建設業DX完全攻略:建設大臣NX・PROCES.SからANDPADへの移行と工事原価管理の進化

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建設業のシステム刷新は、ほかの業種のように「基幹システムを新しいSaaSに入れ替える」という発想だけでは進みません。会計・工事原価という基幹(バックオフィス)の層と、施工管理・写真・図面・協力会社とのやり取りという現場(フロント)の層が、別々の論理で動いているからです。この二層構造を理解しないまま「建設大臣NXをやめてANDPADに全部移す」といった計画を立てると、原価が合わなくなって決算で苦労します。本記事では、建設大臣NX・PROCES.S といった基幹系と、ANDPAD・SPIDERPLUS といった現場系の役割の違いを整理したうえで、現実的な移行の順番と、2024年問題を起点にした優先順位の付け方を解説します。

建設業DXが「二層構造」になる理由

製造業や小売業のDXは、ERPという一つの背骨に業務を寄せていく方向に進みます。ところが建設業では、原価を積み上げる単位が「工事案件(現場)」であり、その現場が地理的にも時間的にも本社から離れています。結果として、

  • 基幹の層:工事台帳・実行予算・原価計算・支払・請求・JV(共同企業体)会計・建設業特有の決算(完成工事高・未成工事支出金)を扱う。建設大臣NX や PROCES.S が担う領域です。
  • 現場の層:施工管理・進捗写真・検査記録・図面共有・職人や協力会社とのコミュニケーションを扱う。ANDPAD や SPIDERPLUS が担う領域です。

この二つは「データを入れる先」も「使う人」も違います。経理は基幹で締め、現場監督はスマホやタブレットで現場系を使います。DXがうまくいかない会社の多くは、この二層をどう連結するか(現場で発生した発注・出来高をどうやって原価に戻すか)を設計せずにツールだけ導入してしまっています。

主要システムの実像:基幹系と現場系を分けて理解する

製品比較は「どれが優れているか」ではなく「どちらの層を担うものか」で見ると判断を誤りません。代表的な製品を層ごとに整理します。

製品 提供元 主な役割
基幹系 建設大臣NX 応研 中小〜中堅向けの建設業会計・工事原価。パッケージ導入が早い
基幹系 PROCES.S 内田洋行ITソリューションズ 15モジュール構成の建設業ERP。原価・支払・JV・労務まで一元化。中堅〜大手向け
現場系 ANDPAD アンドパッド 施工管理・チャット・図面・検査をワンストップ。元請の現場標準として普及
現場系 SPIDERPLUS スパイダープラス 図面・写真管理に強い現場管理アプリ。設備・電気・空調工事で導入が厚い
現場系 Sangoo ライフ 中小工務店向けの原価・工程の入口。スモールスタートしやすい

注意したいのは、ANDPAD にも原価管理機能、PROCES.S にも一部の現場機能があり、領域が重なる点です。重なる部分をどちらに寄せるかを決めないと、二重入力が発生します。「写真と発注はANDPAD、確定した原価はPROCES.S」のように、データの正本(マスター)をどちらに置くかを業務ごとに線引きするのが設計の肝です。

「建設大臣NX → ANDPAD 完全移行」がうまくいかない理由

「古い会計パッケージをやめて、評判のいい施工管理クラウドに一本化したい」という相談は多いのですが、これは層が違うものを置き換えようとしているため、たいてい破綻します。ANDPAD は現場の生産性を上げるツールであって、完成工事高・未成工事支出金といった建設業会計の締めや、JV会計、税務申告に必要な帳票を出すために作られていません。

現実的なのは、原価・会計の正本は基幹系(建設大臣NX や PROCES.S)に残し、現場系で発生した出来高・発注・労務を基幹に連携する二刀流です。完全な一本化を目指すのは、年商が5〜10億円規模で業務がシンプルな会社か、ERP側の現場機能で十分に回る場合に限られます。多くの中堅ゼネコン・専門工事会社では、二層を前提に「連携点をどう作るか」に投資したほうが、回収が早く失敗も少なくなります。

2024年問題が原価のリアルタイム化を不可避にした

2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。原則は月45時間・年360時間以内、特別条項を結んでも年720時間・休日労働を含めて月100時間未満という枠を守る必要があります。これは単なる労務管理の話ではなく、原価管理の前提を変える出来事です。

