紙の日報をスマホに移すとき、項目は後ろで使う人から決める|既製の日報アプリにするか、原価・勤怠につなぐ仕組みを作るか
紙の日報を電子化するときは、アプリを比べる前に様式を1欄ずつ分け、勤怠・原価・請求・安全の書類で誰が何に使っているかから、残す欄と入力の仕方を決めます。建設業の上限規制と労働時間の把握、工事写真の決まり、元請に出す安全の報告、既製の日報アプリで止まる所、紙と並べる最初の1か月を、法令と厚生労働省・国土交通省の資料で確かめて整理しました。
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この記事の要点
- 紙の日報は、勤怠・原価・請求・安全の記録を1枚で兼ねていることがある。スマホに移す前に、日報から作っている表や書類の列を日報の欄までさかのぼり、欄ごとに誰が・何に・いつまでに・どの形で使うかを書き出す。どこにも出てこない欄は削る候補、法令や取引先が項目を決めている欄は削らない。
- 欄のうち最初に確かめるのは、時刻の欄が勤怠の記録を兼ねているか。建設業にも2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、始業・終業の時刻は原則として現認か客観的な記録で確かめる。現場の作業時間だけを書く日報では、指示された集合・積み込み・移動の時間が落ちることがあるので、出退勤と工事ごとの時間を分けて持つ。
- 既製の日報アプリで止まりやすいのは、工事番号などの一覧を原価の仕組みと合わせる所、1日の時間を勤怠と工事ごとに出し分ける所、取引先や元請の様式で出す所、締めた後の修正。当てはまる部分だけを作るか手作業で残すかを決め、最初の1か月は紙とスマホの集計を行き先ごとに並べて、差の出どころを分ける。
紙の日報の欄を、後ろで使う人ごとに分ける
欄の行き先が分かれば、残す欄・削る欄・入力の仕方が決まる
時刻の欄
勤怠・給与へ
- 出勤・退勤、休憩、時間外
- 使う人:総務・給与の担当
決めること:出退勤を打刻で取るか、日報の時刻のままにするか
作業内容と人数の欄
工事ごとの原価へ
- 工事・作業ごとの時間、協力会社の人数
- 使う人:工事の担当・経理
決めること:工事番号と作業の区分を一覧から選ぶ形にするか
写真と所見の欄
報告書・請求へ
- 発注者に出す写真、点検や完了の報告
- 使う人:現場の責任者・事務
決めること:原本を残す写真と、共有だけの写真を分けるか
安全の欄
元請への報告・安全の記録へ
- その日の人数、新しく入る人、KY
- 使う人:元請・安全の担当
決めること:作業の前に入れる入力を、日報から切り分けるか
どの行き先にも出てこない欄は、削る候補(書いている人にも使い道を聞く)
当社の整理
紙の日報や作業日報を電子化するときは、アプリを比べる前に、今の様式の欄(項目)を1つずつ分けて、その欄を後ろで誰が何に使っているかを確かめます。出勤と退勤の時刻、工事ごとの作業内容と人数、写真と所見、朝礼や危険予知(KY)の記録を1枚の日報に書いてもらい、事務所でそこから勤怠の集計、工事の原価、請求書や報告書、元請に出す安全の書類を作っているなら、その日報は四つの記録を兼ねています。欄ごとの行き先が分かれば、残す欄と削る欄、入力の仕方(一覧から選ぶか、打刻で時刻を取るか、写真で残すか)が決まります。
既製の日報アプリにするか、原価や勤怠の仕組みにつなぐものを作るかも、この行き先で決まります。日報が現場の様子を上司や本社に伝えるための記録なら、既製のアプリで足ります。日報の数字が勤怠や原価、請求にそのまま流れていて、工事番号の一覧や締めの手順をほかの仕組みと合わせる必要があるなら、既製のアプリでは止まる所が出てきます。その部分だけを作るか、手作業で残すかを決めます。
