【漫画で分かるDX】第4回:Excel地獄に終止符!データHubで拓く未来
『漫画で分かるDX』第4回。—
あとがき ― データHubと「正しいブック」問題
本ストーリーで描かれた「最終版ファイルが乱立し、どれが正しいか分からない」という現象は、多くの企業が直面する深刻なボトルネックです。 佐藤さんと田中くんによる、分かりやすいIT・AI解説シリーズ。
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Excel地獄に終止符!データHubで拓く未来
午後一時の会議室前。分析支援の案件に入っている田中誠は、ノートパソコンを開いたまま頭を抱えていた。
共有フォルダには「売上集計_最終版」「売上集計_最終版_本当」「売上集計_最終版_絶対」という不気味なファイル群が並んでいる。どれが本当に正しい数字なのか、もう誰も笑えない状況だった。田中は今日の経営会議に向けて、各部署から送られてくる売上と在庫と予算のExcelを、手作業で必死に一つの表にまとめ直しているところだった。
ファイルが増殖するのは、決して誰かの悪意ではない。各部署の担当者が「自分の数字の正しさ」を残そうとしてコピーを作り、手元で編集してしまう。その善意の連鎖が、結果的に「どれが最新の正しい数字なのか」を分からなくさせ、田中に数時間のデータ突合という地獄を生み出していた。
「田中さん。先週の集計表と今週の修正版、どちらが最新の数字か、ここから確認しましょうか」
部門担当の岸本麻衣が、印刷された二枚の表を田中の横に置いた。その瞬間、田中の画面隅に「営業部から新しい集計表が届きました」という通知が非情にもポップアップする。
登場人物紹介
田中 誠(29):伴走チームのジュニアコンサルタント。正しさにこだわるあまり、毎日のデータ突合と手作業の集計に疲弊している。
佐藤 修(39):シニアDXアーキテクト(業務改善の専門家)。圧倒的な現場の知見を持ち、システムありきではない本質的な課題解決を導く。
岸本 麻衣(41):クライアント企業の部門担当者。数字や運用の正確さを守る立場から、現場の負担が増える新しいツールには慎重な姿勢を見せる。
水野 澄(27):伴走チームのコンサルタント。データや現場の声を整理し、冷静に新しいルールを構築する。
黒坂 剛(62):競合系ベンダーのベテラン営業。白混じりのロングヘアという風貌で、大規模システム導入を武器に、嫌味なライバル役として横やりを入れる。
「……また別の部署から違う数字が来ました。部署ごとに列の名前や単位も違っていて、これをつなぎ合わせるだけで毎日数時間が飛んでいきます」
ため息をつく田中。会議の結論はいつも「まず、みんなの数字を合わせよう」から始まる。たった一つのセルがずれただけで、会議の空気が凍りつく——誇張ではなく、それが毎週の現実だった。
隣の席では、同僚の水野澄が黙々と各部署のデータの違いをメモに書き出している。

「いやいや、だからウチの統合システムで『データの一元化』をすればいいんですよ」
フロアに響いたのは、黒坂剛の声だった。他部門へのシステム提案で来社していた彼が、立ち話に割って入ってきたのだ。
「巨大なクラウドの表を一つ作って、全員でそこに入力すればいい。そうすればファイルは増殖しませんよ」
岸本は険しい顔で首を振った。「システムで一つの巨大な表を共有しろってことですか? そんなことをしたら、『誰が勝手にここを書き換えたんだ!』って大騒ぎになりますよ。ファイルがあちこちに散らばる『コピー地獄』の次は、誰がどこを触っていいか分からない『権限地獄』になるだけです。現場は大混乱ですよ」
田中も心の中で同意していた。
「ええ、だから現場のExcelを無理に捨てる必要はないんですよ」
静かな声が割って入った。佐藤修だ。黒坂の提案をあっさりと否定し、岸本と田中の前に立った。
