企業版ふるさと納税 会計処理の実務 — 仕訳例・税額控除6割・別表6(22)→6(25)・適用要件と地方税写し提出

企業版ふるさと納税の経理実務を国税庁・税理士法人各社の解説ベースで詳述。最大9割の税負担軽減、具体的仕訳例、別表6(22)→令和7年4月以降6(25)の様式変更、適用要件(1回10万円以上・青色申告・本社所在地ルール・不交付団体除外)、地方税写し提出の実務、人材派遣型、3年延長後の中堅企業参入機会まで、実務担当者向けに整理。

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企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)は、企業が国の認定を受けた地方公共団体の地方創生事業に寄附すると、損金算入と税額控除を合わせて最大9割の税負担軽減を受けられる制度だ。2020年の改正で税額控除が3割から6割に引き上げられたことで、企業の実質負担は寄附額の約1割まで圧縮された。

2024年度の寄附受入額は内閣府発表で約631億4,000万円、寄附企業数は8,464社(前年比+784社)、累計活用団体数は1,631団体で全国自治体の93.7%が制度活用経験を持つ(2025年9月19日内閣府公表値)。本制度は当初2024年度末で適用期限を迎える予定だったが、2027年度末まで3年延長されたため、2025〜2027年度の3年間は現行の優遇措置が継続する。

この拡大の裏側で、企業の経理担当者は「寄附の処理は具体的にどう仕訳するのか」「税額控除はどの申告書類で処理するのか」「適用要件を満たしているか」「収益認識基準との関係はどうか」といった実務に直面する。本記事ではこれらを、企業会計の実務目線で、税理士法人各社の解説と国税庁公式情報をもとに整理する。

制度の全体構造 — 「損金算入」と「税額控除」の二重の優遇

企業版ふるさと納税の税負担軽減 — 改正後は実質負担1割2020年改正で税額控除が3割→6割へ。損金算入と合わせて最大9割の税負担軽減100万円寄附時の負担軽減 構造(上限到達時)10%30%60%企業の実質負担:10%100万円 × 10% = 10万円損金算入による法人税減税:30%100万円 × 約30%(実効税率による)税額控除(改正後 最大):60%法人住民税・事業税・法人税の合計出典: 内閣府 地方創生推進事務局「地方創生応援税制」、TOKIUM・マネーフォワード・freee各社解説

企業版ふるさと納税の経済効果は、2つの優遇措置の合計で決まる。

1つ目は「損金算入」。国や地方公共団体への寄附は法人税法上、特定寄附金として全額が損金算入される(一般の寄附金の損金算入限度額の枠外)。これによる法人税の減税効果は、企業の実効税率次第だが、概ね寄附額の約30%となる。

2つ目は「税額控除」。2020年の改正で大幅に拡充された部分で、法人住民税・法人事業税・法人税から合計で最大6割を税額控除できる。これは前提として、内閣府が認定した地方公共団体の地方創生事業への寄附であることが必要。控除割合の内訳は、法人住民税4割、法人事業税2割、法人税1割(住民税からの控除が限度に達した場合)の合計で6割になる。

結果として、100万円の寄附に対する企業の実質負担は約10万円になる。残り90万円は税負担の軽減で回収される計算だ。クラウド会計ソフトのfreeeは寄附金の勘定科目解説でこの構造を整理しており、TOKIUMの企業版ふるさと納税解説でも具体的な節税効果が示されている。

適用要件 — 「特別控除が使えると思ったら対象外」を避ける

企業版ふるさと納税の優遇措置を受けるには、複数の要件をすべて満たす必要がある。1つでも欠けると、税額控除が無効になる。よくある落とし穴を6つに整理する。

企業版ふるさと納税 適用要件 6つの注意「特別控除が使えると思って寄附したら対象外だった」を避けるための確認項目1回10万円以上少額分割しても各回10万円以上が必要青色申告法人白色申告法人は対象外、青色申告承認が前提本社所在地ルール主たる事務所所在地と同一自治体への寄附は対象外不交付団体への寄附地方交付税の不交付団体(東京都・特別区など)への寄附は対象外認定地方創生事業への寄附内閣府が認定した「地方版総合戦略事業」が対象特定の利益供与の禁止寄附の見返りに経済的利益を受けることは禁止出典: 内閣府地方創生推進事務局、各税理士法人の解説