この記事では、欄を行き先までたどる手順から始め、時刻、作業内容と人数、写真と所見、安全の欄の決め方、現場で入力できる条件、既製のアプリで止まる所、紙と並べて確かめる最初の1か月の順に説明します。労働時間と安全の記録、工事写真については、厚生労働省・国土交通省の資料と法令の条文で確かめた範囲だけを書きました(いずれも2026年9月29日確認)。Aurant Technologiesは、kintoneのような業務アプリの基盤で組む方法と、専用のWebアプリを作ってほかの仕組みとつなぐ方法の両方を扱っており、どちらかに寄せずに書いています。
最初に、事務所で作っている表から日報の欄へさかのぼる
欄の使い道は、日報の様式を眺めていても分かりません。日報を受け取った後に、誰が何を作っているかから逆にたどります。先にそろえるのは次の三つです。
- 空の様式と、書かれた日報の1か月分(現場や書く人が違うものを混ぜる)
- 日報から作っている表と書類のすべて(勤怠の集計表、工事ごとの原価の表、請求書の明細や点検の報告書、元請に出す安全の書類など)
- それぞれの表を作っている人と、作る時期(毎日、週ごと、月の締め)
そろえた表の列を一つずつ取り上げ、その値が日報のどの欄から来ているかを線で結びます。途中で人が手を入れている所も書き出します。略して書かれた現場名を工事番号に直す、手書きの人数を協力会社ごとに数え直す、作業内容の文から作業の区分を読み取る、といった作業です。紙の運用では事務所の担当者が黙ってこなしてきた作業で、スマホに移した後は、入力する人がその場で済ませるか、アプリの側で置き換えるかのどちらかが要ります。
欄の行き先を調べる順番
途中で人が読み替えている所(略した現場名を工事番号に直すなど)は、アプリで置き換える作業として書き出す
法令や取引先が項目を決めている記録は、事務所で使っていなくても削らない
当社の整理
表の中には、Excelのマクロで集計していて、作った人がもう社内にいないものもあります。その場合は、マクロが日報のどの値を読み、どう計算しているかを先に書き起こしておくと、線を結ぶ作業が進めやすくなります。書き起こしの手順は作った人がいないExcelマクロの引き継ぎ方にまとめました。
線を結び終えたら、欄ごとに、後ろで使う人、何に使うか、いつまでに要るか、どの形で要るか(時刻、工事番号、人数、写真、文章)を書き、最後に残す・削る・分けるを決めます。次の表は書き方の例です。
| 日報の欄 | 後ろで使う人 | 何に使うか・いつまでに | どの形で要るか | 決めること |
|---|---|---|---|---|
| 始業・終業の時刻 | 総務・給与の担当 | 時間外の集計と給与。毎月の締めまで | 人ごと・日ごとの時刻(休日の分も) | 出退勤を打刻で取るかを決め、日報には工事ごとの時間を残す |
| 現場名・作業内容 | 工事の担当・経理 | 工事ごとの原価。月の締めまで | 工事番号と作業の区分 | 原価と同じ一覧から選ぶ形にし、自由に書く欄は補足にする |
| 人数(自社・協力会社) | 経理・工事の担当 | 労務費と外注費。協力会社の請求を確かめるとき | 自社の人は名前、協力会社は会社ごとの人数 | 自社の人は名前で選び、勤怠の記録と結びつける |
| 写真 | 現場の責任者・事務 | 発注者への報告と請求。出す期限まで | 撮ったままの原本と、どの作業の写真かの印 | 行き先ごとに、撮る写真と画質を決める |
| 所見・特記事項 | 現場の責任者・取引先 | 報告書の文、翌日の申し送り | 文章 | 報告書に載る文と、社内のメモを分ける |
| KY・朝礼・人数の報告 | 元請・社内の安全の担当 | 元請への報告と社内の記録。作業を始める前まで | 元請の様式 | 朝のうちに入れる入力として、日報から切り分ける |
| 天候 | 聞いて探す(工程の担当など) | 雨で作業を止めた日の説明に使うことがある | 一覧から選ぶ | 使う人がいなければ削る候補 |
どの表にも出てこない欄は、削る候補です。ただし、翌日の段取りの申し送りのように、事務所ではなく現場どうしで使われている欄もあるので、書いている人にも使い道を聞いてから決めます。
