1枚、地図の9マスはその表を数え直せば出る
画面の表は、悩み1件を1行にした表から作っています。列は、番号、群、悩み、当事者の言い方、自社が応えられるか、その範囲、他社のページ、裏づけの種別、裏づけの強さ、使うときの条件、数字の扱い、決めた扱いです。実際に集めるときは、出典と場面の列も足します。地図の9マスの件数は、「自社が応えられるか」と「他社のページ」の2つの列で行を数え直せば、表計算の集計表で出せます。
まずは、いまの見出しの悩みに3つの札を付けてみる
明日からできるのは、いまのページの見出しに置いている悩みを1つ選び、その悩みに3つの札を付けてみることです。公開の調査を2つ3つ探して裏づけの札を付け、同じ分野の製品ページを10前後開いて他社の札を付けます。見出しの悩みが「多くが書いている」に入ったら、そこから先に悩みを集め直す価値があります。
悩みの集め方から、地図にして訴求を決め、変えたあとの数字を見るところまでは、当社のマーケティングDX支援で一緒に進められます。
アクセス解析・マーケティングデータ支援
GA4とGTMのタグ設計から、フォーム送信・電話タップ・資料DLといったコンバージョンの計測整備、Looker Studioでのダッシュボード化までを一貫して支援します。