① 1回の寄附額が10万円以上

1回あたりの寄附額が10万円以上であることが要件。少額の寄附を複数回繰り返しても、各回が10万円未満だと優遇措置の対象外となる。「年間100万円を月10万円ずつ12回」のような寄附計画は、各回10万円以上であれば全て対象になる。

② 青色申告法人であること

寄附を行う企業は青色申告法人でなければならない。多くの上場企業・中堅企業は青色申告承認を取得済みだが、新設法人や、過去に承認を取り消されている企業は注意が必要だ。寄附前に経理担当者・税理士に確認しておく。

③ 本社所在地ルール

寄附企業の本社所在地(厳密には「主たる事務所又は事業所の所在地」)と同一の地方公共団体への寄附は対象外。例えば東京都新宿区に本社がある企業は、東京都・新宿区への寄附では税額控除を受けられない。グループ会社や複数拠点を持つ企業の場合、どの法人格で寄附を実行するかで対象自治体が変わるため、組織構造を確認した上での実行が必要。

④ 不交付団体への寄附は対象外

地方交付税の不交付団体(東京都および23特別区、川崎市など、国からの地方交付税の交付を受けていない自治体)への寄附は、企業版ふるさと納税の対象外となる。これは制度設計上、地方交付税で財源が確保されている自治体には、企業版ふるさと納税で追加の財源を移す必要がないという考え方による。

⑤ 認定地方創生事業への寄附

優遇措置の対象になるのは、内閣府が認定した「地方版総合戦略」に位置付けられた事業への寄附のみだ。通常のふるさと納税(個人向け制度)や、認定を受けていない地方公共団体の事業への寄附は、税額控除6割の対象外となる。マッチングサイト(ふるさとコネクト企業版ふるさと納税WiTHなど)を経由する場合は、認定事業であることを必ず確認する。

⑥ 特定の利益供与の禁止

寄附の見返りに、寄附企業が経済的な利益(取引上の便宜、寄附金額の一部還流、特別な契約条件など)を受けることは禁止されている。「営業上の付き合いとしての寄附」は明確に違反となる。内閣府の認定事業は事業内容と寄附企業の関係を公表しているため、外部から検証可能な状態に置かれている。

具体的な仕訳例

会計処理は意外とシンプルだ。基本的な仕訳パターンを順に見ていく。

① 寄附を実行した時

普通預金から100万円を寄附した場合:

(借方)寄附金   1,000,000 /(貸方)普通預金 1,000,000

勘定科目は「寄附金」を使用する。「寄附金」勘定の中で、「特定寄附金」と「一般の寄附金」を区別して管理するのが実務的だ。多くの会計ソフトでは補助科目で対応できる。マネーフォワード クラウド会計の企業版ふるさと納税解説もこの方式を推奨している。

② 決算時 — 寄附金は全額損金算入

地方公共団体への寄附は全額が損金算入される(特定寄附金として、一般寄附金の損金算入限度額を超える部分も対象)。決算整理仕訳は不要で、会計上の寄附金がそのまま税務上の損金として認められる。

③ 法人税申告時 — 別表6(22)→6(25)で税額控除を計算

税額控除の処理は、法人税申告書の別表6(22)「認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を添付することで行う。なお、令和7年3月31日までの間に支出した寄附については別表6(22)、令和7年4月1日以降の支出については別表6(25)を使用する(国税庁様式変更)。