反対に、法令や取引先が項目を決めている記録は、事務所で使われていなくても削れません。たとえばトラック運送の事業者は、運転者ごとに、氏名、車両の登録番号、業務の開始と終了の地点と日時、主な経過地点と業務に従事した距離、休憩の地点と日時などを記録させ(いわゆる運転日報)、1年間保存することが、貨物自動車運送事業輸送安全規則の第8条で決まっています(e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則」)。発注者が撮り方を決めている工事写真や、元請が様式を決めている安全の報告も、相手の決まりに合わせます。
行き先ごとに分けてみると、欄によって書く時刻が違うことにも気づきます。紙の日報は1日の終わりにまとめて書く様式ですが、出勤の時刻は朝、危険予知は作業の前、写真は作業の途中にしか正しく残せません。スマホに移すときは、1枚の様式をそのまま画面にするより、行き先と書く時刻ごとに入力を分けたほうが、後ろの集計に合わせやすくなります。
時刻の欄:勤怠の記録を兼ねているか
時刻の欄でまず確かめるのは、日報に書かれた時刻で時間外の時間や給与を計算しているかどうかです。計算しているなら、その日報は労働時間の記録を兼ねています。
建設業(工作物の建設の事業)には、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間で、臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満・複数月平均80時間以内とされ、月45時間を超えられるのは年6か月までです。災害時の復旧・復興の事業には、単月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の規制は適用されません(厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」)。月の途中で上限に近づいた人に気づくには、日報の時刻が、人ごと・日ごとに、休日の分も含めて集計できる形で入っている必要があります。
時刻の取り方には、厚生労働省のガイドラインがあります。使用者は労働日ごとに始業・終業の時刻を確かめて記録し、その方法は原則として、使用者が自ら現認するか、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎にする、としています。働く人の自己申告によらざるを得ない場合には、働く人と管理する人への十分な説明、必要に応じた実態調査と労働時間の補正、入退場の記録などと大きくずれているときの調査と補正を求め、申告できる時間外労働に上限を設けるといった、正しい申告を妨げる扱いをしないよう求めています(「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」、平成29年1月20日策定)。
本人が自分の時刻を書き込む日報は、紙でもスマホでも自己申告による記録で、画面に移すだけでは性質は変わりません。出退勤は押した時点の時刻が残る打刻で取り、日報には工事ごとの作業時間を残す、という分け方があります。職長がほかの人の分をまとめて書いている場合も含めて、自社の取り方がガイドラインに沿っているかは、社会保険労務士に確かめてください。
日報の時刻と、労働時間に入る時間がずれることもあります。厚生労働省の建設業向けのQ&Aは、会社に集まって社用車に乗り合いで現場へ向かうことが指示されている場合、現場へ出る前の資材の積み込みや戻った後の道具の清掃が指示されている場合、移動の車中に上司が同乗して打合せをしている場合は、その移動時間は一般に労働時間に当たると解されるとし、直行直帰が自由な中で働く人どうしが任意に乗り合っている場合は当たらないと解されるとしています。当たるかどうかは個別に判断する必要がある、とも添えています(「建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A」追補分 追1)。指示による作業の準備や後始末、参加が義務づけられた安全教育の時間も労働時間に当たります(同Q&A 1-4)。国土交通省の資料も、会社が義務づけた朝礼や、始業前・終業後の片付けを、労働時間に当たる例に挙げています(「建設業の時間外労働の上限規制は2024年4月から!」)。