「黒坂さん、現場が使い慣れたExcelを無理に取り上げて、巨大なシステムに押し込めるのは愚策です。私が提案しているのは『入力する場所』と『みんなが見る場所』を完全に分けるという、シンプルな役割分担の話です」
佐藤はタブレットを開き、画面を指でなぞった。散らばった複数のExcelファイルから、一本の太い矢印が「参照のための大きな窓(データHub)」へと集約されていく図だ。
「各部署は、今まで通り自分の手元のExcelに入力すればいいんです。そのデータが自動的に、この『一つの窓』に集約されるようにします。そして会議で数字を見るときや分析をするときは、誰も直接編集できない、この『窓』だけを見るルールにするんです」
「でも、誰かが手元のExcelを勝手に修正したら、結局どれが最新か分からなくなりますよね?」と岸本が食い下がる。
「だからこそ、この窓には『誰が、いつ、どこを変更したか』という履歴がすべて残る機能を持たせます」佐藤は図の端にある小さな箱をトントンと叩いた。「誰も直接数字を壊せない安全な窓で、いつでも最新の数字が見られて、変更の履歴も追える。それが担保されて初めて、数字は『信頼』に変わるんです」
佐藤の明確な答えに、岸本の強張った肩がわずかに下がった。「入力と閲覧を分ける」。その仕組みなら、現場の混乱は起きない。
田中は慌ててメモを取る。「誰が手元で更新するのか」「誰が窓から読むだけなのか」という権限の整理。システムの凄さを語るより先に、現場が納得できる「説明のしやすさ」が重要なのだと気づかされた。
「各部署でバラバラになっている言葉遣いや単位の違い(表記ゆれ)のリストは、私が今夜中に洗い出しておきます」水野がすかさず実務面でのフォローを入れた。
「集計という手作業から解放されれば、顧客の話、施策の検証、そして経営への報告に時間を回せる。全員が『同じ一つの数字』を見て話せるようになれば、会議の時間は劇的に短くなりますよ」
佐藤の言葉に、田中はハッとした。ツールを入れる目的は「楽をすること」ではない。外に出て顧客と売上の話をする時間こそが、自分たちの本来いるべき「前線」なのだと。
黒坂は「……まあ、理想通りにいけばいいですがね」と小さく肩をすくめ、足早に去っていった。
「この線だけは、みんな同じ窓から見ている」という佐藤の言葉通り、現場の温度は劇的に変わっていた。
会議の冒頭で「どのファイルが正解か」と口を尖らせる不毛な時間は消え去り、すぐに「なぜこの数字になったのか」「次はどう動くべきか」という本質的な議論から始まるようになった。
壁際で見守る佐藤が静かに頷く。田中は手元のパソコンで、データ突合ではなく、来週の顧客訪問に向けた戦略メモを開いていた。
正しい数字は、ようやく彼らの味方に戻り始めていた。
ここから先は、本文のストーリーとは切り離した解説です。
あとがき ― 仕事に落とすと
あとがき ― データHubと「正しいブック」問題
本ストーリーで描かれた「最終版ファイルが乱立し、どれが正しいか分からない」という現象は、多くの企業が直面する深刻なボトルネックです。
Aurant Technologiesが提案する「データHub」の考え方は、現場で使い慣れた表計算ソフト(Excelなど)を否定し、無理やり新しいシステムを押し付けるものではありません。重要なのは**「入力」と「参照(見える化)」の役割分担**です。
データHub導入・定着のポイント
ルールを先に固める: データの項目定義、部門ごとのアクセス権限、変更履歴の透明性を最初に設計します。
現場の不安を取り除く: 現場が最も恐れるのは「説明できない最新の数字」です。変更履歴が追える仕組みにすることで、見せかけではない「真の一本化」を実現します。
段階的な導入: まずは経営陣や横断チームが「正しい数字を見るための窓」として小さく始め、徐々に入力元の現場へとルールを浸透させていくのが成功の秘訣です。
Aurant Technologiesは、システムの導入だけでなく、現場のルール設計から定着までをしっかりと伴走支援します。