会計仕訳ではなく税務申告書類での処理。法人住民税・法人事業税の申告書類にも対応する記入欄がある。国税庁公式の別表記載要領に従って記入する。記載の詳細は嶋矢UFT税理士綜合事務所の企業版ふるさと納税の確定申告 別表・明細書の書き方でも解説されている。

注意点として、「税額控除は法人税額が発生していることが前提」であり、赤字決算の年は税額控除が使えない(繰越控除もない)。寄附のタイミングは、十分な利益が見込める年度を選ぶのが原則となる。

④ 申告時の添付書類と地方税申告

法人税申告書に別表を添付するだけでなく、「企業版ふるさと納税の対象となる寄附金に該当することを証する書類」の保存も必要だ。これは寄附先自治体が発行する受領書類で、寄附金額、寄附日、認定事業名などが記載されている。e-Taxで法人税確定申告を行う場合は、イメージデータでの提出も認められる(e-Tax イメージデータ提出可能な添付書類一覧参照)。

さらに地方税においては、前述の「証する書類」の写しを、申告するすべての地方自治体に対して提出する必要がある。複数の都道府県・市町村に事業所を持つ企業は、各地方税申告書類への添付を忘れないように管理する必要がある。企業版ふるさと納税の総合窓口の申告書解説で、この実務の流れが詳しく示されている。

主要会計ソフトでの処理

主要な会計ソフトでの基本的な処理を整理する。いずれも勘定科目「寄附金」を使う点は共通している。

会計ソフト 勘定科目 補助科目運用 備考
freee会計 寄附金 「企業版ふるさと納税分」の補助科目を設定 取引入力ナビで寄附金分類を選択。公式解説あり
マネーフォワード クラウド会計 寄附金 「特定寄附金」補助科目で分離管理 補助科目の細分化で管理性向上
勘定奉行 寄附金 / 法人税等調整額 事業所別・部門別で内訳管理 税効果会計との整合は別途必要
TKC TPS1000等 寄附金 税理士会計事務所の運用と連動 申告書ソフトとの連動性が強み

いずれの会計ソフトでも、会計仕訳自体は単純な「寄附金 / 預金」。複雑なのは税額控除の申告書作成側で、これは会計ソフトではなく税務ソフト(TKC、JDL、達人シリーズなど)または税理士の領域になる。

TKCグループの企業版ふるさと納税WEBコラムでは、上場企業向けの実務上の注意点が整理されている。中堅以上の企業ではTKC等の税務ソフトと会計ソフトを連動させ、別表の自動生成までデジタル化するケースが増えている。

収益認識基準との関係 — 「寄附」を受領する側の処理

本記事は寄附する企業側の処理がメインだが、企業版ふるさと納税を受領する側(自治体・第三セクター・公益法人)の収益認識基準との関係も触れておく。

地方公共団体の場合は「寄附金」として歳入科目に計上し、認定事業への支出と紐付けて管理する。会計基準は公会計(地方公会計の統一的な基準)に基づく。第三セクターや公益法人が事業実施主体となる場合は、企業会計に近い会計処理になり、寄附金の認識タイミング(受領時 or 事業執行時)と、目的別積立金の運用が論点になる。

寄附企業側から見ると、寄附先がどの会計基準で処理しているかは直接の関係はないが、「事業実施主体が変わると報告のタイミングや内容が変わる」ことには注意が必要だ。寄附企業がCSRレポートに「○○事業に寄附した結果、××の成果が出た」と書きたい場合、事業実施主体からの報告書類のタイミングを把握しておく必要がある。詳細は ふるさと納税×第三セクター 会計ガバナンス で扱う。

「人材派遣型」企業版ふるさと納税の処理

2020年度に追加された「人材派遣型」は、企業が人件費を含む事業費に寄附することで、自社の人材を派遣先の地方公共団体に出向させる仕組みだ。2024年度には人材派遣型の活用が前年度比で大きく拡大しており、内閣府の「企業版ふるさと納税 活用事例集」にも具体例が紹介されている。