日報に書く作業の時間と、労働時間に入る時間はずれることがある
建設の現場の1日の例(指示の有無で扱いが変わる所がある)
作業の時刻だけの日報で勤怠を集計すると、前後の時間が落ちる
移動が労働時間に当たるかは、指示の有無などから個別に判断される
厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A」 1-4・追補分 追1、国土交通省「建設業の時間外労働の上限規制は2024年4月から!」をもとに当社が整理
現場で作業を始めた時刻と終えた時刻しか書かない日報を、そのまま勤怠に使うと、こうした前後の時間が落ちます。反対に、集合から帰着までを書く日報を工事の原価に使うと、移動や待ちの時間まで工事に乗ります。時刻の欄は、勤怠に使う時刻と工事ごとの作業時間に分けて持つと、どちらの集計にも合わせられます。
作業を止めた時間の書き方も決めておきます。同じQ&Aは、熱中症対策で作業をいったん止めた時間について、暑さ指数(WBGT)が下がれば直ちに作業に戻れるよう待たせている場合は労働時間に当たり、昼休みと同じように自由に使えて、作業に戻る指示も受けない場合は休憩になるとしています(追補分 追16)。日報に「中断」とだけ書く欄では、どちらだったかが後から分かりません。待機と休憩を選び分ける欄にしておけば、勤怠の側で聞き直さずに済みます。
時刻の欄は、勤怠に使う時刻と工事ごとの時間に分ける
勤怠に使う
出勤・退勤と休憩
- 1日単位、人ごとに記録する
- 集合・移動・待機も含めて考える
- 作業を止めた時間は、待機か休憩かを選ぶ
- 押した時点の時刻が残る打刻か、後から書く時刻かを決める
行き先:勤怠の集計と賃金台帳。記録は5年(当分の間3年)残す
原価に使う
工事ごとの作業時間
- 工事番号と作業の区分ごとに記録する
- 1日に複数の現場を回るときは分けて書く
- 災害の復旧・復興の工事は分けて数える
行き先:工事ごとの労務費と工程の実績
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」、労働基準法第109条・附則第143条、厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A」 2-3・追補分 追16をもとに当社が整理
労働時間の記録には、残す期間もあります。出勤簿やタイムカードなど労働時間の記録に関する書類は、労働基準法第109条の書類として保存が必要で(先のガイドライン)、保存期間は条文では5年、経過措置で当分の間は3年です(労働基準法第109条・附則第143条)。賃金台帳には、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の労働時間数を記入します(労働基準法施行規則第54条)。医師による面接指導のために労働時間の状況を把握する義務もあり、方法はタイムカードやパソコンなどの使用時間の記録といった客観的な方法その他の適切な方法で、記録は3年間保存します(労働安全衛生法第66条の8の3、労働安全衛生規則第52条の7の3)。日報アプリが勤怠の記録を兼ねるなら、この期間はデータを消さずに残し、取り出せるかを確かめます。
作業内容と人数の欄:原価の計算に使っているか
次に、作業内容と人数の欄が工事の原価に使われているかを確かめます。自社の人が工事ごとに何時間働いたかは労務費の集計に、協力会社から何人来たかは外注費や協力会社の請求を確かめるのに使われます。製造の作業日報なら、品番や工程ごとの作業時間が製造の原価に入ります。