残業を抑えるということは、同じ工期・同じ人数で吸収していた変動を、もう人海戦術で埋められないことを意味します。だからこそ、

  • 実行予算に対する原価の遅れのない把握(月締めを待たず、発注・出来高が発生した時点で原価が見える)
  • 現場ごとの労務時間のデータ化(誰がどの現場に何時間入ったかを集計し、工期と人員配置を是正する)

が、コスト管理と働き方改革の両面で必須になりました。月次でExcelに転記して初めて赤字に気づく運用では、上限規制下の利益確保は難しくなっています。現場系で発生したデータを基幹の原価へ自動で戻す連携が、ここで効いてきます。

協力会社を巻き込む電子化(インボイス・電帳法・電子契約)

建設業の電子化は、自社だけ整えても完結しません。発注書・請求書のやり取りの相手である協力会社が紙やFAXのままだと、結局どこかで手入力が残るからです。インボイス制度では協力会社の登録番号の管理が必要になり、電子帳簿保存法では受領した電子取引データの保存要件を満たす必要があります。

進め方としては、発注側(元請・上位下請)がデジタル化を主導し、協力会社に負担の少ない受け取り方(メールやWebでの受領、入力代行)を用意するのが定着のコツです。電子請求書はバクラクや楽楽明細などのSaaSで受領・発行を標準化し、電子契約はクラウドサインなどで巻き込みます。協力会社側に新しいシステムの操作を強いるほど普及は止まるため、「相手は今までどおりでも、自社側でデジタルに取り込める」設計を優先します。

BIM/CIM・i-Construction は公共土木から民間へ

BIM/CIM は、2023年度(令和5年度)から国土交通省の公共事業(主に土木分野)で原則適用が始まりました。公共工事を受注する土木系の会社にとっては、すでに対応が前提です。建築・民間中心の会社でも、干渉チェックや数量算出の自動化による手戻り削減という実利は大きく、設計事務所との3Dモデル連携から段階的に入るのが現実的です。

補助金については、ICT施工に関する費用が公共工事の積算で見込まれるほか、ソフトウェア導入にIT導入補助金、設備投資にものづくり補助金などが状況に応じて活用できます。補助率や対象は年度の公募要領で変わるため、「総工費の何割が必ず補助される」といった固定的な期待は持たず、着手前にその年度の要件を確認することをおすすめします。

現場からよく出る疑問

建設大臣NX を使い続けながらANDPADを入れても二重管理になりませんか?

なります。だからこそ、どのデータをどちらの正本にするかを先に決めます。たとえば「発注・出来高・写真はANDPADで発生させ、確定した原価だけを建設大臣NXに連携する」と線引きすれば、現場は現場系だけ、経理は基幹だけを触れば済みます。二重管理が起きるのは線引きをせずに両方へ手入力しているケースで、ツールの問題ではなく運用設計の問題です。

年商3〜5億円の工務店でも投資に見合いますか?

規模が小さいほど、まず現場系の一領域(写真整理・図面共有・職人とのチャット)から始めて効果を実感するのが向いています。基幹の入れ替えは後回しでよく、Sangoo やANDPADの軽量プラン、社内連絡のLINE WORKS など、月数万円台の組み合わせから着手できます。最初から全社・全領域を一度に変えようとすると、現場が使いこなせず形骸化しがちです。

協力会社が紙・FAXのままで、どう電子化を進めればいいですか?

相手に新システムを強制せず、自社側で電子的に取り込める形を作るのが先決です。受領した請求書を電子帳簿保存法の要件を満たして保存できるSaaS(バクラク等)を発注側が用意し、相手はメールやWeb提出でよい、という入口にすると普及します。インボイスの登録番号は受け取った時点で台帳化しておくと、後の確認作業が大幅に減ります。

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参考:Aurant Technologies 実プロジェクトのLooker Studio実装

工事原価や部門別の資金の動きを可視化する際の参考として、Aurant Technologies が支援した実案件で構築した Looker Studio ダッシュボードの一例です。数値・社名・部門名はマスキングしていますが、実際に運用されている可視化です。

Aurant Technologies 実プロジェクトの経理DXダッシュボード(勘定科目別×部門別資金分析・Looker Studio実装、数値マスキング済)
勘定科目別×部門別の資金分析ダッシュボード(Looker Studio実装、数値マスキング済)

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aurant technologies 編集

上場企業からスタートアップまで、数多くのデータ分析基盤構築・AI導入プロジェクトを主導。単なる技術提供にとどまらず、MA/CRM(Salesforce, Hubspot, kintone, LINE)導入によるマーケティング最適化やバックオフィス業務の自動化など、常に「事業数値(売上・利益)」に直結する改善実績多数。

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