会計処理としては、寄附金の処理は通常のパターンと同じ(寄附金 / 預金)。出向させる人材の人件費は、寄附した事業費の中に含まれており、寄附企業が別途人件費として支出するわけではない。出向中の社員の労務管理は派遣先(地方公共団体)が行い、給与は寄附金から支払われる。出向社員の社会保険等の取扱いは、出向契約によって個別設計される。

人材派遣型の経営的メリットは、寄附の経済合理性に加えて「優秀な社員に地方創生の現場経験を積ませる」機会を得られること。出向経験を持つ社員は、本業に戻ってからもパブリックセクターとの折衝、合意形成、長期計画の立案などのスキルが磨かれている状態で、組織にとって貴重な人材資産になる。

運用上の落とし穴 — 実務担当者が押さえる5点

会計処理がシンプルである一方、運用上は注意すべき点がいくつかある。実務担当者が押さえるべき5つの落とし穴を整理する。

1. 赤字決算で税額控除が使えない: 寄附した年に法人税が出ていなければ税額控除が無効になる。業績の見通しが立たない段階で年初に寄附を確定するのは避け、年度末近くに最終的な利益見込みを踏まえて寄附額を決めるのが安全。

2. 本社所在地ルールの見落とし: 例えば東京都新宿区に本社のある企業は、東京都・新宿区への寄附では税額控除が受けられない。グループ会社経由で他都道府県への寄附を実行するなど、組織構造を確認した上での実行が必要。地方交付税の不交付団体(東京都・23特別区・川崎市など)への寄附も対象外となる点に注意。

3. 「節税疑惑」と見られるリスク: 寄附の見返りに経済的利益を受ける形(取引上の便宜、特定の契約条件)は禁止。新聞報道で「節税疑惑」として取り上げられる事例も過去にあり、本業との明確な分離が重要。あいわ税理士法人の税務レポートでも、こうしたリスク管理の論点が整理されている。

4. 認定取消のリスク: 自治体側で認定要件の不適合があった場合、認定が取り消され、寄附企業側も税額控除を取り消されることがある。マッチングサイト経由で実行する場合は、認定の有効性を必ず確認する。

5. 添付書類の保管と地方税申告: 法人税申告だけでなく、地方税申告時にも「証する書類」の写しを各自治体に提出する必要がある。複数の都道府県・市町村に事業所を持つ企業では、提出漏れが起きやすい。アクタス税理士法人のNews Letterでも、地方税申告での添付書類管理の重要性が指摘されている。

2024年度実績と「3年延長」の含意 — 中堅企業の参入機会

本制度は2024年度末に適用期限を迎える予定だったが、2027年度末まで3年延長された。これにより2025〜2027年度の3年間、現行の優遇措置が継続する。2024年度の確報では631億円・8,464社まで拡大しており、3年延長期間中はさらに利用が広がる見通しだ。

注目すべき構造変化は「寄附企業の裾野拡大」。2021年度3,700社から2024年度8,464社へと3年で2.3倍に増えており、これは中堅・大企業中心だった初期と異なり、地方の中小企業・SaaS企業の参加が急増していることを意味する。中堅企業にとっては、3年延長と裾野拡大の流れに乗ることで、「税制優遇+CSR+地域貢献」を同時に実現する稀な選択肢を得られる。

企業側の経営判断として、企業版ふるさと納税は「税負担の軽減 × 地方創生への貢献 × ESG/CSR 開示」の3点を同時に実現できる稀な選択肢になっている。「儲けの一部を地方に還元する」というCSR文脈と、税制優遇という経済合理性が両立するのが2026年現在の構造だ。3年延長期間内に取り組む価値は十分にある。

戦略的な活用観点は 企業版ふるさと納税 戦略ガイド で、運用DXの全体像は 企業版運用DX完全ガイド で、市場全体の数字感は 企業版ふるさと納税 631億円市場の実態 で、自治体側の受入実務は 三位一体DX ピラー で扱っている。

参照した一次資料

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上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

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