紙の日報からの集計で手間がかかるのは、書かれた言葉を原価の区分に直す所です。現場の人は「〇〇邸 配管」のように自分に分かる名前で書き、事務所がそれを工事番号と作業の区分に読み替えて集計します。スマホに移すときは、この読み替えを入力のときに済ませます。工事番号と作業の区分は、原価の仕組み(工事台帳)と同じ一覧から選ぶ形にし、自由に書く欄は補足だけにします。一覧は工事が始まるたび、終わるたびに変わるので、誰がいつ更新するかも決めておきます。
作業内容の欄が、工事の原価に届くまで
スマホでは、工事番号と作業の区分を原価と同じ一覧から選ぶ形にし、読み替えを入力のときに済ませる
災害の復旧・復興の工事は、時間を通常の工事と分けて数える(上限規制の数え方が違う)
当社の整理。災害の復旧・復興の工事の扱いは厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A」 2-3・2-4
1日に複数の現場を回る人がいるなら、時間を工事ごとに分けて書く形にします。時刻で区切るか、1日の時間を割合で分けるかは、原価の担当と決めます。作業を始めるときに工事を選んで押し、その時刻から工事ごとの時間を記録する形もあります。kintoneで組む場合は、当社の簡単工数管理プラグインのように、一覧に並んだ項目ごとの「開始」ボタンから工数の記録を作る部品もあります。
災害の復旧工事を請けることがあるなら、工事の一覧に、その工事が災害時の復旧・復興の事業に当たるかの印を持たせます。厚生労働省のQ&Aは、この事業に従事した時間には単月100時間未満・複数月平均80時間以内の要件が適用されないため、通常の労働時間と分けて管理する必要があるとしています。同じ月に一般の工事と災害の復旧工事の両方に従事した場合、この二つの要件は一般の工事の時間だけに適用され、月45時間を超える回数と年720時間の要件は両方の時間に適用されます(「建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A」 2-3・2-4)。作業内容の欄で選ぶ工事番号は、原価だけでなく、上限規制の数え方にも使われるということです。
人数の欄は、自社の人と協力会社を分けます。自社の人は名前で選べば勤怠の記録と結びつき、協力会社は会社ごとの人数にすれば外注費の確かめに使えます。協力会社に人数と日数で支払う取り決めなら、日報の人数は請求書を確かめる根拠になるので、誰が確認したかまで残しておきます。
写真と所見の欄:報告書や請求の添付になるか
写真は、行き先によって求められるものが違います。社内で進み具合を共有するだけなら、状況が分かる画質で足ります。発注者に出す工事写真や点検の報告書、請求に添える作業完了の写真、是正の前後を残す安全の記録になると、撮る箇所、画質、手を加えてよいか、何と結びつけて残すかが、相手の決まりで決まります。
公共の工事では、発注者が写真の決まりを細かく定めていることがあります。たとえば国土交通省の土木工事の写真管理基準(案)は、撮影箇所一覧表に示す頻度で撮ること、工事名・工種・測点・設計寸法・実測寸法・略図のうち必要な事項を書いた小黒板を、文字が読めるように被写体と一緒に写すこと、写真の信憑性を考えて編集は認めないこと(小黒板の情報を電子的に記入するのは編集に当たらない)、有効画素数は小黒板の文字が読めることを目安に100万〜300万画素程度とすること、撮った原本を電子媒体に入れて提出することを定めています(国土交通省「写真管理基準(案)」、令和7年3月)。
日報に付けた写真をそのまま工事写真として出すつもりなら、アプリが送るときに写真を縮めていないか、画像に文字を書き込んでいないかを確かめ、撮ったままの原本を残せるようにします。発注者が別の決まりを持っている場合は、その仕様書に合わせます。
写真は、行き先ごとに撮り方と残し方が違う
社内で共有
進み具合の確認
- 状況が分かる画質で足りる
- 撮る枚数を絞れる
残し方:共有が済んだ後、どこまで残すかを決める
発注者に出す
工事写真・点検の報告
- 撮る箇所・黒板・画質は発注者の決まりに合わせる
- 国土交通省の土木工事では、写真の編集は認められない
残し方:撮ったままの原本を残す
請求に添える
作業が終わった証し
- どの作業・どの箇所の写真かを、撮るときに結びつける
残し方:請求の明細と一緒に出せる形で
安全の記録
是正の前と後
- 指摘の写真と、直した後の写真を対にする
- 条件で添付を必須にすると、撮り忘れに気づける
残し方:元請に出す様式に合わせる
国土交通省「写真管理基準(案)」(令和7年3月)をもとに当社が整理
請求や報告に写真を添えるなら、どの作業・どの箇所の写真かを、撮るときに結びつけます。スマホやデジカメに溜まった写真を後から事務所で選び、報告書に貼るときに仕分ける運用のままだと、探し直す手間が残ります。「是正あり」を選んだら直した後の写真を必須にする、というように条件で添付を必須にしておくと、撮り忘れに出す前に気づけます。kintoneで組む場合は、当社の添付必須バリデーションプラグインのように、保存するときに条件を判定して添付ファイルを必須にする部品もあります。
所見の欄は、取引先の報告書にそのまま載る文と、社内の申し送りのメモを分けます。報告書に載る文は、現場の人が書いた文を誰が確かめ、言い回しを整えてから出すのかまで決めておきます。
安全の欄:誰に、いつ出すものか
朝礼や危険予知(KY)、新しく現場に入った人、持ち込んだ機械の欄は、社内の記録であると同時に、元請に出す報告の元になっていることがあります。下請として現場に入る会社なら、出す先は元請で、様式と締め切りは元請の決まりに従います。
労働安全衛生法は、建設業などで元請にあたる特定元方事業者に、協議組織の設置と運営、作業間の連絡と調整、作業場所の巡視、下請が行う安全衛生教育への指導と援助などを求めています(労働安全衛生法第30条)。厚生労働省の「元方事業者による建設現場安全管理指針」(平成7年4月21日)は、その具体的な進め方として、下請が行うこととして次のことを挙げています。
- 毎作業日、作業を始める前までに、その日に働く労働者の数を知らせる
- 新たに作業に入る人について、作業に就く前までに、免許・資格や特別教育・職長教育の受講の有無などを知らせる
- 現場に持ち込む建設機械などを、前もって知らせる
- 新たに入る人に新規入場者教育を行い、その結果を報告する
- 毎日、作業の前に労働者を集めて、安全衛生の打合せ(危険予知の活動などを含む)を行う
安全の欄は、出す相手と時刻が日報と違う
下請が行うこととして、厚生労働省の指針に挙がっているもの
毎作業日・作業の前までその日の労働者の数
作業を始める前までに元請へ知らせる
新たに入る人・作業に就く前まで免許・資格と教育の受講
特別教育・職長教育を受けたかなどを元請へ知らせる
持ち込む前建設機械などの持ち込み
持ち込む機械を前もって元請へ知らせる
新たに入る人・教育のあと新規入場者教育の結果
現場の危ない箇所や避難の方法などを伝え、結果を元請へ報告する
毎日・作業の前安全衛生の打合せ(KYなど)
当日の作業と注意を伝え、危険予知などの活動を行う
どれも作業の前に済ませること。作業の後に書く日報の欄に入れたままだと間に合わない
厚生労働省「元方事業者による建設現場安全管理指針」(平成7年4月21日)をもとに当社が整理
どれも作業の前に済ませることなので、1日の終わりに書く日報より先に来ます。日報の安全の欄にまとめて書き、夕方に事務所へ届く運用のままスマホに移すと、画面は新しくなっても、元請に知らせる時刻には間に合いません。その日の人数や新しく入る人のように作業の前に元請へ知らせるものと、作業の前に行う打合せや危険予知の記録は、日報から切り分けた入力にして、朝のうちに入れられるようにします。
元請がシステムや様式を指定しているなら、同じことを二度書かないように、どちらを正にするかを決めます。元請の仕組みに入れたものを自社の記録として取り込むのか、自社のアプリに入れたものを元請の様式で出すのか、です。自社が元請の立場なら反対に、協力会社にどう入力してもらうか(協力会社の人に入力の権限を渡すか、受け取る様式を決めるか)を考えます。
現場で入力できるか:手袋・電波・書きかけ・写真の枚数
欄の行き先が決まっても、現場で入力できなければ、紙にメモして夜に打ち直す運用に戻ります。転記が事務所から現場に移るだけです。試しに使うときは、事務所ではなく実際の現場で、次の条件を確かめます。
試しに使うとき、実際の現場で確かめること
作業用の手袋をしたまま押せるか
押せなければ、選ぶ・撮る・声で入れる形に寄せ、文字を打つ欄を減らす
電波の届かない所で書いて、後で送れるか
写真も端末に残るか、送れなかったことが本人に分かるか
書きかけを残して、1日に何回かに分けて書けるか
朝の人数、昼の写真、夕方の作業内容。職長が何人分を書くか
1日の写真の枚数と画質で、無理なく送れるか
原本が要る写真と、共有だけの写真を分けて試す
当社の整理
手袋をしたまま押せるか
作業用の手袋をしたまま画面を押せるかを、現場で実際に試します。押せなければ、文字を打つ欄を減らし、一覧から選ぶ、写真を撮る、声で入れる形に寄せます。選択肢は、その現場でよく使うものが上に来るように並べます。
電波の届かない所で書いて、後で送れるか
地下や山あい、建物の奥など、電波が届かない場所で書けるか。書いた内容と写真が端末に残り、つながったときに送られるか。送れなかったことが本人に分かるか。これは製品によって違うので、試用の期間に、電波の弱い現場で実際に送ってみます。
書きかけを残して、何回かに分けて書けるか
朝の人数、昼の写真、夕方の作業内容と、書く時刻が分かれるなら、途中まで書いて残せることが要ります。職長が班の全員分を書くのか、一人ずつが書くのかでも、画面の作りが変わります。職長がまとめて書くなら、全員分を一度に入れられる画面にします。
1日の写真の枚数と画質で、無理なく送れるか
1日に撮る写真の枚数と画質で、送るのにかかる時間と、残しておく容量が決まります。原本が要る写真と共有だけの写真を分け、それぞれの枚数で試します。
端末を会社で渡すか、私物を使うか
端末を会社が渡すのか、私物のスマホを使うのかも、試す段階で決めます。私物を使うなら、業務のデータが端末に残る範囲と、辞めた人の端末から入力できなくする手順を用意しておきます。
既製の日報アプリで止まるところ
既製の日報アプリには、日報に絞ったもののほか、施工管理や原価管理の製品に付いた日報の機能、グループウェアの日報の機能もあります。日報を書いて、送って、読む。写真を共有し、過去の日報を探す。目的がここまでなら、既製のもので足ります。止まりやすいのは、日報のデータをほかの仕組みに渡す所です。
工事番号や協力会社の一覧が原価の仕組みと別々だと、工事が始まるたびに両方の一覧を手で直すことになります。1日の時間を、勤怠には出退勤として、原価には工事ごとの時間として渡せなければ、事務所で分け直す作業が残ります。取引先の報告書や元請の様式、工事写真の台帳をその形で出せなければ、出した後に作り直すことになります。勤怠や原価を締めた後に日報が直されたとき、どの集計に反映し、誰に知らせるか。労働時間の記録として決まった期間、項目と写真と直した履歴を残し、取り出せるか。日報が勤怠や原価の元になっている会社では、ここも外せません。試しに使う段階で、自社の日報を次の見分け方に当てはめます。
既製の日報アプリで収まるかの見分け方
試しに使う段階で、自社の日報を当てはめる
工事番号・作業の区分・協力会社の一覧を、原価の仕組みと同じものにできない
工事が始まるたびに、両方の一覧を手で直すことになる
1日の時間を、勤怠の出退勤と工事ごとの時間の両方に出し分けられない
複数の現場を回る人がいると起きやすい
取引先の報告書や元請の様式、工事写真の台帳を、その形で出せない
出した後に事務所で作り直している
締めた後に直された日報を、どの集計に反映するかを決められない
勤怠と原価の締めの後に出る修正の扱い
項目・写真・直した履歴を、決めた期間残して取り出せない
労働時間の記録を兼ねるなら、保存の期間がある
当社の整理
当てはまる所があったときの進め方は、大きく三通りです。既製の日報アプリを使い、つなぐ部分はデータの書き出しと取り込みの手作業で残す。kintoneのような業務アプリの基盤で、日報と一覧を同じ場所に組む。専用の日報アプリを開発して、勤怠や原価の仕組みとAPIなどでつなぐ。手作業で残すなら、誰が、いつ、何件を処理するかを書いておきます。月に一度の取り込みなら回っても、工事の一覧の更新を毎日手で続けると、担当者が休んだ日に止まります。
どの作り方にするかで、5年間にかかる費用と、使い始めてから項目を足すときに誰が直すかが変わります。人数と年数を入れて比べる方法は、業務システムは買うか作るかで扱っています。
最初の1か月は、紙とスマホの集計を並べる
切り替えの最初の1か月は、紙の日報を止めずに、スマホと両方で書いてもらい、日報から作る表を両方から作って並べます。1か月としたのは、勤怠の締めと原価の月次の集計を、少なくとも1回ずつ通すためです。対象は全部の現場でなくてよく、書く人と仕事の種類が違う現場をいくつか選びます。
比べるのは、日報の画面どうしではなく、後ろの表です。勤怠は人ごと・日ごとの時刻と時間外・休日の時間、原価は工事ごとの時間と協力会社の人数、請求や報告は報告書の件数と写真、安全は元請に出した報告とその時刻を並べます。欄の行き先の決め方に誤りがあれば、ここで表の差として出てきます。
並べる1か月で、行き先ごとに比べるもの
勤怠
人ごと・日ごとの時刻
- 出退勤、休憩と待機
- 時間外・休日の時間
差の出どころの例:集合や移動の時間、書き忘れ
原価
工事ごとの時間と人数
- 自社の人の時間
- 協力会社ごとの人数
差の出どころの例:工事番号の選び間違い、1日を分けた時間
請求・報告
報告書と写真
- 報告書の件数
- 写真の枚数と画質
差の出どころの例:撮り忘れ、どの作業の写真か分からない
安全
元請に出した記録
- その日の人数、新しく入る人
- 出した時刻
差の出どころの例:作業の前に出せなかった、二重に書いた
差は、スマホでの入力の誤り、区分や計算の違い、紙の側の誤り、出ていない日報に分ける
紙の日報が労働時間の記録を兼ねていたなら、紙をやめた後も保存の期間を数えて残す
当社の整理。保存の期間は労働基準法第109条・附則第143条
差が出たら、出どころで分けます。スマホでの入力の誤り(工事番号の選び間違い、書き忘れ)、区分や計算の違い(待機と休憩の分け方、1日を工事ごとに分けた時間)、紙の側の誤り、出ていない日報、の四つです。紙の側が誤っていた差は、スマホの側に合わせる理由になります。書き慣れた紙が正しいとは限りません。
同じ1か月で、書かれなかった欄と、誰も見なかった欄も数えます。書かれない欄は、現場で入力できない条件(手袋、電波、書く時刻)が残っている印で、誰も見ない欄は、削る候補の見落としです。
紙をやめてペーパーレスにするのは、四つの行き先の表を、どれも手で打ち直さずにスマホのデータから作れたと、締めで確かめてからにします。やめた後も、紙の日報が労働時間の記録を兼ねていたなら、それまでの紙は保存の期間を数えて残します(労働基準法第109条・附則第143条。期間を数え始める日は同法施行規則第56条)。
日報のような現場の報告を、業務アプリの標準機能・プラグイン・開発のどれで組むかの考え方と進め方は、Aurant Technologiesの業務ツール導入・活用支援のページにまとめています。
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